モノやサービスが溢れる昨今、埋もれず頭一つ突き抜ける為には情報設計の美しさやビジュアルの美しさと同じぐらい、ネーミングが大切だと思います。ネーミングは短期的には効果が見えづらい場合もありますが、長く愛されるモノは何処か親しみやすかったり、なぜか頭の中に残ったりするものです。主軸としている商品やサービスをコーポレート名に改名したりするケースもあるでしょう。

本記事ではネーミングがビジネスに及ぼす影響についてご紹介します。現行のサービス名や商品名に課題を感じている人にぜひ読んでいただきたいです。

ネーミングが及ぼす影響

まずは「鼻セレブ」を例に、ネーミングがビジネスに及ぼすインパクトを見ていきましょう。

高級ティッシュの市場を開拓したnepiaを代表するプロダクト「鼻セレブ」。「ダブル保湿」と「天然由来スクワラン配合」という高機能を売りにした商品です。発売された1996年時点では、“保湿ティッシュ”というカテゴリーが確立されていませんでした。当初は「モイスチャーティッシュ」という商品名で販売していたのですが、成分について店頭でいちいち説明するわけにもいかず、売り上げは伸び悩んでいたそうです。商品を試してもらうための方法を模索するなか、ネーミングやパッケージデザインの変更が検討されたそうです。

当時、モイスチャーティッシュを担当していた企画部員・デザイナーなどの企画会議において、代案となる商品名が100案近くあがり、そのなかのひとつが「鼻セレブ」だったそうです。当時の企画部長が、その商品名にピンときたことをきっかけに決定したのだとか。

「鼻セレブ」へ改名すると売上げが前年比3割アップ、最終的には4倍になったそうです。「BOXティッシュに高級感を持つ市場を作る」という発想から始まり、元々存在していた「 モイスチャーティッシュ」のネーミング変更から一躍ヒット商品となり「単品商品としての地位」を築き上げた成功事例と言えるでしょう。同じような成分の製品であっても、ネーミングの如何によって高級化粧品にも大衆化粧品にもなってしまいます。言葉から何らかの解釈・意味づけを行い、ブランドイメージをもつ。ブランドネームは、これらを記憶から思い出す“取っ手”の役割をし、よくできた名前ほど購買時に一連の記憶が無意識によみがえり選択されやすく、購買や売り上げにつながるのではないでしょうか。

ネーミングに合わせたパッケージデザイン

ネーミングが変われば、それにふさわしいデザインが必要となります。

当時モイスチャーティッシュを使っていたユーザーからは、「パッケージのデザインも品のある美しい青色で高級感がある」との声があったらしいのですが、当時のnepiaの担当者は思い切ってデザインを変える事にしたそうです。

人間の鼻をデザインに使って面白さを全面に押し出そう、という意見もありましたが、最終的に『ふわふわ』『やわらかい』というイメージを連想できる、白くてふわふわした動物のデザインを採用しました。
王子ネピア コンシューマーマーケティング部・酒井亜紀氏

つまりビジュアルに一風変わったユニークなアイデアがあり、それを商品として出した事に価値があったのでしょう。ビジュアルイメージをただ綺麗に整えるだけでなく類似性や共通認識をうまく混ぜ合わせて作ればより共感性の高いモノとなるのでしょう。

ネーミングだけでなくデザインも併せて『鼻セレブ』というテッシュの印象を強く残した一例でしょう。

改名前のデザイン (参考:https://diamond.jp/articles/-/162582?page=2)

改名後のデザイン(参考:https://tomokiuematsu.com/hanaserebu/)

企業のネーミング事例

プロダクトのネーミング以外にも、企業名を工夫することによりビジネスを成功させた事例をいくつかご紹介します。

スタートトゥデイ → ZOZO

ZOZOTOWNで有名な株式会社ZOZOも初めはスタートトゥデイというネーミングでした。ZOZOに改名したのは自社の主軸となるサービスであるZOZOTOWNが流行して数年経ってからのこと。

このようにコーポレート名はヒットサービスや商品に合わせて名称を変えることもあるようです。LINEmixiもその一例です。

株式会社コウゾウ → 株式会社メルカリ

メルカリもはじめはコウゾウという社名でした。自社アプリのネーミングを決める際に、山田進太郎氏は「ひとりあたり少なくとも3つ候補を挙げて」と当時いたメンバーに言い、最終的にアイデアの中から決定したアプリ名が「メルカリ」だったそうです。

ネーミングを決めた直後、当時の社外取締役松山龍祐氏は由来や込めた思いを説明された時イマイチだと心の中で思っていたそうです。しかし松本氏が口をつぐんだそうです。と言うのも、mixiがイー・マーキュリーという社名だったころ、社長の笠原健治氏が新しいプロダクトを見て欲しいと訪ねてきたそうです。その時「この『足あと』という機能があると使いにくい」と言ったそうです。しかしそのプロダクトは大ヒットして足あとも人気機能の1つになった経緯があり口を閉じたそうです。

大崎組 → 金鶴香水 → 丹頂 → マンダム

ギャツビーで有名なマンダムもヒット商品と共に社名を変えてきました。

「輸入雑貨品販売 → 香水 → 整髪料 → 整髪料」と社を代表する商品名と共に社名を変えてます。

マンダムには、「man(男性)」「domain(領域)」の合成語で「男の世界」を表現し、「human」「freedom」の意味を込めたそうです。1971年に現社名にして現在まで使用しているということは、時代を先取りしていたのだなと感じずにはいられません。

商品とサービスのネーミング事例

ヒートテック

みなさんご存知のユニクロのヒット商品。機能面は素晴らしいのですが、見た目はババシャツそのものなんて言われることも少なくありません。呼び名1つで印象は変わるものだなと感じます。

クロネコヤマトの宅急便

改名した例ではないですが、世の中に宅急便という名前広めた一例。現在も宅急便が一般名称と考える人も多くいると思います。

結び

ネーミングはビジュアルを作る上でも強く影響を与える1つの要因にもなるのだな改めて感じました。また、サービスやプロダクトを長く生きさせる為には欠かせないものです。

最後に、本記事を執筆するにあたり参考にした図書を記載します。

ご興味があれば是非読んでみてください!

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