この記事はGoodpatch Design Advent Calendar 2023の13日目のコンテンツです。他の記事もぜひ読んでみてください!

先日、グッドパッチでは「サービスデザインをどう捉えていて、どんな形で実践してるの?」という話を講義として外部向けに話す機会があったので、過去の記事で書いたことを思い出しつつ、改めて今の自分なりにサービスデザインのことを考え直してみました。

事前に講義の参加者からいただいていた質問は、以下のような内容でした。

  • サービスデザインって何?
  • UXデザインとサービスデザインの違いは?
  • サービスデザインってどのように実践するの?

今回の記事では、上記の質問に対して自分がどのように考えたのかをまとめます。実際はワークショップ形式でワークを交えつつ事例などを深く話しているのですが、すべてを記述すると(とてもとても)長くなってしまうので、ライトな内容にしています。詳しい内容が気になった方は、SNSなどでぜひお声かけください!

Q1. サービスデザインって何?

私は2年半ほど前にも、Goodpatch Blogで「グッドパッチが考えるサービスデザイン」に関する記事を出しています。

その内容を端的に説明すると、サービスのことをプロダクト単体だけではなく、関連するすべての体験の“集合”のこと、と捉えたときに、サービスデザインとは、サービス全体をより良い状態にし続けることではないか、というお話です。

過去の記事では、サービスについてレストランを例に話をしました。事前にこちらの記事を読んでいただくと、この記事も分かりやすくなるかと思います!

また、上記の記事では、サービスデザインをする上で押さえるべき観点として、ユーザー/ビジネス/組織の3観点を掲げています。今回はそこを踏襲しつつ、それらの観点の解像度をもう一段高めてみることにしました。

以下のベン図で書いたそれぞれの領域の重なりにおいて、自分がサービスデザインの視点で大事にしていることはなんだろう、と考え、3つの言葉にたどり着きました。中心にサービスデザインを据えた時に、ユーザーとビジネス、ユーザーと組織、組織とビジネスの重なりについて考えてみました。

  • ユーザーとビジネスの「公平性」
  • ユーザーと組織の「一貫性」
  • ビジネスと組織の「持続性」

1つ目はユーザーとビジネスの「公平性」の視点です。

持続的なビジネスにおいてサービスの価値を感じる人を増やし続けることは非常に重要です。ユーザーがサービスを体験するさまざまな状況を想像したり、マイノリティの方々のユースケースを加味したサービス設計になっているか?など、誰もが価値を享受できるのかを考えることで母数を増やすことに繋げられると考えます。また、持続性の話にもつながりますが、フェアな事業パートナーとの取引なども、サービスを持続させるためには非常に重要です。

フェーズによって変わるものの、多くの人が利用するサービスにおいてはターゲットを過度に絞りすぎるのではなく、ステークホルダー全体に目を向けたサービスを目指すことでビジネスの成長にも寄与できると考えています。

 

2つ目はユーザーと組織の「一貫性」という視点です。

マーケティングなど、認知に関わるタッチポイントから、利用後のサポート体制までサービス全体で一貫したコミュニケーションを行うことが、ユーザーからの信頼に繋がります。とはいえ店舗での接客や電話対応など、人が介する状況では、柔軟な意思決定も必要になるので、ユーザーへの伝わり方を一貫させるためには、サービスとしての振る舞いや設計思想を組織全体に浸透させ続けることが重要です。

また、設計・開発の組織はサービスの価値提供の土台を担っているからこそ、組織の体験を向上させることがサービスの品質に直結します。例えば、柔軟性・拡張性のあるデザインシステムを構築することで、高い品質を保ったままスピードを上げることに寄与できます。企画と開発のプロセスをいかに効率よく回せるのかという視点も、サービスデザインのスコープの1つに入ってくると自分は考えています。

 

最後の3つ目は、ビジネスと組織の「持続性」の視点です。

中世から近世にかけての日本で言われていた言葉で「三方よし」というものがありますが、売り手よし、買い手よし、世間よしというWin-Win-Winの実現は、非常に本質を捉えており、まさに持続的に価値を提供し続けられるビジネスモデルを象徴する言葉だと思っています。そのため、ユーザー体験だけでなく従業員の体験も考慮することがサービスデザインにとっては重要です。

短期での成果ばかりを追うあまり、環境への負荷が高くなってしまうなど、社会的な視点でサービスを捉えたときに長期で損失を生んでいないか、などは気をつけたいポイントです。それらを意識して実行することで、持続的な価値提供が可能なビジネスモデルを設計することができるのです。

Q2. UXデザインとサービスデザインの違いは?

「UXデザイン」も「サービスデザイン」も、個々の言葉としては定義されていますが、差分や違いについては出典や文脈によってさまざまです。この講義の中では、UXデザインとサービスデザインの範囲をあえて明確にするとしたら?という問いを立てた上で、自身の経験を踏まえてこのように区分けしてみました。

サービスデザインの観点に「ユーザー」が内包されているため、ユーザーの体験をデザインの対象とするUXデザインは、サービスデザインに内包されると考えています。

これは目的の違いでもあり、UXデザインはユーザー体験の領域に対する「深さ」を追求し、サービスデザインはユーザーも含めて、裏側の組織のことやビジネスの領域も含めた「広さ」を追求するところが大きな違いではないかと考えています。

ただし、「UXデザイナー=UXデザインをする人」というわけではなく、UXデザイナーがサービスデザインをすることは非常に多いです。ユーザーにとことん向き合う職能だからこそ、ユーザーの要求をビジネスや組織にどのように活用すべきか?を考え、実行することが多いためです。グッドパッチのUXデザイナーも、まさにUXデザインの領域を超えてクライアントの組織やビジネスの課題に向き合っている人が多い印象です。

Q3. サービスデザインってどのように実践するの?

今回の講義では「デザインプロセスに用いる手法を、サービスデザインの視点で活用した事例」というテーマを意識して実例を紹介するパートを設計しました。インタビューやユーザーテストの手法をサービスデザインの視点でどのように実施するのか?などを、冒頭で紹介したユーザー/ビジネス/組織という3つの観点で話していき、ただ手法をやるだけではなく活用イメージが湧くように伝えました。

12個の手法と事例について紹介したのですが、その中の1つであるユーザーと組織の重なりに対してアプローチした事例を抜粋して紹介します。

これはユーザビリティテストを実施する前に顧客要望を深く理解しているCSの方にユーザビリティテストを行った事例です。

顧客課題が集まりやすいCSの方にテストを行うことで「この機能があれば、あのお客様が言っていた課題が解決しそう!」や「この画面だと、今の画面に慣れている人だと使いづらくなってしまうかも?」などN=1の顧客の声を理解しているからこその視点でのフィードバックをもらうことができました。

また、テスト実施後に、CSの方から「プロダクトが改善されていく未来を想像できたので、今後は自信を持って顧客対応ができそうです」と言っていただき、間接的に担当チームのモチベーション向上にも寄与できました。

また、サービスデザインの実践については、こちらの記事で詳しく触れていますので、気になる方はぜひご覧ください!

おわりに

今回は、サービスデザインに関する講義を行った際に参加者の皆さんからいただいた質問に対して、自分が考えて講義を通じて伝えたことをまとめました!講義という形で情報を整理していると、解像度がまだまだ荒い部分も見つかったので、自身の成長に合わせて、今後もサービスデザインの解釈をブラッシュアップし続けたいと思っています。

講義を終えたあとには、参加者から以下のような声をいただくことができました。

  • UXデザインとの違いなど、事前に質問していた内容に答えてもらえてよかった
  • グッドパッチの事例を深く知ることができてよかった
  • 具体的なエピソードも踏まえて事例も知ることができたので、実務に活用できそうだと思った

繰り返しになってしまいますが、こちらの内容は講義で話したことのほんの一部に過ぎません。もっと詳しく知りたい方は、いつでもお問い合わせください。

基本的なデザインプロセスの流れを知ることができるワークショップはもちろんのこと、 UXデザインやサービスデザインについて弊社内の事例を紹介しつつ、深く知ることができる講義やデザイン活動を進めるために必要なアイデア創出、組織や人材の変化・成長を促すワークプログラムなども展開しています。

一部のメニューをご紹介していますので、ご興味のある内容があればぜひご連絡ください!

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