サービスのビジネス価値を証明するリサーチの方法とは? 「リサーチ道場ワークショップ」に潜入
デザインやマーケティングで重要なプロセスである「ユーザーリサーチ」。このユーザーリサーチのスキル向上に向け、グッドパッチでは「リサーチ道場」という取り組みを行っています。
もともと社内のUXデザイナー向けに取り組んできた組織施策でしたが、今回、広告業界のとある企業からの依頼を受け、データ分析サービスを展開するノウンズと協力し、ワークショップ型の研修を開催する運びとなりました。
本記事では、リサーチの意義を解説する講義から、学んだ手法を実践するワークショップまでを4時間に凝縮した研修プログラムの様子をご紹介します。
目次
ユーザーリサーチを通じて、自社サービスの価値を確かめたい
今回、グッドパッチに研修を依頼した企業が抱えていた課題は「ユーザーリサーチによって、自社が提供するサービスのビジネス価値を確かめたい」というもの。広告という、ともすれば完ぺきな数値化がしにくい世界において、サービスの品質の高さには自負はあるものの、どうすればそれを証明できるか悩んでいたそう。
ユーザーリサーチを通じた裏付けを行いたいものの、どのような手法を用いればよいのか分からないという状況だったといいます。ここからは当日実施した研修をダイジェスト形式で振り返っていきましょう。

ワークショップの様子。双方向のコミュニケーションを大切にしながら、皆さん楽しんで取り組んでくださいました
講義:リサーチを成功させるには「設計」がすべて
今回の研修はリサーチの意義やポイントを説明する講義からスタート。ファシリテーターの秋野が特に強調していたのは、「目的・対象者を明確にすることが不可欠」というポイントです。これを正しく設計することこそが、リサーチを成功させる秘けつだと言います。
また、リサーチは答え合わせをするのではなく「仮説の更新」が重要。新たな事実に気付き、ブラッシュアップさせることで、より良いアウトプットに結びつくのだ、と話しました。
ワークショップ:「新進気鋭のグミを開発する」ためのリサーチプロセス
リサーチの概要を学んだあとは、ワークショップでさっそく実践です!今回のお題は「新進気鋭のグミを開発する」というもの。このテーマに沿ってリサーチプロセスを実践的に学んでいきました。
🔹ビジネスリサーチ
最初はいわゆる「デスクリサーチ」から始まります。ワークショップでは、グミ業界の現状について理解するビジネスリサーチを行いました。
このビジネスリサーチでは、ノウンズの提供する「Knowns Biz」のデータを利用した調査を行いました。Knowns Bizは、属性データと消費者意識データを組み合わせた分析を、誰でも簡単に実施できるツールです。現在、消費者の多くに支持される2つのブランドのグミのデータを見ながら、チーム一丸となってリサーチを進めます。
グミにまつわるさまざまをデータを見ていく中で「形がユニークであること」「パッケージが可愛いこと」など、グミそのものの味とは一見関係なさそうなポイントが注目されていることに気付いて、皆さん驚かれていました。
一定時間が経過した後、秋野から「リサーチはどうでしたか?」と問いかけられると、一同はハッとした様子。実践を振り返ってみると、リサーチに夢中になるあまりとある「認識しておくべきこと」を忘れてしまうシーンがあったことに気付きました。
🔹デプスインタビュー
デプスインタビューとは、ユーザーインタビューの一種で「1対1の会話形式で行うため、行動の裏にある『なぜ』やその時の感情まで深ぼれること」が特徴です。ビジネスリサーチで得られた示唆に基づいて、実際にグミ好きのユーザーへインタビューを実施しました。目的のすり合わせ、設計と進んだ後に、グッドパッチ社員が「ターゲット」役となり、インタビューを行いました。
インタビューの時間は一人あたり約3分に設定。短いと思いきや、実際に話を聞くと意外と時間があるもの。「他には……えっと」と口ごもる参加者の方も。新しい質問を考えるのにやや苦戦しながらも、果敢にさまざまな質問を投げかける時間となりました。
🔹市場調査のためのアンケート
続いてインタビューに基づき「グミ好きの消費者の価値観」を考察します。その考察に基づいて新しい商品を企画しよう!と思いがちですが、実はこれも落とし穴。その前に「同じ価値観を持った消費者が市場にどれくらいいるのか」という市場規模の特定を行うワークを実施しました。ビジネスとして成立するかは、この市場規模の理解が重要なのです。
ここでもKnowns Bizを活用。ノウンズの方からのフィードバックをもらいながら、市場規模を特定するためのアンケートを設計し、実際に一般ユーザーから回答してもらうところまで実施しました。アンケートが集まるまではひと休み。皆さんランチをとりながら、集計結果が出るのを待っていました。
🔹アイディエーション
お昼を食べた1時間で集まったアンケートは500件以上!結果からは「回答者の半数が1週間に1回以上グミを買っている」「グミを買う人はチョコレートもよく買う」などといった発見もあり、まさに「リサーチを通じて新しい事実に気付くプロセス」を体験していただきました。
そのあとは「リレーアイディエーション」という、思いついたアイデアを紙に書き、回しながら発展させる方法で、参加者同士でアイデアを共有し、発想を広げていきました。
これで研修は終了……次の「アイデアの価値を検証する」プロセスも重要
長かったワークショップもあっという間でここでタイムアップ。本来、事業開発プロセスではこの後の「アイデアの価値を検証する」プロセスが重要です──とその後のプロセス紹介と実施のコツを紹介し、研修が終了しました。参加者の皆さん、4時間みっちりやり切った様子で清々しい表情でした!
ユーザーリサーチを体験し、どんな気付きや学びが得られたか
もともと「アウトプットに対する裏付けのためにリサーチを行う」ということに課題意識を感じていた参加者の皆さん。
しかし、今回のワークショップを通じて「アウトプットありきではなく、どのような目的のためにリサーチを行うのかを明確にすることが重要」「リサーチに基づいて、仮説を大幅に更新していくことができる」ということ学んでいただきました。
また、目的に応じたリサーチの手法を活用し、データに基づいた意思決定の重要性についても実感していただいた様子。参加者の方からは、以下のような感想をいただきました。
リサーチにもそもそもやり方・コツがあることを知りませんでした。うまいリサーチのやり方を知ると作業時間の短縮にもなりますし、強いアウトプットにもなることが分かり、より興味が湧きました。
カジュアルリサーチは思った以上に(アウトプットが出るのが)早く、想定外の結果も出たことから新たな疑問も生まれた。リサーチで仮説検証を繰り返す重要性が実感できました。
リサーチを行う上で漠然といつものルートで探していた癖を見直そうと思いました。もう少しゴールを見つめながらリサーチしていきたいと思います。
ワーク全体の流れの設計が大変分かりやすかったです。ワークの難易度もちょうどよく、歯ごたえがあるものの、ワークを経ることで身につけることができる、というレベル感が良かったです。
ゴールを見失わないように振り返ることを教えてくださり、初心に帰ることを思い出しました。
おわりに
グッドパッチのクライアントワークにおいては、今回ご紹介したリサーチの方法論を生かして活躍するデザイナーが多く在籍しています。リサーチに関するお悩みがある方は、ぜひ一度以下のフォームからご依頼ください。
そのほか、御社のプロダクトが抱えるデザインの課題分析・フィードバック、リサーチの分野に関するワークショップや登壇のご依頼なども随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
また、リサーチやUXデザインに関わるさまざまな領域で活躍したいデザイナーも随時募集しております。ぜひ、こちらからご応募ください。お待ちしております!