原点を振り返る―LayerX福島良典×Goodpatch土屋尚史が語る10年の歩みとデザインの価値
Goodpatch創立から10年。この10年で「デザイン」を取り巻く状況は大きく変化しました。また、Goodpatchにおいても、組織の崩壊と成長を経験。そんな苦しい時期を乗り越え、2020年6月、国内のデザイン会社として初の上場を果たしました。
今回は、Goodpatchが最初の成長を遂げるきっかけとなったGunosyの創業者で現在は株式会社LayerXでCEOを務める福島良典さんと、Goodpatch代表土屋尚史の対談をお届け。10年前は起業家として駆け出しだったふたりの出会いから、10年の間に起きた経営者としての変化、そしてこれからについて、どっぷり語ってもらいました。
目次
GunosyとGoodpatch、運命の出会い
土屋:
僕がふっきー(福島さん)と出会ったのが、確か2011年の10月だったかな。同年の9月にサンフランシスコから帰ってきてGoodpatchを創業するんですが、その1ヶ月後にサンフランシスコ時代に出会った、東大の大学院生だった関くんから「大学院の友達とサービスを作ったんで登録してください」っていうメッセージをもらって。それがGunosyだったんですよ。当時のUIって多分僕のブログにしか残ってないんじゃないかな(笑)
福島:
伝説のあれですね(笑)
土屋:
伝説のトップページ。当時、はてなログインっていうのがあったね。
リリース当時のGunosy
福島:
確かにそういうのありましたね。
土屋:
はてなログインを押した瞬間にエラーが出て、すぐ関くんに「バグっているよ」って教えたりして。
当時Sumiffyというシリコンバレー発のニュースサービスがあったんです。Gunosyをみた時に、それに似ていたので「おっ」て一瞬思ったけど、UIが「これはやべえな」と(笑)
福島:
めっちゃ恥ずかしいですね(笑)
土屋:
「Gunosyであなたの情報収集をもっと快適に」って言ってるけど、快適になるイメージがまったく湧かないって思って。で、関くんに「すごく面白そうなサービスだけど、デザイン面は大丈夫?」と伝えたんだよね。「もしかしたらGoodpatchで手伝えるかもしれないから、1回話しをさせて」と東大に行ったのが、ふっきーとの出会いですね。
でもさすがに大学院生からお金は取れないから、「タダでいいよ」って無償でデザインをすることにしたんです。
福島:
当時は、本当に法人化するなんて考えていなくて、創業者の3人(関喜史さん、吉田宏司さん、福島さん)とも大学院でAI、当時でいう機械学習の研究をしていて。3人ともITサービスを触るの大好きで、自分たちが困っていることを研究内容を使って解決できないかなって作ったのがGunosyです。
当時、SNSやはてぶ(はてなブックマーク)といったサービスが出てきて、情報氾濫していました。それをフィルタリングしてニュースを送るサービスがあったら面白いよね、と。
当時はRSSリーダーに登録して、1日1万件タイトルだけ素早く読むみたいなことをやってたんですけど、むしろ情報をフィルタリングして、10件だけオススメを教えてくれるサービスがあったら使いたいなって思って。それである意味ノリで作ってみたのが始まりです。
だから、デザインもパワポなんです。それっぽいフォントを探して(笑)
土屋:
そうそう。「ロゴをパワーポイントで作りました!」って言ってるから「パワポはデザインをするツールじゃないぞ!」って(笑)
福島:
当時は、PhotoshopやIllustratorが買えなかったんです。だからパワポでとりあえずやろうと。
土屋:
デザインに関しては3人はまったくの素人だったけど、彼らが作っていたサービスの裏側にある技術やアルゴリズムをみたときに、すごく可能性を感じた。僕はニュースサービスが大好きで、RSSリーダーの課題も感じていたので、直感的にもしかしたら日本からGoogleのような会社が生まれる可能性あるかもと思ったんです。
関くんとサンフランシスコで出会ったときには、(関くんが所属していた)松尾研究室のことはよく知らなかったけど、その後、松尾(豊)先生がとんでもない人だと分かり。
当時のシリコンバレーのインターネットサービスの多くはスタンフォードから生まれていた。なので、もしかしたら彼らも同じような未来を歩むんじゃないかと思ったら、デザインをやるよって言わずにいられなかったのよね。
福島:
最初はビジネスになるとまったく思っていませんでした。奇跡の連続だったなと振り返ってみて思います。
もちろんGoogle、Facebookみたいに学生が作ったサービスが急成長する話は知っていましたし、自分たちもそうなりたいなと漠然と思っていましたが、実現するとは夢にも思ってなかった。
でも、卒業まで時間があったので、社会人になってもサービスが続けられるように改善を続けていこうと1年間コツコツとやってたら、想像以上にユーザーがついてきてくれて。
アクティブユーザーが数万人なんて数字を達成できるんだと実感したときに、スタートアップの世界に飛び込んでみてもいいなと思えたんですよね。1年間ですごく技術力もついたし、普通に働くよりもいろんな意思決定ができて楽しかったんです。
世の中では、新卒のレールを外れると大企業いけなくなるって思われがちですが、今は明確に「違う」と自信を持って言えます。当時はそこまで自信を持って言えなかったですけどね。大企業なんかいけなくてもいいや、なんとか食っていけるだろくらいの感覚でした。
でも、自分以外の誰かがGunosyのようなサービスをやっていたらすごく嫉妬するし後悔するなと思ったんです。その感情に気づけた時に、本気でやってみようよって話になって。
参考記事:創業期の土屋のブログ「Gunosyというサービスに関わって思うこと」
Goodpatchの原点を形作ったGunosy体験
土屋:
当時の「Gunosy体験」は忘れられないですね。毎日「Gunosy」で呟いてる人をエゴサして、「いいね」をしていたんだけど、途中から「いいね」が押せなくなったの。
福島:
確かに。追いつかなくなりましたよね。
土屋:
途中から「Gunosy」って呟いている人の数がとんでもない数になって。あの体験は忘れられない。
自分たちが手伝っているサービスをこんなに多くの人が使うようになるんだって経験を、起業して1、2年目で体験できたことが、その後のGoodpatchを決定づけたなって思っていますね。
福島:
ありがたいですね。今でもそう言っていただけるのは。
最初デザインを引き受けてくれるって言われたときには「なんていい人なんだろう」って思いましたよ。サービスを使うばかりか、デザインまでやってくれるとは思ってもいなかったので。
土屋さんには土屋さんなりの狙い――僕らにベット(賭け)する意味合いもかなりあったと思うんです。2011年当時はスタートアップブームで、いくらでも他の選択肢があったと思うんですよね。僕らはサービスを作ったこともなければ、広めたこともなく、唯一あったのは、数百人の異常に熱狂したユーザーくらいでした。そんな中で土屋さんは、僕らに賭けてくれた。非常にありがたかったです。
あと当時のことで覚えているのは、僕らが炎上した時のこと。いろんな人から叩かれている中で土屋さんは一貫して僕らを守って、吠えてくれて。本当に熱い人なんだなと思いました。
極端な話、人間には2種類いると思っています。ひとつが実績や結果といった、その人の後ろにあるものを見て態度を変える人。もう片方はちゃんと「その人自身」を見てくれる人。土屋さんは完全に後者でしたね。
土屋:
なるほど……
福島:
だってあの時、土屋さんも引火してましたよね(笑)
LayerXの行動指針に「徳」っていうのがあるんですけど、つまりそういうことですもんね。先にリスクをとって、先にいいことをしろと。本当に良いものにベットすると自然と返ってくるといいますか。
土屋:
まあこれは、ロジカルに説明はできないよね。絶対返ってくるとは言えないから、返ってこなくてもいいと思ってベットするんだよね。
でも、ちゃんと返ってきましたよ。僕らとしてもGunosyを手伝ったことによる広告効果って何千万、何億ってレベルだったんじゃないかなと思っている。Gunosyのユーザー数が伸びるたびにGoodpatchに仕事が来るっていう状況はリアルにあったので。
社会の負や世の中にある便利じゃないものを便利にしたいという熱量のある人たちと仕事をする。スタートアップだろうと大企業だろうと関係なく、優秀で正しい感覚を持ってなおかつ挑戦をする人たちと仕事をすることがGoodpatchの原点になっていると思います。
そういう意味でもやっぱり、Goodpatchのストーリーを語るときにGunosyを起点にしないと語れないよね。本当にずっと感謝し続けているよ。
あの後にGoodpatchに応募してきてくれた人たちで、実際に入社してくれた20人のほとんどがGunosyを使ってくれてた人だったのね。あの当時Gunosyを使っているのは、情報感度の高い、いわゆるアーリーアダプターにあたる人たちで。だから当時は採用面接きた人に「Gunosy使ってますか?」って聞いてスクリーニングしてた(笑)
それくらい、当時Gunosyを使っている人はめちゃくちゃ新しいサービスに興味があったから、初期のGoodpatchを支えてくれていた人が多かったなと思います。そういう点でもGunosyには感謝してますね。
福島:
そう言ってもらえて良かったです。
リリース当時のGunosyアプリ。フッターには”UI Designed by Goodpatch”のリンク
土屋:
その後、大型調達をしてからのGunosyの成長は凄まじかったね。アプリも伸びたし、今では当たり前になっているネイティブアドを初めて取り入れたり。TVCMをスタートアップで1番最初に打ったのもおそらくGunosyだよね。
福島さん:
そうですね。飛行機って側から見るとと爆速なんだけど乗ってる自分は速く感じないじゃないですか。それと同じで、外から見た姿と自分自身の乖離は大きかったと思います。僕自身は、やれることをただやるって感じでした。でも、自分たちだけじゃ見られなかった景色なので、今もそこはプラスに残ってますね。
LayerX福島さんから見た10年前のGoodpatchの姿
土屋:
ふっきーからみて10年前のGoodpatchはどんな会社に見えていた?
福島:
最初の数年くらいは土屋さんと愉快な仲間たちだとずっと思っていたんですよ。多分僕がちょうどGunosyで忙しくなっててあんまりコミュニケーション取れなかったタイミング、その辺りで、愉快な仲間たちから組織、会社として上場を目指す視野も含めて、スイッチが入ったなと見ていました。途中から大分考え方が変わったんじゃないですか?
土屋:
僕もIPOとか資金調達とかを考えずにGoodpatchを起業しているんですね。Gunosyが当たったおかげで、1年後には社員が20人になっているという急成長を遂げていて。
それでも、資金調達はまったく考えなかった。僕はそもそもスタートアップのことが好きだったんですよ。サンフランシスコでもスタートアップに影響を受けて、起業した時も、大企業と仕事をするというよりスタートアップと仕事をする方を選んだので。それくらいスタートアップが好きで影響を受けていたというのもあって。
でもどこかで、チャンスがあれば自分も調達をして挑戦したいと思っていました。その後、たまたま調達ができたんですけど、そのときには上場は全然考えてなかったです。
でもそこから2014年に、改めて会社のビジョン、ミッション――会社の意義を考えた時に、社会的な意味がありそうだと思って。それで腹がくくれた感じです。ふっきーとか周りのスタートアップの人たちの刺激はすごく大きかったと思います。
Goodpatchが掲げるビジョン・ミッション
そこから、組織が大きくなっていって、うまくいかない状況もあって……うまくいかない時はふっきーと飲んでいたから知ってると思うけど。
ふっきーもその時、Gunosyで組織課題がある状況だったよね?
福島:
2015〜16年くらいはちょうど、自分の理想としている考えと組織の現実が全然違うことを学び始めたタイミングだったのかなという気がします。
土屋:
そこからGoodpatchは組織崩壊を乗り越えて上場に向かって行くんだけど、ふっきーは俺の組織崩壊ブログは見た?
福島:
Podcastを聞きました。生々しかったですね(笑)
土屋:
どんな感想を抱いた?
福島:
メンバーに腹を割って思いを伝えて、会社のミッションや本当にやりたいことに立ち返ることで、経営陣の信頼回復に真摯に向き合ったんだろうなと、エピソードの端々から伝わってきましたね。
僕らもあったんですよ、Gunosyの時に。経営陣が何と言おうと「数字しか見ていないんでしょ?」「上場したかったんでしょ?」とみんなに思われていたと思うんですね。信頼回復の大変さと、組織が崩れかかっている時にしっかり信じて踏ん張っていた人たちへの感謝は痛いほどわかります。やっぱり、そういう人たちが再成長のコアになって、今のGoodpatchの文化を作っていると思うんですよね。Gunosyもそうだったので。だから、自分のことのように聞いていました。
土屋:
確かに。同じ景色を見てきたって感じだもんね。
GunosyとGoodpatch。それぞれの組織崩壊を経て学んだこと
福島:
「あの人は言っていることとやっていることが違う」と思われた瞬間に組織は壊れると思うんですよね。
土屋:
そうだね。社員がパワーを出すためには感情の下支えが絶対必要で。もちろんいろんなメソッドも否定はしないんだけど、最終的に踏ん張りのきく組織にするためには、感情の下支えが絶対必要だなと思っている。
それこそLayerXも、社員みんなLayerXのことが好きだもんね。
福島:
いや〜ほんとそうですね。ありがたいことに。
土屋:
自社のことを感情的に好きってめちゃめちゃ大事だと思ってるんだよね。そういう組織じゃないと、苦しいときとか、あともう少し踏ん張らないといけない時やり切れない。係数管理だけでつながっている組織と、感情でつながっている組織とでは最終プラス何%やれるパワーが絶対違うって思うね。
ふっきーも自社の企業文化に対して、明らかにGunosyのときとこだわりが違うなと思うんだけれど、どういう心境の変化だったの?
福島さん:
上場後に組織が壊れてしまった経験が大きいです。もちろん修復するよう努力はしたんですが……
今振り返るともっとあの時こうしていれば、事前にこうしていればという思いがあって、そういった部分は今のLayerXに生かしたいなと常々思ってます。
土屋:
それで言うと、この数年ふっきーのマネジメントスタイルも変わっているよね。自分自身が社内でも相当発信しているよね。
福島さん:
自分は自分の得意なことをやろうと思ったのがきっかけですね。それで、経営陣に「僕のマネジメントの中でいいと思うことって何ですか?」って聞いたら、言葉の力とかストーリーを作る力とかが客観的に見ていいと思うと言われたんです。
社内のみならず社外にも積極的にLayerXの思想を発信する福島さんのnote
Gunosyのときはまだ若かったので、スキル的に成長したい、いろんな経験がしたいと、ある種自己成長欲求が強く、全方位自分でやらなきゃいけないと抱え込んでいました。でも、今は得意なことを磨くほうが大事だという思考に変わってきています。
ふたりのマインドを作った原点とは
土屋:
ふっきーのストーリーテリング力って、その原点にあるのは漫画じゃないかなと思ってるんだけど。
福島:
確かにそうですね(笑)
土屋:
ふっきーも俺も漫画好きだから。俺はこの30年、最終的に自分がなぜこういう感覚、考え方になったかを掘っていった時にぶち当たったのがジャンプ漫画だったの。ふっきーとは年齢が4、5歳違うけど、スラムダンク、幽遊白書、ドラゴンボール、はじめの一歩……この辺りの漫画が全盛期だったよね。
福島さん:
カルチャーって、つまり自分が何をかっこいいと思うかじゃないですか。どうありたい、みたいな。そういう意味で、漫画にはすべてが詰まってますよね。友情、努力、勝利。
土屋:
「諦めない」もそう。強い敵が出てきて、合理的に考えたら負ける状態で立ち向かうマインド。それを「どこでインプットされたんだろう」と考えたら、漫画以外考えられない。
福島:
その状態をかっこいいと思ってましたもんね。
土屋:
そうそう!絶対漫画の影響があるって個人的には思ってる。
福島:
確かに本を読むより漫画を読むほうがメンタル強くなりそうですよね(笑)
福島さんから見たGoodpatchの組織文化
土屋:
ふっきーからみてGoodpatchの組織文化ってどう見えている?
福島:
すごく好きなのが、「売上」のことを「デザインへの投資額」って呼んでいること。社長だけが言っていたら「まあそういいますよね」という感じなんですけど、社員もみんなそう思っているのが伝わってくるんですよね。
ともすると、Goodpatchみたいなビジネスって売上成長だけ追えばもっと伸ばせるみたいなシーンもあると思うんです。、ただそこをやりすぎると顧客を損させるということにもつながりかねない。Goodpatchはそれを良しとしてないと思うんですよね。そういうところが、外から見たときに1番いいなって。
https://twitter.com/tsuchinao83/status/1159630334243135489
土屋:
本当にそう。Goodpatchは売上を「デザインへの投資額」、利益は「顧客への付加価値」と言い換えていて。それぞれの会社の文化って、一般名詞を何と言い換えているかに表れる気がする。
福島:
投資ってなると身が引き締まりますよね。売上っていうと自分たちが作ってきた「成果」のニュアンスになっちゃうけど、投資はリターンがないと成り立たないという緊張感につながるし、顧客の尊重にもつながる。すごくバランスの良い言葉だなと思います。
僕もクライアントビジネスを昨年までやってたですけど、そのときに感じたのは顧客の成功が大きいほうが気持ちがいい。逆に、顧客が全然うまくいっていないのに自分たちの売上が上がっていると気持ち悪いという感覚があるんですよね。なので、そういう同じ感覚を持つ会社と一緒に仕事がしたいですね
Goodpatchから学んだデザインの価値
土屋:
ふっきーはデザインの価値を、どういうふうに認識している?
福島:
僕らの感覚でいうと2011年くらいって、デザインに投資するとかデザインを競争優位にするという感覚はあまりなかったと思うんですよね。その中で、たまたまGoodpatchにデザインをやってもらって、そのインパクトの大きさを体感していたんです。
なので、Gunosyを法人化して1番最初にやったことがデザイナーを採用することでした。
土屋:
そうだったんだ。今は?
福島:
toCサービスをやっていた時よりもtoBのほうが、よりデザインの価値を感じていますね。toCのサービスは、ある特定の機能が便利だったり、UIが使いやすければある程度は使ってもらえます。
でも、toBは仕事に直結するので、ちょっとしたことが命取りになる。例えば「請求書のシステムが使いづらいから使わない」「チャットのシステムが分からないからメールでやる」となってしまったら、仕事が成立しなくなってしまいますよね。
なので、機能が充実している中でいかにシンプルに、誰にでも使えるようにするかに、すごく苦戦しています。しかも重要なのはwebやUIデザインだけじゃないんですよね。サービスを実際に触る前の、展示会、広告、サービスを使った後にもデザインは絡んできます。
なので、LayerXにはデザイナーが3名いて。
土屋:
え。もう3名もいるの?
福島:
3名いるんですよ。会社全体で50名なので、比率として多いと思います。toBのサービスを手掛けている会社こそ、デザインの力でレバーを引かないといけないんです。僕、SmartHRさんをめちゃくちゃ尊敬していて、組織構成を調べていたんですが、デザイナーがめちゃくちゃ多いんですよ。
土屋:
確かに多いよね。
福島:
デザインの力って、今までUXで悪い体験を強いられた人ほど価値を感じるし、重要視していると思うんですよね。
僕は日本の企業の購買意思決定で1番イケてないのが、機能比較表だと思っているんですよ。そこには使いやすさもデザインも、その機能の「らしさ」も何も表現されていない。これはどこかでガラッと変わると思いますね。比較する時間やストレスが減れば、よりクリエイティブな仕事に当てられるので。
日本のtoB向けソフトウェアに絞ると、98%くらいはまだまだ改善の余地があります。事業インパクトの視点でも、社内のデザイナーの比率を上げて、デザインに投資することで、大きなインパクトを生み出せると思います。
GunosyとGoodpatchに共通する、10年前の意思決定
土屋:
俺は10年前に、ソフトウェアのUIにフォーカスするって決めたの。元々web制作会社出身でwebデザインの仕事をやっていたんだけど、Goodpatchではwebデザインやコーポレートサイトのデザインは一切受けないって決めて。まずは、ソフトウェアやサービスなど、人が使い続けるものにフォーカスをするということを意思決定したのね。
福島:
めちゃくちゃいい話ですね。確かにデザインが1番力を発揮するのってサービスですもんね。
土屋:
人が使い続けるもので、機能が追加されるごとに変化していくもの。ソフトウェアは常に変化していくものなのに、そこにエンジニアはいてもデザイナーが存在しないことが多々あった。そのことに10年前に気付いてフォーカスしたことで、Goodpatchが戦略的に勝てたんだと思う。
福島さん:
僕がGunosyを作ったときも、意図的に「サービスに機械学習がついていないなんてありえない」ってポジションを作ったんです。それで、機械学習のエンジニアが日本で一番集まる会社しようと。最初のポジショニングのおかげで、あとは何をやっても勝てる状況が作れたと思っています。
土屋:
2013年くらいの記事で、GE(ゼネラル・エレクトリック)のバイスプレジデントが今後10年で重要になる仕事で、1位2位に挙げていたのがUIデザイナーとデータサイエンティストだったの。それが結果的にはほぼ言い当てられている状況になっているって感じですね。
参考記事:GE社の重役が予測する「将来的に重要になる職業」はデータサイエンティストとUIデザイナー
福島さん:
今やデータとデザインは、サービス作りにおいて1番重要な2大要素ですからね。
これからのGoodpatchに期待すること
土屋:
最後に、これからのGoodpatchに期待することってなんですか?
福島さん:
めちゃくちゃ難しいことやってほしいです。今、1番問題になっているのって、世の中で最も重いシステム、金融とか政府システムとか。ああいうすごく重要だけど使いづらいシステムが産み出す社会損失が大きすぎると個人的に感じるので、全部Goodpatchに作り替えて欲しい(笑)
細かいところでいうと、今までデザインの価値をわかってくれている人はこれからも自走していくと思うんです。でも、そうじゃない人のほうがまだまだすごく多いので、それを変えてほしい。僕らも変えていこうと思っているんですけど、それぞれが違うアプローチで一緒に変えていきたいなと思っています。Goodpatchが介在するところは、まだまだいっぱいあると思うんです。
土屋:
一緒に変えていきましょう!
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