明日はユーザーインタビューだ…!うまくできるかな。緊張してきた…。」

UXリサーチは、限られた時間の中でなるべく多くの有益な情報を収集しなければならず、さまざまなことを意識しようとすればするほど緊張してしまいますよね。

そのような不安を感じている方向けに、UXリサーチの中でも特に実施頻度の高いユーザーインタビューを行う前に確認しておくと良い21の心得をつくりました最初にサマリーのみまとめましたので、インタビューの実施直前という方はサマリーだけでも確認して参考にしていただけると幸いです。

ユーザーインタビューの21の心得

ユーザーインタビューにおける心得を「場作り」「舵取り」「深掘り」3つのカテゴリに分類して解説していきます。

場作りの心得

遠慮なく、心を開いて語ってもらうための環境作りに必要な心得です。

  1. 明るく、笑顔で挨拶しよう
  2. アイスブレイクで緊張をほぐそう
  3. 興味を持つ・共感する・尊重するを意識しよう
  4. ユーザーインタビューの目的を伝えよう
  5. なんでも発言してよい旨を伝えよう
  6. リアクションを意識しよう
  7. 感謝を具体的に伝えよう

舵取りの心得

限られた時間の中で最適な道筋でゴールへ辿り着くために必要な心得です。

  1. スクリプトはチェックリストくらいの気持ちで挑もう
  2. メモを活用して質問の順序をコントロールしよう
  3. 話がそれたら共感しつつ、自然に話を戻そう
  4. 時間は常に確認できるようにしておこう

深掘りの心得

被験者の発言の意図や背景にまで辿り着くために必要な心得です

  1. 5W1Hを意識して質問しよう
  2. 物語を引き出そう
  3. Whyの扱いに注意しよう
  4. オープン・クエスチョンを中心に進めよう
  5. ユーザーからインサイトは出てこないことを認識しておこう
  6. 常套句や曖昧な言葉ははっきりさせよう
  7. ユーザーの発言には嘘や矛盾があるかもしれないことを覚えておこう
  8. 沈黙を恐れないようにしよう
  9. 中立的な立場を心がけよう
  10. 最後に言い残しがないかを確認しよう

【10/3 17:45追記】ぜひチェックリストにまとめてほしい!とリクエストをいただき、画像にまとめました。よろしければご活用ください!

以下、それぞれの詳細を説明します。

場作りの心得

  • 明るく、笑顔で挨拶しよう
      • ユーザーインタビューの冒頭においては、被験者が自身の本音を安心して話すことができる場づくりが大切です。明るく、自然な笑顔を意識しましょう。
  • アイスブレイクで緊張をほぐそう
      • 被験者が緊張をしている状態では、本音を引き出しづらくなってしまいます。共通の話題(例えば天気の話など)でお互いの緊張をほぐし、気軽に何でも発言できる環境を整えましょう。
  • 興味を持つ・共感する・尊重するを意識しよう
      • ユーザーインタビューは、自分達では気づくことのできない新しい観点を得ることが目的の一つです。そのため、被験者の発言が自分の肌感と異なっている時こそ尊重し、興味を持って共感することが大切です。
  • ユーザーインタビューの目的を伝えよう
      • ユーザーインタビューの目的やタイムスケジュールを共有しないままに進行すると、被験者はどのような内容をどのくらいのボリュームで発言するべきかに不安を感じてしまうことがあります。インタビュー全体の流れを理解してもらうことで、安心して発言してもらいましょう。
  • 何でも発言していい旨を伝えよう
      • 被験者の回答には正解、不正解があるわけではありません。「お答えいただくことには、正解も不正解もありません。ぜひ◯◯さんの率直で正直なご意見や気持ちを聞かせてください。」と伝え、素直で正直な意見や気持ちを聞けるようにしましょう。
  • リアクションを意識しよう
      • うなずき・相槌などのリアクションや、話す際の速度・目線を意識しましょう。また、オフラインで実施する場合は対面ではなく90度の位置に座ることで威圧感をなくす+被験者に見えやすいようPCではなく紙でメモをとるなどの工夫もできるとベストです。
  • 感謝を具体的に伝えよう
      • インタビュー終了時に被験者のどのような発言に発見や気づきがあったか伝えましょう。被験者は「大したことを言えていないのでは…」と不安に思うことがありますが、有益な内容であったことを感謝の言葉として伝えましょう。

舵取りの心得

  • スクリプトはチェックリストくらいの気持ちで挑もう
      • 半構造化インタビューにおいては、事前に設計したインタビュースクリプトはあくまで「流れを確認するもの」という程度で捉えておきましょう。スクリプト通りに進行していないからといって焦らずに、臨機応変に相手が話しやすいインタビューを心がけましょう。
  • メモを活用して質問の順序をコントロールしよう
      • 質問の流れが変わっても焦らないように、聞けていることと聞けていないことをその場で整理しましょう。臨機応変に質問をしていくために事前に質問の優先度をつけておき、全ての質問を聞くことを目指すよりも優先度の高い質問が聞けている状態を目指しましょう。
  • 話がそれたら共感しつつ、自然に話を戻そう
      • 被験者の中には話が弾みすぎて聞きたいことから大きく外れた話を始めてしまう方もいます。そのような場合は、相手の話への理解・共感を示しつつ自然に元の話題へと引き戻しましょう。
  • 時間は常に確認できるようにしておこう
      • 見える位置に時間を確認できるものを用意しましょう。オフラインで実施する場合は、腕時計を置いておいて目線だけでチラッと確認するなど、被験者に露骨に時間を確認していることを気づかれないようにしましょう。

深掘りの心得

  • 5W1Hを意識して質問しよう
      • インタビューとは、「どんな人(Who)が、どんなタイミング(When)や環境(Where)で、どのような理由や意図(Why)により、なに(What)を使ってどんな行動を起こす(How)のか」を明らかにすることです。この構文を意識して、必要な情報を聞けるようにしましょう。
  • 物語を引き出そう
      • 被験者に自身のエピソードを生き生きと話していただくことで、ユーザーインタビューにおけるFindingsの解像度も高まります。時間軸(When)に沿ってユーザーの行動を丁寧に引き出していくなどのアプローチで、物語を引き出しましょう。
  • Whyの扱いに注意しよう
      • 5W1Hの中でWhyのみが特殊で、その事実をどう捉えているかという「解釈」が入ります。被験者は自身の行動や思考・感情の理由や意図をはっきりと言語化できないケースが多く、Whyの質問に対する回答には被験者のバイアスが入り込む可能性があることを認識しておく必要があります。Why以外の4W1Hは事実そのものを聞くことができるため、それらの回答を元にWhyは後で分析するくらいの気持ちでも良いですし、どういう解釈が入るのかを知るために「なぜ?」を聞くのも良いと思います。
  • オープン・クエスチョンを中心に進めよう
      • クローズド・クエスチョン(Yes or No で回答できる質問)よりもオープン・クエスチョンの方が被験者の発言を深堀りできます。一方で、クローズド・クエスチョンが良くないということではありません。被験者の口が重たい時に会話の糸口のために利用する場合や、自分の理解に間違いないか確認するために「◯◯という認識で合ってますか?」というようなクローズド・クエスチョンは有効です。
  • ユーザーからインサイトは出てこないこと認識しておこう
      • インサイトは分析を通じて導き出すものであり、インタビューの目的そのものです。被験者が「本質的な価値は◯◯」と言及することは基本的にはないため、インタビュー中にインサイトが聞けていないということで心配をする必要はありません。
  • 常套句やあいまいな言葉ははっきりさせよう
      • 曖昧な言葉や抽象的な言葉は、その後の分析を難しくさせます。例えば、AさんもBさんも「効率的」と言ったとしてその度合いが同じかどうかはわかりません。その場合は「何と比べているのか」という判断基準について聞けると良いでしょう。また「よく使っている」とか「けっこう使っている」といった頻度を表す場合も人によって解釈が異なるので、具体的に(毎日なのか週3回なのか等)聞いておきましょう。
  • ユーザーの発言には嘘や矛盾があるかもしれないこと覚えておこう
      • ユーザーが様々な理由から無意識に事実と異なることを言っていることがあります。もし、発言に矛盾点などがあると感じた場合は「先ほど◯◯(矛盾すること)とおっしゃっていましたが、状況によって変わったりするのでしょうか?」などの質問をしてみましょう。意識的であれ無意識的であれ、発言の矛盾は「普段は人に話さない隠したい内容」が含まれている可能性があり、インサイトを導出するヒントがあるかもしれません。
  • 沈黙を恐れないようにしよう
      • 被験者が質問に対する回答を考えている際に沈黙が続くことがあります。長く考えているということは、被験者にとって重要な質問である可能性があるため、無理に回答を急かさないようにしましょう。また「今どんなことを考えていらっしゃいますか?まとまってなくても全然大丈夫ですのでお聞かせください」のように発言のハードルを下げながら、回答を促す手法もおすすめです。
  • 中立的な立場を心がけよう
      • AなのかBなのかを検証するための質問で「Aの方が◯◯だと思うんですが、そう感じますよね?」といった誘導はしないようにしましょう。また、Aについては多く質問をして、Bについてはほとんど質問をしないというのも集められる情報が偏ってしまうので、時間配分もできるだけ平等にしましょう。
  • 最後に言い残しがないか確認しよう
      • 最後に、「何か話しそびれたことはありますか?」や「テーマに関係あるかないか関わらず、インタビュー中に思ったこと、思い出したことはありますか?」と聞いてみましょう。意外なことが聞けて良いヒントになることがあります。

さいごに

今回は、UXリサーチの中でも特に実施頻度の高いユーザーインタビューの21の心得をご紹介しました。

ここで紹介した21の心得はすべて「◯◯しよう」というポジティブな言い方にしています。「◯◯してはいけない」という言い方だと、もしインタビュー中にやってしまった際に焦って取り乱してしまうかもしれませんよね。

ユーザーインタビューはインタビュアー自身が落ち着いて取り組めることが最も重要なことだと思います。本ブログが有意義なUXリサーチの参考になると幸いです。

一部参考:
マーケティング/商品企画のためのユーザーインタビューの教科書

追記:現在は「ユーザーインタビューのやさしい教科書」として改訂版が発売されているそうです。よければ参考にしてみてください。


Goodpatchでは、ユーザーインタビューをはじめとしたUXリサーチ手法を用いて、顧客起点の新規事業創出やサービス改善を支援しています。

事例はこちらの資料でご紹介しています。
新規事業創出や事業改善を実現する「Insight Research」資料ダウンロードフォーム

UXリサーチのご相談についてはこちらよりご連絡ください。
https://goodpatch.com/contact-insight-research