こんにちは。グッドパッチでグローバルプロジェクトを担当しているスティーブン・スミスです。

急速にグローバル化する世界において、企業はますます国境を越えて事業範囲を拡大しようとしています。グローバルに事業範囲を拡大するためには、対象地域のユーザーの価値観やニーズを理解することが不可欠です。しかし、その視点が欠けているために重要な機会を逃していることがあります。世界中のユーザーに共感される製品やサービスを生み出すには、その国の文化的背景を深く理解する必要があります。

この記事では、このようなグローバル展開時に必要になる「グローバルユーザーリサーチ」についてご紹介します。グローバルユーザーリサーチの一般的な課題とその克服方法、ユーザー満足度の達成における文化的ニュアンスへの適応の重要性について解説します。

グローバルユーザーリサーチとは

グローバルユーザーリサーチでは、言語、社会規範、テクノロジーの使用の違いを考慮しながら、さまざまな文化的および地理的背景を持つユーザーの行動、ニーズ、好みを調査して理解します。特定の地域や人口統計に焦点を当てたローカルユーザーリサーチとは異なり、グローバルユーザーリサーチでは、共通点と固有の課題の両方を特定して複数の市場に適用できる洞察を明らかにし、文化的に関連性があり、普遍的にアクセス可能な製品とサービスを作成することを目指します。

グローバルユーザーリサーチの重要性

新しい市場への拡大には、単に製品をさまざまな言語で利用できるように翻訳するだけでは不十分です。企業は各地域のユーザーの行動や好みに影響を与える文化的なニュアンスを理解する必要があります。グローバルユーザーリサーチにおいて重要な観点は次のとおりです。

  1. 文化的なニュアンス: 市場ごとに独自の文化的特徴があり、それがユーザーの価値観や製品との関わり方に大きな影響を与えます。
  2. 言葉の壁: 言葉をただ直訳するだけでは文化的背景に紐づくコンテキストが抜け落ち、ユーザーを正しく理解することが難しくなります。 
  3. ユーザーの期待:地域が異なると、デザイン、機能、使いやすさに関するユーザーの期待もさまざまです。

グローバルユーザーリサーチの活用場面

日本企業や日本市場について見ると、グローバルユーザーリサーチに取り組んでいる・取り組むべきなのは、主に以下のような課題を持っている企業です。

  1. 日本市場への進出を検討している、またはすでに日本市場に進出しているがローカライゼーションに課題を感じている海外企業。
  2. 海外市場への進出を検討している、または海外市場に進出しているがローカライゼーションに課題を感じている日本企業。
  3. 日本国内に住む日本以外の国をバックグラウンドに持つ方々や、訪日旅行者に向けたサービスを検討している日本企業。

グローバルユーザーリサーチに共通するつまづきやすいポイント

グローバルユーザーリサーチに取り組む企業は、次のようなポイントでつまづくことが多くあります。

プロジェクトを進める上での文化的背景の理解

  • つまづきポイント:文化的背景やニュアンスを理解しない対応をすることで、プロジェクト進行に悪影響を与えてしまう
  • : ユーザーインタビュー中にその文化圏の特性や習慣を理解した上で進めなければ、文化的なタブーを犯してしまい、インタビューを離席されてしまうなどの結果に繋がりかねません。

リクルートの課題

  • つまづきポイント:リサーチに必要なセグメントや特定の地域でリクルート条件を満たす対象者を集めることが難しい
  • : アメリカ全土に向けた事業のためにリサーチをする場合に、西海岸地域ではリサーチできたが、東海岸地域では対象者が見つからずにリサーチが実施できず、特定地域の生活環境の人だけの理解に偏ってしまう

ユーザーが触れる文言のローカライゼーションvs翻訳

  • つまづきポイント: ローカライゼーションにおいては、ユーザーエクスペリエンス全体を文化的コンテキストに合わせて調整する必要があるが、テキスト情報を単純翻訳してしまう
  • : アンケートで慣用表現や文化的な言及が抜け落ち、対象者に質問の意図が伝わらないなど混乱を招いてしまう

ユーザーの発言の解釈

  • つまづきポイント: 文化や言語が異なることで、ユーザーの回答における発言内容を正しい意図で解釈することができず、リサーチ結果の正確性に影響を与えてしまう
  • 例:インタビューやアンケートでの回答において、文化によっては、直接的な表現や批判を避けるなど地域特有のニュアンスがあることを考慮せず、回答をただ直訳することで、その根底にあるコンテキストが欠落した誤った理解をしてしまう

タイムゾーンの違い

  • つまづきポイント: 異なるタイムゾーンの地域に住む参加者のリサーチにおいて、時間調整が困難
  • : インタビューの時間帯が現地の参加者にとって都合の悪い場合、参加者の参加率やフィードバックの質に影響を与えてしまう

リモートリサーチの課題

  • つまづきポイント: リモートでユーザーリサーチを実施する際に、国内調査とは異なる地域特有の考慮すべき課題が発生する
  • : 国による技術的インフラの違いによって参加者のインターネット環境が不安定であったり、参加者が調査ツールに不慣れな場合に、円滑なリサーチの進行が妨げられる

共通のつまづきポイントを解決するためには

これらのつまづきポイントを解決するためには、確実なアプローチでグローバルユーザーリサーチに取り組むことが必要です。

  1. 質の高い定性調査:綿密なインタビューやユーザビリティリサーチを実施し、ユーザーの行動や価値観を理解し、深い洞察を獲得する
  2. 多様なチーム体制: 言語や文化のギャップが発生しないよう多言語および多文化のメンバー構成をおこなう
  3. 効果的なローカライゼーション: ただ言語を翻訳するだけではなく、対象地域の文化的背景や特色を理解した上で、ユーザーエクスペリエンス全体を適応させる

ケーススタディ: グローバル自動車メーカーのためのユーザーリサーチ

グッドパッチがグローバル自動車メーカー向けに実施したグローバルユーザーリサーチプロジェクトについてご紹介します。

目的:

  • 国内・海外顧客の両方を対象にした新サービスのアイデアを生み出すために、海外顧客も含んだユーザーニーズや課題を理解する

方法:

  • 2つの主要市場における、エスノグラフィックリサーチとデプスインタビューを組み合わせたアプローチ

つまづきポイントへの対応:

  • 文化的洞察: 対象地域の専門家と協力してリクルートやリサーチツールの手配を行い、その地域特有の情報や文化に関する深い洞察を得られるよう準備
  • 正確なコミュニケーション: ユーザーのフィードバックを明確かつ正確に理解するために、多言語のリサーチャーを起用

結果:

これまで不足していた対象地域のユーザー理解が深まり、アイデア創出の材料を得られた。リサーチ結果は、プロジェクトチームを超えて、社内の他チームにも共有され、今後の新サービスアイディエーションに活用

おわりに

グローバルユーザーリサーチは、単に言葉を翻訳するだけではなく、その地域の文化的背景に鑑みたユーザー理解をデザインに変換することを目的としています。文化への適応やユーザー中心設計を含む包括的なアプローチをすることで、世界中のユーザーの共感を呼ぶ製品やサービスを生み出すことができます。 グッドパッチでは、ユーザーリサーチとサービスデザインの専門知識を生かしたグローバルユーザーリサーチを通じて、企業がグローバル市場の複雑さを乗り越えられるよう支援しています。

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