ケーススタディ

20年ぶりの基幹システム刷新に挑むスズキ、「未来志向」と「ユーザー参加」でDXを前進させるデザインアプローチ

技術の進化やビジネス環境の変化に伴い、社内で使われる業務システムは往々にして少しずつ現場の実態からズレていきます。とはいえ、長年にわたって使われてきたシステムほど、リニューアルは容易ではありません。

自動車業界の雄、スズキもまた、初期開発から20年以上が経過した技術文書管理システム「SUIT」と図面管理システム「STAGE」に課題を抱えていました。度重なる改修による複雑化や、使われているプログラム言語などの問題から、システムの維持管理の限界を迎えていたのです。

そこで同社は将来を見据え、2つのシステムを統合した技術情報管理プラットフォームの構築を決断。伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)がプロジェクトの統括を担当し、初期の企画構想フェーズのデザインをグッドパッチが支援しました。

企画構想で用いたのは、まだ顕在化していない先々の潮流となり得る変化の兆しを集め、アイデアを生み出す「未来洞察」のアプローチ。「2040年の未来」から逆算して新システムの理想像を考えるという、ITシステムの企画では非常に珍しい手法をとった結果、どのようなプロトタイプが生まれたのでしょうか。

<話し手>
スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課
竹内 希茂さん 大井 一樹さん 正畑 和彦さん 川井 愛里奈さん 三浦 裕真さん
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本統括本部 中日本営業第3部 営業第1課 主任 友井 大輔さん
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本統括本部 中日本開発部 開発第3課 垂水 奏太さん
Goodpatch デザインストラテジスト 遠藤 英之(モデレーター)
Goodpatch BXデザイナー Kai Qin

管理コストの限界を迎えつつある基幹システム、リニューアルのカギは「ユーザー起点」

プロジェクトの全体像

プロジェクトの全体像

Goodpatch 遠藤:
スズキの基幹システム「STAGE」「SUIT」のリニューアルプロジェクトの中で、グッドパッチは2024年11月からおよそ半年にわたり、「2040年の未来」を想像し、逆算してありたい姿を描く企画構想フェーズのお手伝いをさせていただきました。改めて、スズキの皆さんから今回のプロジェクトの背景をご説明いただけますか?

スズキ 大井さん:
製造工程で発生するさまざまな技術文書の管理システム「SUIT」と、部品を設計するための図面やCADデータの管理システム「STAGE」は、どちらも20年以上使われている、スズキの根幹となる重要なシステムです。ただ、20年間で利用者の要望を組み込み続けた結果、システムは複雑化してしまい、管理が煩雑な状態に陥っていました。

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 大井 一樹さん

スズキ 正畑さん:
ホスト型から始まり、それをPCで使えるソフトウェアにし、その後ブラウザがあれば使えるWebシステムに変えるところまでは、時代の流れに沿って改修してきました。しかし、それ以降は運用に精一杯で、クラウドやAIなど、最近の技術動向にまで踏み込めていなかったのが実状です。また、将来を見据えた際、特にSTAGEは古いプログラム言語が使われていることも課題でした。

スズキ 大井さん:
SUITは海外拠点を含め全社的に使われていますし、STAGEもシステムを通じて取引先にCADデータを授受するなど、社外とのやり取りも発生します。システムを止めるわけにはいかないため、これまでなかなか大規模なリニューアルには踏み込めませんでした。とはいえ、先々を考えればいずれは手を付ける必要があります。せっかくリニューアルするのであれば、既存システムをベースにするのではなく、ユーザーの要望を起点とした新システムを作りたいと考えました。

現行のSTAGE、SUITの画面

現行のSTAGE、SUITの画面

CTC 友井さん:
STAGE/SUITのリニューアルの話を相談いただいたとき、パッケージの提案ではなく、スズキさんがやりたいことを整理して進めるコンサルのフェーズが必要だと思いました。そこにグッドパッチのデザイン思考のアプローチが有効だと考え、今回ご一緒させていただくことになりました。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本統括本部 中日本営業第3部 営業第1課 主任 友井 大輔さん

CTC 垂水さん:
全体像としては、前段階としてグッドパッチさんの企画構想フェーズがあり、その企画構想を踏まえて要件を整理し、2026年度末をターゲットにSTAGE/SUITの最低限の機能を新システムで担えるように進める予定です。

業務システムの開発にあまり用いられないデザイン思考を取り込むハードルの高さはありますが、「使っている皆さんの意見を反映させたシステムを作りたい」というスズキさんの思いを汲み取り、かつ将来的に長く使い続けられるシステムにする意味で、未来志向の観点をプラスした企画構想を作り上げるのは重要なポイントでしたね。

システムを検討する前に考えた、「2040年のスズキで働く人はどんな人なのか」

Goodpatch 遠藤:
グッドパッチが行った企画構想フェーズでは、2040年の未来を描きながら徐々にシステムのアイデアとしての解像度を高め、理想形をイメージしていきました。プログラムは前半のワークショップと、後半の「ビジョンプロトタイプ」の大きく2つで構成されています。

前半では、普段STAGE/SUITを使っている皆さんにお集まりいただき、5人ずつの6グループに分かれ、全4回のワークショップを行いました。具体的には

①2040年の未来を考える
②2040年にスズキで働く人をイメージ
③2040年にスズキで働く人が業務に求める価値を想像
④その働き方を実現してくれるSTAGE/SUITの在り方(コンセプト、機能)

という段階を踏んで、新システムの理想像を考えていきました。

スズキ 大井さん:
ワークショップの参加者は設計やデザイン、生産などさまざまな部門から来ていただき、各グループのメンバーも同じ部門の人がいないように構成しました。部門横断で人を集めたことで、まんべんなく要望を引き出せたのはとても良かったと思います。各部門でシステムの使い方が異なり、問題点の捉え方も多様だった印象です。

スズキ 竹内さん:
STAGE/SUITは約2万人が使っているシステムなので、同時にリニューアルをすることに対し、思った以上の反響がありました。ワークショップの参加希望者も予想以上に集まり、部門のバランスを見てこちらで選定させてもらったくらいです。

ワークショップの様子

ワークショップの様子

Goodpatch 遠藤:
そんなに反響があったんですね。普段から使っているため、関心が高かったのでしょうか。

スズキ 正畑さん:
これまでITシステムに対してユーザーの声を聞く機会があまりなかったので、現場の皆さんも言いたいことがたくさんあったのかもしれません。

実は、ワークショップは「愚痴の言い合いになるのでは」と懸念していました。STAGEでは過去に現場を回って使い勝手などをヒアリングしたことはあったのですが、不満の声を聞くことが多くて。加えて、部門特有の問題ばかりが出てきてしまい、改善にはつながったものの、システム全体の未来を見据えた構想にはつながらなかったんです。その意味では、今回のワークショップは「未来」を考えるところから始めていただいたのがよかったのかなと思います。現実的ではない意見もありましたが、愚痴や不満が出るよりは建設的ですから。

スズキ 大井さん:
未来を考えるところから始まり、なかなかSTAGE/SUITの話が出てこないのでびっくりしましたね(笑)。

Goodpatch デザインストラテジスト 遠藤 英之

Goodpatch 遠藤:
ワークショップを段階的に構成した狙いはそこにあります。最初から2040年バージョンのSTAGE/SUITを考えると、現状のシステムが発想の起点になってしまい、従来の課題解決型の取り組みとほとんど変わりません。

未来を考える利点は、非線的な思考を導くために他なりません。だから考える対象も「社会」→「スズキ」→「スズキで働く人物像」→「未来のスズキの働き方」と徐々にシステムの検討に近づけていく。「世界観」から考えていくのは遠回りに見えますが、結果として縦の時間軸、横の社会軸と幅広い視点からアイデアが出せるようになります。

今ないものを作るには、みんなで知恵を出し合う必要があります。また、通常の業務と違う発言をすることは、少し勇気の要ることだったりします。「みんなでワイワイ楽しんでいただく」のが、私たちの最初の工夫でもありましたね。

こちらで自動車業界の未来予想などを用意し、それを参考にしながら参加者の皆さんには未来の仮説を書いてもらい、ペアインタビューを行いました。未来を考える機会は普段なかなかないので、参加者の皆さんには戸惑いもあったと思いますが、普段接点がない人と話をすることで新たな発見があったり、同じ会社なのに未来への期待が違うことに気付いたりと、楽しんでくださったように思います。

CTC 垂水さん:
皆さん、楽しそうに話していましたね。未来の仕事やプライベートの暮らしなど、考えやすいテーマからスタートだった分、盛り上がったのかなと思います。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 中日本統括本部 中日本開発部 開発第3課 垂水 奏太さん

スズキ 正畑さん:
ワークショップを4回に分けたのもよかったかもしれないですね。回数を重ねることで雰囲気が分かって自由な発言をしやすくなったり、お互いに顔見知りになって話しやすくなったりしたように思います。

スズキ 大井さん:
業務時間中に半日のワークショップを4回もお願いすることになるので、現場の皆さんにとって、負荷が高いのではないかとドキドキしていましたが(笑)、ほとんどの方が4回とも参加してくれて、想像以上に積極的だったのでありがたかったです。

4回のワークショップを通じて現場から出てきた、IT部門にはなかった視点

Goodpatch 遠藤:
ワークショップで印象的だったことはありますか?

スズキ 三浦さん:
全体的に「AI」などの新しいキーワードが多く出た印象です。ワークショップを重ねるごとに、だんだんと未来志向に近づいていっているように感じました。

Goodpatch 遠藤:
多国籍な人たちとバーチャルでつながる、時差がなくなっているなど、グローバル企業らしい未来の可能性も出ていましたね。

スズキ 正畑さん:
私はオブザーバーとして全体を見ていましたが、映画やアニメで描かれている未来をイメージしているように感じました。「ロボットがやってくれる」「自動で全てできる」といったアイデアが多かった印象です。そしたら、あなたは何の仕事をするの?という疑問もありましたが(笑)。

ワークショップの中間成果物の画像

Goodpatch 遠藤:
「できるできないは別として」が未来構想のプロジェクトでは重要です。未来のことを考えるときは、どうしても「今」に引っ張られてしまいやすいですが、そこを振り切って「今ではなく、未来でできること」を想像してくださっていましたね。

ワークショップの後半ではグループごとに「未来のスズキで働く人物図鑑」「未来のスズキで働く人の三種の神器」を考え、最後にはこれまでのワークを基に「自分たちが考える最強のSTAGE/SUIT」を考えてもらいました。各チームのアイデアはいかがでしたか?

スズキ 大井さん:
やはりAIの活用が目立ちましたね。後半のビジョンプロトタイプにつながる、対話型AIのアイデアが多かった印象です。

スズキ 正畑さん:
まさに次のフェーズでのプロトタイプのコンセプトになりましたが、「パートナー」というキーワードが結構出た気がします。未来のコンピューターはツールではなく、仲間として捉えているように感じました。情報システム部はシステムを「ツールとして」提供しているので、パートナーという考え方は、ユーザーの皆さんを集めて意見を聞かなければ、出てこない発想だったと思います。

ワークショップの中間成果物の画像

CTC 友井さん:
スズキが2025年9月に発表したDX戦略には「業務のど真ん中にAIを活用」とありました。そこに通じるものがありますね。

Goodpatch 遠藤:
前半のワークショップは、総じていかがでしたか?

スズキ 大井さん:
「ユーザーが欲する機能を吸い上げる」という目的はある程度達成できたと思います。最初はユーザーが本当に集まるのか、最終的な機能として成果物を出せるのか、不安もありましたが、次のフェーズにつながる着地になってよかったです。

スズキ 正畑さん:
ユーザーを集めたメリットが大きく出たと思います。未来を考えるところから始めたからこそ、自由な発想を導き出せたのでしょうね。今後の指針はこのフェーズでだいぶ固まりましたが、それがユーザーサイドから上がってきたことに価値があると思います。

「パートナー」と「ゲーム」 未来洞察から生まれた2つのコンセプトをプロトタイプに実装

Goodpatch 遠藤:
後半では、ビジョンプロトタイプの検証を行いました。このプロジェクトは、2026年度末にリニューアルを完了するというゴールが定められています。ワークショップでは参加いただいた皆さんの主体的な姿勢もあり、とても豊かでユニークなアイデアが集められました。

しかしながら次のフェーズ以降、具体的にシステムの設計・構想に入っていくためには、2040年のアイデアは少し距離があります。そこで選んだのが「ビジョンプロトタイプ」です。みんなで積み上げた未来のアイデアの本質はどこにあるのか、すなわちスズキの未来の働き方に必要とされる価値は何なのか。そこを改めて掘り下げ、より具体的に実感を持ってイメージしてもらうために、今はまだない機能と体験をカタチにしました。

Goodpatch Kai:
一般的なプロトタイプは欲しい機能をリストアップして作ることが多いですが、今回は「今はまだないけど、未来にはきっとあるだろう」を前提に、ワークショップで皆さんが考えた理想の未来から逆算したものを作りました。その際、全員のアイデアを採用すると大変なことになってしまうので、遠藤が話した通り、まずは本質を探り、構造化し、シナリオを作りました。半年かけて皆さんが出したアイデアの共通点を引き出し、本当に提供したい価値の目星をつけていきました。

正解がないものを形にしていく過程なので、UI/UXデザインの視点を持つデザイナーや、私の強みであるブランドエクスペリエンスの思考など、さまざまな観点を持ち寄りながら進めました。「この未来像は本当に意味があるか」「体験として自然か」といった問いを共有しながら、思考の幅を広げ、シナリオに落とし込んでいます。

Goodpatch BXデザイナー Kai Qin

Goodpatch 遠藤:
先ほど正畑さんもおっしゃっていましたが、「スムーズに目的達成をするためにアシストしてもらえる」というパートナー的な要素は多くのアイデアの共通点でした。AIの文脈では、属人的な知見を代替する機能をベテランの技術継承の課題に対する活用と重ねるアイデアもありましたね。

現状の目的達成のために図面や文書を引き出す使い方を越え、システムの中で偶発的な発見があり、創造のチャンスを見つけられることへの期待もありました。これは皆さんとワークショップをしなければ出てこなかったアイデアではないかと思います。

こうして皆さんが楽しく出した2040年の未来像から私たちが提案したのが「PARTNER」と「GAME」というコンセプトでした。

プロトタイプの2つの方向性

Goodpatch Kai:
今回のプロトタイプのクリエイティブでは、PARTNERに鳥を、GAMEにはエディットゲームのイメージを採用しています。クリエイティブのコンセプトを絞ることで、各シナリオの提供価値を尖らせる狙いがありました。あとは、とにかく楽しく触ってもらいたいと思って作りましたね。

PARTNERの鳥は、スズキの昔のロゴが鳥だったことに由来します。「歴史ある鳥がパートナーとしてグローバルを飛び回り、情報をピックアップして提供する」というコンセプトでした。GAMEはそのままズバリ、遊び心のある仕組みに楽しみを覚えることで、前向きに使いたくなる期待を込めました。

Goodpatch 遠藤:
「PARTNER」と「GAME」のプロトタイプをご覧になって、いかがでしたか?

CTC 友井さん:
業務システムにゲーミフィケーションの要素を入れるのは面白いですよね。ユーザーも従来のシステムとの違いを感じやすく、未来のシステムのあり方を感じてくれたのではと思います。

CTC 垂水さん:
もちろん、実際のシステムに落とし込む難しさはありますが、書類や図面を使うユーザーだけでなく、作る側も楽しそうだと思えるコンセプトが出てきたなと思いました。

スズキ 正畑さん:
どちらもこれまでの内容を踏まえた、とても良いプロトタイプだったと思います。STAGEの図面登録や変更作業は定型業務ですので、それをゲーム感覚でやれれば楽しくなりそうですよね。PARTNERに関しては、ワークショップでキーワードとして出てきたものをよく汲み取ってくださったなと。最近は社内でもAIを活用していますが、対話型AIは身近に感じられて、こういうものがあればすごくいいなと思いました。

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 正畑 和彦さん

スズキ 大井さん:
PARTNERはイメージ通りで、こういうのがあったらいいなと率直に思いました。一方、GAMEについては個人的には楽しそうだと思うものの、上司に報告して大丈夫かな?という思いもありました(笑)。どうやってSTAGE/SUITに落とし込むのか、現実的になってしまった面もあったなと思います。

CTC 垂水さん:
全体的にポジティブな意見が多かったですが、ワークショップで話した内容が未来志向だったのに対し、実際にプロトタイプを触ると意外にも現実的な懸念が出てきましたね。

Goodpatch 遠藤:
プロトタイプを現実のシステムとして捉えるとギャップがありますが、それをあえて狙ったところもありました。プロトタイプの感想を踏まえて「どの体験を中心的に採用するか」を今後の要件定義で選定するなど、プロトタイプを大きな道しるべとして、今後進むべき道の議論がしやすくなったのではと思います。

「ビジョンプロトタイプ」と「モビリティーショーのコンセプトモデル」の共通点

Goodpatch Kai:
プロトタイプを提供するだけでは実際に使うイメージがわかないので、今回はワークショップで考えた未来の働き方を基に、「未来の車のデザイナーの日常はこんな感じだろうな」といった仮説を立て、皆さんがイメージしやすいユーザーストーリーを描いています。ワークショップ参加者の皆さんに再度集まっていただき、こちらが用意したシナリオに沿って触れていただく設計で、対面で体験会を実施しました。

Goodpatch 遠藤:
PARTNERのプロトタイプは、「AIアシスタントと一緒に不具合発生のシーンにどう対応するか」というストーリーでしたね。

PARTNERのプロトタイプシナリオ

PARTNERのプロトタイプのシナリオ

PARTNERのプロトタイプシナリオ

スズキ 正畑さん:
ストーリーに沿ってプロトタイプを触ることで、画面が変わっていくのが楽しそうでしたね。現行のSTAGEは品番ありきが大前提で、それがなければ調べようがないのですが、ユーザーはキーワードで検索したり、主になる言葉からのフィードバックを求めていたりすることが分かって、とてもよかったです。

Goodpatch 遠藤:
私が印象に残っているのは、プロトタイプを触った方が「こんなに楽できていいのかな」とおっしゃっていたことです。ワークショップのときは、何ならすべての仕事をAIに任せたいという声も多かったのですが(笑)、頭の中で想像しただけでなく、実際に触る体験をしたことで生まれた気付きだったのではと思います。

スズキ 正畑さん:
前半のワークショップは未来を考えるところから始まって、最後にSTAGE/SUITの話に戻りました。一度STAGE/SUITに意識が戻ったので、きっと参加者は現行のSTAGE/SUITの画面の延長線上のものがプロトタイプとして出てくると想像していたと思います。

ところが、実際のプロトタイプは時間軸が未来にドンと飛んだものでした。現在の画面とはかけ離れたものが出てきたことで、未来の姿が想像でき、「全く新しいSTAGE/SUITができるんだ」という期待感を持ってもらえたのではないでしょうか。

Goodpatch Kai:
「鳥がかわいくしゃべる表現がいいかも」「こっちの方が皆さん喜んでくれるかな」と、僕も楽しく作らせていただきました。皆さんに新しいSTAGE/SUITの可能性を感じてもらえていたらうれしいです。

Goodpatch 遠藤:
ワークショップで参加者の皆さんが想像力を膨らませたアイデアは無形であり、実際の見た目や体験をイメージするには限界もあります。そこをKaiたちのようなデザイナーが有形のプロトタイプとして提示することが、デザインの果たす大きな役割でした。

CTC 友井さん:
まるでモビリティーショーに出展する自動車のコンセプトモデルみたいですね。

スズキ 正畑さん:
そうですね。今のSTAGE/SUITを改修したのがカスタマイズカーだとしたら、プロトタイプはコンセプトカーであり、未来カー。そういう印象を持ってくれたのではと思います。

GAMEのプロトタイプシナリオ

GAMEのプロトタイプシナリオ

「使わざるを得ない業務ツール」から、全く新しい存在へ

Goodpatch 遠藤:
およそ半年にわたってシステムの企画構想プロジェクトを行ってきましたが、このフェーズ全体の感想を聞かせていただけますか?

スズキ 大井さん:
システム開発のプロジェクトでワークショップ自体をしたことがなく、半年間という限られた期間でどれだけのことができるのか不安でしたが、CTCさんとグッドパッチさんがうまく回してくださり、未来に必要な機能をまとめ上げることができました。それを要件定義にまでつなげられて、ひとまず安心しています。

スズキ 正畑さん:
今回のリニューアルでは、STAGE/SUITのコンセプト自体が新しくなっていることが重要でしたので、「機能ありきではなく、あるべき姿を考える」アプローチが合っていたと思います。もちろん既存の機能を盛り込む必要はありますが、そこから始めると現行の作り直しになりかねませんから。前の課長が口酸っぱく言っていた「新しいものを作るならワクワクできるものにしよう」を実現するためにも、今回のやり方が必要だったのだと思います。

Goodpatch 遠藤:
三浦さんと川井さんは、今後の要件定義から実装に向けたフェーズをメインでご担当されるお立場として、いかがでしたか?

スズキ 三浦さん:
2040年の未来を見据え、それを現実的な案に落とし込んでいく流れを経験したことは、今後の実装フェーズにも生かされていくと思います。とてもいい経験になりました。

スズキ 川井さん:
部署によっては図面のチェックを目視で行っていることもあるので、そういった工数を新システムではAIなどを用いて改善されるのを期待したいです。

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 川井 愛里奈さん 三浦 裕真さん

CTC 友井さん:
僕はスズキさんの他のシステムも担当しているのですが、他部署の方に今回の話をすると「やりたい」と皆さんおっしゃるんですよ。今後のシステム提案に、デザイン思考のエッセンスをぜひ取り入れていきたいと思います。

CTC 垂水さん:
スズキの皆さんが企画構想に積極的に取り組んでくださり、STAGE/SUITのリニューアルへの期待感を醸成できました。そこに応えられるよう、今後の要件定義と実装フェーズに取り組んでいきたいと思います。

開発プロジェクトでは時にシステム側の事情が優先され、ユーザーの要望とは異なる違う方向に行ってしまうことがありますが、それを防ぐアプローチとしてもデザイン思考は有効だと感じました。現在は企画構想で出た機能などのアイデアをもとに要件定義や技術検証を進めていますが、引き続き皆さんの意見をできるだけ集めながら進めたいです。すぐに実現できない機能は、段階的に機能拡張をしていくなど、2040年に徐々に近づけていくような長期的な取り組みにできるといいかなと思っています。

スズキ株式会社 ITシステム部 技術システム課 竹内 希茂さん

スズキ 竹内さん:
「新しいSTAGE/SUITは、スズキにとってどういう存在なのか」を定義し直したのが、企画構想フェーズだったと思います。今までは業務プロセスの中で使わざるを得ないツールでしたが、未来を考えながらワークショップを行うことで、全く違う存在が見えてきました。それはデザイン思考のアプローチをしなければ出てこなかったと思います。

今回みんなで考えた新しいSTAGE/SUITの構想が今後のフェーズにどう引き継がれ、2027年にどのような新システムができ上がり、それが未来のスズキにとってどういう存在になっていくのか。これからがとても楽しみですね。

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