メンバーインタビュー

「なんでも屋」で終わる? 事業会社の1人デザイナーが見つけた「自分の武器」

「私はこれが得意なデザイナーです、と言える強みがほしい。事業会社でたった一人デザイナーとして働いていたころは、焦っていました」

事業会社のインハウスデザイナーは、マーケ、営業、カスタマーサクセス、開発など、あらゆる部署の意見を集約しながらプロダクト開発を進めます。デザイナーが自分一人だけ、もしくは数人だけの環境で働いていると、自分が他の会社でも通用するのか分からなかったり、このままで大丈夫だろうかと感じたりすることが一度はあるのではないでしょうか。

今回登場するのは、スタートアップの一人デザイナーとして働いた経験を持ち、現在はグッドパッチでUI/UXデザインマネージャーを務める甲斐田です。前職ではプロダクトデザイナーとして、ビジネスサイドと開発の架け橋となる業務を幅広く担当しながらも、自らを「何でもやるけど特徴がない」と感じていた時期があったといいます。

そんな彼女がグッドパッチで初めて気付いた「自分の強み」とはなんだったのか?事業会社での経験が生きている瞬間についても、お話を聞きました。

30代のうちに挑戦を──クライアントワークで「打席に立つ」ことを選んだ理由

── まずは甲斐田さんのデザイナーとしての経歴を簡単に教えてください。

私のデザイナーキャリアって27歳からなんですよ。結婚と出産を経て「自分が得意なことを価値やお金に変換できる仕事ってなんだろう」と考えたときに、まず浮かんだのがデザイナー。学生時代から美術が得意だったこともあり、頭のどこかでずっと意識していた職業でした。

デザインの勉強をしながらポートフォリオを作り、最初に入社したのは広告代理店の開発部です。東京にある会社で、アプリケーション開発に注力していた点が入社の決め手になりました。当時、私が拠点を置いていたエリアでデザイナーの求人を探すと、Web制作会社が多かったのですが、アプリケーション開発は腰を据えて長く取り組める点に魅力を感じていました。

デザイナー以外はバックエンドエンジニアとネイティブアプリのフロントエンジニアしかいなかったので、「コーディングからネイティブアプリの要件設計まで、なんでもやります!」という勢いで働きました。ロゴデザインやUIデザインについて困ったときは、いつもGoodpatch Blogを読んで勉強していましたね。

写真撮影:宍戸 知勢(グッドパッチ)

アプリケーション開発の全体像が分かり、仕事に慣れてくると、仕様が決められたものを形にするときに「なぜ作るんだろう」「これは誰のためのデザインなんだろう」と思うことが増えてきて。「なぜやるのか」から決められる環境に行ってみたいと考えて、初めての転職を決めました。

デザイナーとしてのキャリアを妥協せず広げながら、子育てなど生活の基盤も大切にしたかったので、フルリモートで思いっきり働ける会社がよくて。その結果、戦略フェーズから深くプロダクトに関わることができるスタートアップへの道を選んだんです。

── 事業会社での肩書はプロダクトデザイナーだったと伺いました。実際、甲斐田さんはどんな役割を担っていたんですか?

役割は「何でも屋」でしたね。PdM(プロダクトマネージャー)と一緒に動くことが多かったですが、カスタマーサクセスとも話すし、開発とも話す。エンドユーザーの声を直接聞くために、ユーザーインタビューにも行ったりしました。

デザインの提案をするときは、ビジネス視点や開発面での制約など、さまざまなステークホルダーの意見を理解した上で「これはなぜ作るんですっけ?」と時には立ち戻るように意識していました。ビジネスサイドと開発の架け橋としての役割は、一定評価されていたと思います。

── PdMや他部署と上流から議論できる、理想的な環境だったのではと思うのですが、このあとグッドパッチに転職を決めるわけですよね。

はい。前職は10人にも満たないところから、30人くらいまで人が増え、会社としては着実に成長していた時でした。でも個人のキャリアを考えたときに、自分が今の市場でどんな位置にいて、何が強みなのか、まったく分からないことに強烈に焦りを覚えたんです。

その頃の私は30代前半。あと数年したら、転職市場では今まで以上に即戦力として期待される年代だな、と思いました。何ができるデザイナーなのかと問われたときに、「これができます!」と言えるものが欲しかったので、挑戦するなら今だ!と考え、転職を決意しました。

選択肢としては、また事業会社に転職するか、今度はクライアントワークに挑戦してみるかの二択でした。事業会社のいいところは、特定のドメインでユーザーにとっての価値をとことん掘り下げていけることです。一方で、30代のうちにできる挑戦として、いろんなドメインの引き出しを増やして打席に立っておくべきなんじゃないか、と思って。

── 引き出しを増やしたかったのはなぜですか?

多様なドメインの経験を積み、引き出しを増やしていくことで「あのドメインの観点と、このドメインの観点を組み合わせたら……」と自分の中で組み合わせられるパターンが増やせます。そうすると、世にまだない面白いプロダクトや、価値あるサービスが作れるのではないか、と考えたからです。

── グッドパッチに転職した決め手は何だったのでしょうか。

デザイナーがたくさんいることと、ナレッジが豊富な点です。これまで働いてきた会社では上司がエンジニアやPdMだったので、デザインについてのフィードバックや評価をもらうことはなかなか難しくて……。私は一人デザイナーの時からGoodpatch Blogで勉強していたくらいなので、グッドパッチの社内にはもっと色々なナレッジがあるんだろうな、と期待していました。

参考記事:グッドパッチのナレッジ文化について

ただ、選考中や入社前は「精鋭ぞろい」という印象が強すぎて、自分が入ることで「こんなこともできないのか」と思われそう、という不安は大きかったです。

「何でも屋」から「ディレクションができる」へ。強みが見つかった瞬間

── グッドパッチは「キラキラ」なイメージがあったということですが、入社してみていかがでしたか?

働き始めたら、何か質問をしても批判の矢が飛んでくるなんてことは全然なくて(笑)。皆さん何でも知ってて、ついていけない人は即・脱落なのかなと無意識に考えていましたが、いろんな強みを持つプロフェッショナルがそろっているからこそ、ナレッジを惜しまずシェアする文化がありましたね。こんなふうに高め合える環境があったんだ!と、当初はびっくりしました。

WhyやWillをとても尊重する会社なんだな、ということもすぐに分かりました。社内では「今後どんな風になっていきたいのか」から問われ、案件ではグッドパッチのメンバーがクライアントに「そもそも論」を伝えて一緒に上流から考えていたり……。「エンドユーザーに価値を届けたい」という志の高いクライアントばかりで、皆さんデザインをすごく大事に考えている人たちなんです。入社当時は、いい意味で驚くことばかりでした。

これまでの環境では、デザイナーとしての評価基準はあいまいで、自分がどのレベルにいるのかも分かりませんでしたが、グッドパッチではデザイナーとして求めるスキル・要件が定義されているからこそ、自分ができていること、できていないことが明確になりました。

そうした中で、事業会社の一人デザイナーならではの経験が、実は強みになっていることも分かりました。さまざまなステークホルダーとの合意形成や、開発・PdM・企画・ビジネスなどの視点を持ちデザインすること──自分では「何でも屋」だと思っていたけど、実は「ディレクション力」という強みになっていたんだと気付きました。

── 「ディレクション力」はどんな場面で発揮されたのでしょうか?

グッドパッチに入社して1カ月も経たないうちに、100人以上が関わる大規模なアプリ開発のUIデザインチームでディレクションを担当することになりました。

もちろん不安でしたが、例えばデザイナーが迷っているときには、UIデザインについてだけでなくビジネス視点とユーザー視点を行き来したアドバイスをしました。客観的な視点だからこそできるフィードバックや、主観だと見えなくなってしまいがちな点を多角的に捉え直すことで、デザインの品質を底上げすることができたのかなと思います。

さまざまなステークホルダーとコミュニケーションを取ってきた経験があったからこそ、メンバーそれぞれの強みを引き出し、チームでのものづくりを推進できる。前職までの経験が、ちゃんと通用すると実感でき、自信につながりました。

偶然にもアプリリリース後のグロース案件で、プロダクトを成長させるために必要な打ち手を考えるフェーズだったので、事業会社での働き方と共通する部分も多かったことはうれしい誤算でしたね。デザインデータの運用や開発との連携など、グロースフェーズの課題解決の経験は、クライアントワークにおいても生かせることが分かりました。

── 事業会社の一人デザイナーに、クライアントワークをおすすめするとしたらどんな点を挙げますか?

事業会社経験が長いと、次々にドメインやフェーズが変わるクライアントワークの働き方に負荷を感じることがあると思うのですが、実はグッドパッチは支援期間が長い案件、グロース案件も多い。事業会社での経験を生かしつつ、デザインの引き出しを増やしたい人にとっては「いいとこどり」な環境です。

いい体験、理想的なUIだけがあっても、売上や事業としての持続性がないと事業会社は生き残っていけません。ビジネスモデルとして破綻がないこと、ユーザー体験、そして開発要求を加味しないと、いいものをユーザーに届ける土俵にすら立てないんです。私はかつて事業会社にいたからこそ、クライアントに寄り添った提案ができるデザイナーなんだと気付くことができました。

マネージャーを引き受ける覚悟ができた一言

入社から1年ほど経ったタイミングで、当時UIデザインチームのトップだった執行役員の石井から「マネージャーをやってみないか」と打診されました。はじめは断ったんですよ。まだ現場にいたかったし。マネージャーになったら、売上のコントロールとピープルマネジメントが中心で、顧客やユーザーと向き合う時間が減ってしまうんだろうな、と思っていたので。

石井に「専門性を身に付けたくて転職したはずが、結局私はどこにいても幅広く仕事して、よく分からない人なんですかね」とぼやいたら、「俺も今の自分の肩書はよく分からないし、名前はないと思ってる」と言われて。彼にも肩書がないなら、私も求めること・求められることをやっていけばいいのかも、と気持ちが楽になったんですよね。

最初は石井のマネージャー補佐という形でマネジメント業務を徐々に任せてもらい、2025年からは正式にマネージャーを務めています。現在は7人ほどのチームを率いながら、クライアントワークのプロジェクトにも関わり続けています。

2025年8月、グループ総会でスピーチする甲斐田。チームで開発したデザインシステム「Sparkle Design」が表彰された。

焦らなくなったらコンフォートゾーンにいる証拠。常に変化していたい

── 最後に、事業会社で働くデザイナーの方へメッセージをお願いします。

私はこれまでの人生、「現状維持は後退」と考えてきた人間なんです。もし今キャリアが迷子だったり、今後どうしようと思っている人がいたら、「今日が一番若いよ」って言ってあげたい(笑)。

グッドパッチには、デザインの力を証明するために働くデザイナーや、志を持ったクライアントがいます。エンドユーザーにとっての価値を届けることができず、悔しい思い、もどかしさを感じている人も、ここでなら本当にやりたかったことを実現することができると思います。

これまでのデザイナー人生、強みが見つからず焦ってきましたが、生成AIが台頭した今となってはジェネラリストで逆に良かったのかもしれない、とも思うんです。「何でも屋」として働いてきた経験は、場所や見方を変えるだけで強みになります。もし焦りや不安を感じている人がいたら、ぜひ一歩、踏み出してみてほしいです。

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