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ユーザー理解を阻む“分断”を越える 定性データと定量データをつなぐ、PdMの実践的アプローチ

「リピート率を上げたいが、どうすればいいのか分からない」「無料トライアルから購入に進んでくれない」

グッドパッチには、よくプロダクトの改善やリニューアルの相談が寄せられますが、抱えている課題として多いのが「ユーザーの離脱」に関するものです。

詳しく話を聞いてみると、

  • 分析ツールはそろっているが、どの指標を見ればよいのか判断できない
  • インタビューは実施しているが、意思決定にどう生かせばいいのか腹落ちしない

といった点で悩んでいるケースは少なくありません。

さまざまな形でユーザーのニーズに迫ろうとはしているものの、プロダクトの改善などの結果にうまく結びつけられない。その理由の1つに「定性データと定量データが分断されてしまっている」というものがあります。

両者をうまく組み合わせ、ビジネスにつながる示唆や施策につなげるにはどうすれば良いのか。本記事では、ユーザーニーズを定量化する際に陥りがちなポイントと、その乗り越え方を整理します。

この記事を読むと分かること:

  • ユーザーインタビューと定量データを結びつける実践的なアプローチ
  • プロダクトビジョンに沿ったデータ解釈の進め方
  • 定性と定量を組み合わせることで意思決定の精度を高める考え方

ユーザーニーズを「定量化」する意味──意思決定を再現可能にし、部署間の齟齬をなくす

ユーザーニーズというと、気持ちや意識といった言葉、つまりは定性的な情報だと思われる人も多いと思いますが、プロダクトの成長を目指す上で、ユーザーニーズを定量的に捉えることは避けて通れません。理由はシンプルで、意思決定を再現可能なものにするためです。

感覚や経験に基づいた判断は短期的には機能しますが、組織が大きくなるほど共有や合意が難しくなります。一方で「初回購入後、X日以内の再訪率がY%」というような形で、指標として数値化されたニーズは、経営、開発、デザインなど各部署の間で共通言語として機能しやすくなります。

ただし、ここでよくある誤解があります。

定量データだけでユーザー理解ができる」という考えです。

例えば「このページで離脱率が高い」という事実(=数値)が分かったとしても、それはあくまで“現象”に過ぎず、「なぜ離脱したのか」という理由までは教えてくれません。

この“Whyの不在”が、改善を難しくしている本質的な要因なのです。ここからはデータの誤った使い方、落とし穴を紹介していきます。

落とし穴1:定量データだけで意思決定しようとする

最も多いのが、数字だけで判断しようとするケースです。

例えば、ある機能の利用率が低いと分かったとき「ユーザーにとっての価値があまりないのだから削除しよう」と判断してしまう。しかし、実際には「使い方が分かりづらい」「特定のユーザーには重要だが、対象が限られている」といった背景が隠れていることも少なくありません。

このような判断ミスは、定量データを“結果”としてしか扱っていないことに起因します。

重要なのは、定量データを仮説の起点として扱うことです。

「なぜ、この数字になっているのか?」という問いを立て、定性調査で深掘る。この往復がないと、改善は的外れなものになりがちです。

落とし穴2:定性インサイトを「良い話」で終わらせてしまう

定量データだけでなく、定性データにも同じような落とし穴があります。それが「ユーザーインタビューの内容が、意思決定に生かされない」というケースです。

「こういう声がありました」「こういう課題がありそうです」といった共有で止まり、具体的な優先順位や施策に接続されない。こういった経験がある人は結構いるのではないでしょうか。

これは、インサイトが“測れる形”に変換されていないことに原因があります。

例えば、「操作が分かりづらい」という声があった場合、その情報のままでは、施策に落とし込むことはできません。インサイトに以下のような情報を加える必要があります。

  • どのユーザー層で起きているのか
  • どの行動の中で発生しているのか
  • どの程度の頻度で起きているのか

こうして初めて、ユーザーの声は定量データと接続できる状態になるのです。定性は“意味”、定量は“広がり”を担うという役割分担を意識することが重要です。

落とし穴3:リサーチ設計が分断されており、定性情報と定量情報がリンクできない

定量データと定性データを取得してもうまく成果に結びつけられない要因として、もう一つ見落とされがちなのが「リサーチ設計」そのものの問題です。

定性調査と定量分析が別々に設計されていると、後から両者を結びつけようとしても限界があります。インタビューで聞いた内容を数値で検証しようとしても、そもそも計測されていなかったという話は少なくありません。

そこで「仮説 → 定性調査 → 定量検証」という流れを念頭に置いて、以下のような設計をしておくと良いでしょう。

  • インタビュー設計時に「後で計測したい行動」を意識する
  • 分析指標を「ユーザーの文脈」と紐づけて定義する

例えば、あるプロダクトで「特定機能が使いづらい」という声が上がっていたケースでは、単にUI改善を行うのではなく、「どのユーザーが」「どの導線で」「どの操作に詰まっているのか」を切り分けて検証した結果、「初回利用ユーザーに限って、特定ステップで離脱が集中している」という構造が見え、オンボーディング改善に優先的に投資する判断につながりました。

定性データと定量データをつなぐ、実践的なアプローチ

こうした課題に対処する際、グッドパッチでは、UXリサーチャーとデータアナリストがPdMと並走しながら、以下のような形で進めることが多いです。

例えば、プロジェクト内でUX改善を行う際、以下のようなプロセスを踏みました。

  • アクセス解析などを行い「定量データ」を収集
  • 異常値や傾向を調べ、ユーザーの行動上の課題を特定
  • そこから仮説を立て、ユーザーインタビュー/ユーザビリティテストを実施
  • 課題の背景にある認知や意思決定プロセスを明確化

ここから得られた洞察を基に体験設計やUI改善を行い、再度データで検証する、というサイクルを回していきます。こうすることで「何となく」の施策から脱却し、改善の精度を高めていくのです。

このように、定量と定性のデータを切り分けて扱うのではなく、往復しながら統合していくことが、ユーザー理解の精度を高める上で重要になります。

また、このプロセスは一度きりで終わるものではなく、継続的に回し続けることで効果を発揮します。仮説の精度が上がり、外れる施策が減ることで、プロダクトの改善スピードそのものが向上していくのです。

まとめ:ユーザー理解は「翻訳」のプロセス

ユーザーニーズの定量化とは、単に数字を扱うことではありません。ユーザーの言葉や行動を、組織が意思決定できる形に“翻訳”するプロセスです。

定量は「何が起きているか」を示す。定性は「なぜ起きているか」を明らかにする。

この2つをつなぐことで、初めて納得感のある優先順位がつけられるようになります。

もし、自社プロダクトの顧客理解や優先順位付けに迷いがある場合は、一度リサーチ設計そのものを見直してみるのも一つの手です。

グッドパッチのプロダクトグロース診断では、定量スコアリングとあわせて改善の優先順位を整理し、次に打つべき施策を明確にします。現状を客観的に把握したい方は、ぜひご検討いただけると幸いです。


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