Goodpatchでは毎年、新卒社員向けにUIデザイン研修を実施し、UIデザインに関する基礎的な講義や課題制作といった研修を丁寧に時間をかけて行っています。一方、中途社員向けのUIデザイン研修は整備が足りておらず、運営者もあいまいで、うまく仕組み化できていない状況がありました。

今回、そんな課題に対して、UIデザイナー2人が有志で取り組んだ中途向けUIデザイン研修の仕組み作りをご紹介できればと思います!

研修の目的とゴール

Goodpatchに入社する中途UIデザイナーのバックグラウンドはさまざまです。

今回、研修整備に取り組んだデザイナー2名(執筆者)も、前職は制作会社のWebデザイナーでした。このように、中途社員はスキルセットもバラバラであるため、グッドパッチでの仕事に必要なスキルや知識をサポートする仕組みづくりは社内に必要だと考えました。

新卒・中途を含むすべてのUIデザイナーが、共通のUIデザイン基礎スキルを身につけられる場があれば案件で他デザイナーと共通言語をもって仕事を進められるようになり、成長スピードも上がるはず。これらを踏まえて、Goodpatchに所属するすべてのUIデザイナーが、基礎スキルを身につけられることをゴールに設定しました。

ゴール達成のために行ったこと

スキルセットに合わせて受講項目のカスタムを可能に

研修の基本構成は新卒研修をベースに、「UIデザイン研修(情報設計フェーズ・表層フェーズの2部構成)」+「ソフトウェアデザイン概論研修」としました。

UIデザイン研修の「情報設計フェーズ」では、概念モデルやビュー・ナビゲーション設計といった、情報を論理的に構築する方法、そして表層フェーズ」では、ユーザーが直接見たり、触れたりする視覚的な部分に関わるデザインが学べます。どちらも、講習(座学)→ 実践(ワーク)という2段階構成になっており、情報をインプットしたあと、手を動かしながら学べるスタイルになっています。

「ソフトウェアデザイン概論」では、UIの捉え方・ソフトウェアにまつわる課題・コンピュータ史・GUI史・デザインの基礎知識などを学びます。

とはいえ、先ほど記載したように中途デザイナーのスキルセットはさまざまなので、すべてを必須科目とせず、受講項目を選べるようにしました。例えば、表層に強みがある受講者は「表層フェーズ」の受講は任意とし、「情報設計フェーズ」に時間をかけて受講できます(もちろん全て受講するのもOK)。

各自が入社時に必要となスキルは人によって異なりますから、限られた研修期間の中、受講者の必要とするスキルに時間をかけれるよう、研修の構成に自由度を残しました。

いつでも研修が実施できる仕組みを作る

中途入社の方々が新卒と大きく異なるのは入社時期です。

時期は基本バラバラですから、個別研修を毎回実施すると運営コストが高くなってしまいますし、逆に一定の人数が集まってから開催しようとすれば受講の時期が遅くなるメンバーが出てきてしまいます。

入社後にいち早く基礎スキルを身につけてもらうためにも、時期に関係なくいつでも研修を実施できる仕組みが必要ですそこで、オンライン受講かつ自走して進められるような研修フローを整備しました。

まず、ホワイトボードツール「Strap」を使って、受講フローを1つにまとめたスペースを作成しました。研修概要から基本スケジュール、実践ワークまで、研修に必要な全ての情報がまとまっています。

最初のオンボーディングで、マネージャーから研修概要の説明と受講科目を話したあと、ワークスペースにある情報に沿って研修を進めていくことができます。講習(動画)、実践(ワーク)ともにワークスペースに移動し、いつでもとりかかれるようになっています。

ちなみにこのワークスペースは「自走できる、使いやすいスペース」となるよう、研修を終了した受講者にヒアリングを行い、ブラッシュアップを重ねています。先ほどもお話ししたように、中途入社者のバックグラウンドがバラバラということは、ニーズもさまざま。仕組み化後もアップデートを重ね、より多くの人が使いやすいものになるよう努めています。

レビュアーが1on1で受講をサポート

研修のオンライン化により、入社時期に関係なくいつでも研修ができるようになりましたが「自走できる」という面では、やはり映像だけでは理解できない部分はあるでしょう。研修内容に対する疑問を聞いたり、ワークに取り組む中で質問ができたりする環境もとても重要です。

そこで、先輩デザイナーが1on1でレビュアーにつく体制としました。スケジュールの中で質問タイムを設け、講義の質問やワークのフィードバックを受けることができます。また、研修で学んだ内容が実際のプロジェクトでどう活用されるのか?など、実践方法を知りたい受講者も多いはず。例えば、受講者が研修終了後にアサインされる案件の内容を使って、追加課題を実施することも可能にしています。

このように、研修後、他デザイナーと共通言語をもって案件を進められるサポート体制の構築も心がけました。

仕組み化した成果

UI研修を整備したことで、中途研修を受講したデザイナーからもさまざまな感想が届いています。

UIデザインに関する知識は十分に足りているか?と入社時は不安もあったのですが、技術的なことだけではなく、考え方から順を追って学べたのがとてもためになりました。動画や資料がすでに揃っているので、内容を確認したいときにすぐに見返せて助かりました。

以前から興味があり、オブジェクト指向の本を片手に見様見真似でしていたため、入社後の研修で段階的に学べたのはとても良かったです。正解がない分、疑問点などを壁打ち+レビューをいただくことで理解が深まり、実際の業務でも活用できています!

現場発のアイデアで「シャッフル1on1」を実施

研修の整備もそうですが、Goodpatchでは、デザイナー組織が拡大する中で生まれる組織課題に対して、現場のデザイナーが解決に動くケースが多いです。

例えば「GoodpatchにいるUIデザイナーはどんな人たちなのか」を知る機会が少ないという課題。入社時の自己紹介タイムやウェルカムランチ、チーム定例などで会話する機会はもちろんありますが、組織が大きく、さらにリモートワークで働く人が多いこともあり、一人ひとりと会話する機会が十分にあるとは言えないところがありました。

そんな課題を解消するひとつの方法として、UIデザイナー組織内での「シャッフル1on1」も仕組み化しました。

シャッフル1on1では週1回15分〜30分まで、決められたメンバーと1on1で自由に話すことができる場です。自己紹介でもプロジェクトの相談でも、趣味の話でもなんでもOK。

仕組み化にあたり、初めて話す人も話しやすい時間になるように「コミュニケーションボード」を作成し、任意で利用できるようにしました。実施してからは、「今まであまり話したことがなかった人とも話せてよかった」「この人はこんな強みを持っているんだ!と知れて相談できる人が増えたと思う」といったうれしい声が挙がっています。

パフォーマンスが上がる組織を作ることも立派な「デザイン」

以上、GoodpatchのUIデザイナーが取り組んだ「デザイナー発!中途向けUI研修の仕組みづくり」についてを、【Goodpatch Design Advent Calendar 2023 12日目】の記事としてご紹介しました!新卒入社の方だけではなく、中途入社された方の不安を少しでも減らし、気持ちよく社内でコミュニケーションやプロジェクトに取り組めるよう、このような研修を設計しました。

同メンバーで取り組んだ「デザイナー発!社内クリエイティブを管理する仕組み作り」を以前にGoodpatch Blogで発信しており、今回は第2弾の活動になります!合わせて読んでいただけるとうれしいです。

こうした活動は、普段取り組むクライアントワークとは異なる「課外活動」のようなものではありますが、よりよいデザインを生み出すためには、組織の仕組み化といった「環境の整備」も大切だと考えています。

働く環境をデザインできるのも「デザイナー」だからこそ。これからも組織改善のための活動は続けたいですし、このような想いをもったデザイナーがたくさんいるところが、Goodpatchの良いところでもあると思っています!

より良いアウトプットを目指すため、デザイナーが皆さまざまな形で協力する。そんな環境がGoodpatchにはあります。この記事を読んで、少しでも興味が湧いた方はぜひご連絡ください。お待ちしています!

執筆者

UI Designer: Yuehsheng Han / Ul Designer: Yuki Yamashita