デザインに愛(AI)は必要なのか?──Yoitoi Summit出展&登壇レポート
こんにちは。グッドパッチでUIデザイナーチームのディレクターをしている栃尾です。
2025年7月19日、Spectrum Tokyo主催の1Dayカンファレンス「Yoitoi Summit(ヨイトイサミット)」に、グッドパッチとしてブース出展・登壇という形で参加してきました。
本記事では、当日のイベントレポートとして、グッドパッチのブースクリエイティブのご紹介から、トークセッションでお伝えした「デザインに愛(AI)は必要なのか?」という問いについて、そして参加を通じて感じた、デザインの可能性についてお届けします。
目次
なぜ、Yoitoi Summitに参加したのか?
Yoitoi Summitは、「良い問い」と「酔い問い」が交じり合う、Spectrum Tokyoが提案する新しいスタイルのデザインカンファレンスです。
登壇者が一方的に話すだけではなく、来場者全員が問いを持ち寄り、対話しながら一緒に考える──そんな時間が流れていました。デザインの可能性を、多角的に、そしてちょっと自由に探っていく。まさにそのための場だったと思います(裏側はぜひ主催の三瓶さんのnoteで!)。
今回の参加のきっかけは、2024年の「Spectrum Tokyo Festival 2024」に登壇したときのこと。主催の三瓶さんと「ものづくりの楽しさをもっと広めたいよね」と語り合ったのが始まりでした。その想いに共鳴し、私も何か力になりたい!と社内に働きかけ、グッドパッチとしてこの素敵な場に関わらせていただくことになりました。ちなみに昨年の公演で話した内容はこちらの記事からどうぞ!

ブース出展:「悩み」から始まるデザインの対話
今回のブースでは、「デザインのお悩みあるある」をテーマに、来場者との対話から始まる体験を用意しました。前回よりさらにブラッシュアップし、“今のグッドパッチ”を感じてもらえるよう、チームメンバーと共に複数のクリエイティブを刷新しています。
ここからは、そのクリエイティブの裏側やこだわりポイントをご紹介します!
遊び心満載!イベント限定ステッカー
今回のイベント限定で制作したステッカーは、「酔い問い」と「グッドパッチのバリュー」を掛け合わせた、ちょっと遊び心のあるデザインにしました。多くの方が手に取ってくださって、会場で自然と会話が広がったのがとてもうれしかったです。
イベント参加のきっかけは「ものづくりの楽しさをもっと広めたいよね」という何気ない対話から。だからこそ、まずは自分たちが心から楽しむことを大事にしました。このステッカーには、そんな想いとグッドパッチらしいクリエイティブ精神をぎゅっと詰め込んでいます。
お気に入りは「酔ってもWHYが止まらない」ステッカーです。お酒を飲んでぐるぐるしているのに、「これってなんでだろう?」と考え続けてしまう──そんな楽しい瞬間の頭の中をそのまま形にしました。
共感でつながる!「デザインのあるあるお悩み」参加型コーナー
今回のメイン企画でもある、「お悩みに対して会社・組織・個人でどう取り組んでいるか」を聞く参加型コーナー。「社内でデザインの重要性が理解されない」「一人でデザインを進めていて孤独を感じる」などのテーマにちなんだリアルな声が次々と寄せられ、ボードの前では共感やうなずきが自然と生まれていました。
実はこの企画には、
- グッドパッチのデザインコミュニティをもっと知ってもらう
- グッドパッチで働きたいと思ってくれる人を増やす
という2つの狙いがありました。
来場者の方にグッドパッチの教育体制やメンバーの雰囲気、会社の方向性をリアルに感じてもらうため、事前に社員へのヒアリングを実施。入社前に知りたかったことや、他社との違いを深掘りして整理し、それを基に共感しやすい問いを設計しました。会場では、お悩みに対してグッドパッチではどう具体的に取り組んでいるかもカードにして紹介しています。
ビジュアル面では、これまでの“可愛らしい”グッドパッチの印象から少し広げ、洗練と親しみやすさのバランスを意識しました。透明感のあるUIグラフィックで、「悩みに新しい視点を加え、一緒に解決していく」イメージを表現しています。
実は、ここでしか見られない初出し情報もたっぷりでした!カードの内容については、また別の機会にじっくりご紹介できればと思います。
進化と多様性を届ける!リーフレット
最近のグッドパッチは、UI/UXの枠を超えて、さまざまなデザイン領域への挑戦を広げています。UI/UXの会社というイメージからもう一歩進んだ、「多角的なクリエイティブ集団」であることを知ってほしくて、新しいリーフレットもつくりました。
いつも大切にしている「DESIGN TO EMPOWER」という考えを、シンプルだけど力強いタイポグラフィで表現し、色はブランドカラーのブルーとピンクを基調にデジタルな透明感のあるグラデーションを持ちいて、“進化”と“多様性”をイメージしながら作りました。
右上には、実は展示キャプションをこっそり仕込んでいます。まるで美術館で作品をひとつひとつ味わうように、デザインもじっくり楽しんでもらいたくて──そんな想いから、ちょっとした遊び心を加えてみました。
専門性をカードで紹介!職種カード
最近のグッドパッチは、UI/UXにとどまらず、サービスブランディングやデザイン戦略など、幅広い分野へ活動を広げています。それに合わせて職種もますます多様化。そこで今回、リーフレットと一緒に「職種カード」もつくりました。
グッドパッチでは、あえてUIデザイナーとUXデザイナーを分けて定義し、それぞれの専門性や役割をはっきりさせています。それぞれがどんな仕事をしているのかを分かりやすくまとめ、会場で手に取った方が「グッドパッチではUIデザイナーとUXデザイナーがこんなふうに仕事をしているんだ!」と知ってもらえるきっかけになればと思いました。
登壇:「デザインに愛(AI)は必要なのか?」
ここからは、登壇でお話しした内容を少しサマライズしてお伝えします!
今回、私はMIMIGURIの小田さんと一緒に、「デザインに愛は必要なのか?(Do we need love (AI) in design?)」というテーマで対談させていただきました。
なぜこの問いを選んだのか?
私自身、グッドパッチのビジョン「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」という言葉が非常に好きで、このビジョンに惹かれて7年間勤めています。
当初は「ファン」をテーマに据えていましたが、議論を重ねる中で、より根源的な「愛」というキーワードに行き着きました。そして「愛(あい)」という言葉が、今まさに私たちのものづくりを変えつつある「AI」と重なるという偶然もあり、「デザインと愛(AI)」「愛(AI)は必要なのか?」という問いが、今回のセッションテーマに選ばれることになりました。
AIの進化によって、ものづくりの在り方は大きく変わろうとしています。これからもそのスピードは加速していくでしょう。けれど、どんなに技術が進んでも、「つくる」という営みにおいて、人間の感情や覚悟が担う役割は決して小さくないはず。だからこそ、今改めて問い直したいと思ったのかもしれません。
- 技術が進化しても、「感情」と「覚悟」は人間のもの
- クライアントワークにおける「愛」の存在
- 納得と、覚悟と、そして「愛」
- 創造性と「自立」を育てる「愛」
登壇では、この4つのテーマを軸にお話しさせていただきました。このブログでは、その中から個人的に印象的だったポイントをいくつかピックアップしてご紹介します。
クライアントワークにおける「愛」の存在
私にとってデザインとは、「愛される体験をつくること」です。そう考えると、クライアントワークにおいても、クライアントへの「愛」は欠かせないものだと思っています。
良いデザインを生むためには、時にクライアント自身よりもその会社やプロダクトを深く理解し、愛するくらいの気持ちで向き合う必要があります。クライアントの想いや目指す未来に共鳴し、それを形にしていく。そのプロセスにこそ、「愛」が必要なのです。
そして、チームとクライアントの方向性がぴたりと重なり、「あ、私たちワンチームだね」と感じられる瞬間。そのとき初めて、「好き」が「愛」に変わる感覚を覚えるのだと思います。
また、信頼関係を築く上で大切なのは、自分自身を開示すること。飾らない本音を共有することが、より深い関係性を生み、よりよいアウトプットへとつながっていくと信じている、そんなお話を冒頭ではさせていただきました。
納得と、覚悟と、そして「愛」
私自身、良いアイデアを追い求め、昨日の自分を超えるデザインを生み出したいという想いから、日々、寝ても覚めてもデザインのことを考えています。食事中も、お風呂でも、気付けばずっと頭の中で何かを組み立てている。そんなふうに夢中になれるのは、やっぱりデザインを愛しているから。そして、自分のつくったものが誰かに喜んでもらえること。それが、デザインにのめり込む最大の理由です。
AIは間違いなく強力なツールです。でも、最終的に誰かにアウトプットを届けるとき、自分自身が心から納得しているか、「このデザインを愛せているか」が問われます。
そのとき必要になるのは、覚悟です。「私はこのデザインを選びたい」「このデザインなら責任が取れる」と思えるかどうか。AIにはこの「覚悟」は持てない。だからこそ、人間にしかできない役割があるのだと信じています。
創造性と「自立」を育む「愛」
今回のセッションでは、小田さんとともに、次世代を育てる上での「愛」についても語り合いました。
言われたことをこなすのではなく、自分の中から湧き出る想いを形にできる“自立したデザイナー”を育てたい。 そのためには、自分自身に「このデザイン、心から好きか?」「本当にいいと思えているか?」と問い続ける「自己対話」が不可欠です。
創造性は、ゼロから突然湧くものではなく、多くの“応答”(対話・経験)によって育まれます。未知との出会いや感情を持ち帰り、それを静かに内省(リフレクション)することで、好奇心や情熱が生まれます。
マネージャーの役割は、そうした出会いの機会をつくり、深く考える“孤独な時間”を支えること。また、失敗を経験した後のリフレクションの場を共に過ごすことで、成長を支援していくことだと考えています。
夜のセッションでも“愛”を語り合った1日
来場者は学生から社会人まで幅広く、特に“デザインが好き”という共通点がある方ばかり。登壇のあとも「グッドパッチさんらしい登壇だった」と声をかけてくださったり、「グッドパッチってこんなこともしてるんですね」と驚いてくださったり、うれしい対話がたくさん生まれました。
さらに夜のセッションでは、「デザインで“愛”を感じる瞬間ってどんなとき?」という問いをテーマに、参加者の皆さんとグループで語り合いました。
出てくる“愛”のかたちは人それぞれ。でも共通していたのは、「やっぱりみんな、デザインが好きなんだな」ということ。問い合い、語り合う中で、私自身もデザインをもっと愛したいと思えるような夜でした。
イベント全体を通じて感じたこと
正直、私は人前で話すのが得意な方ではありません。今回の登壇も、準備の段階からずっと「ちゃんと話せるかな」と不安を抱えていました。それでも、当日会場で交わした言葉や、ブースで生まれた小さな対話が本当に楽しくて、気付けば「話すこと」そのものにワクワクしている自分がいました。
デザイナーには、一人でじっくり考える“孤独な時間”が欠かせないと思います。でもそれと同じくらい、外に出て問いを交わす時間も大切だと改めて感じました。自分とは違う視点に触れることで、「あ、そんな考え方もあるんだ」と視野が広がる瞬間がある。それがいつか自分のデザインや背中を押してくれるきっかけになるんだと思います。
デザインに向き合う静かな時間も大事だけど、外の世界でぶつかる“問い”が、次の一歩をくれる。
この日の余韻が、また私を前に進めてくれる気がしています。

ちなみに、このイベントの様子はYouTubeチャンネル グッドパッチの「よはく」の制作をご協力いただいているサンキャク株式会社の皆さんがずっと撮影してくれていました。後日、YouTubeで公開されるそうなので、映像でも当日の空気を感じてもらえると思います!
最後に:グッドパッチに興味を持ってくださった方へ
この記事を読んで、「グッドパッチ、ちょっと気になるかも」「栃尾というデザイナーがいるUIデザインチームってどんな感じ?」と思ってくださった方へ。
私たちは今、一緒に“問い”から始めるデザインに取り組む仲間を探しています。まずはカジュアルにお話しできたらうれしいです。