Goodpatchでは半年に一度、社員総会を開催しています。日頃はそれぞれのプロジェクトに打ち込む社員が一堂に会し、一体感と企業文化を醸成するための時間です。

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2021年2月に開催された半期総会は、私たちがデザイン会社初の上場を経て、創業10周年を控えている中間地点でした。

これからの航海には、どんなことが待っているのか。先人にお話を聞くべく、スペシャルゲストとして株式会社サイバーエージェントの常務執行役員CHO 曽山哲人さんをお迎えして、代表土屋とのトークセッションを行いました!

社員20名から5000名へと拡大するサイバーエージェントを見てきた曽山さんに、今一度組織を見返すため、組織のこれまでの変遷と、変化し続ける組織づくりのポイントについてお話を聞きました。

スペシャルゲストはこの方!

株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO 曽山哲人氏

上智大学文学部英文学科卒。高校時代はダンス甲子園で全国3位。1998年に株式会社伊勢丹に入社し、紳士服の販売とECサイト立ち上げに従事。1999年に当時社員数20名程度だった株式会社サイバーエージェントに入社。 インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は常務執行役員CHOとして人事全般を統括。2020年からは、YouTubeにて「ソヤマン – 人と組織のお悩み解決!!」を開設し、サイバーエージェントのマネジメントノウハウや組織のコミュニケーションノウハウを発信。

Twitter : @SOYAMA
YouTube : ソヤマン – 人と組織のお悩み解決!!

Q1.サイバーエージェントという変化に強い組織はどのようにして出来上がったか?

土屋:
Goodpatchは昨年上場を果たしたんですが、やはり次に大事になるのは上場後の成長です。僕らはプロダクトの力だけではなく、人材の力によって成長してきた組織なので、今後も組織戦略の重要度は高く捉えています。

そこで、すでに上場を経験され組織作りにも強い大先輩であるサイバーエージェントの成長過程をすべて見てきた曽山さんにお話を聞きたいと思っています。本日はよろしくお願いします!

まずサイバーエージェントは、この20年でいろいろな変化をされていて、変化に対する耐性が非常に強いと感じるのですが、それが出来る裏には何があるんでしょうか。

変化し続ける文化を醸成する

曽山さん:
一番大きいのは変化の習慣を持っているということですね。具体的な取り組みでは、「あした会議」の存在があります。あした会議とは、役員による新規事業バトルです。ドラフト会議で選抜された社員とチームを組んで挑みます。それによって毎年新会社が生まれたり、伸び悩みを解消するために新規部門同士の統合がされたり、役員人事の提案が行われます。ある意味、年に一回かならず会社が変わるという習慣なんですよね。

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例えばコロナの影響で盛り上がったABEMAのペイパービューなどに関連する事業も、実はあした会議で提案されたものです。(ペイパービュー=ABEMAで配信される有料オンラインライブを、1コンテンツごとにABEMAコインを使用して購入、視聴できるというもの。)
どんな会社も「変化したい」とは言いつつも、普段からの変化がないことが多いんです。いきなり大きな変化があったら、そりゃ社員も怒ります。

土屋:
変わり続けているからこそ「組織ってそういうもんだよね」と思えるわけですね。

曽山さん:
そうですね。当社の場合はあした会議の存在が大きいですが、変化が多い環境なら自然と慣れるのでどんなことでもいいと思います。例えば「部署異動が多い」「プロジェクトの再編成が多い」「座席の変更が多い」とか。

サイバーエージェントが経験した4つの変化フェーズ

土屋:
曽山さんが入社されてからの22年間、サイバーエージェントが特に変化したと感じたのはどんな時でしたか?

曽山さん:
大きく分けて4つのフェーズがあります。

  • 上場直後の“上場カオス期”
  • 広告事業、法人営業中心の事業から、アメーバブログという“メディア事業転換期”
  • スマートフォン台頭による“スマホシフト期”
  • 動画事業ABEMAへの“新たな挑戦期”

上場カオス期は、土屋さんもよくご存知の組織崩壊です。上場直後の退職率は30%が普通で、社員や事業責任者同士の怒号が飛び交っているような状況でした。当時はまだ福利厚生なども整っていなかったので、大企業からやってきた社員には「こんなの会社じゃない」と言われたこともあります。月曜日に入社した人が、水曜日にはもう「会社に行きたくありません」となるようなこともありました。

土屋:
そのときは曽山さんはどのようなポジションだったんですか?

曽山さん:
広告営業をやっていましたが、カオスな状況を「なんでみんなそんなに怒ってるんだろう」と見ていました。「だって面白いじゃんこの会社」と思っていたので(笑)。

組織がカオスにある時、その状態を楽しんでいたり会社のことが好きな人は一部で、何かしら不満を持つ人が大多数です。ごく一部の会社LOVEな属性の人と何かしらの不満を持つ属性の人がいることが、組織崩壊のポイントだと思っています。

カオス期は思いついたことを全部やる。ダメなら速攻で撤退

土屋:
そのカオスから抜け出すためにどんな取り組みをされたんですか?

曽山さん:
一泊二日で、初めて経営陣が合宿をしました。これが2003年のことで、サイバーエージェントの人事的分岐点です。この議論において、人事を強化することが決まり、価値観やビジョンの明文化がされました。

組織がカオスな状態では、「選択と集中」だけではダメなときがあります。思いついたものを全部やってみて、もしダメだったらすぐにごめんなさいと止めることが大切です。

実際、この頃のサイバーエージェントでは7つくらいの人事制度を同時に進めていました。その中で新規事業コンテストや、社内転職の公募、あとはマッサージのチケット配布などもやりましたね。特にマッサージはみんな喜ぶだろうと思ったのですが、実際に配ってみたら「曽山さん、俺らにもっと働けってことですか?」という反応が返ってきてしまって、これはまずいなと感じてすぐにやめました。やさしさが仇になるってこういうことなんだなと実感しました。逆に、社内転職制度の「キャリチャレ」は2003年から現在に至るまで活用されている制度です。

サイバーエージェントは、Goodpatchさんよりも社歴が長かったりするので、もしかしたら「それいいなー!」「Goodpatchにはないんだよなー」と思うお話があるかもしれませんが、残念なことだと捉えないでほしいです。良いなと感じたら「俺がこれやるわ」と、土屋さんや上司に提案してみること。これはぜひ、皆さんにお願いしたいです。

Q2.成長し続けられる人材の共通点とは?

土屋:
次に、社員の成長に視点を当ててお伺いしたいのですが、サイバーエージェントという会社で成長していく社員のなかで共通している性質、マインドセット等はありますか?

曽山さん:
私が振り返ってみて、若手でも役員でもグイグイ伸びている社員には3つのポイントがあると思っています。

  • どんな状況でも成果を出す
  • 次を作れる
  • 他人が持っていない情報を持っている

1.どんな状況でも成果を出す

1つ目の「どんな状況でも成果を出す」というのは、成果をどうやったら出せるかを設計できる人です。スキルスタックが多いとかではなくて、これまでの仕事とは全く違う部署に異動しても、成果が出せるかということです。

例えば成果を出すというと、まず目標を立てて、ガントチャートやマイルストーンのような図に落とし込んで、そのポイントを決めたらちゃんと進捗を追いかけられることが重要なポイントです。

2.次を作ることができる

2つ目の「次を作れること」ですが、役員や幹部まで登り詰める人や、優秀なデザイナー、エンジニアといった人は「次やるべきことはこういうことだ」を考えられます。逆に、与えられた仕事だけをやり続けていては、マネージャー止まりになるということです。

たとえば今私はYouTubeで人事ノウハウを伝える挑戦をしています。そこに時間を割けば割くほど、曽山がやっていたことを誰かがやらなければいけない。そうするとポストが空くので、他の誰かが登ってくることができます。成長し続けられる人は、常に次を作り続けて、自分が伸ばすべきところを見つけているのです。

3.他人が持っていない情報を持っている

3つ目の「他人が持っていない情報を持っている」というのは、例えば、競合や業界の裏情報にアクセスできること。これらを知っていることは非常に大きな価値です。

例えば事業において次を作れても、情報が無いと「今何が求められているのか」というトレンドが分からないので、成果が出せません。つまり、上に登っていく人や成長する人ほど、ちゃんと外に目が向いています。外で褒められたからと転職してしまうのではなく、外で得た情報を中に還元して、社内の力で大きな成果を出す人。なので成果を出して、次を作れて、情報を持っている人というのは「すごいな」と思います。デザイナーでもエンジニアでも、どこにいても成果が出せる人は、頭の構造が「どうやったら良いプロダクトになるか」「もっと良い成果物を作るためにはどうすれば良いか」を常に考えています。

成長に貪欲な人ほど、今の情報だけでは足りないと弱みを素直に認めて、外に取りに行くということをしています。

サイバーエージェント 石田裕子さんに見る成長の法則

土屋:
「どんな状況でも成果を出す」「次を作れる」「他人が持っていない情報を持っている」3つを抽象化して取り上げていただきました。ここからより具体的なお話を聞いていきたいんですが、例えば専務として入られた石田さん(株式会社サイバーエージェント 専務執行役員 石田 裕子さん)はどういう成長をして、どういうマインドセットがあって専務になられたんでしょうか?

関連記事:20代で営業統括、30代で専務執行役を務める石田が考える、しなやかなキャリアの築き方

曽山さん:
彼女は成果からの逆算が習慣になっています。新営業時代も、ずっとトップ営業でしたね。

期待をかけると、その期待を超えようとするというのが武器なんです。「もらった期待を必ず超えるということを大事にしています」というのが彼女の心情のど真ん中にあるそうです。なのでまず安心がありますよね。

過去に、サイバーで新卒採用を強化し始めたとき、私は自分がやるか、もしくは経営陣レベルがやったほうがいいと考えました。そこで石田が全社の採用に向いていると考え、抜擢して採用強化をお願いしたんです。「全役員に採用面のリクエストを聞いて、設計を考えてみて」とお願いしました。すると、私の想像を遥かに超えたアウトプットが出てきた。「ロードマップを4年間でこういう4ステップに分けて引いて、こういう採用にして、ここの部分強化しましょう」という具合です。「自分が想像してた設計よりすごい」と思いました。

現在は毎週、役員会議をやっているんですけど、私が出席していなくても人事面の話をどんどん進めてくれています。これなら、自分はもっと新しいチャレンジに時間を使えるなと思いました。今までは、自分が人事として頑張れば頑張るほど抜けられなくなっていたのですが、それは次の世代を育てていないことになる。業績は伸ばすけど、次もつくる。ANDでやることが大事だと考えています。

サイバーエージェント 飯塚 勇太さんに見る成長の法則

土屋:
もう一人、飯塚くん(株式会社サイバーエージェント 専務執行役員 飯塚 勇太さん)は起業した年がGoodpatchと同じくらいだったりするので気になっているんですけど、彼も石田さんと同じく専務執行役員ですよね?

関連記事:内定者で起業、経営者歴10年。専務執行役員 飯塚が推進する3つのこと

曽山さん:
そうですね。飯塚は2011年、内定者時代に作ったカメラアプリが流行って、広告もたくさん入るようになったので、藤田が「会社にしなよ」とアドバイスをして、飯塚が内定者のときに社長になりました。なのでもう社長歴10年くらいですね。今は合計で7つの会社を担当し、3つの会社で社長をしています。

土屋:
曽山さんが飯塚さんの成長を分析するとどうでしょうか?

曽山さん:
飯塚はとにかく自然体なんですよね。全く裏表がなく、率直です。あと、「成長する人はでかいことを言う」という活躍人材の共通項をもっていて、「早く大きな業績を作らないと8人の役員の中にいる意味ないんです」とかさらっと言うんです。

あと、逃げないことは特徴的です。どういうトラブルがあっても逃げずに解決に向けて動く。チャレンジに失敗はつきものですよね。だって、誰もやったことないことですから。トラブルが起きた時に必ず最前線に出ていって、自分で責任持っているところに安心感がありますね。  

Q3.心が折れそうになったとき、いかに行動するか?

土屋:
曽山さんはぶっちゃけ、これまでに心が折れそうになったことはありましたか?「もう辞める」って思うほど折れそうになったこととか。

曽山さん:
ありますよ!何回かあります。特に営業マネージャーの時代、まさに退職率がピークだった頃、いわゆる評価のフィードバックで「今回の曽山くんの評価はいまいちだったから、今回はステイね。」とさらっと言われたんですよ。それがすっごい頭にきてしまって。「いやいや、俺頑張ってたし」と思って。よくある評価のミスコミュニケーションだと思うんですよね。本人は頑張ったと思っていても、それが噛み合っていなかったり、フィードバックが淡白だったというのはよく起きる話なので、常に気をつけるべきことですよね。自分はこの会社で必要とされてないのかなと感じてしまうので。上司にも本人にも問題があるパターンです。

当時、退職理由で最も多かったのは「自分の存在意義が感じられない」だったんですよ。目標は不明確だし、評価もされないし、というのが多かったです。私もそれを感じてやめようかなとふとよぎったんですけど、それ以上にこの市場にまだ伸びしろがあることや、自分でも周囲を納得させられる成果が出せていなかった部分があるなと思って、立ち止まりました。

Q4.10年後の未来を予測していたか?

土屋:
Goodpatchは2021年9月で10周年を迎えようとしています。
曽山さんに伺いたいのですが、サイバーエージェントが10周年を迎えた時、今の会社の姿ってどれくらい描けていましたか?また、振り返って「こうすればよかったな」と思うことってありますか?

曽山さん:
1999年に入社した当時の私は、サイバーエージェントが10周年を迎える姿もイメージ出来ていませんでした。なので、今のような形になるとは思ってもみませんでした。ABEMAのような動画事業をやっていることも当時は全く想像できていませんでしたし。

10周年を迎えて「まさか20人の会社がここまでになるとは…」と思った記憶があります。そして、次の10年も何も分からないのがいいなと感じたことを思い出しました。だって「次の10年のレールはもう決まってるから」と言われたら嫌じゃないですか?レールは自分で敷いて走る。その方が、絶対楽しいです。

200人の会社なら、そのうち20人が動けば会社なんて簡単に変わっちゃいます。もっと言えば、5人がまとまって動けば、20人を動かすことができる。会社を作るのは難しいけど、自分を変えること、自分の周囲を変えることはできなくない。なので、今日聞いていただいているGoodpatchの皆さんには暴れてほしいなと思います。10年後、何をしようかって妄想を皆で出し合ってほしいです。

土屋:
確かに、決まったレールが敷かれている、未来が見えているのって面白くないですよね。

曽山さん:
それに、決まったレールの上を行きたい人は、Goodpatchを選んでいないと思いますよ。

会社の未来を考える時、「誰かがいつかやってくれるだろう」と思いがちですが、それは大迷惑だし、大間違いです。今はサイバーエージェントにも5000名の社員がいますけど、一人ひとりのパワーがとても強いです。会社は個人の力でどうとでも変えられますから、自分の想いで会社を作ると決めたら、絶対に面白いと思います。

土屋:
サイバーエージェントだって、藤田さんがやると決めていなかったら、5000名の企業になっていなかっただろうし、僕もGoodpatchを立ち上げると決めなかったら、デザイン会社として上場するなんてできていないですし。一人の起こす変化が最終的に大きな変化になっていくことは紛れもない事実ですよね。

今日は金言が次々と飛び出すセッションになりました。曽山さん、ありがとうございました!


「レールは自分たちで敷いて走る」という曽山さんからのメッセージに、Goodpatch社員も士気が上がっていました。半期総会後は、社員がつぶやいた感想一つひとつに返信をくださった曽山さん。貴重なお話、ありがとうございました!

人と組織のお悩み、マネジメント、リーダーシップなどを発信し続ける曽山さんのTwitter、YouTubeはこちら。ぜひフォローしてみてください!

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