昨今、「メタバース」という言葉が注目を集めましたが、インターネット上の「バーチャル(仮想)空間」を使ったビジネスを手がける企業は増え続けています。

株式会社NTTドコモの100%子会社である、株式会社NTTコノキューもその1社。2022年に事業を開始し、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といったXR(クロスリアリティ)技術を用いて、さまざまなサービス、ソリューションを提供しています。

同社は2023年6月にiOS、Android両デバイスに対応した3Dバーチャルオフィスサービス「NTT XR Lounge」をリリース。今回、Goodpatchはコンセプト企画の段階から、UI/UXデザインまでを一貫して手掛け、リリース後もグロースの支援を行っています。

Goodpatchとして初のXR領域におけるUI/UXデザイン支援となる本プロジェクト。開発期間が約5カ月と短期間だったこともあり、その過程には多くの課題がありました。さまざまな制約の中、サービスにおけるブレない価値をいかに実現できたのか。プロジェクトメンバーに話を聞きました。

話し手:
NTTコノキュー マーケティング部門 担当部長 清水さん
NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 担当課長 磯部さん
NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 山内さん
Goodpatch UXデザイナー 石田
Goodpatch アートディレクター/UIデザイナー 中田

事業方針を大転換、「やさしい世界観」をコンセプトに据えて再スタート

──今回、NTT XR Loungeの企画開発におけるデザイン支援パートナーとしてGoodpatchにご相談いただいた経緯を教えてください。

NTTコノキュー 清水さん:
NTT XR Loungeのコンセプトはプロジェクトメンバー内で考えていたのですが、サービスを展開する上でUI/UXにしっかりとこだわった開発をしていきたいという思いがあり、デザイン支援を担ってくれるパートナーを検討していました。

実はGoodpatchさんとは、NTTグループ内の別プロジェクトで以前にも仕事でご一緒したことがあります。そのときプロダクトオーナーをしていたメンバーから「Goodpatchさんにコンセプトの作り込みから支援してもらい、とてもうまくいった」という話を聞いており、ご相談するに至りました。

NTTコノキュー マーケティング部門 担当部長 清水さん

──ご相談いただいたのはプロジェクトのどのタイミングでしたか?

NTTコノキュー 清水さん:
初めてご相談したのはアプリのリリース予定の約半年前です。ご相談の時点で3D技術を使ったバーチャルオフィス空間を作り、価値を届けようというところは決まっていました。

実はご相談したタイミングの直前に当初考えていたサービスからの大きな方向転換があり、ラフ絵すらない状態。サービスのコンセプト作りのフェーズに立ち返る必要がありました。そんな仕切り直しの時期にGoodpatchさんにプロジェクトに入ってもらいました。

NTTコノキュー 山内さん:
当初想定していたのはアプリ内で会議もできて、翻訳機能もあり、議事録を取れるようなもの。リアルオフィスをそのままバーチャル空間に移したようなものになるイメージでしたが、バーチャルである必然性や競合との差別化の課題もあり、方向性に迷いがある状況でした。

その後の方向転換で、オフィス機能を多く搭載するのではなく、社員同士の気軽なコミュニケーションに特化した“やさしい世界観”を実現したいということが決まりました。しかし、それをどう具現化して価値あるサービスにすればいいのか、行き詰まりを感じていて。Goodpatchさんにはその状況からプロジェクトを整理し、先導してもらいました。

Goodpatch 石田:
最初にサービスのコンセプトを聞いたときは、とても面白いと思いました。私も既存のバーチャルオフィスについては勉強していましたが、今回のNTT XR Loungeは全く異なる切り口でした。良い意味で、企業向けサービスに寄りすぎていない。

Goodpatch 中田:
企業向けサービスなのに、ソーシャルゲームやtoCサービスのような世界観を提供したいという点がユニークだなと感じました。競合との差別化ができている。挑戦しがいのあるプロジェクトだと思いました。

──NTT XR Loungeはソーシャルゲーム感覚でアバターを好みにカスタムできたり、遊び心ある3D空間ワークスペースを体験できるほのぼのとした雰囲気が特徴的です。どのようにして“やさしい世界観”というコンセプトに至ったのでしょう?

NTTコノキュー 山内さん:
リモートワークがますます加速する現代において、帰属意識の薄れやコミュニケーション不足からくる孤独感を和らげることができるようなサービスにしたい。そこに可愛らしくてやさしいイメージが浮かびました。

やさしい世界観のバーチャルオフィスであれば、ちょっとした相談や肩肘張らないコミュニケーションをしやすい雰囲気が実現できます。リモートワーク環境下で多くの社員が抱えているコミュニーション上の課題を解決できるんじゃないか、というのが決め手でした。

NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 山内さん

NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 山内さん

NTTコノキュー 清水さん:
大阪で単身赴任していた際に思いがけずソーシャルゲームの価値を体感するきっかけとなった出来事がありました。コロナ禍の当時、マンション内に同じく赴任していた若手社員が住んでおり、彼は大阪に知人がいなかった。様子が気になり日々どう過ごしているのか尋ねると、終業後に同期同士でソーシャルゲームにログインしてわいわいやっていると(笑)。それを聞いて驚きました。

彼らの年代だけでなく、ソーシャルゲームを楽しむほかの年代の人たちに聞いてみても「仲間がそこにいるから」「会ったことのない人たちと交流している」と言います。従来ほどリアルとバーチャルのコミュニケーションに境目や抵抗がないんですね。そこにメタバースの価値を感じましたし、その世界観は尖ったものであるよりも多くの人に受け入れられやすいやさしさを感じさせるものの方がコミュニケーションを促すと判断しました。

機能ではなく、サービスの「Why」を見直す──エンジニアも巻き込み、企画と開発を同時進行

──Goodpatchがデザインパートナーとしてプロジェクトに参画後、何から着手したのですか?

Goodpatch 石田:
まずは、ご相談当初にあったビジネス計画書をプロジェクトメンバー全員で一度紐解くことから始めました。キックオフとして、サービスの価値を共有するためのワークショップを実施し、その後「中長期的な目線で売れるプロダクトを作るために必要なこと」を問いにしたワークショップを行いました。

さらに先方の全ステークホルダーとの1on1を通じて、サービスを導入する企業側・ユーザー側それぞれのKPIを定義していきました。 

Goodpatch 中田:
計画書の中にすでに機能要件一覧があり、それらが何のためにあるのかという「なぜ」をちゃんと突き詰める目的がありました。ユーザー像を明らかにすることと、ユーザーの欲求がどこにあるのかをセットで考えていく。その上で本当に必要な機能は何かを見直していきました。

──ワークショップの前後でどういった変化がありましたか?

NTTコノキュー 磯部さん:
私自身のバックグラウンドが開発側なのもあり、以前は機能のことばかり考えてしまう側面がありました。ワークショップを通じ、このサービスがユーザーのどんな困りごとを解決し、導入する企業にどういったビジネスメリットをもたらすかという点を改めて捉え直すことができた。機能よりも前の段階から考えるべきという示唆をいただきました。

NTTコノキュー 山内さん:
当初の計画書に落とし込んでいたサービスのイメージに対し、「なぜ(そのイメージ・機能)なのか?」と、とことん掘り下げて捉え直す過程をGoodpatchさんに先導いただきました。ワークショップが自分たちの納得できるサービスに近づく第一歩になったと思います。

──その後、リリースまで企画と開発が同時に動き、約5カ月でアプリを完成させるという非常にスピード感のあるプロジェクトだったと伺っています。実際のプロジェクトの流れについて教えてください。

Goodpatch 石田:
ワークショップ後はカスタマージャーニーマップの作成やペルソナの設定に移り、スケジュールへの落とし込みを行いました。体験設計作成とほぼ同時並行で、サービス名や世界観など、根本的なコンセプト周りやデザインを決めていった流れです。

NTTコノキュー 磯部さん:
タイトなスケジュールだったため、開発側はプロジェクトメンバーの合意が取れているコアな部分から早々に検討に入るなど、企画と開発の密接な連携が必要不可欠でした。そのため、Goodpatchさんとの会議には開発側も常に同席していました。

Goodpatch 中田:
開発者の方々と随時近い距離でお話しできたのはありがたかったです。企画側と開発側の双方に、企画として良いのか、そして開発が可能かということを同時に議論できた上で、やる・やらないの判断をスピーディーに行うことができました。

サービスのコンセプトやコア価値などがある程度決まった後にビジュアルを検討していくのが順当ではありますが、今回のように同時に進めることもあります。後戻りが難しい状況だからこそ、全ステークホルダーが共通認識を持って進めるように、参考画像やデザインカンプなど、できるだけ具体的なイメージと言葉で共有していくことを心がけていました。

NTTコノキュー 磯部さん:
言葉だけでは方向性や認識がずれてしまいがちです。例えば「これは開発にとって厳しい」というような場面でも、絵があることで建設的な議論ができ、認識の齟齬による後戻りを防ぐことができました。イメージによってメンバーの共通認識が生まれたことで、プロジェクトが軌道に乗ったと思います。

NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 担当課長 磯部さん

NTTコノキュー マーケティング部門 サービスマネージメントグループ 担当課長 磯部さん

NTTコノキュー 清水さん:
単純なペーパーワークではないですよね。ここはGoodpatchさんに期待していた点であり、期待以上の効果がありました。荒い状態ではあるものの、初期段階から世界観を体現する言葉とデザインの両方を示してくれた。そのおかげで、すっと判断ができる場面が多々ありました。

Goodpatch 中田:
形になったものを見ることで、思考や理解の精度が高まり、話が一気に進みますよね。そこはデザイナーとして常に心掛けています。「このタイミングでこのイメージを共有することで、次はこういう段階に進めるな」など、道筋を想像しながらご提案していました。

フラットなコミュニケーションが、厳しい局面を乗り越えるカギに

──厳しい時間的制約の中、コンセプト決めと開発を同時に進めるのは想像以上に大変だったと思います。どのように乗り越えたのでしょう。

Goodpatch 石田:
時間がなかったからこそ、各自コミュニケーションを尽くしていたのが大きいと思います。カスタマージャーニーとビジュアルが同時並行で検討されていく中で変更が生じた際にも、密な連携によって双方できちんと軌道修正ができました。

私たちとの週2回の定例会議でもコノキューさんメンバーそれぞれ異なる意見を持ち寄る場面が多々あり、活発な議論をされていたのを覚えています。立場や所属を超えて意見の違いを議論できたことが良かったです。

NTTコノキュー 磯部さん:
われわれの現実的な制約事項などを踏まえた上で、譲るべきではないポイントをGoodpatchさんがはっきりと整理してくださったおかげで議論に集中できたのだと思います。

NTTコノキュー 山内さん:
顧客へのプレセールス開始後の定例会議では特に、メンバーそれぞれがお客さまにいただいたご要望やコメントが頭にある状態。意見の対立もありましたが、全員が平等に意見を言える雰囲気だったことがプロジェクトに良い影響を与えてくれました。

NTTコノキュー 清水さん:
コンセプトを考える際、私自身、つい機能を足したくなってしまったり万人受けする色やデザインに気持ちが揺れる場面がありました。そういったときにGoodpatchさんから、これまで話してきたサービスの「コンセプトと価値」に立ち戻って考えましょう、と助言いただいた。

議論が白熱し、和やかな雰囲気ではなくなる瞬間も多々ありましたが(笑)。単にクライアントの言うことを実現させるというのではなく、こちらのコメントを前向きに捉えてくれつつも、ダイレクトに意見を言ってくれたのがありがたかったですね。

3Dオフィスでも動作は軽快に 法人向けサービスならではの制約と工夫

──“やさしい世界観”をコンセプトとした、3D空間やアバターの具体的なデザインはどのように決まったのでしょう?

NTTコノキュー 清水さん:
NTT XR Loungeは法人向けのスマートフォンで使用されるサービスなので、スペックが高くない機種でも快適に動作することが大切です。Goodpatchさんには表現のリッチさは大切にしつつ、いかに動作を軽くできるかという条件の下でビジュアルのデザインの検討を先導してもらいました。

Goodpatch 中田:
アートディレクターとして決まった条件の中でいかに“やさしい世界観”を作るかということに尽力しました。Goodpatchとしても、個人的にも、XRサービスのデザインを手掛けるのは初の試みでした。Z軸(奥行き)という変数が加わることで、通常の2Dデザインより検討に必要な観点が多い点に苦労しました。

──平面と立体では、全く違うんですね。

Goodpatch 中田:
極端に言ってしまえば、空間を無限に広げられますからね。サービスコンセプトや体験設計に合わせて、どういった3D空間やアバターが適切か。快適な操作性を担保しながら3Dであることの面白さを生かしたデザインにするには──などを考えながら、見た目やカメラワークを決めていきました。空間デザインに関する議論は特に白熱しましたね。

NTTコノキュー 磯部さん:
アイデアを出しているうちに夢が広がり、当初は荒野や砂漠などの空間デザイン案も挙がっていました。結果的には、動作が重くなるため採用に至らなかった案もありますが、天気が変わるというアイデアはまだ諦めていません(笑)。

NTTコノキュー 山内さん:
メンバー内でもデザインの好みはそれぞれなので、空の色ひとつ、壁のあるなしひとつとっても意見が割れていましたね。Goodpatchさんが他社の類似サービス事例との比較資料を用意くださったおかげで検討が進み、1つずつ決めていくことができました。

──なるほど。Goodpatchのお二人は実際にデザインする中でどんなところに難しさを感じましたか?

Goodpatch 中田:
カジュアルな世界観を打ち出しているとはいえ、あくまで企業向けのサービスです。3Dの造形やUIデザイン、言葉選びなどに関して、企業向けと個人向けのどちらにも寄りすぎないギリギリのバランスを実現することに、このサービス特有のやりがいと難しさがありました。

Goodpatch 石田:
バーチャルとリアルの狭間の良い塩梅が必要とされていた点ですね。ユーザーが動物(アバター)になって3D空間を動き回れるけれど、行きすぎたカジュアルさは企業向けサービスとして相応しくない。極論、バーチャル空間では空を飛ぶことも可能なわけで。そこは現実と乖離しすぎないよう、バランスに気を配りました。

Goodpatch UXデザイナー 石田

Goodpatch UXデザイナー 石田

展開する販促ツールの一貫したデザインディレクションの重要性

──リリース後のお話も伺いたいと思います。約3カ月が経ちましたがユーザーからどういった反応が届いていますか?

NTTコノキュー 磯部さん:
ユーザーからは「この空間に入るとホッとする」「動物のアバターがすごく可愛い」といった感想をいただいています。私たちがコアに据えた“やさしい世界観”に関するネガティブな反応は全くない。思い描いていた通りの反応をいただけているので、それが一番嬉しいですね。

機能に関しては現状かなり絞り込んでいるので、もっとこういった機能が欲しいという要望はいただいています。今後はコンセプトを守りながら、いかにお客さまの声に応え、使いやすいサービスにしていけるかに注力していきたいです。

NTTコノキュー 山内さん:
他のバーチャルオフィスサービスをすでに使ったことのあるお客さまからも「今までのものと違う」と興味を持っていただけています。そういった反応から、世界観やコンセプトにおいて、他社の類似サービスとの差別化ができていると感じています。

NTTコノキュー 清水さん:
社内の反応にも変化がありました。当初は従来のバーチャルオフィスサービスにはない動物のアバターデザインや機能を敢えて絞った方向性を心配する声が大きかった。ところが、実際に利用してもらっている現在では、社内の人間もほとんどが動物のアバターを選んでおり、「もっと動物のアバターを増やして!」と言われるほどで(笑)。サービス利用の前後で異なる反応が返ってくるのは、狙い通りですね。

──リリース後のプロモーションにおいても、Goodpatchが協力しているというお話を伺いました。

Goodpatch 中田:
ロゴやサービスサイト、ポスター、リーフレットなどのデザインですね。当初はプロジェクトのスコープ外だったのですが、関係者の方々がこれだけの労力をかけて作ったサービスを最良のカタチで世の中に伝えたい、という思いがあり、デザイン提案させていただきました。

NTTコノキュー 山内さん:
プロモーションに向けた制作物が多くあり、ご依頼しなくてはと思っていた矢先、Goodpatchさんから世界観に沿った一貫性のある販促ツールを率先してご提案いただいて感謝しています。販促ツールは最初にお客さまの目に触れるものなので、パッと見て世界観を感じていただけるデザインがありがたいです。

ステッカーやクリアファイルを実際に使っていただく中で、お客さんにサービスへの愛着を持ってもらえたらと願っています。今後も事あるごとに活用していきたいです。

Goodpatch 中田:
マーケティングコミュニケーションも含め、さまざまなタッチポイントで一貫した体験を提供してあげることが、ユーザーの安心感や愛着の醸成につながります。どれだけプロダクトが良くても、世の中への伝え方がいまいちでは台無しです。トータルでのデザインディレクション支援ができたことはとても良かったと思っています。

Goodpatch アートディレクター/UIデザイナー 中田

Goodpatch アートディレクター/UIデザイナー 中田

クライアント以上にサービスへの思いを持って併走してくれるパートナー

──プロジェクトを共にする中で、Goodpatchにデザインパートナーとしての価値を感じられたところがあれば教えていただけますか?

NTTコノキュー 山内さん:
私はもともと法人営業部に配属されていたこともあり、以前は「受発注」という明確な契約関係が前提にあったので、Goodpatchさんとのように対等な目線で意見をぶつけあう関係性は新鮮でした。だからこそ、ワンチームとしてスクラムを組めたと思っています。まるで同じオフィスで働く人同士のような、とても良いチームでした。

NTTコノキュー 磯部さん:
パートナーという言葉がぴったりなのではないでしょうか。時間的な制約や機能要件など、Goodpatchさんからすれば思うところもあったはず。その中でGoodpatchさんに先導いただき、私たちが提案するブレない世界観を根本の部分から捉え直し、全員で同じ方向を向くことができました。

NTTコノキュー 清水さん:
特に印象に残っていることがあります。プロジェクト内で一度サービス名が決まり、すでにGoodpatchさんからのデザインも仕上がってきていたときのこと。並行してリスク管理の観点で確認を進めていた、弊社の審査部門から決まっていたサービス名にNGが出てしまう事態になりました。

非常に残念だったが仕方がないと受け止め、Goodpatchさんにその旨をメールで伝えました。その後、間もなく「経緯を改めて聞かせてほしい」と電話をいただきました。

──納得がいかなかったと。

Goodpatch 石田:
もちろんさまざまな事情があるのは、理解していますが、サービスの名称は本当に大切ですから。まずはお話を聞こうと思いまして。

NTTコノキュー 清水さん:
単純な受発注の関係性であれば、「それならデザインを変えます」というやりとりで終わってしまうところかもしれません。しかし、Goodpatchさんは私たちと思いを同じくしてサービスを一緒に作っているんだ、という姿勢がその電話に表れていました。

ともすると、われわれ以上にサービスに対して思いを持っていただいていたのではないでしょうか。これは一例ですが、その姿勢にとても感謝していますし、強く印象に残っています。ぜひ次の新しいサービスや企画でもご一緒したいですね。

──ありがとうございます。プロジェクトを経て、みなさん自身の考え方などに変化があれば教えていただけますか?

NTTコノキュー 磯部さん:
実際のペルソナ、実際のユーザーがどういう利用の仕方になるのかというところをより深く想像できるようになりました。以前であれば、自分や似た環境にいる社内の人間などを基準にサービスを考えていましたが、Goodpatchさんとの協働を通して、自分に見えているニーズだけが正解じゃないという当たり前のことを改めて認識できました。

思い返すと大変なプロジェクトでしたが、役割に捉われず、さまざまな経験ができたことは私たちの血肉になっていると感じています。今後のサービスの改善に生かしていきたいです。

NTTコノキュー 山内さん:
サービスを開発する際、どういった順番でどのようにアイデアを掘り下げていくかを体系立てて考えるプロセスを示していただいたことが勉強になりましたし、「ビジュアル化」の大切さも学びました。特にコンセプトやデザイン決めに関わる共通認識を作る際には必要不可欠なものだと感じています。

また、サービスのコアとなる自分たちの提供したい価値を一貫して持ち続けることの大切さも感じています。お客さまからいただくご要望の実装を検討する際、立ち戻るべき軸があることで、筋の通った判断ができると改めて思います。

──今後はユーザーからのフィードバックを基にサービスが進化していくと思います。NTT XR Loungeのアップデートについて、展望を教えてください。

NTTコノキュー 磯部さん:
現状のサービスはオフィスにおけるちょっとした雑談や相談などのコミュニケーションをより気軽に、より大切にしようというコンセプト。今後はそのコミュニケーションがサービスによってどう深まっているのかを統計によって可視化し、導入企業の方々に効果をより実感いただけるよう、HRマネジメント機能の追加なども視野に入れていきたいと考えています。

NTTコノキュー 清水さん:
世界観に対してどんなに良いと思っていただいていても、企業向けサービスでは明確な効用がないと当然利用に繋がりません。一方、NTT XR Loungeはメールやチャットなどのビジネス用ツールと違って、業務上必須の機能を搭載しているわけではありません。

10年ほど個人向けのサービス開発に携わってきた私自身の経験から、いかに不要な機能をそぎ落としシンプルに作るかが重要だと感じています。絞り込んだ機能、一貫した世界観を維持しながら、どういったストーリーであれば導入に踏み切っていただけるか。そこの検討に注力していきたいです。

NTTコノキュー 山内さん:
ここからは多くの新規ユーザーを獲得していかなければいけません。頂いているユーザーのご要望から、改善するべき機能を実装していくことで、長く愛される製品にしていきたいです。