Goodpatchには現在、約30名のUXデザイナーが在籍しており、UXデザイナーの中でも専門性はいくつかに分かれています。
そんなUXデザイングループの中でも、プロダクト単体だけではなく、プロダクトに関連する全ての体験の品質向上に専門性を持つのがサービスデザイングループです。今回はそんな私たちから、Goodpatchにおけるサービスデザインとは何か?についてお伝えします!
目次
Goodpatchの職能とサービスデザイングループについて
現在のGoodpatchは職能別の組織になっており、大きく4つの職能に分かれます。
ビジネスの根幹となる本質的な価値を整理するStrategy、ソフトウェアデザインを軸にユーザー体験を考慮した設計業務を行うUI、プロジェクトプロセスの設計と開発を担うDevelopment、そしてUXです。
UXデザインチームは更に3つの専門性に分かれており、プロダクト・ストラテジック・サービスデザインの各分野でそれぞれの強みを伸ばしていく活動を行っています。
サービスデザイングループでは、サービスデザインのあり方や実践する際の手法をチームのみんなで日々勉強し業務に活かせるようにしています。
サービスとは何か?
サービスデザインでのデザインの対象は「プロダクト単体だけではなく、関連するすべての体験の”集合”のこと」 であると考えています。
例えば飲食業界の場合、プロダクトは提供される「料理」だと考えることができます。
しかしこの料理が提供される前後に、レストランを発見し、来店し、席に座り、決済し、退店するというユーザー側の一連の体験が存在します。このユーザー体験を実現し、料理というプロダクトを提供するためには、店舗運営側にも様々な体験があります。
さらに店舗のマーケティングや決済システムの導入、スタッフの採用や教育など、ユーザーには見えないところまで設計して初めて「プロダクト=料理」を提供することができる「サービス=レストラン」が成立します。
このことからサービスとは、プロダクトのみならず、プロダクトの提供プロセス、及びユーザーからは見えないサービス提供側の体験も含めて設計されたものと言えます。
つまり、今までのプロダクト改善とは料理のクオリティを上げることでしたが、これからはレストラン運営そのものを考える必要があるのです。これをサービスデザインと私たちは考えています。
この例えは2021年4月出版の「ユーザー中心組織論」でも言及されていました。
サービスデザインの重要性が高まっている背景
近年ユーザーや市場の変化は激しくなり、物事の不確実性は高まり続けています。先が見えない状況の中でも事業者はユーザーに価値を提供し続ける必要があります。
そこで変化に対応し価値提供を続けられるサービスが生き残っていく時代となってきています。
また、事業者が利用者に提供する価値はプロダクトだけでは完結しにくくなっている現状もあります。
例えば、動画配信サービスを手にとってもそれぞれはプロダクトの機能的価値だけを見れば、どれも大差はなくコモディティ化していることが伺えます。競合の製品に埋もれ自社製品が選ばれにくくなってくると、他社製品との差別化により力を入れなくては生き残れないことになります。
デジタルプロダクトだけではなく、自動車などのアナログプロダクトも同様だと言えるでしょう。
これは既存のプロダクト自体の改善だけではコモディティ化を脱することはしにくい現状を指しています。そのため、これからのプロダクト開発にはもっと大きな変化が必要になることがわかります。
事業者はどんな変化をすればいいの?
プロダクト単体からサービス全体へ視点を変える
プロダクト単体の改善から、サービス全体の改善へ視点を変える変革が必要です。
プロダクトの改善は必須ですが、プロダクト単体の視点ではなく事業や組織の視点なども持つことで一貫した体験が提供でき、他社との差別化ができるようになります。
プロダクト内で困りごとがあった際に今まではプロダクト内の問題を解決していました。
しかし、この視点の場合プロダクト単体だけではなくカスタマーサクセスの体験やプロダクトに関わる全ての体験を元に改善をはかる動きに変えることができます。
作りきって終わりではなく、継続的にバージョンアップし続ける
いままでは物理的な商品と同じように、プロダクトをリリースした後は大きな変化が発生することは少なく、既存のものをブラッシュアップするか、機能追加をしていました。
ですが、近年SaaSのようなデジタルプロダクトが重宝される理由として、品質だけでなくサービスそのものの品質が守られた形で継続的に利用できる点が挙げられます。また、SaaSだけでなくスマートフォンのアプリも日々アップデートを繰り返す仕様になっており、ユーザーはすでに作りきって終わりというスタイルには違和感を持ち始めています。
こうした変化から、より柔軟な方針の変更やアップデートを行うことが他社プロダクトとの差別化を図るために必要となってきます。
持続的にバージョンアップし続けるためには、事業者側の組織や体制にも目を向けないといけません。度重なる改善を行い、ユーザーに価値を提供し続けるには、それに耐えうる組織が必要になります。
サービスをどうやって継続的にバージョンアップするの?
サービスはバージョンアップし続けることにより、他社との差別化を図ることができます。
また、この動きはサービスを運用する事業者自身の価値を最大化することにも繋がります。
事業者とユーザーそれぞれの価値
事業者は継続的な収益化という短期的な重要な視点とすることが多いですが、中長期的な視点ではサービスを通して企業としてのビジョンの実現や社会にとってのイノベーションなどの価値に拡大していくことが重要になると思います。
利用者は、短期的にみると自分自身が持っていた課題解決や目的達成の手段としての視点を持つことが多いですが、中長期的な視点では長く利用しているサービスへの愛着から便利さ以外の価値を持つようになります。
また、LINEやTwitter、Googleの各種サービスのように利用者の間で共通したサービスを使うことができると、自分自身だけの課題から自分の周り全体の課題の解決や目的達成という関係者も巻き込んだ視点に変化していきます。
事業の成長と消費者の利用目的の変化は同じスピードで起きることから両方の側面を常に観察しながらフィットさせることが無理なく全体を拡大させるために必要な視点となります。
そのため、継続的なバージョンアップのスケジュールも事業者・利用者の両方の視点と、短期的・中長期的な視点の全体を考慮しながら作っていくことになります。これを我々は持続的な価値の提供と呼んでいます。
サービスデザインにおいての視点
サービスデザインは何をデザインするのかを定義すると、以下のようになります。
「すべての”体験”の集合に対して、持続的な価値の提供をデザインする」
先ほどのレストランの例に例えるとこんな感じになります。
料理を食べに来るお客さまの体験 | サービスを横断したユーザー体験 |
料理を提供する従業員の体験 | 変化に対応できる事業者組織 |
レストランで起きるすべての体験 | サービス全体 |
わたしたちは、これらを実現するために以下の3つのデザインを考えています。
- サービスを横断したユーザー体験
- 事業者組織が生み出す力の最大化
- サービスを持続可能にするビジネスモデル
「ユーザー」「組織」「ビジネスモデル」の三軸の視点から全体が調和する様デザインすることを目指し、それがサービスデザインの視点になります。
サービスデザイングループはこれからみなさんとサービスデザインについて語り合いたいです!
わたしたちGoodpatchの考えるサービスデザインをみなさんにご説明させていただきました。これから引き続きブログやポッドキャストを通じてよりサービスデザインとは何かを深堀りながらより明確な輪郭を掴む取り組みを行っていきたいと思っています。
そこで、サービスデザインに興味あるよって方や、実際にサービスデザイン的な問題を抱えている方とカジュアルにお話しさせて頂きたいと思っております。
実際にプロダクト開発にお困りの方はこちらへお問い合わせください!
サービスデザイン自体にご興味のあるデザイナーさんはぜひ私たちとお話ししましょう。ご連絡お待ちしています!