2018年5月経済産業省・特許庁が「『デザイン経営』宣言」を発表。デザインは、企業やブランド価値向上のための重要な経営資源であると提唱されています。しかし、日本企業においてデザイン経営の実例はまだ多くありません。海外ではデザイナーがファウンダーにいる企業の成長が目覚ましく、海外市場において日本企業の競争力が弱まることも懸念されています。

そんな中、デザインをビジネスの重要な要素として活用する経営者がいます。2018年度 グッドデザイン賞ベスト100を受賞した「モチベーションクラウド」を提供する株式会社リンクアンドモチベーション 取締役の麻野耕司さんです。モチベーションクラウドは「すべての組織が、これで変わる」をコンセプトとし、組織状態の把握から改善プラン実行までを支援するクラウドサービスで、GoodpatchがUI/UXデザイン、開発をお手伝いさせていただいています。

2018年10月31日から11月4日までに開催されたGOOD DESIGN EXHIBITION2018にて麻野さんとGoodpatch代表の土屋が講演した『「デザイン経営」宣言推進企画 〜デザインが経営にもたらす可能性』の書き起こしをお届けします。

麻野さんが「デザイン」という言葉に抱いていたイメージ

土屋:
本日はよろしくお願いします。今までデザインに触れてこなかった麻野さんが「デザイン」という言葉をどう捉えていたか、そしてGoodpatchと仕事をすることによって「デザイン」のイメージがどう変化したのかというところから、お話を伺いたいと思います。

麻野さん:
僕のデザインという言葉への認識は、3つのステップで変化しました。

最初のステップは、そもそもデザインという言葉への認識がなかった。リンクアンドモチベーション創業から15年間、「デザイン」という言葉は社内で一度も出てきませんでした。弊社は「人」の力を信じる会社で、一人ひとりのモチベーションがとても高いんです。それが素晴らしいところでもありますし、今でもその想いは変わっていません。

モチベーションクラウドを立ち上げる時、デザインのことは全く考えていなかったんです。とりあえずモチベーションクラウドの基盤となるシステムを作ることを最優先にしていました。なので、初期のモチベーションクラウドのUIは全部僕が考えて、エンジニアに指示を出していたんですよ。

土屋:
本当ですか(笑)。よくできましたね。

麻野さん:
正直、当時は自分のデザインが超イケてると思っていました。でも実際は、まぁ使いにくいわけです(笑)。どこにどのデータがあるのかが、とにかく分からないんです。クライアントが分からないだけではなく、弊社のコンサルタントすら分かっていない状態でした。それくらい複雑だったんです。それまで僕は、新しいサービスを作るには「コンサルタントが優秀なこと」「システムの開発ができていること」が大事だと思っていたんです。しかしそれらだけではなく、デザインというのものが必要そうだ、と気がついたんです。その時に初めて「おや?」と思った。これが最初のステップですね。

土屋:
当時マーケットの中でUI/UXデザインが大事だと言われていましたが、麻野さん自身が内発的にそれに気づいたんですか?

麻野さん:
気づいていませんでしたね。モチベーションクラウドは、弊社で初めてのITサービスの開発でもありました。それまで提供してきた組織変革コンサルティングは、基本的にクライアントとコンサルタントが対面するビジネスだったんです。組織診断して、調査結果が出て、その報告を経営陣と人事を目の前にして紙の資料を見せながらご報告する。研修の場合、参加者の前で講師がスライドとテキストを用いながら対面で説明する。これらの組織診断の調査報告や研修は、コンサルタントのプレゼンテーションが上手ければ伝えたいことがだいたい伝わるんです。デザインは考えられていなくてもなんとかなる、という力技の世界でした。でもクラウドサービスになって突然、すべてが非対面でのコミュニケーションになったんです。もちろんそれが僕たちの狙いでもあったのですが。

以前から、経営陣に調査結果を報告しても、そのあとの組織改善にうまく活用されていないケースがいくつかありました。そこで、クラウドを活用することで各部署のマネージャーやメンバーにも組織診断結果が共有されて、メンバー自身がクラウドを参考に改善できるのが売りなりました。その際1万人の社員に1部署ずつコンサルタントが説明することは物理的に不可能。そのため操作方法や診断結果の閲覧方法をクラウド上のみでユーザーが理解していただく必要がありました。今までのようにコンサルタントが直接ユーザーに説明することができなくなり、そこで初めてユーザーが「見て、わかる」ことの大切さに気づいた。でも、このような仕事を僕はやったことなかったんです。あらゆるクライアントが「モチベーションクラウドをどう使ったらいいのかわからない」という問題が噴出しました。

土屋:
なるほど。では、次にそこからなぜデザインが重要になったのか伺いましょう。

「モチベーションクラウド」にデザインが重要だと思った理由

麻野さん:
「見てわかりやすいものを作らなければ」となったとき、自分たちだけではどうしようもできなかった。デザインのデの字も考えたことがなかったんですもん。そこで、ちょうどGoodpatchさんが僕たちのクライアントであることに気づいたんです。

土屋:
もともと僕らがクライアントとして、リンクさんに研修などをお願いしていたんですよね。

麻野さん:
そうでしたね。UI/UXデザインの分野でトップランナーでもあったので、僕が土屋さんのところに直接お願いしに行きました。でもね、聞いてくださいみなさん。最初断られたんです(笑)。

土屋:
最初に来た時はリソースがどうしても都合がつかず、お断りさせてもらったんですよね。それから一年経たないくらいで、麻野さんがもう一度Goodpatchに来てくださいました。

麻野さん:
最初お願いした時は、僕自身もデザインの重要性を分かっていなかったんです。「モチベーションクラウドで組織を変えたい」という想いはあったのですが、「デザインの力で良くする」という想いがなかったんだと思います。2回目にお願いしにいった時は、ふたつの想いが伝わったのかなと思います。

土屋:
二度目に麻野さんが来てくださったとき、弊社のチームメンバーに壮大なプレゼンテーションとビジョンを語ってくれましたよね。そこで弊社のメンバーも、ハッとなって「世界を変えられるかもしれないんだ」と心を動かされたんです。

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プロジェクトを通してデザインに対するイメージはどう変化したか

土屋:
では、実際にGoodpatchとプロジェクトをやっていく中で、デザインに対するイメージはどう変わりましたか?

麻野さん:
僕たち自身、いろんなことを勉強させてもらったプロジェクトです。僕がビジネスとして考えたことをGoodpatchのデザイナーの皆様が形にしてくれました。そこも非常に素晴らしかったと認識しております。例えばモチベーションクラウドでは、See・Plan・Do・Check&Actionという4つの項目があります。

Seeという現状把握の段階で、従業員の組織状態を可視化・数値化されており全従業員が確認することができます。一万人の組織でも現場の人たちがSeeの組織状態のデータを見たときに、誰もが一目で問題点がわかるインターフェースにしないといけない。今まではコンサルタントの説明頼りだった僕たちは、そこの発想に行き着かなかったんです。そこで、Goodpatchのデザイナーたちが一目でわかるようなUIを作ってくれました。

他にも、診断結果を見て終わってしまう会社が多いという問題もありました。問題を解決するためには「施策を考えよう」とか「施策を実施しよう」と、ユーザーがSeeからPlan・Doにシームレスに移れる必要があって、ユーザーが使いやすいUIがとても重要です。モチベーションクラウドは「施策の結果が良かった・悪かった」を一目で理解することができ、問題点からワンクリックでPlanに移ることができます。
1ヶ月に1回・2ヶ月に1回など短スパンで施策を実施し、その結果からもう再度アンケート調査をします。それらをレポートでまとめ、改善していき、半年または1年に1回全体のデータをとることで、全てのステップを一貫して繋げているんです。

僕たちが提案したビジネスのコンセプトを、Goodpatchのデザイナーは鮮やかに形にしてくれました。組織診断だけで終わることなく、Plan・Do・Check&Actionという改善に繋がるシームレスなUIを再現していただいたのです。そのとき「デザインを考えないと、ユーザーやクライアントに価値が伝わらないんだ」と気づきました。これがステップ2ですね。

土屋:
なるほど。最初に麻野さんが自分で作られていたUIは、ビジュアルデザインの面で「ダサい」感じではなかったと記憶しています。でも、一画面にたくさんの情報量が入っていて「何をしたらいいかわからない」「なんのための画面がわからない」という課題がありましたね。おそらく、弊社が関わってモチベーションクラウドの画面数が結構減ったと思います。

麻野さん:
確かに減りました。

土屋:
一見するとものすごくシンプルな画面だけども、やりたいことが最短距離でできるんですよね。

麻野さん:
デザインと聞いたときは「美しいものを作る」というイメージだったんですけど、使える物をつくる、使いやすい物をつくるっていうことなんだなと認識しましたね。

土屋:
日本ではまだ多くの人が「デザイン=デコレーション」と認識しています。もちろんそれも大事ですが、当然デザインとは機能するものであり、使いやすいことが重要な要素ですね。

最初に麻野さんから「元々は営業マンがプロダクトの説明をしているため、プレゼンテーションをしてユーザーがシステムを使いづらいと感じても、営業のプレゼンテーションで賄える」という話がありました。一方アメリカの場合、だいぶ昔からUI/UXに力を入れて使いやすいものを作ろうとしているんです。その背景にあるのは、アメリカの国土の広さ。都市が分散をしているため、サンフランシスコの会社のシステムをニューヨークやヒューストンなど、遠くにある会社が利用することがほとんどです。その場合、営業マンが毎回対面でのプレゼンテーションに行けないわけですよ。日本は東京一極集中のため便利でもありますが、それ故にソフトウェアの品質を下げてしまった原因もあると思います。海外、特に欧米では、BtoBシステムの管理画面が使いづらい時点で今後一切使ってもらえないこともあります。管理画面が使いづらい時点で即解約。営業マンがその穴を埋められないんです。そのため、誰でも使いやすいUI/UXに力を入れているんです。

日本でもこれから営業だけではなく、ソフトウェアとしていかに使いやすいシステムを作るかが重要になっていくと思います。なので、このタイミングでモチベーションクラウドに僕らが関わることができて本当によかったと思っています。

経営にデザインを取り入れるメリットとは?

土屋:
麻野さんがデザインを重要と考えるまでのステップを2つ目まで伺ってきました。次のステップはどんなものだったんですか?

麻野さん:
ステップ3は、デザイナーと打ち合わせをするのが楽しくなったことです。僕が抱えている問題をデザイナーがどんどんアイデアで解決してくれるんですよ。例えば、組織問題を抽出するためのマークシート調査がWeb上にあり、設問が100問くらいあるんです。でも回答するのがとにかくめんどくさい。クライアントにも何度も言われていて。スマートフォンで回答する場合、5段階評価の選択ボタンが小さくて、的確に選ぶのが難しかったんですよね。更にようやく選択できても、次の問題にスクロールしなきゃいけないとか。ユーザーが回答しづらい設計になっていたんです。

悩んでいた時に「麻野さん、こんなの作りましたよ」と Goodpatchのデザイナーが新しい画面設計を提案してくれました。ポチッと回答を選択したら、次の設問に自動で画面がヒュンって上がるんです。自分でスクロールする必要がないため、ぽんぽん次の設問を答えることができました。このように、色んな問題を解決していただきましたね。いつしかデザイナーのメンバーと語り合い、飲みにいくくらいの仲にまでなったんです。あるときに教えてもらったデザインの考え方の一つが、オブジェクトベースのデザインとタスクベースのデザインでした。

土屋:
最近だとシステムのUI/UXはオブジェクトベースかタスクベースなのか、議論されていますね。日本のBtoBの管理画面は、8割近くがタスクベースで作られています。タスクベースの場合、タスクが最初に表示されるため、画面の数と情報量が多くなり使いづらくなってしまいます。一方、オブジェクトベースで「対象」をベースに作る場合、画面数を大幅に削れるわけです。iPhoneの写真アプリのUIは、写真を選択した後に編集を選びます。オブジェクトを選択してから、何をさせたいかを決めるわけです。これがオブジェクトベースで作るUIですね。

麻野さん:
タスクベースは切り取るとか、加工するとか編集するっていうのが先に来るんですよね。あるページを作っていた時のことです。ページで改善する項目を選択し、その後改善項目に対するAction・Planと詳しい調査を選択できる機能がありました。僕は「Action・Planを確認するページ」と「調査するページ」が分かれたタスクベースで考えていたんです。その時Goodpatchのデザイナーに「麻野さん違う、ここはオブジェクトベースでいこう」と言われました。モチベーションクラウドの世界観は、改善する一つひとつの項目が主役のオブジェクトベースなんです。「理念を共有する」「上司が役割を提案する」「仕事にやりがいを感じる」とか。これらの項目を主役にして、その下にAction・Planを入れたり、途中進捗のデータを取ろう、と言われたんです。

モチベーションクラウドの主役は、「診断」や「改善」などのタスクではなく、項目の魅力を高める「理念」とか「評価」とか「上司」などのオブジェクトが主役、という新しい視点を教えていただきました。その時に僕はビジネスのインスピレーションが湧いたんです。要は、プロダクトだけじゃなくてビジネスでもオブジェクトベースで考えるんです。今まではセールスやマーケティングの場面で「診断しましょう」とか「改善しましょう」というタスクベースで運用していました。でも実際にが興ユーザーが興味があるのは、オブジェクトなんです。例えば「理念の浸透で困っていませんか?」とか「評価が納得できなくて困っていませんか?」など目的を提示することで、新しいユーザーにも興味を持ってもらえました。

モチベーションクラウドを利用しているユーザーをフォローするユーザーコミュニティーというものがあります。以前まで業種や企業の規模ごとでセミナーを開いていましたが、「理念浸透のスコアをあげたい人集まれ!」というオブジェクトベースに変えました。Goodpatchさんの「オブジェクトベース指向でやりましょう」という発言から、マーケティングもセールスもカスタマーサポートも、ユーザーコミュニティーも全部変わっていったんですよ。

土屋:
これすごい話ですね。

麻野さん:
そうなんですよ。僕、その時にすごい感動して。「あ、ビジネスのあり方とやり方が変わる」と思ったんです。そこからさらにビジネスがうまくいくようになりました。そこで僕が実感したのは、ステップ2の「ビジネスで考えたことをデザインで形にする」ということ。そしてステップ3が「デザインによってビジネスそのものが変わっていく」こと。ステップ1では、「デザインを全く知らない」。次にステップ2で「デザインでビジネスを形にする」。そしてステップ3で「デザインによってビジネスそのものが変わっていく」。

ビジネスとデザインは並列で、お互いに影響を及ぼしあうんだっていうのに気づいたんですよね。

土屋:
麻野さんとは前にも一緒に話をしたんですけど、そのときに「ビジネスとデザインは主と従の関係で、デザインが従だと思っていた。でも今は完全に並列で、振り子の思想のように、ビジネスとデザインが行き来するように変わった」とおっしゃっていましたね。

麻野さん:
そうですね。そこで僕の経営観が変わりました。

土屋:
すごいブレイクスルーですね。

麻野さん:
はい。その翌週からやったのはGoodpatchのメンバーをモチベーションクラウド事業の経営会議に入れることでした。

土屋:
これはとんでもないことですね。

麻野さん:
他のマネージャー陣が「は?」となっていましたね。なんで外部の人が経営会議に入ってんの?って。

土屋:
しかもラフな格好で(笑)。

麻野さん:
でも僕が「あかん、ちゃうねん」とマネージャー陣を説得しました。経営の意思決定をするところからデザイナーを入れないと、いいビジネスができないと。そこからモチベーションクラウドの経営が変わりましたね。

リンクアンドモチベーションにCDOが必要な理由・CDOに期待すること

土屋:
すごいですね。弊社でも、まだそこまで経営会議に毎回参加させてもらう事例ってあんまりないんですよ。でも、そこをマーケットにずっと問い続けていています。

「デザイン経営」宣言でも「経営にデザインを」という言葉が叫ばれていますね。今年の5月に経済産業省・特許庁が発足し、今後5年に渡って経営にデザインを取り入れていくことを国が推進しようしています。この中に、経営とデザインの関わり方についてや、デザインが経営にもたらす価値やデザイン経営の特徴、推進、などデザイン宣言者が経営チームに参画するというテーマがあります。

アメリカで発表されている「フォーチュン100」のうち企業がデザインエグゼクティブを設置している割合が14%。またその中でも25%の企業にデザイン責任者がいます。日本でもこの2、3年、スタートアップでいわゆるCXO (Chief Experience Officer) やCDO (Chief Design Officer) を置く人たちが増えているという背景があります。麻野さんはモチベーションクラウドのプロジェクトを通して、デザイナーが経営チームに参画することのイメージが湧いたのではないかと思います。

麻野さん:
そうですね。今まではこういう世の中の流れを知らなかったので、改めてデザインと経営との密接な関係性を実感しました。

土屋:
リンクアンドモチベーションでも今後、経営層にコミットしていくようなデザイナーを探しているんですか?

麻野さん:
そうですね、CDOを募集しています。

土屋:
いろんな企業がCDOを求めていると思いますが、人物像のイメージはありますか?

麻野さん:
もちろんデザインを理解しているほかに、ビジネスの話ができることですね。ビジネスで考えたことをデザインで形にできるのも大切なんですけど、デザインからビジネスを考案できるような人材をCDOとして迎えたいです。

土屋:
越境人材、いわゆる領域を超えるような人材ですね。マーケットでも話題に上がっています。Goodpatchにもバリュー、いわゆる行動指針の中に「領域を超える・Go Beyond」というものがあります。僕らのミッションである「デザインの価値を証明する」ためには、デザインの領域だけで語っていても世間に大きなインパクトを起こせないし、変えられるものがデザイン領域内の限定的なものになってしまう。多くの人により大きな影響を与えるためにも、領域を越えていけるような人材が必要だと思っています。

「デザイン経営」宣言のデザイン人材育成の項目では「デザイナーの採用は美大卒だけでない」と述べられています。今回のリンクアンドモチベーションのチームに入ったGoodpatchのデザイナーたちもそうですが、弊社には美大卒がほぼいません。

麻野さん:
ああ、そうなんですね。

土屋:
美大卒のデザイナーは数人いるかいないか、くらいです。リンクさんの経営会議に参加したPMは、大学中退ですし(笑)。そこは実はあんまり関係なかったりするんですね。

麻野さん:
確かに。

土屋:
ビジネスとデザインの越境ができるという部分と、他にこういう要素が欲しいとかありますか?

麻野さん:
「ビジネスに興味をもつということ」と「ビジネスサイドとコミュニケーションがとれること」の2つですね。Goodpatchのメンバーは、ビジネスにすごく興味があるんです。経営会議で業績の共有やプロダクト以外のマーケティング・セールスやカスタマーサクセスのチームの報告があるときも、興味津々で聞いているんですよ。僕がプロダクトのカンファレンスのためアメリカに視察に行った時も、ついてくるんですよね(笑)。「僕も行きます」って。そこで一緒にいろんなプロダクトを見ながら「あのプロダクトのデザインはこう」とか「このビジネスモデルは面白い」とか一緒に議論できるのがとても良かった。やはり、ビジネスへの興味関心が高い人材にぜひ来てほしいです。

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あとは、ビジネスサイドとコミュニケーションが取れることですね。経営会議ではセールスの人間ばかりで、デザインに全く興味がない人ばかりなんです。コンサルタントである彼らは「セールスのプレゼンが全て」と思っているんですよ。そういう人とも相手の文脈で話せることが重要だと思います。コンサルタントのメンバーはプロダクトが売れなかった場合、セールスに原因を探そうとします。でもGoodpatchのメンバーは「この提案書をこういう見せ方にしたらもっと売れるんじゃないですか?」って相手の文脈で話してくれるんです。そこからだんだんセールスのメンバーも、「ビジネスにデザインって大事なんだ」と共感する人が増えていきました。ビジネスへの興味関心とビジネスサイドとコミュニケーションが取れるのが大事だと思います

土屋:
翻訳力ですね。アメリカのWordPressに在籍されているジョン・マエダさんは、Design in Tech Reportで前年のアメリカのデザインのトレンドを発信して、資料として公開しています。そのなかで、”Design Education Gap” という「デザイナー教育のギャップ」について言及しています。マーケットが求めているデザイナーと、現在活躍しているデザイナーたちの教育のギャップについてです。その中で「マーケットで求められているけども、今のデザイナーが持ってないスキル・教育上教えてないスキル」の第一位が「ビジネス&ファイナンス」なんですよ。

麻野さん:
なるほど。

土屋:
今後、ビジネスとファイナンスがかなりデザイナーに求められてくる時代になってきていています。ビジネスとファイナンスを知らないと、ビジネスの重要なシーンでインパクトを残せない。

他にも、経営層のデザインリテラシーを高めるというテーマがあります。麻野さんはプロジェクトを通してデザインの重要性を理解したと思いますが、リンクアンドモチベーションの役員のデザインへの意識変革ができると思いますか?

麻野さん:
ちょっとずつですが、できていると思います。Goodpatchさんにデザインを依頼する時も、社内で「そんな投資いるんですか?!」という反応をされましたが、ちょっとずつデザインへの認識が高まってきていいます。

土屋:
リンクさん自体が変わりはじめてきたんですね。

麻野さん:
デザインの力が数値としてダイレクトに反映されている、というのもあります。継続率やユーザビリティが上がったため、解約が少なくなってきているというのも要因の一つです。経営会議の中でデザインの力を説明することで、認識も高まってきています。いきなり全部パーフェクトなデザイン経営をするっていうのは難しんですけれども、少しずつ結果が出てくる中で経営陣の意識も変わってきているんじゃないかなって思います。

昔だったら「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれてもメンバーからの反応はなかったと思います。今では、周りのメンバーも「おめでとう!」と喜んでくれたり「デザインにもっと取り組んでいこう」という流れが増えてきたんです。

土屋:
BtoBのサービスで「グッドデザイン・ベスト100」を受賞することはすごく珍しいことだと聞きました。モチベーションクラウドがそれを受賞したことは、BtoBサービスの中でも抜きん出る効果になると思います。
今回はモチベーションクラウドという、SaaSのビジネスでグッドデザイン賞を受賞し、経営層のデザインに対する意識がどう変わったかお話しさせていただきました。

麻野さん:
この場で皆さんにお伝えしたいのは、デザインを教わったことへの感謝です。今までは「こんな価値をユーザーに届けたい」という思いはあったけど、それが届かず悔しい思いをしたことが何度もありました。そこから、Goodpatchをはじめデザイナーさんが僕にデザインを教えてくれたことで、モチベーションクラウドを通して多くのユーザーに僕たちの想いを届けることができました。
モチベーションクラウドは、ユーザビリティを磨かなければいけない部分はまだいっぱいあります。これからも僕たちがデザインにこだわり、デザインを経営に取り入れ、モチベーションクラウドをより発展させることで、デザインがビジネスに影響することを世の中に伝えていきたいです。


GOOD DESIGN EXHIBITION2018『「デザイン経営」宣言推進企画 〜デザインが経営にもたらす可能性』の講演内容を書き起こしでお届けしました!
「すべての組織が、これで変わる」という麻野さんの強い思いをプロダクトを通して届けるためには、デザインの力が重要だったとお話ししていただきました。このように、デザインはビジネスの価値をユーザーに届けるために欠かせない柱なのだと経営者自らが理解し、発信することが「デザイン経営」の実践と言えるのではないでしょうか。
リンクアンドモチベーションが挑むHR Techは、現在注目を集めている領域です。デザイナーとして挑戦してみたいという方は、こちらからお話を聞きに行ってみてくださいね。
グッドデザイン賞受賞!HR Techにチャレンジしたいデザイナー募集!

また、モチベーションクラウドをGoodpatchがお手伝いさせていただいた開発秘話を聴きたい方は、iTunesSoundCloudからどうぞ!

Goodpatchでは熱意あるクライアントさまと一緒に、デザインパートナーとして新規事業立ち上げやサービスリニューアルのプロジェクトをお手伝いしております。デザイナーの育成、採用やデザイン組織の立ち上げ支援なども行なっているので、お困りの企業さまはぜひお気軽にお問い合わせください。