トレンド

生成AIの熱狂に隠された「真実」──AI時代に人間が磨くべき武器とは?

生成AIの進化が話題になる昨今、企業はAIとどう向き合い、デザイナーに何を求めているのか。

2026年5月、DMM 生成AI CAMP 学び放題主催の会員向けイベント「AI 1DAY BOOT CAMP」にて、「AI時代に勝つ現場の『共通点』とは」というテーマでトークセッションが行われました。

登壇者は、AICX協会 代表理事や複数のAI企業経営に関わる小澤健祐さん(おざけんさん)と、グッドパッチのデザインマネージャーの秋野。MCを務める合同会社DMM.com 塚田雅也さんの進行のもと、生成AIが普及する現場のリアルな現状や、AI時代における人間の価値、個人の武器の作り方について語り合いました。

DMMの企画・運営する生成AI人材育成オンラインスクール「DMM 生成AI CAMP 学び放題」の新コース「生成AIデザインコース」を、グッドパッチがプロデュースした背景もあって、お招きいただいた本セッション。今回はイベントで話された内容をレポート記事としてお届けします。

▼リリースはこちら
グッドパッチ、「DMM 生成AI CAMP 学び放題」の新コース「生成AIデザインコース」を全面プロデュース
https://goodpatch.com/news/2026-03_dmm-gp

登壇者紹介

生成AIを使っている人は10%未満?リアルな活用状況を聞く

塚田さん(MC):
SNSなどを見ていると「あらゆる職種がAIに飲み込まれる」といった声がある一方で、企業の決算などを見ると必ずしもそうではない部分もあると思います。実際の企業では、最新ツールはどのように活用されているのでしょうか。
まずは秋野さん、グッドパッチ社内での活用状況を教えてください。

秋野:
グッドパッチ社内では、非エンジニアも含めて全員が生成AIを使う取り組みを行っています。今年3月には事業部のメンバー全員がClaude Codeでアプリを自作して公開する取り組みを実施し、ありがたいことに社外からたくさんの反響もいただきました。

この取り組みによって、社内ではアイデアを形にするスピードは格段に上がった一方で、どんなにスピードが上がっても、どんな指示を出し、どんなユーザー体験を作るかという上流の設計は人間が考える必要があるということも再認識しました。

▼参考
全社へのClaude Code大号令 — 1ヶ月で200個のアプリと300件のナレッジから見えたこと
https://note.com/naofumit/n/n2835cd8fbe87

塚田さん(MC):
ありがとうございます。ではエンタープライズ企業へのAI導入支援をされているおざけんさんはどうですか?企業の業務で、実際AIはどれくらい使われているのでしょうか。

おざけんさん:
SNS上では誰もがAIを使っているように見えますが、実際はAIを使ったことがあるかと聞いても10%も手が挙がらないことが多いです。

フリーランスなどでもともと経験がある人は、AIを活用してさらに価値を高めているものの、実力が不足している人がAIを使っても、ゼロはゼロのままであるという厳しい現実があります。また、AIツールに巨額の予算をかけている大手企業であっても、現場ではプロンプトを書かず活用が進まないという現状も起きています。

「分かった気」にならず、AIが取れない情報を取りに行く 

塚田さん(MC):
まだまだ現場ではAIツールを十分に使いきれていないケースも多いようですが、世の中のAIが進化していく中で、人間はどう価値を出すべきなのでしょうか。グッドパッチの中で見えている「活躍できる人」の共通点はありますか?

秋野:
明確にあります。AIを使えば誰でも素早く形を作れるようになった今、クライアントが認識している課題が、本当に解決すべき課題なのかを見極める力が重要になると思います。言われたものをただ作るだけではなく、対話を通して課題を再定義し、納得してもらえるコミュニケーションができなければ、仕事はどんどん失われていってもおかしくありません。

塚田さん(MC):
秋野さんはグッドパッチでデザイナーのトレーニングもされていますが、AI時代とそれ以前で、その育成の仕方は変わったのでしょうか?

秋野:
本質的には変わりません。ただ、デザインを「かたちにできる」こと自体だけでは差別化がしづらくはなっています。これからのデザイナーは、周囲を巻き込みながら、プロジェクトを前に進められることが求められるシーンが増えていくと思っています。

なので、新卒研修は「スキルを教える研修」から「実務の中で成長する力を育てる研修」へと考え方を見直しました。具体的には、なるべく早く実案件にメインデザイナーとして参画し、リアルなプロジェクトの進行を担い、そこでの成長を振り返りながら学びを積み重ねていく研修を今年から始めています。

また、AIがなんでも答えてくれるようになったことで、「知った気になってしまう」という落とし穴が生まれています。例えば新卒研修で、大手自動車メーカーをテーマに、車のECサービスを考えてもらったことがありました。次の週、私が最初に聞いたのは「今週末ディーラーに行った人いますか?」という質問です。

実際にディーラーで交わされる会話を聞いて初めて、それをデジタルサービスに落とし込む解像度が上がる。AIが情報を届けてくれる時代だからこそ、自分で一次情報を取りに行く力がより重要になっていると感じます。

▼参考
生成AI時代、新卒研修はどう変わるのか?グッドパッチの26卒研修を大公開https://goodpatch.com/blog/2026-06-induction-program

おざけんさん:
まったく同じ考えで、私自身も「AIが取れない情報を取りに行く」ことを一番大切にしています。クローズドな場に足を運んだり、業界の人と直接飲みに行ったりすることで得られる情報から、自分らしい方向性を見つけることが重要だと思います。

これからの「武器」と必要なスキル

塚田さん(MC):
おざけんさんのように、個人が世の中に発見してもらい、著名人や大企業とつながっていくには、どのように自分の領域や武器を作ればいいのでしょうか?

おざけんさん:
これからの時代に個人が価値を生み出す方法として、「フラダンス×AI」のアプリで高く評価された事例があります。フラダンスという一見ニッチに見える領域でも、「自分らしさ」にAIを掛け合わせることで大きなビジネスチャンスになり得るんです。自分の専門領域がある人はそこで勝負し、まだない人はいくつか領域を探して、AIと掛け合わせてみることで何が作れるかを考えられると良いと思います。

塚田さん(MC):
ありがとうございます。ではグッドパッチとして、AI時代に価値を出し続けるために大切にされていることはありますか?

秋野
AIで何でもすぐに作れるようになったことで、「こんなツールを作ろう」という発想が増えるかもしれません。実際にグッドパッチでも、新卒の状況を会社全体で見守り、成長を支援するツールをつくり、みんなで活用しています。しかし、
つくったツールが「どう使われ続けるか」を設計し、浸透させていくことまでしっかり考えていかないといけないと思っています。

▼参考
新卒の「今どこで悩んでる?」を解決する見守りツール「sprout🌱」を全社で試験導入!
https://x.com/GoodpatchTokyo/status/2057295440236904481

UXデザインはまさに「そのサービスを知って、使い続けるところまで」をデザインする仕事なので、これまで以上にUXデザインのニーズは高まっていくと思います。

生成AIの発展による働き方の未来予想図

塚田さん(MC)
アメリカでのレイオフのニュースだけでなく、国内のメガベンチャーなどでも、AIの導入に伴って業務委託の契約を終了する動きが実際に出始めています。そうしたシビアな現状も踏まえて、ここから先の未来像として、働き方や必要とされるスキルはどう変化していくと予想されますか?

おざけんさん
予想は難しいですが、 大前提、ホワイトカラーの総数は減っていくでしょう。その中で、単にAIを使えるだけでなく、業務を分解してAIを現場に定着させ、組織を変革できる人材(
FDE:フォワード・デプロイド・エンジニアのような役割)の価値が高まると考えています。一方でブルーカラーの給与は上がっていて、都内のタクシー運転手はすでに年収1,000万円に近いケースも出てきています。

▼参考
AI時代に求められるスキルを体系的に学びたい方向けに、おざけんさんが代表理事を務めるAICX協会が2026年5月に提供開始した「AIエージェント・ストラテジスト」認定資格
https://aicx.jp/certifications/strategist

塚田さん(MC)
秋野さんはいかがでしょうか。

秋野
今やコーディングもデザインも生成AIで作れる部分もありますが、プロの目から見ると、 よく言われる「それっぽいもの」は作れても、「商品としてそのまま売れるレベルのもの」を一発で作ることは難しいです。おそらく5年、10年経っても、私たちが本質的にやるべきことは多分そんなに変わらないのではないかと思っています。

だからこそ、どのような未来であっても、シンプルに「基礎を学ぶこと」と、AIが出力できるもののレベル感を知ることは重要です。また、AIを含めた幅広い業界のインプットをしておくことも賢明だと思います。それこそ、私たちはデジタル業界にいますが、製造や物流などあらゆる領域含めて情報収集し、その中で自分の専門性を選び取れるようになると良いと思います。

塚田さん(MC)
ありがとうございます。名残惜しいですが最後に、今日参加された皆さんに「これだけは持ち帰って欲しい」というメッセージを一言ずつお願いします。

秋野
いろいろとお話ししましたが、AIで一定のクオリティのものが出力できる時代において、結局は「この人と話していて楽しい」と思ってもらえるかが、これからますます大事になると思うんです。AIにできることが増えるほど、「人間的な魅力」や「コミュニケーションの質」が、仕事として続くかどうかを左右する一番の武器になるはずです。

おざけんさん
まさにその通りですね。その「楽しい対話」や「人との繋がり」こそが、これからの仕事の源泉になります。私はよく「作業としてのタスク」と「内発的な欲求から生まれる活動」を分けて考えるのですが、タスクはすべてAIが代替してくれるようになると思います。

一方で、内発的な欲求から生まれる「活動」は人との出会いや営みの中から始まり、そこから仕事が創出されていきます。AIがあらゆるタスクを代替していく未来だからこそ、人と人とのつながりを構築することが、AI時代を勝ち抜く最強の武器になるでしょう。

塚田さん(MC):
「人と人とのつながり」というと、今回のイベントのようにリアルなテーブルで知り合ったり、懇親会で交流する中から何かが生まれることもありそうですね。本日はありがとうございました!

その後行われた懇親会では、参加された皆さまと記念撮影を行いました!

AIに「何を作らせるか」を考える力、一次情報を取りに行く姿勢、そして人と人の繋がりの重要性。AI時代だからこそ、これらの力がより問われるというメッセージが印象的なセッションとなりました。

AI時代の新しいプロダクト開発を伴走