管理職を経て、40歳を前にプロダクト制作へ原点回帰 デザイナーに学び、グッドパッチで磨かれた「プロジェクトマネージャー」の存在価値
せっかく作るのだから、いいプロダクトを世の中に出したい──。そう考えるプロジェクトマネージャーの方は少なくないと思います。
今回登場するのは、Webサービスやアプリの企画開発を手掛ける企業で、制作現場での活躍後に部門長を歴任し、充実したキャリアを築きながらも、あえて「ものづくりの最前線」への復帰を選んだプロジェクトマネージャーの永田です。プロジェクトマネージャーは「安心の土台」を作る人。そう語る彼が「学び直し」の場としてグッドパッチを選び、PMとして見出した新たな価値とは何でしょうか。
インタビューでは、進行管理に留まらないPMの存在価値、PMが目指す理想のプロジェクトチーム、デザイナーと働くことの魅力など、さまざまなトピックで話が盛り上がりました。
デザイン会社で働くプロジェクトマネージャーがどういうことを考えて仕事をしているのか、ぜひご覧ください。
目次
マネジメントも経験したけれど、捨てきれなかった「ものづくり」への思い

──永田さんはエンジニアとしてキャリアをスタートし、そして組織の部長職まで務められたと伺っています。なぜ、エンジニアになろうと思ったんですか?
永田:
「いいデジタルプロダクトを世の中に出したい」と思ったのがきっかけですね。ただ、エンジニアになりたかったわけではないんです。プロダクトの開発だけでなく、「どんなプロダクトを生み出すか」という上流部分にも深く関わりたくてWebディレクターなどを目指していました。デジタルプロダクトの仕組みや制作の流れを理解するため、最初はエンジニアとして現場に入ったという形です。
その後、テクニカルディレクター、Webディレクター、営業など、制作と企画の橋渡しやプロダクトをユーザーに届けるためのさまざまな役割を担わせてもらいました。
──すごいですね。それだけ部署異動を繰り返すのは、側から見ると大変そうにも思いますが。
永田:
大変なこともありましたが、上流から下流まで一貫してものづくりに関わる楽しさがありました。役割や責任範囲が変わっても、何を解決すべきかを考えて、周りのメンバーと協力してリリースをするということは変わりません。どの役割でも、新しい課題を見つけて解決していくプロセスを楽しんでいたんだと思います。
──相当活躍をされていたと思いますが、「転職」を決断されたのはなぜでしょうか。
永田:
キャリアを積む中で、開発部門やコーポレート部門の部長職などマネジメント業務のウェイトが増え、徐々にものづくりの現場から離れていきました。組織運営の楽しさはありましたが、現場でものづくりに関わる機会が減ってしまい、40歳手前で「もう一度手触りのある現場に戻って、新しいことを学びたい、良いものづくりを学び直したい」という気持ちが強くなっていったんです。
「プロジェクトマネージャー」という仕事が好き グッドパッチはキャリアを生かし、デザイナーと一緒に学べる場所だった
──年齢的にもう一度現場に戻るというのはすごい決断だと感じました。「学び直し」の場として、グッドパッチを選んだ理由を教えてください。
永田:
グッドパッチは、昔から「Goodpatch Blog」などを見ていて、デザインの重要性を徹底して実践している会社という印象でした。かっこいい成果物はもちろんですが、その裏側でどんな意思決定が積み重ねられていくのか、そのプロセスを間近で体験し、学びたいという思いが強かったんです。
グッドパッチから声がかかったときはうれしかったですね。自分がそれまで参考にしていたデザイナーの隣でものづくりを直接学べる環境があるわけですから。
そして、自分が学ぶだけでなく、これまでのプロジェクトマネージャーや組織運営の経験を生かして、自分がデザイナーに貢献できる、ものづくりに貢献できる価値はきっとあるのではという自信もありました。相互に学び合える・支えあえる場所だと思い、グッドパッチで働くことを決めました。
──永田さん自身はさまざまな経験をされてきたと思いますが、「プロジェクトマネージャー」という職種を選んだのにはどんな理由があるんですか?
永田:
チームを作って、メンバーを支援したり、みんなで価値を磨いていくプロセスそのものが楽しいんですよね。デザイナーにしても、エンジニアにしても、作り手は尊敬できるところが本当に多いです。
ただ、人それぞれ得意なところもあれば、苦手な部分もあります。最高なプレーヤーたちが最大限の価値を発揮するために必要なことを見つけてサポートし、チームとして最大のアウトプットを出すという楽しみがあるので、プロジェクトマネージャーという仕事が好きなんです。
プロジェクトマネージャーは「揉めない進め方」を設計する人ではなく、前に進めるための「安心の土台」を作る人

──グッドパッチに入って、入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
永田:
デザイナーが非常に優秀、というのはイメージ通りでした。彼らと近い距離で働き、毎回「そう来たか」という解の出し方や視点に出会えることはやっぱり楽しいですね。どのプロジェクトでも新しい驚きや学びがあるので、いろいろな案件を担当したいというモチベーションにつながっています。
一方で、会社としての仕組みやプロジェクトの進め方といった部分はまだ整っていない部分も多いとは感じました。ただ、それもネガティブなことだとは思っていません。
──それはなぜですか?
永田:
プロジェクトごとに状況は違いますし、型が整っていないことで、デザイナーの工夫の幅が広いというか、彼らのクリエイティビティが発揮されやすい。その結果として、いいものができるという面もあります。だからこそ、プロジェクトマネージャーがいる価値があると思ってますし、活躍できるところも多いのかなと。
例えば、クライアントが望む進め方と、デザイナーの進め方の間にギャップが生まれることも少なくありません。そういうときは、自分たちの活動やアウトプットの趣旨をクライアントに説明し、プロセスや成果物を整える必要があります。クライアントを含めた良いプロジェクトチームを作るためには、そういったすり合わせはとても大切だと思っています。
──間に立って調整することで、プロジェクトがうまく進むようになるポイントが多いということですか。
永田:
プロジェクトが前に進まないときって「誰かが何かに対して不安に思っているとき」だと思っています。だから、クライアントをはじめとしたステークホルダーがどんなところに不安を持っていそうかは常に観察しています。「納期はいつか」「どこまで作るのか」「どうやって進めるのか」「誰が担当なのか」といった判断ポイントや現状との齟齬の有無などを明確にして、一つひとつコミュニケーションの中で疑問を解消していきます。
何を判断・合意すればお互いに安心できるのか、といった見通しをていねいに共有することで、不安やズレを未然に察知して調整することを意識しています。これはクライアントに対してだけではなく、社内のチームやパートナー企業などに対しても同じです。
──それがプロジェクトマネージャーの価値ということですね。
永田:
プロジェクトマネージャーの役割として「進行管理」を挙げる人は多いですが、それだけではありません。意思決定の摩擦を減らし、期待値と責任範囲をそろえて、チームが迷いなく進める“足場”を作る役割だと捉えています。「揉めない進め方」を設計する人ではなく、前に進めるための「安心の土台」を作る人でありたいですね。
また、クライアントに寄り添いながらも、ユーザー価値という本質的な軸で提案し直す役割を担うことも重要だと考えています。しばしば生まれる、クライアントの“望む形”とデザイナーが実現したい“価値”の間のギャップを言語化し、ユーザーが得られる価値に照らし合わせて合意をつくり、プロジェクトを前進させていく。そのためにプロジェクト内で何が必要なのかを考えて整える。それがグッドパッチにおけるプロジェクトマネージャーの仕事だと考えています。
──作ろうとしているプロダクトやサービスの「価値」に着目するところが、デザイナーと働く、デザイン会社ならではのプロジェクトマネージャーの特徴かもしれませんね。
永田:
最高なプロダクトを創造する部分は信頼できるデザイナーがいるので、その価値を実現し、ユーザーに届けるところに責任を持ちたいと思ってます。だから、良いものづくりのために「どうすればデザイナーやエンジニアが力を最大限に発揮できるか」を常に考えています。
デザイナーが本質的な課題解決に集中できるよう、現場の障害や判断ポイントを先回りして整理したり、最適な進め方や意思決定の枠組みを整えることで、みんなが迷わず進められる“場”や“型”をつくる。やっぱりデザイナーのみんなには、存分に暴れてほしいですから。
──永田さんは「いいチームを作る」ということを大切にしていると思いますが、どんなプロジェクトチームが理想だと考えていますか?
永田:
それぞれの責任範囲がはっきりしていて、その範囲は安心して任せられるようなチームになるように整えたいと考えています。体制図などで表現されるような上下関係というよりも、横並びというイメージが強いです。そういう状態が、領域を超えた提案や協力もしやすいチームだと思っています。
プロジェクトマネージャーが指示役のような形で上に立つケースもありますが、そうなるとPM自身がチームの限界値を決めてしまうことにもなりかねません。そうではなく、それぞれの領域で突き抜けている人をみんなで支えることで、プロジェクト全体のアウトプットを最大化する。グッドパッチにはそういう文化があると思います。その中で、これまでの自身の経験を還元して、チームのアウトプットを底上げしていきたいですね。
グッドパッチに来て、ものづくりのためのプロセスの選択肢が一気に広がった それでもまだやるべきことはある

──新しい学びを求めてグッドパッチに来た永田さんですが、PMを務める中で得られたものについて教えてください。
永田:
一言で言うと、「いいデジタルプロダクトを作るためのプロセスの選択肢が一気に広がった」ことです。特に、教科書には書かれていないような“生きた実践知”、現場でデザイナーが本質的な課題を素早く見抜き、解決策を打ち出していくプロセスを日々目の当たりにできることが大きな刺激になっています。
SIer的な要件定義は、“クライアントからの要求・要件を整理する”ことが中心となることも多いですが、グッドパッチではユーザー価値を起点に論点を整理し、設計していく点を実践から学べたのが大きいです。結果として、プロジェクトの質が確実に上がり、デザインを大事にしたプロジェクト設計と進行の解像度も高まりました。
──永田さんがこれから実現したいことや、今後チャレンジしたい領域について教えていただけますか?
永田:
グッドパッチでは開発まで関われるプロジェクトは、全体から見ればまだまだ少ないです。事業の企画からリリースまで、一貫して責任を持ってやり切れるプロジェクトを増やし、成功体験をみんなで共有していきたいですね。
また、今はPMチームの人数などの都合で、プロジェクトへのPMのアサインには限界があるので、これまでにPMチームのみんなが培った進行や判断の「型」を整理し、PMが不在でもデザイナーが安心して動けるようにしたいと考えています。
そのために、“意思決定のための見取り図”や合意・判断フロー、その他のプロジェクト進行を型化し、チーム全体で迷いなく前に進める仕組みを広げていき、グッドパッチ全体としての良いものづくりの事例を増やしていきたいと考えています。
デザインを大事にしたプロジェクトに関わりたい仲間を待っています
──ありがとうございます。最後にお聞きしますが、永田さんのように経験豊富な方にとって、グッドパッチで働くことにどんな魅力があるでしょう。どんな人にオススメしたいですか?
永田:
そうですね、魅力としてまずはいわゆる上流工程には必ず関与できるというところですね。プロダクトを「作る」ことは多くの現場でできると思いますが、グッドパッチは「なぜ作るか」といった部分から、徹底的にこだわれる。ユーザーやビジネスのことを考えた提案を大事にしています。
正直にいうと、それを実現するための苦労や葛藤は多いですが、そこまでを実際にやれる環境があって同じ思いの仲間がいるというのはとても魅力的です。自分が関わってきたこれまでの上流工程の進め方に課題を感じていたり、もっと良くできるのではと考えている人にとっては、学びが多く、いい環境になるはずです。
あと、PMとしてさまざまなプロジェクトを経験してきた方であれば、これまでにやってきたことが「デザインではない」と思われている人も、デザイン会社の中で貢献できることや、活躍できるシーンは本当に多いです。
グッドパッチの現場はそれぞれのプレーヤーの裁量が大きく、良い意味で型化されていなかったり、未整備な部分が残っていることもあります。だからこそ、これまでのプロジェクト推進やチーム運営の経験を現場に還元し、チーム全体のアウトプットを底上げするという価値を発揮できると思います。
──PMのキャリアにとってもいい影響があると言うことですね。
永田:
はい。グッドパッチには「Go Beyond」というコアバリューがあります。自分の責任範囲以外の領域に積極的に染み出していくことを良しとしており、自分の担当領域に制限はないということです。
自分が持っているスキルや経験はもちろん、デザイナーやプロジェクトから得られる学びを生かしてPMの枠を超え、PdMやUXデザイナー・テクニカルディレクターなど、他の領域や職種にチャレンジすることだってできます。「PMだからここまで」という制限はなく、学びながら役割を広げられるのは大きな魅力です。
また、フルリモート・フルフレックスで働きやすいので、趣味や他の活動も大事にしたい方、家庭や家族のケアがある年代の方などにも、力を発揮しながらも両立しやすい環境だと感じています。
デザインを大事にしながら、魅力的なデザイナーたちとお互いに尊重し合い、一緒にいいモノづくりがしたい、新しいことを経験したり、学びたい。そんなプロジェクトマネージャーの方にはぜひチームに参加していただきたいです。お待ちしてます!
