AIを活用した事業やサービスづくりを本格的に検討している企業が増えています。しかし、AIを活用すること自体が目的化してしまい、事業/サービスの価値やユーザー体験の設計に悩む方も多いのではないでしょうか。
グッドパッチは、デザイン業界をリードするデザインファームとして、「AI×デザイン」というアプローチでも積極的な取り組みを行っています。
このたび、AI SaaS領域をはじめ日本のAI業界をリードするPKSHAと、プロダクト開発におけるAIの取り入れ方やAIへの向き合い方について、「AIを無駄にしないサービスの作り方」と題してウェビナーを開催しました。この記事では、ウェビナーの様子をダイジェスト形式でお届けします!
スピーカー
藤原 寛史(株式会社PKSHA Technology:経営企画室 AI SaaS事業企画グループ リーダー)
花塚 匠(株式会社PKSHA Workplace:プロダクトマネージャー・UXデザイナー)
石田 健二(株式会社グッドパッチ:UXデザイナー)
モデレーター
栗田 透(株式会社グッドパッチ:UXデザイナー)
目次
AIと人が持つそれぞれの良さを使い分ける
ウェビナーの冒頭では、AIと人、それぞれの介在する良さと使い分けの重要性について、具体例を挙げつつ考えていきました。
「正確性が求められる業務は人よりAIが得意であり、逆にキャリアカウンセラーのような人の感情に合わせた対応は人が得意です。だからこそ、どちらか一方が全て役割を担うのではなく、人であるべき、AIであるべき意味を整理して、手段を使い分けることが大切です」(石田)
しかし、実際に「AIや人にできること、向いていることが何か」を考えるのは難しく、ご相談いただく現状があります。そこで、石田がそのアプローチ方法について3つのステップを提案しました。
「まずは『課題を並べて考えてみること』です。ユーザーの課題や自社の課題を並べ、どれがAIで解決できるのかを考える材料を洗い出します。次は『やるべきでないこと』を探します。AIと人の特性を理解して、それぞれがやるべきではないことを整理するのです。最後は『AIと人のハイブリッドを考えること』です。1つの課題に対して全部をAIが解決するのではなく、人とも連携して役割分担しながらバランスを図っていきます」
「それぞれのシーンで連携を考えることが大事です。24時間の対応はAIがやって、個人に寄り添うことは人が行う。アイディエーションのたたきはAIがやって、見やすさの介在を人が担う。共存して一緒にモノづくりをするような役割分担が重要だと思っています」と続けました。
AIに人の判断を組み込むことが「良いUX」を生み出す
続いて、AIが介在するサービスのUXを設計する上で重要となる視点について、PKSHAの事例を交えながら考えていきました。
「人との接点を作るUX部分がより柔軟になっていくと思います。AI SaaSが進化していく中で、どれくらいUXをAIに委ねるかという顧客との接点を設計していく発想に変化していきます」(藤原氏)
AI SaaSの特徴としては、AI側の改善プロセスが介在することで、ユーザーからすると、AIが賢くなっているという体験を味わい、サービスの成長を共に歩めるところが新しい部分だそう。
ポイントとしては、AIの改善サイクルの中に、人によるフィードバックや判断を挟んでいくこと。ユーザーの利用を重ねてデータを蓄積し、それを人がフィードバックすることで、AIが学習する要素出しを行います。
そして、AIが自分勝手に学習していく形ではなく、人による判断を加えて学習方向性を示した後に学習させることで、使えば使うほど良くなる体験を生む構造を作ることができると花塚さんは言います。
「リリース優先と精度なのかの論点にはなりますが、AI SaaSでは、精度が次第に良くなることを理解してもらった上で、まずは、ユーザーに使ってみてもらうことが大切です。また、データが蓄積される中でAIが何を学習するべきかは人が判断するべきだと考えているので、そこも含めてUXの設計に組み込むことが求められます」(花塚氏)
AIを無駄にしないためには、AIの成長と全体の体験設計が大切
ウェビナーの最後に、AIを無駄にしないサービスを作るポイントを探るべく、パネルディスカッションを行い議論を深めていきました。
AIサービスを開発する場合、人を介在させたサービス全体の体験を設計することで、AIの回答精度が未熟であったとしても品質を担保できるようになります。
「新人教育に近いと思います。新人はベテランみたいに答えることが難しいため、最初の期待値は低いですが、次第に独り立ちします。同じようにAIも最初は人とハイブリッドで動き、だんだんと人が抜けていく形が理想だと思います」(石田)
リリース初期の精度が低くても、リリース後にAIを成長させることを優先する考え方は、プロダクト設計における時間軸の概念が変わる、パラダイムシフトとなりそうです。
また、「AIを無駄にしないためには、一つひとつのプロセス最適化ではなく、全体のプロセスの中でユーザー抱いてほしい感情が何かを考え、そのための最適なAIや体験を設計することが重要だ」と藤原さんは言います。具体例として、相談窓口対応を対話型Botで支援するプロジェクトを挙げてくれました。
「まず、人が行っている相談業務の体験を『相談者の話を傾聴する』『内容を整理、確認する』『ヒアリングに基づいて、解決策を提案する』といったプロセスに分解し、それぞれのプロセスで求められる体験の解像度を高めました。一口にヒアリングといっても、オープンクエスチョンで自由に回答してもらうのか、選択肢を示して一つを選んでもらうのかによって、回答の自由度や答えやすさが変わってきます。
例えば、最初の質問でいきなりオープンクエスチョンをぶつけると、どこから答えて良いのか戸惑ってしまう、あるいは期待と異なる視点からの回答にも対応しなければなってしまいます。回答の自由度を担保しつつ、適切な提案に必要な情報を引き出す必要があり、どのような投げかけがあると答えやすくなるかを重視してUX設計を進めたことで、結果として『ちゃんとこちらの話すことに耳を傾けた上で』『適切な提案をしてくれた』というユーザー体験に繋げることができました」(藤原氏)
このプロジェクトでは、このユーザー体験を生み出すためにあえてAIの精度を高めすぎない工夫をされたそうです。AIの回答精度が良くなる性質をあえて逆手にとったサービスの体験設計を考えることも1つのコツかもしれません。
AIサービス開発の現場に迫るリアルイベントを開催
今回のウェビナーでは、AIと人の共生方法やAIを活用したサービス作りに重要なポイントを議論し、AIのパフォーマンスが無駄にならないサービスを考察しました。そして、2024年1月17日に第2回のイベントを開催します。
次回はデザインや開発など制作の現場により近い領域をテーマに、第一線で活躍するデザイナー・エンジニア・プランナーによるAIのプロダクト開発への向き合い方やAIのものづくりの思考法について考えていきます。
現場における他職種との連携の仕方や、AIサービスのプロジェクトの進め方など、第1回にご参加いただいていない方もお楽しみいただける内容になっています。課題を抱えている方も、AIサービスに初めて挑戦する方も、ぜひご参加ください!お申し込みは以下のバナーからどうぞ。