皆さんは普段、チームでアイデアを発散する際にどのような手法を取り入れていますか?
アイデア出しで有名な手法に「ブレインストーミング」がありますが、より短時間で多くのアイデア創出ができる手法を探している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はそんなアイデアの創出の1つである「クレイジー8」についてご紹介します!

クレイジー8とは

クレイジー8(Crazy8’s)とは、デザインスプリントやデザインプロセスにおいて、ユーザーニーズや課題を抽出・定義したあとのアイディエーションフェーズで取り入れられる手法です。ユーザーの課題や欲求を解決した先の理想の状態と、それを実現するアイデアを創出するためにチームメンバーで実施します

Goodpatchのデザインプロセス。赤枠内がアイディエーションフェーズです

なお、デザインスプリントでのクレイジー8の位置づけはこちらの記事にてご紹介しております。

クレイジー8では、チームメンバーが30~60秒ごとに合計8つの異なるアイデアを考え、それぞれを紙に書き出します。短時間で沢山のアイデアを創出・発散させることを目的としており、検証を含めた議論は次のフェーズで行うので、美しいスケッチや辻褄の合う完璧なアイデアを出す必要はありません。そのため、このワークから生み出されたアイデアは全て平等に扱われます。

時に、チームメンバー全員がアイデアを出し尽くしてどうしようもなくなり「クレイジー」なアイデアが生まれ、誰も予想し得なかったイノベーションへと発展する可能性があります。そのため、このワークはクレイジー8(または8アップ)と呼ばれています。

方法

クレイジー8の方法は至って簡単です。

  1. 白紙とペンを用意します
  2. 白紙を長い辺を2回、短い辺を1回(8つ折り)に折りましょう
  3. タイマーをセットしましょう。スマホのタイマーアプリで作業時間をラップ式でセットすると便利です。中でもBit Timerというアプリはシンプルかつ直感的に操作できるのでおすすめです。
  4. 8つの領域に1つあたり制限時間30~60秒で1つアイデアをイラストに描き表しましょう
  5. 自分の生み出した8つのアイデアの中からベスト2~3個選び、短く的確にチームメンバーに説明しましょう

ただし、これはあくまでも1つの方法です。このワークで生み出されたアイデアを捨てることなく、

  • 白紙をポストイットに変更
  • 自分ベストは選抜せず、生み出した全てのアイデアについて説明・共有する

ということを行い、KJ法などを用いてグルーピングし整理する場合もあります。整理した後は投票などを行い、ベストなアイデアを決定しましょう。

また、チームメンバーのアイデアを見て新たなアイデアを思いつく可能性があります。そのため1.~5.をもう一度繰り返す場合もあります。

ここで、絵心がないので苦手…と感じる方もいらっしゃると思います。そもそも、このワークで”アイデアをイラストに書き表す”のは、イラストを基に自身のアイデアを言語化する必要性を設け、アイデアの整理を行わせるためです。そのため、絵に自信の無い参加者が多い場合は、イラストではなく短い言葉に、より具体的なアイデアを思いついたりプロトタイプが得意な方は画面イメージなどを描いてもかまいません。

メリット

次に、クレイジー8を実施することによるメリットをご紹介します。

沢山のアイデアの種が出る

チームメンバー全員で発散にフォーカスできるので、クレイジー8ではより多くのアイデアの種が生まれます。職種など視点が異なるメンバーが揃っているチームの場合、より様々な角度からのアイデアが出やすいので、種をもとにより素晴らしいアイデアが生まれる可能性がぐんと上がります。

短時間で行える

1アイデア30~60秒という制限時間を設けるため、場がだらけてしまったり、弁舌に優れた人だけで場を押し進めてしまうことが無くなります。そのため、限られた時間でも確実にアイデア創出ができます。制限時間内に必ず8つアイデアを出さなければならない点がブレインストーミングとの違いと言えるでしょう。

意思決定を取りやすくなる

アイデアの種を起点としたチームメンバーそれぞれの解釈(アイデアの良いところ)を共有できるので、その後のプロジェクトにおけるチームメンバーの意思(課題に対するチームのソリューション)の合意が取りやすくなります。

実施にあたっての注意点

共通認識を持って実施する

クレイジー8は解決すべき課題に対するアイデアを創出することが目的です。まずは「どんな課題を解決するのか」という部分のインプットがチーム全体にされている状態で行うことが前提となります。

まずは量を出すことを意識する

クレイジー8ではチームで時間制限を設けてアイデアを出しあうため、いきなり1つのアイデアを熟考するのではなく、まずは複数アイデアを出すことを心がけてみてください。

ワーク中は議論しない

クレイジー8は短時間でアイデアを発散することが重要で、議論はメインではありません。発散の段階から実現可能性などを議論し始めると、せっかくチームメンバーが集まっていても似たようなアイデアしか出てこない可能性もあります。アイデアに対する議論は、収束の段階でやるように切り分けましょう。

さらにインプットしたい方におすすめの本・サイト

ここまでクレイジー8について解説してきましたが、さらに詳しく知りたい方、実際にデザインスプリントで実践してみたい方には以下の本・サイトがおすすめです!

デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド

デザインスプリント ―プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド

本記事で紹介したクレイジー8の他にも、プロダクト開発のプロセスにおけるさまざまな手法について幅広く紹介されています。まずはどんな手法があるのか知りたい方はこちらの本がおすすめです。

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

インプットだけではなく、より実践的なナレッジを求めている方にはこちらの本がおすすめです。手法だけではなく、スプリントを回す上で必要なマインドとスキルについてまとめられています。

Design Sprints – Google

Design Sprints

デザインスプリントの本家大元の解説サイトです。デザインスプリントを運営する側の説明スライドも用意されており、ダウンロードも可能です。

まとめ

今回は短時間でアイデアの種を沢山生み出すクレイジー8についてご紹介しました。このワークは、時間などの制約がある中でより多くのアイデアを創出する方法です。このワークで課題に対するアイデアを発散させます。

また、クレイジー8はあくまでもアイデア創出方法の一つです。例えると、病気(=課題)に対する処方箋(=アイデア出し方法)です。用途・場面を見極めて柔軟にお使いください。

Goodpatchがデザインパートナーとして新規事業立ち上げを支援する際のデザインプロセスでは、アイディエーションの一環としてクレイジー8を取り入れることがあります。上記の記事では、足の3Dデータを元にぴったりな靴を見つけることができるFlicfitさんとご一緒したプロジェクトについてご紹介しています。新規事業の立ち上げ、既存事業のリニューアルなどでお困りの企業様がいらっしゃいましたら、ぜひ以下よりご連絡をお待ちしております。