新しいものが大好きなGoodpatchで6月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2021)
2021年、関東では遅めの梅雨入りとなりましたね。雨の日が続きますが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
今月もGoodpatch Blogでは、Goodpatchで話題になったアプリケーションやサービスをご紹介します!
目次
アプリケーション
タグ付け機能に特化した進化系SNS「Poparazzi」が日本でも話題に
2021年5月27日、友人がタグ付けした写真のみがタイムライン並ぶ新感覚のSNS「Poparazzi(ポパラッチ)」がApp Storeのランキングで全米1位を獲得し、日本国内でも話題になりました。
Poparazziでは友人をパパラッチする感覚で写真撮影し、「Pop(撮影した写真に友人をタグ付け)」することで友人のタイムラインに投稿します。これまでのSNSと異なるのは、自分のタイムラインに自ら投稿することはできないという点です。
もちろんパパラッチされた写真がタイムラインに自動投稿されてしまうわけではありません。被写体ユーザーが承認プロセスを踏むことで、タイムラインに載せたい写真の取捨選択が可能です。さらに、投稿へのリアクションはEmojiのみでコメントはできないため、誹謗中傷を避けられる仕組みを意図的に採用しています。
Instagramのタイムラインを見てみると、フィルターで加工された美しい写真が並んでいます。しかし、このようなInstagramの「完璧すぎる」投稿はときに心理的負担を感じてしまうことも。Poparazziの「ありのままの自分を仲の良い友人に撮ってもらう(Popしてもらう)こと」が、1996年から2012年に生まれたZ世代を中心に日本でも新たなブームとなりそうです。
PoparazziはポップなUI・オンボーディング体験も魅力。リズム感のあるサウンドや振動で演出されるワクワク感をぜひ試してみてはいかがでしょうか?
プロダクト
日清カップヌードル 新形状のフタ「Wタブ」を採用
https://www.nissin.com/jp/news/9604
2021年6月4日に日清食品株式会社は、プラスチック原料削減のためフタ止めシールを廃止する代わりに、フタをしっかり止められるように開け口のタブを2つにした通称「Wタブ」に切り替えることを発表しました。
フタ止めシールの起源は遡ること37年前、商品識別バーコードが印字された在庫管理用の紙製でした。バーコードシールをフタ止めとして利用するユーザーの増加に加え、バーコードを直接カップに印刷できるようになったため、フタを止める機能だけ残したプラスチック製のシールが生まれたのです。ユーザーのニーズに寄り添った日清のアイデアが光りますね。
しかし、フタ止めシールはプラスチック原料の使用量が年間で33トンにものぼるという問題も抱えていました。
そこで消費者と地球の両方へ寄り添い、誕生したのが今回の新形状Wタブです。フタ止めしやすいだけでなく、プラスチックの使用量も削減でき、手軽に食べられる実利も残しながら環境にも貢献できるサステナブルな商品になりました。
また、面白いことに今回の発表で「今更フタ止めシールの存在を知った」というユーザーの声もありました。フタとシールに物理的な距離があったことで、消費者にとってその存在がわかりづらくなっていたのかもしれません。タブが二つになったことでフタを止めるという機能が直感的に伝わるようになりました。さらに、タブを折り曲げるだけでフタを止められるようになりフタ止めがスムーズになったともいえます。
SDGsの取り組みをはじめ、地球に優しい商品に関心を持つ消費者が増えています。カップヌードルのように環境に配慮した商品を購入する選択が、そうした取り組みを加速させていくかもしれません。
サービス
透明ディスプレイ「See-Through Captions」で、聞こえなくても楽しめる展示ツアーを実現
https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202106051969.html
2021年6月5日から2日間、日本化学未来館にて透明パネルに話者の言葉をリアルタイム表示するシステム「See-Through Captions(シースルーキャプションズ)」を用いた常設展示ツアーが開催されました。展示物や説明書からはわからない情報を、ツアーガイドの言葉をパネルに映すことで知ることができるツアーです。耳が聞こえない人でもガイド付きのツアーを楽しむことができる未来に一歩近づきました。
「See-Through Captions」は、筑波大学デジタルネイチャー研究室(Digital Nature Group)のxDiversity(クロス・ダイバーシティ)プロジェクトが開発しています。リアルタイム字幕を表示するこの透明ディスプレイは耳が聞こえない人との自然なコミュニケーションを目的にしています。これまでは手話や筆談、最近では音声認識の技術を使ったスマートフォンの字幕表示アプリなどが使われてきましたが、手話話者としかコミュニケーションできない、また筆談や字幕表示アプリでは会話中も文字に目を奪われてしまうという課題がありました。そこで「See-Through Captions」はパネルごしに表情やジェスチャーなどの非言語情報も一緒に確認しながらコミュニケーションできるように工夫して開発されています。
透明ディスプレイに情報を表示することはAR分野において手法が模索されているテーマです。今回のイベントはユーザー一人一人が持つARデバイスではなく、手持ちの単一のデバイスという形にすることで素早く効果を検証することができています。またツアー対象者を聴覚障害者に限定したことで、テクノロジーで物理世界のアクセシビリティを上げる可能性を示しました。現代において、デジタルのみならずアナログ体験のアクセシビリティを向上させていくことも、デジタルデザイナーが追求していける一つの領域なのかもしれません。
Yahoo!ニュースに「記事リアクションボタン」機能が追加
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2021/06/17a/
2021年6月17日、ヤフー株式会社が運営する日本最大級のインターネットニュース配信サービス「Yahoo!ニュース」に、記事を評価できる「記事リアクションボタン」機能が追加されました。ボタンの選択肢は、一般的にSNSでよく採用される「いいね」ではなく「学びがある」「わかりやすい」「新しい視点」という3種類になっています。このボタンの実装には、ユーザーが良質な記事に対して具体的にリアクションしやすくする狙いがあるとのことです。
Yahoo!ニュースには、これまでもユーザーが一方的にニュースを受け取るだけでなく、コメントができる機能があり、以前よりユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションを重要視してきたことがわかります。
このリアクションは、記事の配信元への配信料の支払いに反映。配信元の媒体各社にユーザーの声を伝搬することで、よりユーザーにとって質の高い記事が配信されることが期待されます。
一方で、ボタンの選択肢は現在3種類であり、いずれもポジティブなリアクションのみとなっています。そのため、今回追加された機能だけでは記事を読んだユーザーの心理を全て反映できるわけではありません。ユーザーの声を正確に捉え、より良い記事を提供するために今後機能がどのように展開していくのか、楽しみですね。
ソフトウェア
AppleがWWDCでSafari 15の詳細を発表
https://developer.apple.com/videos/play/wwdc2021/10029
2021年6月7日(日本時間8日)、Appleの開発者向けカンファレンスWWDC21の基調講演が開催されました。同講演内でApple製WebブラウザSafariの次期バージョンであるSafari15の詳細が発表され話題になりました。
Safari15の特徴として、新機能「タブ・バー」の導入が挙げられます。「タブ・バー」は、検索とアドレスバー、タブ・ツールバーを従来よりも省スペースにまとめたもので、背景色を変えることで各ウェブサイトに溶け込んだように表示されます。これにより、それぞれのウェブサイトはウィンドウの四隅にまで広がり、ユーザーはよりコンテンツに集中できるようになると説明されています。
さらにiOSにおいては、これまで画面上部に配置していたアドレスバーがタブバーに集約され、画面下部に表示されます。Goodpatch社内では、このiOSにおけるアドレスバーの位置変更が特に話題に上りました。この変更により、画面サイズの大きなiPhoneを使用しているユーザーでも、指が届きにくかった検索機能に容易にアクセスできるようになることが予想されます。
開発者やデザイナーにとっては、新しいSafariのUIが文字通りデザインの枠を取り去ったことにより、コンテンツの世界観をより伝えやすくなったのではないでしょうか。一方で、この変化に応じて下部固定メニューなどの配置を再検討しなくてはならないという懸念もあります。たとえ小さな変更だったとしても、デザインや機能のアップデートはユーザビリティや開発に大きな影響を及ぼすこともあります。作り手としては慎重に考慮してデザイン、開発していくことが求められるでしょう。
その他
WHOがコロナウイルス変異株の名称変更を発表
https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
WHOが2021年5月31日にコロナウイルス変異株の名称を、ギリシャ文字を用いたものに変更することを発表しました。これまでは、複雑な学名や最初に検出された国や地域の名称を用いていました。WHOは、今回の変更理由について発音しやすく一般の人にも馴染みやすくするため、また特定の国・地域の名前を使いその国・地域のイメージを下げないためと説明しています。
この変更の決定は、「言葉のデザイン」の重要性を示唆しています。デザイナー界隈でも近年「エシカルデザイン」や「ダークパターン」といった言葉を用いて、デザインがもたらす倫理的問題を避けようという動きが活発化してきています。これはデザインという行為が、一歩間違えると受け手を悪い状態に導いたり受け手に被害を与えたりする力を持っているためです。一方で、デザインは、受け手にとって体験や印象をより良いものにすることのできる力も同時に持ち合わせています。デザインという行為はそれだけの影響力を持っているため、デザイナーは常に自分のデザインがどのような結果をもたらすのか予測し、その結果に責任を持つ必要があります。
これは言葉に関しても同様であり、今回の場合「インド株」のような従来の国や地域の名前を使った名称は、その国や地域の人への差別的意識を生む言葉の「ダークパターン※」に意図せず陥ってしまっていました。今回発表された名称が、世界中の人に浸透するにはまだ時間がかかりそうです。ですが、これをきっかけに自分の言葉が受け手にどのような影響を与えるのかをしっかり考えていきたいところです。
※ダークパターン:本来意図的にユーザー自身を不利な状態に追い込むデザインのことを指しますが、本文では「受け手に暗黙的に差別意識を持たせてしまう」ことを象徴的に表すため使用しています。
以上、6月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!
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