人に向き合い続けて20年、「人が全て」の会社で取り組む新たな挑戦—— People Empowerment Office 室長 井出
私たちは世界に何を残せるのか──そんな問いを背景にグッドパッチでは「MAKE A MARK」というコンセプトをグループ総会で掲げました。
なぜグッドパッチに集い、これから何を残していきたいのか。MAKE A MARKというコンセプトに沿って、各々が胸に秘めた思いに迫るインタビュー企画。今回は人事組織であるPeople Empowerment Office 室長の井出が登場。
井出のキャリアは、全く希望していなかった人事に配属されたところからスタート。人事歴20年になった今、「人が楽しそうにイキイキと働いている姿を見るのが好きなんです。人が持つ可能性を引き出すために、一人ひとりと向き合い続ける」と語ります。そう考えるようになった原体験とは?これまでのキャリアとともに聞きました。
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新卒で「まさか」の人事配属、20年のキャリアを振り返る
新卒で入社したのはパナソニックです。当初は「システム営業」に興味を持っていて、ものづくりの会社で商品を売るだけじゃない営業ができたら面白そうだと感じていました。“よし、自分はシステム営業を天職にする!”ぐらいの気持ちで選考を進め、内定をもらい、いざ入社が近づいたら配属先は人事だと分かって……。
もう驚きでした。そもそも自分は人事がやりたいとは言っていなかったので、入社直後は気持ちの整理ができず、だいぶ荒れてました(笑)。
だけど、気づいたら20年も人事をしています。
パナソニックに約10年勤めた後は、日産自動車に約6年、レノバ(再生可能エネルギー事業)に約3年いましたが人事として、リーダー育成・若手のキャリア開発支援、カルチャー創造、雇用形態や報酬フレキシビリティの実現などさまざまな経験をさせてもらい、2022年9月、グッドパッチの人事として入社をしました。
希望していなかった仕事で20年とまるでネタのような話ですが、いま改めて振り返ると、最初の配属にものすごく感謝しています。飽きっぽい性格の自分が人事という仕事を楽しめているのは、少なからず適性もあったと思いますし、一生をかけて成し遂げたい道を教えてくれたという点でも大きな意味がありました。
人事は、“働く希望”を見い出す仕事だと思った
入社時は全く希望していなかった人事ですが、ある時、「これは価値がある仕事」「人事だからできる仕事」と強い意義を感じたことがあり、そこから価値観が大きく変わりました。
入社数年目、パナソニックでは構造改革によって各県の工場運営が見直されていた時期で、当時、私が工場人事として勤務していた長野県の松本工場は、閉鎖が決まった岩手県の花巻工場の人的資源や物的資源の移管先となったんです。大きく体制が変わる中で、生産現場をもっと盛り上げていくための施策として、私は、女性リーダーの育成プロジェクトを立ち上げることにしました。その背景にあったのは、製造現場を支える女性リーダーの責任感やエネルギー、工場を変える影響力みたいなものを強く感じていながらも、上手く活かせずにいたことでした。
女性リーダー研修では長野で働く女性リーダーだけでなく、岩手から異動してきた女性リーダーにも参加してもらいました。“自分の仕事に向き合い、キャリアを考える”をテーマに別の工場の見学をしたり、座談会で自分たちの悩みを共有したり、意見交換をしたり、3ヶ月ほどさまざまな取り組みを行ったんです。
そして、最後の振り返りセッションで、花巻から転勤してきたある女性リーダーが「地元を離れて、なかなかコミュニティが広がらない寂しさがあったけれど、この活動に参加させてもらえて、たくさんの人達と出会うことができました。皆さんとのつながりが、私の人生の財産です。この場を、これから生きていく場にしていきたい。末永く仲良くしてくれたら嬉しいです」と涙ながらに語ってくれたんです。
私は、その言葉がものすごく胸に響いたんですよね。強く心打たれました。
一般的に工場勤務の方の多くは、基本的にはその土地に長く住んでいて、そこで働いて人生を全うしたいと考えています。だから、花巻工場に勤務していた方に、明日から松本工場に行ってくださいというのは、ものすごく大変なことなんです。いろいろ悩んだ上で新しい土地に移住する決断をしてみたものの、新しい環境になかなか馴染めない。苦しんでいる方も少なくありませんでした。
自分が人事として推し進めたプロジェクトによって、いろいろな事情を抱えながら働いている人に、少しでも“ここで働く希望”を与えることができたかもしれない……そんな手応えが確かに感じられた瞬間でした。その希望にかけがえのない価値を感じましたし、これは人事でなければできない仕事だと思えた出来事でもあります。
一人ひとりの成長が、そのまま会社の成長に直結する面白さ
グッドパッチに入社を決めた一番の理由は、代表の土屋さんと話をする中で、「人への向き合い方」に共感できたからです。面談では、「最も価値を持つのは人である」「一緒に働く人の可能性を引き出すことが重要」「そのために、一人ひとりの社員と向き合う」そんな考えに触れることができました。
私はキャリアのスタートが工場人事だったこともあって、“何かあったらすぐ現場に行く”という現場主義をずっと大事にしています。誰かが言っていた情報は参考意見としてもちろん大事にしますが、やっぱり現場を見なければ本当のことは分からない。どう思っているのか?何に悩んでいるのか?何を大事にしているのか?……直接的な対話を重ねることで、人も組織も立体的に理解することができると考えています。グッドパッチなら自分の信念を大事に、人に向き合い続けられると感じたんです。
入社して約2年が経ちましたが、一言で表すなら“激動”でした。簡単にグッドパッチでの2年間を振り返ると、経営企画室の人事担当として、新卒採用とバックオフィスの中途採用、人事制度の企画実装を担当したのち、人事組織であるPeople Empowerment Officeを立ち上げました。直近1年ほどはデザインパートナー事業部門の採用マネージャーも任せてもらい、人材開発系施策を走らせながらグッドパッチの人財基盤の構築を推進してきました。そして、2024年9月にはまた一つ大きなチャレンジをさせてもらう予定です。
想定外の出来事、新しいチャレンジの連続で、安定という場面が一瞬たりともありません。ですが、その環境が刺激的で、毎日楽しくやらせてもらっているというのが素直な感想です。
グッドパッチは「人」が資産の会社です。言い換えれば、資産は「人」しかない。これまでの企業も人事として「人と組織の課題解決を通じて、会社・事業の成長」を目指してきましたが、影響力がまるで違う。採用計画がうまくいかなければ、事業計画にダイレクトに響く。経営と密接に関係する人事の面白さを感じています。
これまで人事というと後ろで控えているようなイメージがありましたし、自分自身も直接、事業成長に関わっているとは言いにくい部分があったんです。けれど、グッドパッチでは「人と組織の課題解決を通じて、事業の成長にコミットしている」と真正面から言えるし、今後も胸をはってそう言える仕事をしていきたいと思っています。
人はすぐには変われないが、可能性は無限大
人事哲学と言ったら少し大げさかもしれませんが、人事を経験する中で「人に対して大事にしてきた考え」が2つあります。
1つ目は「人はすぐに変われない」、2つ目が「人の可能性は無限大」ということです。
1つ目の「人はすぐに変われない」とは、ものすごい速さで変化する事業環境と同じスピードで人は変化できない、という意味です。例えば、これまで製造ラインで働いていた人たちに、「明日からは全て機械が対応するので、皆さんは工程改善や生産管理を担当してください」と言われても、いきなりやるのは非常に難度が高い話です。
ここで人事として大事にしているのは、事業環境の変化よりも早く、人に対して変化を促していくことです。そういう流れが来ていると思ったら、プロアクティブに先手を打つ。個人任せにするのではなく、必要なケアを見極めて対処していく。変化が起きてから人に変化を促しても追いつかない。遅れをとってしまう、と考えています。
2つ目の「人の可能性は無限大」とは、個人の好きや得意、大事にしているものによってパフォーマンスが大きく変わるという意味でもあります。
人はスキルや経験だけのマッチングで最大のパフォーマンスが出せるとは限らなくて、モチベーションだったり、環境だったり、もっと深いところでいうとその人の価値の源泉にフィットできると、最大のパフォーマンスが発揮されると思っています。
マネジメント層、若手社員、中堅社員……といった枠組みで見るのではなく、一人ひとりの社員、それぞれの違いをきちんと理解し、本当の意味での適材適所の実現を目指す。最終的には、無限大の可能性を持っている個の力を引き出し、組織の集合知に変えていくことを目指したいと思っています。
これはものすごく時間がかかるし、ものすごく難しい話です。けれど、人事としての面白さでもあるし、探求し続けたいことでもあります。
「情熱」で日本の労働生産性を高めていきたい
今後、私が企業人事として向き合いたいと考えているのは、「日本の労働生産性向上への貢献」です。
日本は少子高齢化社会に突入し、労働人口の減少が止まらない中で、国としてどうやって労働生産性を維持していくかは深刻な社会課題の一つです。解決策としていろいろ考える方向性はありますが、私が取り組みたいと思うのは一人ひとりのパフォーマンスを上げること。
先程の「人の可能性は無限大」という話にもつながりますが、この考えを前提に、一人ひとりが自分のやりたいことに情熱を持って向き合うことができれば、最大限のパフォーマンスが発揮されるはずです。
それが企業単位ではなく、世の中全体でその仕組みを考えていくことができたら、日本の未来を作っていくことになる。社会課題の解決の第一歩につながるのではないか。そんなふうに考えています。
これまで、仕事に情熱を持てなかったり、「労働時間」として切り分けて考えていたり……どこか諦めた時間の過ごし方をしている人たちを多く見てきて、悔しさのようなもどかしさを感じていました。「あなたの持っている力はそんなものじゃないでしょう?」と。
やっぱり私は、人が楽しそうにイキイキと働いている姿を見るのが好きなんです。信念や情熱を持って働いている姿を見ると自分のことのようにうれしくなります。
前例や慣習にしばられず、これまでにないやり方を模索して、新しい方法で人の可能性を引き出す。こういう方法もあるんだと社内だけでなく、社外に示すことで、“日本の人事”全体をリードしていく。そんな形で、世の中に還元できたらいいなと思います。