ブランドを視覚化するビジュアル・アイデンティティ(VI)の目的と事例
りんごのマークを見ただけでApple社を思い浮かべることができるように、ロゴやブランドカラーなど視覚的要素を統一することは、企業のコーポレートブランディングの戦略と言えます。本記事では、ブランドのイメージを視覚化するための「ビジュアル・アイデンティティ」という考え方をご紹介します。関連する用語との違い、事例についても参考にしてみてくださいね。
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目次
ビジュアル・アイデンティティ(VI)とは?
視覚は人間の五感の中で最も影響力が大きいと言われていますが、ブランドのイメージも、その認知度や人気を左右する大事なポイントですよね。冒頭でもご紹介したように、Apple社についてほとんどの人は、りんごのマークからブランドを連想できたり、新型と旧型のiPhoneを比べても同じApple社の製品として関連づけることができるでしょう。これは偶然ではなく、Apple社が戦略的に「ビジュアル・アイデンティティ (以下、VI) 」を確立しているからと言えます。
このようにVIとは、ロゴ、シンボルマーク、ブランドカラーなどに代表される視覚的要素の統一から成り立っています。ブランドが持つコンセプトをビジュアルとして表現することで、その存在意義をユーザー、社会に対して浸透させることができます。VIは企業や商品のホームページ、広告、パッケージなど多方面に展開されるため、どのような媒体においても一目でわかることが重要です。
VI、コーポレート・アイデンティティ、ブランディングの関係性
VIと合わせて言及される言葉に「コーポレート・アイデンティティ(CI)」「ブランディング」があります。この3つはいずれもブランドの社会的認知に関わる重要な戦略です。しかし、同じような意味合いで使われることも多々あるので、改めて定義をご紹介します。
VIとは先程述べたように、ブランドのイメージをユーザーに浸透させるべく作られる、統一化された視覚的要素のことです。しかし、ブランドを構成するものは視覚的要素だけではなく、理念とそれに基づいた行動の統一なども含まれます。このように視覚的要素、理念、行動の統一によって作り上げられたブランドの独自性をコーポレート・アイデンティティ (以下、CI)と呼びます。
では、ブランディングとはどのような戦略なのでしょう。ブランディングは、CIを確立した上で、さらに市場での価値を高めるための差別化のことです。ブランディングは日用品などのあらゆる商品にも当てはめることができます。例えば、皆さんは「チョコレートといえば〇〇」「ボールペンといえば〇〇」と、特定の企業やブランドを思い浮かべることはありませんか?ブランディングの目的とは、特定の市場において独自価値を築き上げることです。ブランディングやCIをしっかり伝えるためには、やはりVIの構築が鍵となるため、土壌の構想はしっかり練ることが重要です。
ビジュアル・アイデンティティ(VI)の展開事例
実際にさまざまなブランドがVIを構築しています。事例を4つご紹介します。
VI改革でさらなる高みを目指すライドシェアビジネス「Lyft」
(image source: https://s3.amazonaws.com/lyft-common/publicapi/production/swaggers/Brand_Guidelines_March2018.pdf)
米国を中心としたライドシェアビジネスである Lyft は、ビジネス特化型SNS「LinkedIn」による “Top Startups 2018” というランキングで見事に1位を獲得しました。スタートアップとしての目覚ましい成長を背景に、2018年5月中旬にはVIの改革を行っています。
元来鮮やかなピンク色を前面に押し出していた Lyft ですが、ブランドとしての「広がり」「柔軟性」「遊び」などを改革の軸にし、カラーパレットに様々な色を追加しました。ピンクを際立たせる白と黒・SNS映えする明るいパステルカラーなどを加えたことで、従来のエネルギッシュな性格の他に「融通性」を主張するVIが確立されました。企業の成長とともにアイデンティティを見直すことは、今後の進化を誓うメッセージにもなりますよね。
海外の若者に大ヒットの化粧品ライン「Glossier」
(image source: https://www.instagram.com/glossier/?hl=en | https://www.glossier.com/products?utm_medium=itg&utm_source=itg&utm_campaign=shop&utm_content=evergreenlink )
近年、InstagramなどのSNSを通したビジュアルヘビーなマーケティングが増えてきましたよね。海外の若者をターゲットとした化粧品ライン「Glossier」もそのようなブランドの一つです。Glossierのビジュアル・アイデンティティは、「個人のリアルを大事にする」「モダンで清潔」というブランドの性格を元に作られています。上の画像でもサンセリフ体のフォントが使用されていますし、淡いピンクや白をベースとした写真が多いですよね。このように商品のパーソナリティを的確に可視化・統一したGlossierは、SNS上で存在感を強めています。
親しみやすく信頼できるVIを構築したマットレスブランド「Casper」
(image source: https://redantler.com/work/casper)
Casper は2014年4月に発足し、ウェブ通販をポリシーとしたマットレス会社です。たったの2年間で総売上100億円クラスへと急成長したこの企業。Direct-to-consumer (D2C) や箱入りマットレスといった先進的なビジネスモデルも注目されるブランドですが、Red Antlerというクリエイティブ・エージェンシーが手がけたVIが脚光を浴びています。
深みの感じられる青をベースに、多様なキャラクターを描いた手書き風の広告などを用いて「親しみ」「安心」「汎用性」などの性質を表しています。オンラインのビジネスであるからこそ、ビジュアルを通して顧客に安心感を与える必要がありますし、マットレス業界では例を見なかったポップなキャラクターを使用することで唯一無二のアイデンティティを構築することができたんですね。
ポップで明るいエンタメ領域のVI事例 TBSテレビ「Catari」
(image source: https://goodpatch.com/blog/catari/#i-2)
最後に、Goodpatchが担当したVIの事例もご紹介します。TBSテレビの新規事業であるWebメディア「Catari」の立ち上げにあたり、VIの構築からロゴ、UIデザインまでを担当しました。新規事業の立ち上げにおいては、サービスコンセプトとVIがストーリーとして結びついていることで世界観が色濃く作られ、ブランドの独自性につながります。Catariのサービスコンセプト「気づけば夢中で盛り上がる、みんなのお茶の間のメディア」を視覚的に表現するためにVIを作った理由は、UIデザイナーの米永が以下のように語っています。チームのインタビューはこちらをご覧ください!
Catariをもっと良くするために、サービスコンセプトの「気づけば夢中で盛り上がる、みんなのお茶の間メディア」を具体的にするとどんなイメージなのか?ということからチーム全員で考え、世界観を作ろうと思ったんです。
「Catariってどんな人だろう?」という点から考えました。かわいらしくて、ハキハキした女性像が浮かびあがってきたので、そんな女性が身に纒う世界観を具現化していき、色と形に落とし込みました。常に意識したことは、サービスコンセプトとVIがひとつのストーリーとして繋がっているかどうかです。
まとめ
ブランドイメージを視覚化し、ユーザーに認知してもらうために有効なVIについてご紹介しました。ブランディングを考える際は、ぜひ視覚的要素であるVIについても考えてみてくださいね。
Goodpatchでは、ロゴデザインやCIのリニューアルのご相談も受けております。
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参考文献:
https://www.invision-inc.jp/column/2016/11/11/branding_ci_vi/
http://chibico.co.jp/blog/business/ci-vi-bi/
http://chibico.co.jp/blog/business/vi-visual-identity/
https://goodpatch.com/blog/catari/
https://redantler.com/work/casper
https://www.inc.com/magazine/201603/liz-welch/casper-changing-mattress-industry.html
https://adage.com/creativity/work/rebrand-video/54594
https://www.glossier.com/about