こんにちは。グッドパッチでソフトウェアデザイナーをしているmine/BitsVaderです。

春といえば新しい出会い、門出の季節。皆さんの中にも家族の卒業や入学、またご自身のキャリアの新しいスタートを切ったという方もいるでしょう。かくいう私も今年の3月にグッドパッチに転職し、新鮮な環境で日々デザインを楽しんでいます。

さて、今回の記事は「グッドパッチのUIデザイナーの募集要項」がテーマです。

募集要項というと、転職活動で誰もが目にするものですが、記載されている言葉は短く、端的に説明されていることも多いので、情報の解釈は候補者側に一定委ねられることが多いと感じています。

そこで、今回はUIデザイナーの募集要項について、細かい言葉のニュアンスや意図を改めてUID(User Interface Design Unit)の組織統括である石井に聞いてみました。

石井克尚:User Interface Design Unit 組織統括
SIer、事業会社を経て、2014年にグッドパッチに入社。iOS Developerとしていくつかのプロジェクトを担当後、マネージャーとしてエンジニア組織やデザイナー組織のマネジメントを行う。その後、UIデザイナーにジョブを変え再度プレイヤーに復帰。2023年9月からUser Interface Design Unitの組織の統括を務める。

グッドパッチが、UIデザイナーの採用を強化する理由

UIデザイナー組織って、どんな組織?

──まずは、石井さんが統括を務めるUIデザイナー組織(UID)がどのような組織なのか改めて教えてください。

石井:
UIDはクライアントワーク(デザインパートナー事業)を担当する30人ほどの組織です。アプリケーションのUIデザインやWebサイトのデザインがメインではありますが、非デジタルな媒体をデザインするプロジェクトもありますし、デザイン組織の支援も行っています。

──UIデザイナーでも、非デジタルなデザイン制作を担当することもあるのですね。ちなみに非デジタルなプロジェクトはどのようなものがありますか?

石井:
基本的にはソフトウェアのプロダクトデザインが中心ですが、「プロダクトをどのようにユーザーに知ってもらうのか?、使い続けてもらうのか?」を考えたときに、サービスやプロダクトを認知するようなタッチポイントに存在する媒体(ポスター、チラシ、CM、バナー)をデザインすることがあります。

──非デジタル領域のデザインも、UIデザイナーがすべて行うのでしょうか。

石井:
UIデザイナーが全て手掛けることもありますし、得意領域で分担したりします。ユーザーとの接点すべてをデザインする機会があれば全てやる。というイメージですね。

ユーザーとの接点、全てをデザインする集団へ

──ユーザーとの接点すべてをデザインする機会があれば全てやる。という言葉は、UIデザイナーの採用強化とも関係してますか?

石井:
そうですね。私たちUIDは専門・担当領域を拡張させたいと考えています。今まではソフトウェアプロダクトのUIデザインという領域に閉じてしまうことも多かったのですが、ユーザーとのタッチポイントはプロダクトの「外側」にたくさん存在しています。

全てのタッチポイントの体験を向上することが、プロダクトの体験の向上につながると考えており、あらゆる専門性を持ったUIデザイナーが必要だと考えています。

また、グッドパッチは「デザインの力を証明する」というミッションを掲げています。これを達成するには、日本の「デザインへの投資額」を向上させる必要があり、このミッションに共感してくれる仲間がもっと必要です。ユーザーとの接点、その全てをデザインする──このテーマに一緒にチャレンジしてくれる仲間を探しています。

接点を多く作れるプロジェクトがいっぱいあるの?

──プロダクトへのタッチポイントをプロダクト以外の部分からも狙いたいとのことですが、モデルケースとなるようなプロジェクトはありますか?

石井:
先日公開されたコープデリの案件は、UIDが理想としている形の一つになったと思います。もともとは注文体験を中心としたアプリのリニューアルがプロジェクトのゴールでしたが、食材が届いた際に封入されるチラシなど、アプリの利用を増やす施策にまつわる制作物のデザインも手掛けるようになりました。

コープデリアプリをGoodpatchがリニューアル、日常の買い物を「楽しいショッピング」に変えるデザインとは

──グッドパッチでは、このようにUIデザインの領域を拡張していく案件が増えているのでしょうか。

石井:
グッドパッチの案件は最初に領域を拡張できることが決まっているプロジェクトはそう多くありません。ですが、その接点はどこにあるのか?どのように接点を作るべきなのか?を提案しに行ったりという環境は用意されています。

なので、領域を拡張するデザインができるというのもそうですが、ソフトウェアの中に閉じない提案やコンセプトを作れるデザイナーと一緒に働きたいですね。

グッドパッチのUIデザイナーの「募集要項」を紐解く

──UIデザイナーの採用を強化している理由や、一緒に働きたいデザイナー像のイメージが湧きました。ここからは、募集要項に並ぶ言葉の具体的な意味を伺えればと思います。

石井:
はい、よろしくお願いします。

デザインコンセプトの立案って? 

──【求めるスキル・経験】に記載されている「デザインコンセプトの立案〜デザインを自らが行ってきた経験」という部分について。グッドパッチが定義しているデザインコンセプトの立案とは、どのようなものを指すのでしょうか?

石井:
魅力的なプロダクトをデザインするには、仕組み化されたプロセスやナレッジだけをなぞっているだけでは限界があります。 重要なのは、「ソフトウェアデザインに関するナレッジ」と「デザイナーの属人的な能力」を掛け算することだと考えています。

もう十数年前に出版された本にはなりますが「成功はすべてコンセプトから始まる 「思い」を「できる」に変える仕事術」の中で、モノづくりには「コンセプトドリブン」と「実現可能ドリブン」という2つのアプローチがあると書かれています。

私は、デザイナーは「コンセプトドリブン」でデザインすべきだと考えています。 良いコンセプトからは良いアイデアが生まれますし、プロダクトのクオリティのトップラインを上げるにも良いコンセプトが必要だからです。

ソフトウェアプロダクトはデリバリーへ向けてあらゆる制約を考慮する必要があるため、理想のまま提供できることはそう多くありません。どうしても「実現可能」な範囲で物事を規定してしまうため、インパクトは小さくなってしまいます。 だからこそ最初にトップラインを上げ、理想の状態を規定しないコンセプトを掲げられるかが大きなインパクトを生むデザインのスタンスではないかと考えています。

現在、グッドパッチには10年以上かけて蓄積してきたソフトウェアデザインに関するナレッジがあります。この資産を活用することで、コンセプトの鮮度や練度をなるべく低下させないまま提供できる、いわゆる「クオリティを成立させる」ことができます。 なので、デザイナーはクオリティのトップラインを上げることを意識した「コンセプトドリブン」なスタンスで自身の属人的なスキルを活用することでソフトウェアプロダクトのクオリティは初めて約束されます。

※コンセプトドリブン:コンセプトありきのアプローチ。インパクトの大きい、あるべき将来像をイメージし、それを実現するために行動すること。
※実現可能ドリブン:実現可能性ありきのアプローチ。現実的な課題解決から出発し、それを一つずつ潰していく、実現可能性を最優先に行動すること。

──ものすごく雑にまとめますが、「コンセプト立案」というのは、最初にプロダクトの理想の状態(目指すべき状態)を高くぶちあげられるUIを提案できるか?ということで合っていますか?

石井:
ですね。UIデザインで夢を見せられる仕事をしていきたいと考えていますし、それを夢で終わらせない仕事も同時にしていきたいです。

デザインの細部って何?

──続いての質問です。募集要項を通して「細部」という言葉が何度か出てくるように思います。おそらくこの言葉は重要だと思うのですが、「細部にこだわったデザイン」とは、どのようなことを指すのでしょうか?

石井:
これは特定の業務やアウトプットで「細部にこだわったデザイン」の定義をしているわけではなく、あくまでデザイナーのスタンスという意味合いで記載しています。

──例えば、石井さんの場合はどのようなこだわりがありますか?

石井:
私の場合は「プロダクトの触り心地」をとても重視しています。私が「触り心地が良い」と感じているときが、ユーザーも違和感やストレスなく操作できる状態になっていると思っています。

いわゆる「道具が融けている」状態にこだわっているのは、私がiOSデベロッパーをしていたころと変わっていません。あの時も今も、ずっと「触り心地」にこだわってデザインや実装をしています。

──デザイナー個人が持つ倫理観や、制作のテーマとも言えそうですね。

石井:
そうですね。いわゆる1px、0.1秒、1mmにこだわるという文字通りの「細部」にこだわるデザイナーもグッドパッチには多いですし、自分の得意領域では、どれだけ期日が迫っていても自ら進んで、作り直すことを選ぶ狂った(!)デザイナーもいます。

このまま世に出すわけにはいかない。この状態では“恥ずかしい”と思うラインが明確に自分にある人が「細部にこだわれる」デザイナーなのかもしれません。実現したい世界が明確にある、ということの裏返しだと思っています。

──クオリティのラインを自分で高く持っている人は、それぞれ何かしらのテーマがあり、執着しているということですね。人それぞれはありますが、そういう精神性を持ったデザイナーを募集要項で指しているんですね。

石井:
マネージャーの私からすると、残業をしてほしくないし、スケジュールは守って欲しいし、仲良くやって欲しいと思いますけどね(笑)。でも、みんなが本気でクオリティに向き合っているからこそ起こる衝突や文化祭前夜みたいな日があることは否定できません。

彼らの熱量による制作衝動は無理にマネジメントで押さえ込むのではなく、柔軟に対話しながら調整していけるといいなと思います。そして、そんなどうしようもないほどの“作りたい”という衝動もまた、マネジメントが強制するものではなく、クリエイターの内側(スタンス)に依存すると思います。

──ありがとうございます。グッドパッチに応募したり面談を受ける際には、「自身でデザインのコンセプトを立てた経験(プロダクトのトップラインを高い状態で定義する)」や「自身はどのようなこだわりを持っていて、どのように表現してきたか」などをポートフォリオに記載したり、面談で対話できたりするとより深いコミュニケーションができそうですね。

石井:
まさに。ここのすり合わせが最初にそろっていると、お互いに良い時間を過ごせると思っています!

自分が納得しかけてもなお、もう一回、もう一回と作り直せるか

──これからの展望として「クリエイティブジャンプで業界の常識を塗り替える」とありますが、もう少し詳しく教えてください。

石井:
先ほど話したことにもつながるのですが、プロダクトのクオリティの最初は、どれだけ「高い理想」を掲げられるかが大事だと思っています。そしてその過程で、新しいUIを発明したいと思っています。「Tweetie」のPull-to-refreshのような新しいスタンダードになるようなUIもそうですし、時代を代表するようなUIも作りたい。

それは、今までの例をなぞるだけでは絶対に実現できないでしょう。法則を理解しつつ、固定観念をどう破っていくかが重要です。

──グッドパッチ発のUIが誕生する日も近そうですね。とてもワクワクします。続いて、「ユーザーのタッチポイントを横断する体験」と定義してありますが、これも先ほど触れていましたね。グッドパッチに応募するデザイナーは、ソフトウェア以外のタッチポイントに何らかの専門性を持っていた方が良いのでしょうか?

石井:
必ずしもソフトウェアデザイン以外の専門性を持っている必要があるかと言えばそうでもありません。他の専門領域にも「積極的にトライできるか」という部分の方が重要です。「やったことがないので諦めよう」というよりも、「これができたら絶対に良くなる!だからやってみる!」という方がモノづくりは楽しいです。そういうアグレッシブさのあるデザイナーと仕事をしたいですね。

──ありがとうございます。最後に「PMFまで伴走し新規事業を成功に導く」とありますが、こちらについても詳しく教えてください。

石井:
僕たちの仕事は、クライアントの事業成長にデザインで寄与することです。正直にいえば、クライアントワークだと作って納品して終わりになってしまうケースも少なからずあります。しかし、本来ならばそこからが仮説検証のスタート。ですから、事業を成功したと言えるところまで伴走したいと考えています。

──ソフトウェアデザインは完成することはなく、常にブラッシュアップを続けていくものだと思っています。グッドパッチのデザイナーも「モノづくりを終わらせない。作り続ける」というスタンスでプロジェクトに臨むことが重要ですね。その上でデザイナーに求められる動き方はありますか?

石井:
やはり「スピード」ですよね。例えば、6カ月のプロジェクトで、6カ月かけて1つをリリースするよりも、1カ月でリリースできれば、後の時間をグロースやブラッシュアップに使えます。高い完成度のデザインを早く世に出す、そして余裕を持ってブラッシュアップを何度でも挑戦する。この姿勢が重要です。

試行錯誤の軌跡、失敗談を教えて欲しい

──少しだけ選考に関する質問もさせてください。この募集要項を基にポートフォリオや面談に臨むとしたら、どのようなエピソードや経験を伝えられると良いですか?

石井:
自分のこだわりポイントはどこにあるのか?やクオリティの明確なOKラインが分かるプラットフォームや対話になるとうれしいなと思います。その人がデザインに対してどのように向き合っているのか、そしてあらゆる制約を感じながらも、こだわりのあるデザインをどう実現したのか──などを深掘りできるといいですね。

──石井さんは、どんなエピソードやアウトプットを待っていますか?

石井:
やっぱり、デザイナー自身がどんな体験を実現したいと考えたのかが分かるエピソードやアウトプットが見たいです。エピソードであれば「実現するための困難や失敗談」とか、アウトプットであれば「試行錯誤のプロトタイプ」なんかも気になります。最終成果物よりも試行錯誤のプロトタイプやWFを見ている方が本質的に理解できる気がします。

──面白いですね。カジュアル面談でもそのような話をしますか?

石井:
そうですね。場合によりますが、カジュアル面談は選考ではないので、お互いの対話の中で、デザイナーの方がグッドパッチや中にいる人のことについて理解できる内容であればいいなと思いながらやっていますが、たまにデザイナーの方から没案をたくさん見せていただけることもあり、その時はテンション上がって、つい長く話し込んだりしてしまいますね。

デザインが大好きな人たちと共に、世界を前進させる

──最後にもう少しだけ話を聞かせてください。これはマネージャー人格と個人的な人格の二人に聞きたいです。面談や書類応募が来た時にワクワクしてしまう時はどんな時ですか?

石井:
マネージャー人格としては、僕が話した事を深堀りされているときですね。面談や面接で聞かれる内容は大体似てきます。なので、基本的に同じ回答をするようにしているのですが、たまに私の発言の意図を深く探ってくるような質問をされることがあります。

その時は事前に準備している回答ではなく、自分自身の言葉で回答することになります。こういう対話をしているときはワクワクしますよね。デザイナーとして仕事をするときにもちゃんとWhyを見つけようとする方だと思いますし、働く環境をしっかりと選ぼうとしているのが伝わってきます。

デザイナーに選ばれる環境を作るのが僕の仕事なので、「こういうデザイナーさんに選ばれる環境にするにはどうしたらいいか」と考えるキッカケにもなります。

──質問に対してより奥行きのある質問で、解像度が上がる会話ができる時は楽しそうですね。個人的な人格の石井さんはどうですか?

石井:
個人的な人格としては、とにかくUIが好きっていう方に会えたときにはワクワクしますね。何時間でもUIの話ができるような人と仕事がしたいので。僕が過去に作ったUIについて意図を聞かれたりすることもありますし、その場でUI談義のようになることもたまにあります。つい楽しくなってしまって45分の予定だったのに2時間くらい話し込んでしまったこともあります(笑)

──2時間!すごいですね。確かに会話の中でデザインの話で盛り上がれるというのもありつつ、質問に対して真摯に考えてコミュニケーションを取っていけるとお互いにとっていい時間になりそうです。デザインが好き!という気持ちが溢れている人。確かにワクワクしますし、グッドパッチにもいますね!

グッドパッチで「UIデザイナー」になる面白さ

──最後の質問です。今後グッドパッチでUIデザイナーをやる面白さとはなんでしょうか?

石井:
繰り返しになりますが、UIDが現在挑戦しようとしていることはデザイン領域の拡張です。“ソフトウェアプロダクトを中心に置き、その周辺タッチポイント含めてすべてをデザインすること”に取り組みたいと思っています。

この拡張は、ソフトウェアプロダクトに対する優先度を下げるのではなく、プロダクトデザインにさらに力を入れていくためのものだと考えています。これが実現できれば、今まで以上のインパクトを出すことができますし、ミッションの実現にまた一歩近づけると考えています。

詳しくはUIDのマネージャーでもあり、クリエイティブディレクターでもある栃尾のブログ「[新しい挑戦「ソフトウェアの枠を飛び越えたコミュニケーションデザイン」 at Goodpatch 【初公開!ぜんぶ見せます】」を参照してもらえればと思います。

***

今回はグッドパッチのUIデザイナーの募集要項をテーマに、採用している理由や募集要項の意味合いについて、そしてポートフォリオや面談で用意したい情報などを、組織統括の石井に聞いてみました。

募集要項というテキストから、意図をヒアリングすることで一言一言に奥行きを感じることができたのではないでしょうか。

「グッドパッチのUIデザイナーに興味がある!」という方は、こちらの記事を参考に、ポートフォリオ制作やカジュアル面談、選考に臨んでいただければ幸いです。まずはカジュアル面談から、という方もお待ちしております。ぜひお話ししましょう!

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