メンバーインタビュー

SIerでもコンサルでもなく、グッドパッチだからこそできること 大企業の組織変革に伴走するデザインストラテジストの流儀

いいモノづくりを本気でやろうとすると、結局、最後に立ちはだかるのは「組織の壁」──。

せっかく作るのだから、ユーザーに本当に愛される良いプロダクトを世の中に出したい。そう考える方は少なくないでしょう。しかし、実際にプロジェクトを進めると、組織の壁やビジネス上の制約に阻まれ、「本来やりたいことを諦めざるを得ない」「作ることが目的化する」と歯がゆい思いをしたことがある方は少なくないのでは。

今回登場するAyaさんは、SIerでのシステム開発やコンサルティングファームでの経験を経て、グッドパッチへ入社したデザインストラテジストです。

彼女がクライアントワークで扱うのはプロダクトやサービスだけでなく、クライアントの「組織そのもの」。組織の成長や変革に伴走し、デザイン文化を根付かせる。そんなプロジェクトへの向き合い方について伺います。事業会社ではなく、クライアントワークという環境を選び続けるキャリアの裏には、本当に良いものを届けるための確固たる信念がありました。

アクセシビリティとの出会いを契機に「UXデザイン」の道へ HCD専門家の資格も取得

──Ayaさんは、SIerでは開発業務を担当されていたとお伺いしました。そこから「デザイン」の領域に興味を持つ方は珍しいようにも思うのですが、どういったきっかけがあったんですか?

元々はOracleを使った性能検証をしたり、インフラの環境設計などをしていたのですが、ユニバーサルデザインを適用する公共系の案件に携わったことで、システムに対する考え方が変わったんです。事故に遭われた方向けの情報提供サイトを作るというプロジェクトで、アクセシビリティ対応が必須でした。

そのときに、使う人を知ることや、使う人の気持ちになってシステムを作り上げることの重要性を強く感じたんです。「使いたくても使えない」「アクセスできてもスムーズに使えない」のではサイトを作ったところで意味がない。システムのリリース後、もっとエンドユーザーのことを知りたいと、自分でお客さまのところへ行って、操作場面を観察させてもらったり、アンケートを取って改善提案をしたりしていました。

──リリース後にそこまでアクションするというのは、よほど強い思いがあったんですね。「ユーザーを知る」という欲求が、デザインの領域に踏み出す第一歩だったと。

その後、産休と育休を取得するタイミングがありました。当時はまだ現場に復帰する人が珍しく、「子供を置いてまでやるべき仕事って何だろう」とか、「少数精鋭で働く元の環境に戻るには、明確な強みがないと」など、悩みに悩んでいました。

自分のキャリアを振り返ったときに見つけたのが「UXデザイン」という領域でした。ユニバーサルデザインの知識もありましたし、お客さまのところへ行って観察し、課題を見つけて直すという私の泥臭いやり方は、UXデザインと通ずるものがあるなと気付いたんです。この領域のプロになることを目指して、育休中から書籍を読み漁ったり、有識者にヒアリングしたり、ユーザーテストを被験者として経験したり、育児の隙間時間で出来ることは何でもやっていました。

──育休中にそこまで準備するとは……。これは復帰直後から活躍されたんじゃないですか?

復帰後はコンペでUXデザインプロセスを提案書に組み込ませてもらうなど、実践の機会にも恵まれました。最初は社内にいた人間中心設計(HCD)専門家の方にサポートしてもらいながら、あるべき姿を学びつつ現場で経験を積み、ユーザーに喜んでもらえるシステムを提供できました。その後、私自身もHCD専門家の資格を取得し、携わる案件は全てUXデザインを取り入れて、実績を増やしていきました。

SIerでもなく、コンサルでもなく さまざまな企業を経てグッドパッチにたどり着いた理由とは?

──そこから、コンサルティングファームへ転職されたんですよね。

SIer時代に、社内でデザインの必要性を何度も提案したのですが、なかなか理解を得られないもどかしさがありました。どうしても費用対効果が先行してしまい、デザインと効率性・売上が比較され、毎度毎度、説明行脚をするのが大変だったんです。「自分の時間を、もっとお客さまに良いものを届けるために使いたい」と考えていたとき、デザイン思考を全面的に適用すると掲げていたコンサルティングファームの存在を知り、転職を決めました。

転職し、UXデザイナーとしてしっかりと案件に携われたことは大きな収穫でした。ただ、コンサルティングファームでは、直接的なビジネスの拡大がミッションの中心になります。プロジェクトによっては、ユーザー体験の深掘りよりもビジネス成果を優先せざるを得ない局面があり、本質的なユーザー体験を議論する土俵が限られていると感じることもありました。

また、ソリューションとしてSaaS製品を採用することが多いこともあり、UI/UXを最大化するには難しい環境だなとも感じていました。

──確かに、SaaSの場合は画面やユーザーの使い方といった点が固定されてしまいますもんね。

加えて当時はマネジメント職だったこともあり、ここから職位が上がるたびにどうしても現場で手を動かす機会が減ってしまうという点も気がかりでした。「人生100年時代」という言葉もありますし、このタイミングで現場から離れてしまうのはリスクがある。もっと実績を積んで、ユーザーやモノづくりの本質に向き合える環境に身を置く必要があるのではないか、という危機感もありまして、デザイン会社に移りました。

──同時にマネージャーからプレイヤーに戻ったというわけですね。グッドパッチに転職した理由はどういったものだったんですか?

デザイン会社はデザインをオーダーしてくれるクライアントが来てくれるので、素直にデザインの作業ができ、満足した日々を過ごすことができました。ただ、サービスデザインをする上で、マネタイズや組織設計などの知識の必要性も感じており、マネジメントスキルも高めたかったんです。

経営やマネジメントの領域にも身を置きたいと考えたときに、たまたま紹介されたグッドパッチの求人がそのニーズを叶えられるもので、選考を受けてみたという感じです。

デザイン組織を育て、大手企業に「デザインの価値」を定着させる長い道のり

──さまざまな経験をされてきた裏には、いろんな考えがあったと。Ayaさんはグッドパッチで今、どのような仕事をされていますか?

今はデザインストラテジストとして、いくつかのプロジェクトにプロジェクトマネージャーのようなロールで携わっています。少し変わっているのは、アプリのリニューアルや新規事業リリースといった、明確なアウトプットがあるタイプの案件ではなく、クライアントの組織そのものを変えることを目的にしているというところですね。サービスデザイン、さらには組織デザインに近い領域で、デザインの力で事業と組織の両方を動かしていく。それが今の役割です。

──具体的には、どのようなプロジェクトがあるのでしょう。

1つは大手自動車関連企業のデザインチーム支援です。最初は小さなリサーチ案件から始まったのですが、その後、プロダクトのデザインチーム支援にミッションが拡大しました。

参画当初はいろんな場面で「グッドパッチの皆さんはどう思いますか?」と頼っていただくことが多く、自走という状態までには少し距離がある状態でした。しかし、組織支援がミッションなので、お客さま自身で迷って悩んでいただく機会を増やしつつ、並行して自走に向けグッドパッチが何をすべきかを考えて提案し、自走の仕組み化を進めています。

目指しているのは、その会社の中でデザインの価値が定着し、ひとつの大切な仕組みとなること。そのためには、まず現場の人たちが自走できなければなりませんし、社内のIT部門や事業部門とも対等に渡り合えるようにならなければいけません。テクニカルなスキルだけではなく、ポータブルスキルやマインドセットの部分もサポートし、総合的なスキルアップを意識しています。

──「自走する組織を作る」と言葉で言うのは簡単ですが、長い時間がかかりそうですし、ステークホルダーも一般的なプロジェクトより多くなりそうです。

そうですね。現場のデザイナーへの働きかけだけでなく、プロジェクトを統括するメンバーとは、クライアントのマネジメント層に直接自走強化の仕掛けやデザイン品質向上の仕組みづくりを働きかけたり、多角的にサポートしている感じです。

今ではクライアントとの信頼関係がさらに深まり、全社へのデザイン浸透や中期経営計画の推進支援といった話もできるようになりました。小さなリサーチ案件から始めましたが、経営課題に近い領域まで携われることは感慨深いですし、今の取り組みに本質的な価値を感じています。

サイロ化した組織をつなぐカギは「ユーザー視点」 これこそがサービスデザインの本質

──他にもそういったプロジェクトがあるのでしょうか。

はい、大手宅配サービスのデジタル推進の案件がありますね。彼らは複数のサービスを提供しているのですが、それぞれの部門が個別に動いていてWebサイトを作っていたため、ブランドとして「横断した傘」のようなものがなく、サービスの全体像を分かりやすくユーザーに伝えることが難しい状況でした。

それぞれの部門が自分の責任を果たしているのに、全体で見ると一貫性がない。しかし、連携をしようとしても、そもそも部門間で全然会話をしたことがない状態という課題がありました。

この案件では「グッドパッチさんあるべき姿を出してよ」といった要望もいただいたのですが、皆さんとの対話を通じて決めていきたいとお答えしました。

──先ほど挙げた話と同じく、クライアント自ら考えたり、迷ったり、悩んだりということが大切ということですか?

組織の上層部や外部のパートナーから「これをやりましょう、やるべきです」と正しい「解」を置いても、腹落ちしていないと人は動きません。絵に描いた餅だけが残って、誰も実現しようとしない状態になってしまいますし、現場の実態を知らない人が上から押し付けようとすると、反発も起きやすくなります。

一方で、現場が自分たちの言葉で「これならやれそう」「自分たちの課題はこれだ」と語り始めると、動きが文化になっていくんです。だから私は、急いで答えを渡すよりも、まず“内側から語りたくなる状態”をつくることに力を使います。

──他部門の人たちなど、立場が異なるプレイヤーが連携したり、組織につながりを持たせるためのポイントはどこにあるんでしょう。

サービスのエンドユーザーを一緒に見ることですね。エンドユーザーにとって部門の壁は関係ありません。彼らに何を届けるべきかを考えるときは、部門の壁などの企業の都合ではなく、ユーザー体験を軸に議論ができるので目線がそろいやすい。これはまさにサービスデザインの考え方だと思います。

単にサービスやプロダクトを作るだけでなく、デザインというアプローチを通じて、組織の変化や成長に伴走すること。これこそがクライアントワークの醍醐味ですし、今後、多くの企業に求められることなのかなと感じています。

「事業会社 vs. クライアントワーク」 本質的な変化を起こすのは、外部からの方がやりやすい

──ところで「良いものや良い組織を作りたい」と考えたとき、事業会社に行って当事者になるという選択肢もありますよね。なぜ、Ayaさんはクライアントワークを選び続けているんですか?

事業会社に行っても、自分が本当にやりたいことを実現するのは難しいということを知っているからです。先ほどお話ししたように組織を内部から変えるというのは、本当に大変なことです。もちろん、すべてのケースがそうではないと思いますが、すでにキーマンがいて意思決定の構造が固まっていることも少なくありません。中途で入社した人が、そこに風穴を開けるのは容易ではないと感じています。

また、トップダウンで降りてきた仕事をこなすことにいっぱいで、変革に切り込むことができない方々の姿をクライアントワークを通じてたくさん見てきました。事業会社では必ずしも自分のやりたいことができるとは限らない、というのが私の率直な実感です。

──当事者だからこそ、身動きが取りづらいこともあると。

はい。内部から組織を変えようと思っても、並列の別部門に働きかけるのは非常にハードルが高いです。先程ご紹介したプロジェクトでも、内部の人間だったら遠慮してしまったり、これまでの部門間の関係性で言いづらいのではないかと推察します。

一方で、クライアントワークをご依頼いただくクライアント企業の場合、外部発注していただくという文脈もあり、モチベーションやグッドパッチへの期待値が高い印象です。パッションのある人たちと仕事するのって純粋に楽しいんですよね。

外部のパートナーという立場を生かし、「それってモヤモヤしませんか?」「変えたくないですか?」「ユーザーが求めているものは何だと思いますか?」といった、社内の利害関係に縛られない客観的な問いを投げかけながらも、「うちの社員みたいだよね」と言われるくらいの熱量で伴走する。それが私のスタイルですし、そういった信条で働くメンバーがグッドパッチには多いと思います。

──メリットもある一方で、逆にクライアントワークならではの大変さや葛藤を感じることはありませんか?

「最後の責任が取れない」という苦しさは常にあります。私たちはプロジェクト期間が終われば離れることになりますから。また、どれだけ設計しても検討不足の領域は残ります。私たち外部のメンバーが知らないところで、お客さまにカバーいただいているので、申し訳なさは常にありますね。

だからこそ、私たちがいなくなったあともクライアント自身が自走できることがプロジェクトの最終ゴールになると考えています。プロダクトを作るだけでなく、再現性のあるプロセスや文化を根付かせ、その会社の中でデザインが「一つの大事な仕組み」として定着することを大切にしています。

グッドパッチのメンバーはお客さまへのコミットメントやビジネススキルが高い人が多く、本当にリスペクトしています。お客さんに必要なことを考えてデザインを届けられる人が多いし、提言だけではなく、実行可能性、運用性を踏まえて戦略的に提案しています。ユーザーやモノづくりの本質に向き合いたい、という共通の価値観がある。これも、私がグッドパッチでクライアントワークを続ける理由の一つでもあります。

「組織の制約に阻まれてできなかった」を乗り越えられる場所がここにある

──これまでいろいろな組織を見てきたAyaさんから見て、どんな人がグッドパッチに向いていると思いますか?

お客さんにとっていいものを届けるという気持ちを、最後まで持ち続けられる人です。基本的なことだと思われるかもしれませんが、これが一番大事です。目の前のクライアントとその先にいるユーザーの両方を見て、諦めない人。エンドユーザーだけでなく、相対するお客さまのハートも揺さぶるほどコミットしたい人。

そして、べき論だけの議論に違和感を持ち、お客さまに寄り添い、根本的な課題を一緒に見つけ、実現性のある状態を知恵を絞りながらメンバーと共に作っていく。そういう仕事がしたい人にとって、グッドパッチは「ここまでできるんだ」と思える場所だと思います。

──「いいものを届ける」ということに、とことん向き合える環境というわけですね。

私自身「いいものを作りたかったのに、前提や制約でできなかった」という悔しさを何度も味わってきました。現場では「ユーザーにとって必要なのは分かっているのに、組織の都合でできない」「作ることが目的になってしまっている」という状況が起きがちですよね。

同じような経験をしてきた方には、過去できなかったことを、ここで実現してほしいです。ユーザーに届く体験をつくるだけでなく、組織の中にその発想が根づいていくところまで伴走する。そういう“最後まで責任を持ちたい人”にとって、グッドパッチは挑戦しがいのある場所だと思います。

組織の壁というのは、外から見ると制度や構造の課題に映るかもしれません。でも私が向き合っているのは、現場が自分の言葉を取り戻し、行動として自発的に続けていくにはどうしたらいいか、という本質的な泥臭い課題です。内側から語りたくなる空間をデザインする──これこそが私が考える「究極のクライアントワーク」なのかもしれません。

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