テクノロジーやAIによって近い将来、人類の75%の職が奪われようとしている昨今、改めて我々の創造性(クリエイティビティ)の重大性が問われています。また、ビジネスでも如何に他社よりも優れたアイデアで競合優位性を測るかは、日々課題として浮上しています。

しかし、アイデアは1人で考え込んでも、迷走してしまうことがほとんどです。なぜなら、あなたは会社における1社員でしかなく、ほとんどの場合、1つの視点からしか物事を見ることができないからです。

さまざまな視点からクリエイティブなアイデアを集めるために、多くのビジネスで用いられている手法が「ブレインストーミング(通称:ブレスト)」です。この記事では、有効で失敗しないブレインストーミングのやり方を、自社のノウハウに基づきご紹介します。効果的なブレインストーミングで、創造性のあるアイデアを発散していきましょう。

ブレインストーミングとは?

ブレインストーミングとは、集団で集まり、互いにアイデアを出し合い、相互のアイデアを組み合わせることによって新しいアイデアを構築する技法のことです。

先に述べたように、1人で思い悩んでいては到底思いつかないような、斬新なアイデアが連鎖反応によって起こる可能性があり、この点が最大のメリットであるとされています。しかしながら、複数人の力を借りて実施するブレインストーミングでは、もちろん会議同様、人件費が発生します。ブレインストーミングは楽しい・かっこいいなどという考えで、「やってみて終わり」というのであれば、それはただ「人件費を無駄にした」ことになります。

つまり、発散をすることが目的ではなく、その後如何にアイデアを組み合わせ、効果的な戦略が生み出せたかが、ブレインストーミングの意義に直結します。

ブレインストーミングの目的

まずは、目的を明確にしましょう。先に述べたように、ブレインストーミング自体が目的になってはいけません。ブレインストーミング後、どのような課題をどのように解決したいのか、明確にしましょう。

例えば、自社サービスの売上が先月から横這いになっているので、新しい企画でユーザーを増やしたいという目的があったとします。その場合、ある程度ユーザーをセグメント分けして、狙いたいユーザーが新規なのか既存なのか、どのような性質をもつ人なのかをあらかじめ定めておきましょう。また、新しい企画によって、どれだけユーザー数を伸ばし、その結果サービスの売上がどのような曲線を描くのかも事前に決めておきましょう。

明確な目的を持った上で、ブレインストーミングに参加してほしいメンバーを集めます。多くの企業では、チームメンバーや代表を集めてブレインストーミングを実施します。しかし、目的を解決するためのアイデアを練ることがブレインストーミングの本来の目的です。チームメンバーだけで解決できないような問題は、外部の人を呼んだブレインストーミングをしても良いでしょう。例えば、「サービスの既存ユーザーのエンゲージメントを如何に高めるか」という課題に対する施策を打ちたいのであれば、プロジェクトメンバーだけでなく、マーケティングチームのメンバーに参加してもらっても良いかもしれません。大切なのは、1人では生み出せなかったアイデアを生むことなのです。

ブレインストーミングの進め方

ブレスト

さあ、目的が決まり、メンバーが出揃いましたか?日時を決め、メンバーに告知しましょう。ここで注意したいのは、会議の時間を長くしすぎないことです。たくさんブレインストーミングをしたい気持ちがあったとしても、メンバーの脳が疲れ集中力を失ってしまっては却って生産性の悪い会議となってしまいます。長くて1時間程度と見積もっておくのが良いでしょう。

また、広めの会議室をとり、当日は数種類の付箋とペン、できれば模造紙を用意しましょう。

集まったメンバーにまずは目的とゴール、わざわざ集まってもらった理由を共有します。そうすることで、同じ認識を持ってブレインストーミングを実施することができます。例えば、先の例でいうと、まずは自社サービスの現状と課題を共有し、「今回課題を解決するためにどのようなセグメントに対して施策を打ちたいから、詳しそうなメンバーを集めてみた。サービスの現状に対する不満と解決策についてブレインストーミングをした後、グルーピングすることで効果的な施策を打ち、結果的に売り上げを何パーセント伸ばしたいから力をかしてほしい」といった具合に共有しておきましょう。

同じ会議で複数回、時間を区切ってブレインストーミングをすることはよくあります。その際に留意したいポイントをいくつかあげておきます。

時間を必ず測る

時間を測るのはもちろん会議を主催したあなたです。時間はブレインストーミングをするテーマによって柔軟に決めていきましょう。長すぎると却って時間を無駄にしてしまいますし、短すぎても潜在的アイデアを引き出せずに終わってしまいます。通常は1テーマに対して3〜5分とし、メンバーに対して「まだ時間が必要そうですか?」などの声がけをしながら柔軟に対応します。時間を決めてアイデアを出すことで、生産性のよいブレインストーミングを実施できます。

模造紙にアイデアを貼る

用意しておいた模造紙にアイデアを順に貼っていきましょう。ホワイトボードや壁を使っても良いですが、スペースがなくなってしまう懸念があります。アイデアをそのまま付箋で残しておきながら、次のテーマに対してブレインストーミングをしたい場合は、模造紙を用意しておくと良いでしょう。

全てのアイデアを尊重する

タイムリミットがきたら順にアイデアを貼っていきますが、ここで留意したいのは相手のアイデアを否定しないということ。特に、さまざまなレイヤーの人が集まった会議においては、立場の低い人ほど自分のアイデアに自信が持てないものです。しかし、若手のアイデアは思わぬところで効果を発揮します。メンバーの誰かが自分のアイデアに対して不安を抱かないよう、相手のアイデアを否定しないということはあらかじめルール化しておきましょう。

発散する際には、斬新なアイデアを出すことにこだわらずに、思いつくがままに付箋を埋めていきましょう。斬新なアイデアは、既存の概念を組み合わせることによって生まれます。当たり前のことだとしても、後からまとめるときに役立つ可能性があるので、あまり深く考えずに書き出してみてください。

ブレインストーミングのまとめ方

ブレインストーミングをテーマ別に行なった後、付箋が貼られた模造紙を見て、何をしたら良いでしょうか?もちろんアイデアをまとめる時間まで会議内で取れたら良いですが、ほとんどの場合、会議はアイデアを発散をして終わります。

しかし、発散されたアイデアをグルーピングして、施策まで落としてはじめてブレインストーミングの効果が発揮されます。この時、有効的な手法として使えるのが、以前ユーザーインタビューの質問項目設計方法としてご紹介したKJ法です。

細かい施策を練ることができたら、会議に参加してくれたメンバーに共有して、感謝を伝えましょう。

アイデアを出す方法はブレインストーミングが一番良いとは限らない

集団で行えば、個人の発想では生まれないアイデアが生まれます。しかし、必ずしも集団で行うことが効果的なアイデア創出につながるとは限らないのです。

Goodpatchのデザインスプリントのアイディエーションでは、ブレインストーミングではなく、Crazy8sやStoryBoardを使った個人思考でのアイディエーションを実施します。このように、プロジェクトによって最適なアイデアだしの方法を見つけて、効率的にプロジェクトを進めましょう。

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