「UXデザインの課題って、何から始めればいいんだろう?」
「デザインを専門に学んでいなくても、取り組めるのかな?」
グッドパッチの新卒採用では、UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインのプロセスを体験する「個人ワーク」を設けています。初めて挑戦する方にとっては、少し身構えてしまう課題かもしれません。
このワークで大切にしているのは、ユーザーの話に耳を傾け、新しい視点を見つけながら、サービスをより良くする方法を考えていくことです。
この記事では、選考を担当するサービスデザイナー(UXデザイナー)と、実際にワークを経験して入社したメンバーの話をもとに、取り組み方のヒントを紹介します。
※本記事は、動画「グッドパッチ新卒採用『個人ワーク』のポイントを解説(UXデザイン編)」の内容をもとに構成しています。なお、動画内で触れられていない補足情報も追加して解説しています。
目次
なぜ、選考で「個人ワーク」に取り組むのか?
動画で紹介している課題は、「身の周りにあるWebサービスを一つ取り上げ、そのサービスの課題と改善案をまとめて提案する」というものです。
その背景には、グッドパッチが日々の仕事で大切にしている、UXデザインの考え方があります。サービスの改善では、ユーザーの行動や、その裏にある価値観を丁寧に掘り下げます。話を聞いたり、実際に使う様子を見たりすることで、自分一人では気づけなかった課題や、改善のヒントが見えてくるからです。
個人ワークでも、そうしたプロセスを通して、ユーザーの話のどこに着目するのか、そこから何を考えるのかを知りたいと考えています。
同時に、皆さん自身がUXデザインに触れ、「こんなふうに考えるのは面白い」「もっとやってみたい」と感じられるかを確かめる機会でもあります。実際の仕事の一端を、ぜひ体験してみてください。
🎬グッドパッチの「デザイン」とは? あなたのやりたいことはデザインかもしれない
サービス選びは、日常の「ここが惜しい」から
最初に悩みやすいのが、題材にするサービス選びです。そんなときは、ふだんの生活を振り返ってみましょう。よく使っているサービスの中に、「ここが少し変わったら、もっと良くなるのにな」と感じるものはありませんか?
選ぶときのヒントは、自分が愛着を持って向き合えるかどうかです。
デザインのプロセスには、調べてもすぐに答えが見つからなかったり、一度考えた案を見直したりする場面があります。そんなとき、「このサービスをもっと良くしたい」という気持ちが、もう一歩考え続ける力になります。
ふだんから使っている理由や、好きだからこそ気になること。その実感を、課題の入り口にしてみてください。
インタビューでは、自分の考えをいったん脇に置こう
愛着のあるサービスほど、自分の中に「こう改善したい」という案があるかもしれません。ただ、その思いが強いと、インタビューをしても、最初に考えた案に都合の良い話ばかり拾ってしまうことがあります。
ユーザーの話を聞くときは、自分の考えをいったん脇に置いてみましょう。「自分も同じように感じていた」という共感と、「そんな見方もあるんだ」という発見。その両方を受け止めることが、改善案を考える手がかりになります。
また、感想や要望だけでなく、実際に使ったときの状況や行動にも目を向けると、話の見え方が変わることがあります。予想と違う答えや、一見矛盾する言葉にも、その人を理解する手がかりがあるかもしれません。
インタビューの前に読んでみよう!
「何を聞けばいい?」「どうすれば本音を話してもらえる?」と迷ったら、UXリサーチの実施前に確認する21の心得を参考にしてみてください。場づくりから話の深掘りまで、実施前に確認したいポイントがまとまっています。
各手法の「目的」から学んでみよう
動画に登場する新卒メンバーは、大学で哲学を学び、もともとはコンサルティング業界を志望していました。ペルソナやカスタマージャーニーといった言葉も、選考を受けてから初めて知ったそうです。取り組みの出発点は、「そもそも、この手法は何のために使うんだろう?」と調べることでした。
ペルソナは、どんなユーザーに向けて考えるのかを具体的にするためのもの。カスタマージャーニーは、ユーザーの一連の体験を整理するためのものです。
用語やフレームワークに出会ったら、使う目的にも目を向けてみてください。何を理解するための手法なのかが分かると、インタビューで聞きたいことや、整理すべき情報も考えやすくなります。
こちらのメンバーも、グッドパッチのブログなどを読み、手を動かしながら少しずつ理解を深めていきました。
ペルソナの作り方を、具体例で知りたい方へ
「ペルソナとは?よりリアルなユーザー像を作り上げる具体的な作成方法」の記事では、インタビューで得た情報を整理し、ユーザーの悩みや目的を具体的に捉える方法を紹介しています。シートの例もあるので、「話を聞いた後、どうまとめればいい?」と迷ったときにも参考にしてみてください。

インタビューの対象者は、少し範囲を広げて探してみる
「自分は使っているけれど、周りにユーザーがいない」という悩みもあると思います。
新卒メンバーが取り組んだのは、本の要約サービスの改善でした。友人などに直接声をかけるほか、Googleフォームで利用経験や関心を尋ね、Instagramで回答を募ったそうです。その結果、ふだんはあまり接点のない人にも協力してもらえました。
身近な友人だけでは見つからないときは、少し範囲を広げてみる。実際に使っている人や、使うのをやめた人との接点を探す工夫も、参考になりそうです。

ユーザーにとっての良さと、ビジネスの成長をつなげて考える
ワークを進めるうえで、もう一つ意識してほしいのが、サービスを提供する側の視点です。グッドパッチが目指しているのは、ユーザーに良い体験を届けることと、サービスがビジネスとして成長することの両立です。
ユーザーにとって、どんな価値があるのか。その価値は、サービスを使い続けたいと思う理由にどうつながるのか。改善案を考えるときは、そこまで視野を広げてみてください。
課題文には、グッドパッチのデザイナーがふだんの仕事で意識しているポイントも記載されています。まずはそこを丁寧に読み、考える際の手がかりにしてみましょう。
具体的なイメージをつかみたいときは、グッドパッチのブログで紹介しているプロジェクト事例も参考になります。ユーザーの課題とビジネスの目標を、どのようにつないでいるのかに注目すると、理解が深まるはずです。
サービスデザインって何?という方へ
「サービスデザインの講義をやるときに、講師として考えたこと」をご参考ください。大切にすべき3つの観点もおまとめしています。

陥りやすい二つのケースと、乗り越えるヒント
動画では、ワークでつまずきやすいケースも紹介しています。
1.コンセプトはできたけれど、具体的な形にできない
リサーチや分析にじっくり取り組み、「こんな体験を届けたい」というコンセプトまで考えられた。でも、それをどんな画面や機能で実現すればいいか分からない。そんなケースです。
このときに役立つのが、さまざまなアプリやWebサイトに触れて、表現の引き出しを増やすことです。同じ分野のサービスだけに絞る必要はありません。例えば、「何かを探す」という行動は、本のサービスにも、洋服のサービスにもあります。分野が違っても、共通する行動に目を向けると、参考になる画面の構造や仕組みが見つかります。
実現したい体験を具体的な形にするために、視野を広げてみましょう。
2.一つの画面だけに、視点が集中してしまう

画面の改善は、具体的に考えやすいテーマです。ただ、ユーザーの体験は、その画面を開く前から始まっています。
「どんな情報が欲しいのか」
「どんな生活を送りたいのか」
「なぜ、そのサービスが必要になったのか」
こうした背景まで掘り下げると、改善すべきことの見え方も変わってきます。
本の要約サービスを題材として取り組んだメンバーも、「短時間で本の内容を読む」ことから、さらに先にある「知識を身につけ、日常で活用する」ことへと視点を広げました。周囲に話を聞く中では、読んでも生活で役立っている実感がなく、利用をやめたという声にも出会ったそうです。
そこから考えたのが、学んだ内容をアウトプットする機会を、サービスの中につくるという方向性でした。ユーザーが実現したいことを捉え、そのために必要な体験全体と具体的な画面・機能の両方を行き来することが大切です。
ユーザーの体験全体を整理してみよう!
画面の前後も含めて体験を考えたいときは、「カスタマージャーニーマップが必要な理由とは?目的と作り方」の記事をご参考ください。ユーザーがいつ、何をして、どう感じているのかを時系列で整理すると、画面だけを見ていたときには気づかなかった課題が見えてきます。
AIとの壁打ちを、ユーザーへの問いにつなげる
ここからは、生成AIを活用する際にも意識したい、取り組み方のヒントを紹介します。
AIは、質問の案を考えたり、自分とは違う解釈を探したりする相手にもなります。ただ、筋の通った説明が得られたときほど、「実際のユーザーもそうなのだろうか」と立ち止まってみましょう。
例えば、AIから「操作が複雑だから使われない」という見方が出てきたら、それを結論にする前に、実際に使った人の体験を聞いてみます。使わなかった理由は、操作以外にあるかもしれません。
AIが想像した利用者の回答は、質問を考える材料にはなっても、実際に話を聞いた結果とは分けて扱いましょう。
調査をまとめる際も、要約だけで分かったつもりにならず、気になった発言や場面を元の記録で確かめてみてください。「別の理由でも説明できないか」とAIに問い返すこともできます。そのうえで、どの見方が実際の発言や行動に合うのかを考えると、さらに聞きたいことが見えてきます。
資料には、結論にたどり着いた道筋も残そう
資料をまとめるときは、「ユーザーのどの発言や行動から、この課題や提案を考えたのか」と問い直すことで、自分の判断の根拠を確かめられます。自分でも説明しづらいところがあれば、解釈を見直したり、追加で確かめたりする手がかりになります。
調査で得た事実と、そこから自分が考えたことが読み手に伝わると、提案の意図も理解してもらいやすくなります。特定のフレームワークを使わなくても、メモや簡単な図で整理できます。
AIで文章やスライドを作った場合も、実際に確かめたこと以上に言い切っていないか、元の記録に照らして確認することが大切です。
選考の対話も、新しい視点を得る機会に
ワークに取り組んでいると、なかなか発見が生まれず、苦しく感じる時間もあるかもしれません。新卒メンバーも、考えを突き詰めるまでは難しさを感じたと振り返っています。一方で、発見の種が見つかると、「これとこれをつなげたらどうだろう」「こんな形も面白そう」と、考えが広がっていく楽しさがあったそうです。
選考中のフィードバックからも、新しい視点を得て、改善を重ねていきました。冒頭で紹介した動画の最後に伝えているのは、選考を通じて、一緒に答えを考えていこうというメッセージです。
まずは、身近なサービスへの小さな違和感や、「もっと良くしたい」という気持ちから。ユーザーの話を聞き、自分になかった見方に出会うことを楽しみながら、個人ワークに取り組んでみてください。私たちが実践するデザインのプロセスを、少しでも面白いと感じていただけたら嬉しいです。
