九州大学の学生が描いた「2035年の世界観とアイデア」──グッドパッチと共同で行った実践型授業とは
今から10年後の未来、人はAIとどんな関係になるだろうか──こんな質問をされたら皆さんは何を考えますか?
グッドパッチは2025年の春、九州大学大学院芸術工学府と協力し、「人とAIが共生・共創する未来のUI/UXデザイン」と題した授業を行いました。
まだ顕在化していない先々の潮流となり得る変化の兆しを集め、アイデアを生み出す「未来洞察」のアプローチを用いながら「2035年の未来」を描き、プロトタイピングまでを行う全8回のカリキュラム。このテーマに果敢に挑んだ学生18人は一体どんなアイデアにたどり着いたのでしょうか。
今回は受講した学生3名と担当教授である羽山先生にインタビュー。授業を担当したグッドパッチ森村を交えて、授業の様子を振り返り、狙いや今後の展望をお話しいただきました。
<話し手>
九州大学大学院 芸術工学研究院 ストラテジックデザイン部門 助教 羽山さん
九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 ストラテジックデザインコース修士1年 吉田さん
九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 ストラテジックデザインコース修士1年 三宅さん
九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 未来共生デザインコース修士2年 森下さん
Goodpatch デザインストラテジスト 森村
目次
「高度デザイン人材」の育成のための実践的な授業──九州大学の狙いとは
──今回、九州大学とグッドパッチが共同で「人とAIが共生・共創する未来のUI/UXデザイン」という授業を行うことになった背景を教えていただけますか。
九州大学 羽山さん:
九州大学の芸術工学府では「高度デザイン人材」の育成を目的とした教育を実施しており、私は「ストラテジックデザインコース」を担当しています。芸術工学府では、産学連携の授業やプロジェクトを活発化させていまして、自分ももっと実施していきたいと考えていました。グッドパッチの森村さんとは、以前の職場で同僚だったというご縁がありまして、一緒に授業ができないかとご相談したのがきっかけですね。

九州大学大学院 芸術工学研究院 ストラテジックデザイン部門 助教 羽山康之さん
──AIとの共生など、今トレンドになっているトピックを取り入れたテーマはどのように決まったのでしょうか。
九州大学 羽山さん:
今回の授業はスタジオプロジェクトという、コース横断型の実践的演習科目です。学生が分野横断的に受講できる授業なので、特定の科目や領域に偏らず、みんなで対話できるテーマにしようと考えました。
Goodpatch 森村:
テーマの候補は複数ありましたが、「AIエージェントをテーマにするなら今しかない」というのが最終的な決め手でしたね。AIは急速に進化していて、デザイナーとして「人とAI」に向き合わざるを得ない世の中が到来しようとしている。だからこそ、今扱う意味があると思いました。
九州大学 羽山さん:
せっかくグッドパッチさんと一緒にやるのなら、UIUXを絡めたテーマにしたいと思っていました。その上で、考える未来を10年後の「2035年」とし、「まだ存在していない未来の価値をどう想像し、かたちにできるか?」という問いを中心に据えて設計しました。
大学は未来を作る学生を育てる場所です。私は「不確実な未来を恐れずに、勇気を持って複数の未来の物語を創るデザインのアプローチ」を「ワールドメイキング(世界創造)※」と呼んでいますが、まさに“答えがない世界”に向かって、自らビジョンを構想し、言語化し、表現していくプロセスを通じて、未来を創造する感性と論理を身につけてほしいと考えました。
※羽山康之. (2025). 「世界創造としてのデザイン・ナラティヴ」 という発想 イタリアの物語ドリブンのデザインアプローチの研究からの視座.芸術工学研究(https://doi.org/10.15017/7343278)
Goodpatch 森村:
今回はあえてビジネス視点は度外視し、学生の皆さんが自由に未来を描いてもらうことに振り切りました。「未来を担う学生たちから、どんな未来の展望が聞けるのだろう」とワクワクしましたね。
──受講した学生の皆さんは、どのような点に興味を持って本授業を履修したのでしょう?
吉田さん:
募集要項に書いてあった「AIエージェント」に興味を持ちました。ChatGPTがAIエージェントと形容されることも知らなかったのですが、これからAIが重要になる予感は漠然とあったので良い機会だなと。あとは学外のデザイナーさんから学べる点にもひかれました。

九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 ストラテジックデザインコース修士1年 吉田さん
三宅さん:
企業に勤めている方がAIをどのように捉え、活用しようとしているかが気になりました。何かしらヒントを得られるんじゃないかという期待がありましたね。
森下さん:
授業名に「UI/UXデザイン」がついていたこともあって、目に入りました。実はグッドパッチでインターンをした経験があり、とても楽しかった記憶があったのも履修を決めた大きな理由です。
メンバーの「?」がヒントに 多様性が生んだ創発的な未来のアイデア
──今回の授業では、社会がこういうふうに変化するのではないか、という仮説を立ててユーザーのストーリーを作り、デバイスのコンセプトを立て、プロトタイピングまで行いました。授業で実施したワークについて、特に印象に残っていることを教えてください。
森下さん:
個人のペルソナを複数作り、そこから世界観を設定し、未来社会のテーマを決めていく流れが印象に残っています。ワークを通じて「一人一人の集合体が社会」だと理解でき、自分という個人が社会を作っているイメージが湧いたことが面白く、哲学的だと感じました。
その反面、多様な人をペルソナに設定したので、社会全体のテーマを一言でまとめるのは難しかったです。AIを活用している人たちと、変化になじめない人たちで二分化されるイメージがあったので、最終的には「格差の大きい社会」としてまとめました。
三宅さん:
僕のチームも意見をまとめるのに苦労しました。「多様化した人たちが一緒になる状況では、コミュニケーションが難しくなるのでは」というテーマで考えていたのですが、なかなか課題がまとまらなかったんです。そんな中、「スラングやことわざなど、国や文化の違いから生じる表現をどう伝えるか」を話し合っているときに、まさにその話自体がチームの留学生に伝わらなくて。日本人3人で説明するのを聞きながら、留学生の子が「?」と紙に書いていたんです。
そこから「『?』は書いてあれば分かるけど、会話だと気付かないよね」という話になり、非言語コミュニケーションを助けるデバイス、というアイデアが生まれました。まさに多様な人がいたから生まれたアイデアでした。

九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 ストラテジックデザインコース修士1年 三宅さん
吉田さん:
私のチームはインドネシア、台湾、日本のインターナショナルチームだったので、同じく意見の収集が大変でした。ただ、「ヘルスケアに関心がある」という共通項があり、話し合う過程で各国の課題を聞けたのは楽しかったです。例えばインドネシアの場合、高齢化よりも乳幼児の死亡率が社会問題になっているようで、日本と逆なのが興味深かったです。
──授業を行ったお二人はいかがですか?
九州大学 羽山さん:
カリキュラムとしては、最初は自分ごとである要素から始めて、少しずつ社会全体に発想を広げていき、ゴールである2035年の未来を考える構成になっていて、学生たちがステップバイステップでイメージを具体化できたのも大きかったですね。
印象的だったのは、毎回の授業の最初に行われるアイスブレークです。しっかりとテーマにつながる仕掛けになっていて、例えば「こんなAIはいやだ」といった大喜利的な問いかけには、私自身も笑いながら考えさせられました。学生たちも肩の力を抜いて授業に臨めたと思います。グッドパッチの皆さんがコミットメントと熱意を終始持ってくださったおかげで、その思いに学生たちも引っ張り上げてもらったように感じました。
Goodpatch 森村:
私は学生の皆さんの発想力に驚きました。普段行っているワークショップでは意見を共有して、理解するところが世代間や部門を超えた議論として盛り上がることが多いのですが、皆さんは短時間で「それによってどんな影響があるのか」の哲学的、倫理的な議論まで深めていることが多い印象でしたね。
三宅さん:
授業の全体像が見渡せたのが大きかったと思います。これまでのワークでやったことがオンラインホワイトボードに残っているので、過去の意見をさっと確認して次の議論に進めることができました。その分、議論が深まりやすかったように思います。

授業ではFigJamを使ってワークや講義を進めていった
ドラえもんの「ひみつ道具」感覚で、AIと共に生きる未来を考える
──学生の皆さんにお伺いしたいのですが、「未来のまだない価値を探る」というテーマ設定については、いかがでしたか?
吉田さん:
「未来」という現状にない情報からアイデアを発散していくのが難しかったですね。AIに関する事例もそれほど多くないところから、どうアプローチすればいいのか。大変だったからこそ「AIが台頭した未来で人間は何ができるのか」を考え抜いた感覚があり、AIや未来との距離が近くなったような気がします。
三宅さん:
全体を通して「AIを使って何がしたいのか」を問われているように感じました。「AIでできること」から「AIでやりたいこと」まで持っていくのが大事だなと。普段は既存のものをより良くするデザインについて考えることが多いので、将来を予測し、そこから新しくデザインを考えるのは新鮮でした。『ドラえもん』のひみつ道具を考えるような感覚で、自分たちが欲しいものを作っていきました。
吉田さん:
私たちのチームが、最後に発表した介護用ロボット「Curious COCO」も「自分たちが使いたいもの」になったなと思います。自分が介護される側になったとき、既存の介護士補助ロボットを「使ってほしくない」というのは国籍問わず共通していて。そういう総意を反映して、国を超えてみんなに通じるものができたと思っています。
過去になかった技術が今はあって、それが日進月歩で発展している。「明日にはこんなこともできるようになるかも!」と言いながらプロトタイプを作るのは、まさに三宅さんの言う通りで『ドラえもん』のひみつ道具みたいでワクワクしました。
森下さん:
自分は「未来共生デザインコース」を選択していることもあり、「未来」というテーマにはなじみがありました。ただ、普段の授業では持続可能性にフォーカスすることが多く、社会課題やサーキュラーデザインといったトピックに目が向きがちです。
一方、今回の授業では自分たちの生活に即して、自分たちの生活とビジネスをつなげて考えていきました。自分とAIの関わり方を考える機会にもなりましたし、未来に必要とされるものをプロトタイプまで作って考える授業はとても面白かったです。

九州大学大学院 芸術工学府 芸術工学専攻 未来共生デザインコース修士2年 森下さん
九州大学 羽山さん:
「AI×未来」というテーマはいまの学生にとって非常に興味関心の高いテーマで、主体性を持って取り組んでもらえました。「未来は誰かが勝手に決めるものではなく、私たち一人ひとりが関わっていけるものなんだ」ということを手触り感をもって味わってもらえたのではと思います。
Goodpatch 森村:
「人」起点で未来をリアルに考えられるデザイナーだからこそ、その特性を生かし「未来では人がどういうデバイスを媒介し、どのような行動をするだろうか。そこにはどんな可能性や課題があるか」というお題に向き合って、自由に表現してほしいという思いがありました。なので、後半のプロトタイピングツールやアウトプットの形式はあえて自由にしたんです。
未来を「プロトタイピング」して、学生たちは何を感じたか
──未来のデバイスのプロトタイプを作るのは、独特の体験だったと思います。やってみてどうでしたか?
吉田さん:
私のチームは高齢者を対象にしたものだったので、「本当に使えるか」はかなり考えました。例えばスマホ画面をスクロールする際、高齢者は手が滑ってうまくできないと聞いたことがあって。そういった懸念点を考慮して最適なデザインを考えた結果、「目に見えるプロダクトがいいだろう」と意見が一致し、プロトタイプを3Dプリンタで作成することになりました。これは「人」起点で考えられた成果かなと思います。
3Dプリンタはチームメンバー全員にとって初めてのチャレンジでしたが、発表時に盛り上がったのを見て、やはりビジュアルで伝わる部分は大きく、実際に目に見えるものを作ることに意味があるのだと感じましたね。
三宅さん:
うちのグループはダンボールを使い、簡単なプロトタイプを繰り返し作っていきました。絵を描いたり切り抜いたりする過程で、チーム内の前提や齟齬をすり合わせていけたと思います。そうやって作った「EMO Glass」を装着して印象を確かめたり、実際の利用場面を想像したりする中で、議論に発展したこともありましたね。イメージだけでなく、モノとして作るのは大事だと改めて思いました。
──三宅さんのチームは、プロトタイプを発表するプレゼンで寸劇を行っていましたね。
三宅さん:
コミュニケーションがテーマなので、実際のコミュニケーションを見てもらった方がいいだろうと思いました。AIで生成した動画を見てもらう案もありましたが、余計な情報は入れない方が大事な部分が伝わりやすいかなと。
──なるほど。未来に起こり得るストーリーを感じてもらうには、確かに有効な手法ですね。羽山さんと森村さんは学生の最終発表をご覧になった感想を聞かせてください。
九州大学 羽山さん:
「プロトタイピングで未来を目に見えるかたちにする」というデザイナーならではの特性を発揮し、どのチームもクリエイティブ・コンフィデンス(創造的自信)を体現していました。
今回はデジタルプロダクトとしてのUI/UXに取り組んでもらいましたが、実際のものとしてのプロダクトに結びつけた提案をしたり、モノとの関係性でインタフェースを作ったり、表現する時にストーリーボードまで作ったりと、「未来」という目に見えないものをさまざまな表現方法で伝えてくれました。7分間という限られた時間で、よくやったなと思います。
Goodpatch 森村:
アウトプットの多様性が面白かったですね。AIの捉え方もチームごとに違って、それがアウトプットに表れているのがよかったなと思います。また、今回の授業では「チーム内で深める」と「視野を広げる」を同時に達成したいと思っていました。チームで深めながら、他のチームの議論や発表から新たな視点を取り入れて再考する。それを繰り返しながら、どんどん考えを深めてほしいなと。
その意味では、最終発表で受けた刺激が自分たちのプロトタイプへの振り返りにつながり、それが皆さんの今後のデザインに生かされていくといいなと思います。そうやって新しい未来が作られていくのかなという予感がありました。
大学と企業の対話が生んだ新たな価値、未来の「社会実装」のカギに?
──今回の「人とAIが共生・共創する未来のUI/UXデザイン」は、企業と大学がコラボレーションをして生まれた授業だったわけですが、こうした授業は学生の皆さんからどう映りましたか?
吉田さん:
実際に働いている人の目線が入るのが面白く、視野の広さを感じました。プロトタイプそのものへの意見だけでなく、「これがあったら未来はどうなるのか」についても、いろいろな視点でフィードバックいただけるのがありがたかったです。
森下さん:
企業と大学のコラボはとても良いなと思います。先生方は研究に生かせる部分があると思いますし、企業は採用につながるかもしれません。生徒側も社会人の視点から見た自分たちの良さや特徴に気付くことができるように思います。
三宅さん:
社会で実際に活躍している方々からのフィードバックによって、まさに「学生の自分たちの強み」を理解できた気がしますね。
森下さん:
就職活動のインターンでは、学生のアウトプットに対して厳しめの指摘をする社会人の方が多い印象でしたが、今回の授業では、ソフトなご意見をいただけたのも助かりました(笑)。
九州大学 羽山さん:
学生からのアンケートには「厳しいコメントも欲しかった」というものもありました。その点はどうですか?
Goodpatch 森村:
テーマが「未来」でしたからね。思い描いた未来の可能性に対して「もっとこんな可能性があるかもね」と視野を広げて発展させることに価値がある。優しさというよりは、のびのび意見が出せるように、心理的安全性を考慮していました。何より、学生が考えたまだ見ぬ未来を大人が批判するってひどいじゃないですか(笑)。
──授業を担当したお二人は、今回の取り組みに対してどう感じましたか?
九州大学 羽山さん:
大学としても研究者としても、産学連携はもっと取り組んでいかなければと思いました。デザインには「デザイン・ディスコース※」という考え方があります。デザイナーのみならず、職種や所属など、デザインに関わるさまざまな立場の人たちが対話をしながら未来を作っていく考え方ですが、それを実現する上でも、産学連携の授業に可能性を感じました。
こういった場が大学のいたるところに増え、それらが有機的につながっていけば、自然な流れで社会実装まで至るというようなことも起きるかもしれません。そこまでできると産学連携にはもっと大きな意味が出てくる。大学側にもそんな期待がありますので、今後もこういった機会は作っていきたいです。
※参照:Verganti, R. (2009). Design driven innovation: changing the rules of competition by radically innovating what things mean. Harvard Business Press.
Goodpatch 森村:
私たちにとっても貴重な機会でした。年齢を重ねていくにつれ、徐々に未来の作り手ではなく、意思決定者や支援者になっていくからこそ、若い世代ともっと対話をしなければと感じました。大人だけで未来を考えてはいけないなと。今思い描く未来の当事者がどうありたいか、どういう未来で暮らしたいと思っているのか。そこに向き合うのが大事であり、それを学生たちと一緒に取り組めるのは企業にとって一番の価値だと実感しています。

Goodpatch デザインストラテジスト 森村典子
「デザイナーになりたい」思いが強まった──授業の先にある多様な可能性
──ありがとうございました。皆さんは今回の授業を踏まえて、今後に生かしたいこと、やりたいことはありますか?
三宅さん:
今回は「2035年の未来社会」がテーマでしたが、現在やもう少し先の未来に置き換えて思考を巡らせてみたいと思いました。例えば「未来の兆しを探す」ワークでは、レストランで料理を運ぶロボットの存在から「今後は建築もロボット向けに建設されるのでは」という気付きを得ました。身の回りの出来事に少し頭を巡らせれば未来予想ができると知ったので、今後はもっと観察してみようと思います。
吉田さん:
プロダクトをデザインすることで、人々の反応を変えることができ、それがゆくゆくは社会の変化にもつながっていく。そんなデザインの広がりを感じられて、「デザイナーになりたい」という思いがより強くなりました。未来を考えること自体が楽しいのだと気付くこともできましたね。
森下さん:
自分は来年社会人になるのですが、就職先ではすでにAIが活用されています。2035年には想像以上にAIが社会に浸透し、世の中も変わっているのかもしれない。そんな未来の社会に合ったビジネスに関わる必要があるなと、自分の将来と結び付けて考えてしまいました。より良い社会を一人ひとりが作らなければと思ったので、若手社会人として頑張りたいです。
九州大学 羽山さん:
せっかく素晴らしいコンセプトが芽生えたので、今後はパイロットテストのようなイメージで、何かしらのかたちで社会実装に近づけられるといいなと思います。関係者に提案してみる、実際に使ってもらうなどできれば可能性に広がりが出ますし、その先の展開につながる可能性もあるかなと。その意味では、今回の取り組みは良いプロトタイプになったと思います。
Goodpatch 森村:
8回の授業でできることには限りがあって、削った部分もたくさんありました。今回は未来を描くところを重視しましたが、今後は自分たちが考えたプロダクトの社会実装まで試みるのも一つの可能性です。今回のような授業に参画したい企業は多いと思いますし、最終プレゼンをいろいろな企業の人に見てもらうのも一つですよね。企業目線でのフィードバックをもらうとか、一緒にその先を考えて作っていくとか、いろんな可能性があるなと思います。
九州大学 羽山さん:
授業なので、どうしても区切りがついてしまうのが悩みではあるんです。授業をきっかけに企業と学生の間でやり取りが始まるなど、授業で終わらないかたちがあるといいとも思います。芸術工学府には、自由に未来を発想する文化と長い歴史があります。発想に制限を加えずに、未来を考えられる唯一の学部と言ってもいいかもしれません。だからこそ学生の皆さんには、誰かにお伺いを立てたり批判を恐れたりせず、今後もリミットを外して存分に力を発揮してもらえればと思います。