一つの空間でプロジェクト情報を可視化。企業のウォールーム利用事例
新規事業の立ち上げやサービス開発に携わる皆さんは、どのような空間で仕事をしていますか?個別のデスクで作業をし、週に一回会議するなど、プロジェクト進行の方法は様々です。しかし「もっとチームの作業効率を上げたい」と考えているプロジェクトマネージャー、ディレクターの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、チームの生産性を上げられる「ウォールーム(War Room)」というワークスペースの使い方について、海外での利用事例を交えてご紹介します。
ウォールームとは
ウォールーム(War Room)の由来は軍隊用語です。軍の司令官たちが作戦会議を行う部屋の名称で、あらゆるところに地図や探知機などの情報が集結した「軍のブレーン」というところでしょうか。
ビジネス用語としてのウォールームも似たコンセプトに基づいています。ビジネスにおいてのウォールームは個別のプロジェクトに必要な情報とメンバーが集まる部屋を指します。同じ空間にディレクターやデザイナー、エンジニアなど異業種が集まり、プロジェクトを効率的に進めることが目的です。情報がグラフやスケッチなどで視覚化されていることが前提なので、部屋自体が記憶媒体になります。そのため、新しいメンバーが増えた時も、ウォールームの情報からプロジェクトについてインプットすることが可能です。インプットが効率的に行えるため、仕事内容の理解も進み、チームでより充実した話し合いを行えるでしょう。このような理由から、メンバー同士の円滑なコミュニケーションが特に重要視される新規事業やサービス開発の立ち上げ段階でウォールームが活用されています。
ウォールームの主な構成要因には次のものがあげられます:
- 物を貼ることができるスペース(壁、窓、ホワイトボードなど)
- プロジェクトに関する視覚情報(ストーリーボード、スケッチ、付箋など)
- チームとして作業できるワークスペース
ウォールームの呼び方は様々です。Uberは2017年に「ピースルーム(Peace Room)」という名称に変更し、戦闘のイメージを払拭しようとしています。日本では「プロジェクトルーム」と呼ぶことが多いのではないでしょうか。
それでは、海外で注目されているウォールームを中心に効果的な事例を見ていきましょう。
海外のウォールーム利用事例
Uber
(Image Source: https://www.officelovin.com/2014/07/22/ubers-san-francisco-headquarters-studio-oa-mashstudios/ )
Uberは世界70カ国以上でサービス展開をしている配車アプリです。2009年に発足し、サンフランシスコを拠点としています。そのメインオフィスの中心にあるのが、上の写真にもあるウォールームです。利用する際は、一つの大きな机にメンバーが集う形態になっています。部屋を囲むガラスはスイッチ一つでスモーク加工でき、中にいる人(主に組織幹部)は集中力を高められるような空間になっています。必要な視覚情報はデジタルスクリーンに映し出されるため、プロジェクトメンバーが一つの議題について話し合うにはもってこいの環境ですね。
Ziba
(Image Source: 左 http://www.opusvii.com/ex/ziba-design/ | 右 https://www.worksight.jp/issues/20.html )
Zibaは、米国ポートランドをベースにしたデザインコンサルティング会社です。2009年8月に作られたZibaのオフィススペースは、なんと全体の50%以上がクライアントとの共同作業用にデザインされているそうです。各プロジェクトの機密を守るため、ウォールームはそれぞれ隔離された空間で成り立っています(写真左を参照)。
プロジェクトマネジメントの観点からも、必要な情報が一つの部屋にまとめてあるといつでも議論できるので、仕事が円滑に進みます。このように部屋をいくつも用意するのが難しい場合は、可動式のホワイトボードを利用してオフィススペースを区切ってみるのも良いアイディアかもしれません。
GV
(Image Source: https://library.gv.com/why-your-team-needs-a-war-room-and-how-to-set-one-up-498e940e3487)
GV(2015年までは Google Ventures)は、アルファベット社の傘下にあるコーポレート・ベンチャーキャピタル子会社です。発足した2009年より300社以上の企業(主にスタートアップ)の成長を手助けしてきたGVですが、その主な活動はウォールームで行われているそうです。
このウォールームで最も重要視されているのは、フレキシブルな仕事環境です。GVでは、可動式の椅子、そうではない椅子、ソファー席、立ちながら仕事する場所などが用意されています。プロジェクトメンバーそれぞれが心地よく仕事できるよう、空間デザインでの工夫が凝らされています。興味がある方は、GVで詳しい解説がされているビデオをご参照ください(音声、字幕は英語のみ)。プロジェクトメンバーで働きやすいウォールームを作り上げる作業も、アイスブレイクに繋がるのではないでしょうか。
最後に
Ziba、GV、Uberのウォールームそれぞれに作業効率をあげるための工夫がなされていました。
最後に、Goodpatchでウォールームを利用したプロジェクトの一例をご紹介します。2018年夏、Flicfitさん(3D技術を用いたシューフィッティングのスタートアップ)のデザインパートナーを務めた際、「より密にコミュニケーションを取る機会や、会議に限らずフラッと立ち寄れるワークスペースを用意したい」という思いから、専用のウォールームを用意しました。
(Image Source: https://goodpatch.com/blog/flicfit-servicedesign-1/ )
今回ご紹介した利用事例と同じものを用意する必要はありません。プロジェクトメンバーに最適なウォールームを作り上げることで、効果を発揮できるはずです。例えば、プロジェクトメンバー同士は同じデスクに座る。デスクの一角に物理カンバンを置き、そこでチームのタスクを管理するだけでも密度の濃いコミュニケーションが生まれるのではないでしょうか。ぜひ、プロジェクトに最適な方法でウォールームを作ってみてください。
Goodpatchでは、Flicfitさんとのパートナーシップのように、コミュニケーションを重視しながら新規事業立案、既存サービス改善などを行っております。ご興味のある企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください!
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参考文献:
https://designabetterbusiness.com/2016/12/02/welcome-to-the-war-room/
https://www.worksight.jp/issues/20.html
https://library.gv.com/why-your-team-needs-a-war-room-and-how-to-set-one-up-498e940e3487
https://www.forbes.com/sites/falonfatemi/2016/02/07/how-to-instill-a-war-room-mentality-in-your-team/
https://www.businessinsider.com/uber-renames-war-room-to-peace-room-2017-6
https://goodpatch.com/blog/flicfit-servicedesign-1/