街の景色が鮮やかに彩られ、いよいよ春本番ですね。
3月は出会いと別れの季節と言われますが、この春から新しいミッションに挑戦したり、未知の領域へ一歩踏み出そうとしている方も多いのではないでしょうか?
未知なる道を進む皆さまの勇気が、より良い未来を切り拓く大きな力となりますように。私たちも、その挑戦を心から応援しています。
さて、今月のグッドパッチでは、そんな皆様の「新しい一歩」を支えてくれるような、刷新されたモビリティサービスや、暮らしの質を高めるデザインアワード受賞作などのトピックが多く集まりました。
それでは今月も、グッドパッチで話題になったサービスやトレンドを紹介します!
AI
Anthropicが無料学習プログラム「Anthropic Academy」を公開

AI Learning Resources & Guides from Anthropic \ Anthropic
生成AI「Claude」を開発するAnthropic が、AIを体系的に学べる無料の教育プログラム「Anthropic Academy」を公開しました。Anthropicは、元OpenAIの研究者らによって設立されたAI企業で、安全性や倫理性を重視したAI開発を掲げていることで知られています。
Anthropic Academyでは、10以上の公式コースが用意されており、すべて無料で受講できます。コースの中には修了証明書が発行されるものもあり、Claudeの基礎から開発者向けの実装まで、幅広い内容を体系的に学ぶことができます。今話題のClaude Codeについても、公式コースの中で実践的に解説されています。
動画講義は日本語字幕を表示して視聴することも可能です。「何から始めればいいのか分からない」という人にも向けて、公式が用意した体系的な解説は、最初の入口として分かりやすい構成になっています。
コースは学生・教育者・開発者・クラウド利用者の4つの対象に分かれています。基礎を学ぶ「AI Fluency」から、Claude APIやMCP、Claude Codeといった開発者向けの実践内容、さらにAWSやGoogle Cloudでの活用まで、目的に応じて体系的に学べる構成になっています。
印象的だったのは、「AI Fluency」という考え方がコース全体の軸になっている点です。AIスキルを単なるツールの使い方としてではなく、効果的・倫理的・安全にAIと協働するための能力として捉えているのが特徴です。
AIの活用が広がる一方で、「何から学べばいいのか分からない」という課題も多く見られます。こうした中で、公式が体系的な学習プログラムを無料で公開する意義は大きく、AIを学ぶ入口としての役割を担っていきそうです。
サービス・プロダクト
カメラのいらないテレビ電話。日常を映画に変える「POPOPO」が提示する、スマホメタバースの正解

カメラのいらないテレビ電話「POPOPO」サービス開始 各分野のクリエイターが集結し新たな国産SNSを開発 〜GACKT、西村博之、川上量生、庵野秀明が取締役に就任〜 | POPOPO ニュース
3月18日、コミュニケーションアプリ「POPOPO」が発表と同時にサービス開始しました。そのキャッチコピーは「カメラのいらないテレビ電話」。取締役には庵野秀明氏、西村博之氏、川上量生氏、GACKT氏といった多才な顔ぶれが名を連ね、クリエイティブとビジネスの両面から「国産SNS」の新たな形を模索しています。
最大の特徴は、通話中の映像を「リアルタイムに自動生成」する仕組みです。ユーザーはカメラの前に立つ必要はなく、ただ話すだけ。プロの映画監督が監修したカメラワークにより、何気ない友だちとの雑談が、まるで映画のワンシーンのような構図で画面上に展開されます。AIによる自動生成ではなく、あえて監督たちの「職人芸」を演出として組み込んでいる点に、心地よい映像体験への強いこだわりが感じられます。
さらに面白いのが、「偶然性」のデザインです。フォローしている相手から突然着信が届くサプライズや、憧れの人物と話せる権利が当たるなど、かつての深夜ラジオや待ち合わせのような「予測不能なワクワク」がアプリの中に組み込まれています。
このサービスは、「デジタル空間における実在感」に対する、仮説検証的な試みとも言えるでしょう。タイパ重視の現代において、あえて「通話に没入する」という贅沢な時間をデザインするPOPOPOが、私たちのコミュニケーションの風景をどう塗り替えていくのか。その「検証結果」が、今から楽しみです。
シャープの製品や事業コンセプト5件が『2026年 iFデザインアワード』受賞

シャープが、1953年設立の世界で最も権威あるデザイン賞の一つ「2026年 iFデザインアワード」において、計5件の受賞を果たしました。
今年の同アワードには68カ国から約1万点のエントリーがあり、造形美だけでなくアイデア、機能性、サステナビリティなどの多角的な基準で審査が行われました。その中でシャープは、家電の枠を超え、暮らしや社会課題にアプローチする多彩なプロダクトで高い評価を獲得しています。
なかでも注目すべきは、大規模言語モデルを活用した対話AIキャラクター「ポケとも」です。身長約12センチの手のひらサイズでありながら、会話やともに見た景色を記憶し、唯一無二のパートナーへと育ちます。温かみのある質感や豊かな感情表現には、人とAIの新しい距離感をデザインしようとする意欲がうかがえます。
また、コンセプト部門で評価された「コンテナランドリー事業」のビジョンは、社会課題への鮮やかなアプローチです。独自のろ過技術で排水を出さない循環型の洗濯システムをコンテナに搭載し、災害時の避難所や水インフラが脆弱な地域での活用を構想しています。
さらに、空間との「調和」の観点では2つの空気清浄機が選ばれました。一つは隈研吾建築都市設計事務所の監修で本物の木の縦格子を採用し、経年変化を楽しめる家具のようなモデル。もう一つは、家具から着想を得たシルエットで大風量と低騒音を両立し、インテリアに美しく溶け込む「Purefit」シリーズです。
これらの受賞は、外観の美しさに加えて使いやすさや機能をトータルでデザインし、「新たな文化」の創造を模索する同社の姿勢が結実したものと言えます。シャープがデザインを通じて私たちの暮らしの風景をどう塗り替えていくのか、その「半歩先の未来」に今後も期待が高まります。
本を読む人だけの読書銀行アプリ「BookBank」
「口座資産が100万円に届いたとき、あなたの見える世界は、きっと変わっている。」
そんな印象的なメッセージとともに登場したのが、読んだ本の金額を「入金」し、自らの知識を資産として可視化する読書管理アプリ「BookBank」です。
私たちが日々積み重ねる読書。それは単なる情報の消費ではなく、本来、目減りすることのない「自己資産」の蓄積であるはずです。BookBankは、読んだ本の購入金額をデジタルな「通帳」に記帳していくというメタファーを用いることで、抽象的な「知識の積み上げ」を、手触り感のある資産形成の体験へと昇華させています。
アプリ内では、小説、マンガ、仕事術など、ジャンルごとに「口座」を開設することが可能です。読み終えた本を登録するたびに増えていく残高は、自分がどれだけの言葉や思想に投資してきたかの証明となり、モチベーションを静かに、かつ力強く支えてくれます。
知識を金額(資産)に置き換えるという体験自体の新鮮さに加え、特筆すべきは、そのミニマルで美しいUIデザインです。領域的な制限を感じさせない自由な「本棚ビュー」や、過去からの積み上げが可視化されるような「通帳ビュー」は、一般的な情報を管理するためだけの読書記録ツールを超え、読書体験の本質的価値に目を向け「自分の成長」を感じることができるでしょう。
AIによっていくらでも効率的な情報収集が可能になった現代だからこそ、あえて「書籍」を読み、自分の知的資産をじっくりと「貯めて、育てる」。読書をする体験の価値に気づかせてくれる素敵なアプリだと思いました。
大正製薬が耳のヘルスケアアプリ「AudioCardio」をリリース
耳のトレーニングができる大正製薬初のヘルスケアアプリ「AudioCardio」が3月3日「耳の日」に合わせて正式リリース
日常的なイヤホン使用やリモートワークの普及により、耳への負担が増している現代。まだ馴染みの薄い「聴覚ケア」をアプリで日常に取り込もうという試みが、大正製薬の「AudioCardio(オーディオカーディオ)」です。
「ギリギリ聞こえない音」をバックグラウンドで流し続けることで聴覚をトレーニングするこのアプリ、体験として特徴的なのは「何も聞こえていないのにトレーニングが進む」という不思議な感覚です。音楽や動画を楽しみながら並行して使えるため、ユーザーは意識的な努力をほとんど求められません。まず左右8周波数で自分の聞こえをスコア化するチェックからはじまり、結果を起点にトレーニングが組み立てられる流れも、自然な自分ごと化を促す設計といえるのではないかと思います。
春からの健康習慣に「聴覚ケア」も取り入れてみてはいかがでしょうか?
モビリティは「不安ゼロ」をどう設計するか──NOLLへの刷新

ドコモ・バイクシェア、新ブランド「NOLL」へ刷新~乗る人も乗らない人も安心安全なモビリティサービスへ~
2026年5月1日、ドコモ・バイクシェアを中心とした自転車シェアサービスが「NOLL(ノル)」として刷新されます。NOLLは、従来のシェアサイクルの枠にとどまらず、都市や地域における移動体験を再構築するモビリティサービスとして再定義されています。
シェアリングエコノミーの拡大やコロナ禍を経たライフスタイルの変化により、通勤・通学に限らず、観光や日常の短距離移動など利用シーンは大きく広がっている状況で今回のブランド刷新となるようです。
サービスの特長は、「乗る人も乗らない人も不安がゼロに近い状態」を目指した設計にあります。近年、電動マイクロモビリティの普及に伴い、安全性や利用マナーへの関心が高まる中、NOLLではルール設計や利用ガイドの整備、ポート配置の最適化などを通じて、移動体験全体の安心感を高めているようです。単なるプロダクトではなく、街における移動インフラとしての信頼性をデザインしている点が特徴的ですね。
また、自治体との共同事業も重要な要素となります。地方では公共交通の縮小や高齢化による移動手段の不足、観光地における回遊性の低下といった課題が顕在化してきているなか、NOLLはこれらに対し、ポートの設置やエリア設計を通じて「ラストワンマイル」を補完し、移動の選択肢を広げる見込みです。自治体にとっては、大規模なインフラ投資を伴わずに交通課題へ対応できる点や、観光消費の拡大といった経済効果が期待できます。
NOLLの取り組みは、モビリティを単なる移動手段ではなく、ルール・空間・行動を含めた体験として設計する試みといえます。今後は、安全性と利便性のバランスをどのように維持しながら、地域ごとに最適な移動体験を実装していくかが注目ですね。
日常の移動をデザインする。相鉄が描く“鉄道×UX”の新しいかたち

新型車両「13000系」3月30日(月)営業運転開始【相模鉄道】
相鉄グループが進める「デザインブランドアッププロジェクト」に、新たなフェーズが加わりました。「安全×安心×エレガント」に「未来」というコンセプトを加えた新型車両は、単なる機能向上ではなく、日常の移動体験そのものを見直す試みとも言えます。
車両デザインを手がけたのは、クリエイティブディレクターの水野 学氏。統一感のある洗練されたビジュアルは、路線全体の体験価値を底上げする“ブランドとしてのUX”を担っています。
今回特に注目したいのは、日々繰り返される移動の中で効いてくる細やかな設計です。鉄道は日常的に利用されるインフラだからこそ、長く使い続ける中で感じる快適さが体験の質を左右します。
その一例が、時間帯に応じて色調が変化する調色調光式のLED照明です。朝の通勤、日中の移動、夜の帰宅といったシーンごとに光環境を調整することで、無意識のうちに感じる負荷を和らげ、移動時間をより心地よいものへと変えています。
また、優先席の一部に導入された「ユニバーサルデザインシート」は、立ち座りのしやすさを支援する設計。多様な人が利用する公共交通において、“誰にとっても使いやすい”状態をつくることは、体験の公平性を支える重要な要素です。
鉄道は特別な体験ではなく、毎日繰り返されるインフラです。だからこそ、小さな違和感や負担の積み重ねが体験の質を大きく左右します。今回の車両は、そうした日常の中の見えにくい課題に対して、デザインの力で応えようとしているように感じられます。
何気ない移動の中に、少しの心地よさを積み重ねる。その先にある“未来のスタンダード”を、相鉄の新しい取り組みから垣間見ることができそうです。
イベント
公民館の“しあさって”を考える第二弾イベントが終幕〜社会教育を参加者全員が考えた1カ月間〜

【しあさって・プロジェクトが、3年ぶりにふたたび、六本木へ?】 東京ミッドタウン・デザインハブ第118回企画展を開催!
2026年2月16日より東京ミッドタウン・デザインハブで開催されていた企画展「公民館とデザインは、なにを夢みたのか? ~雑談がうまれる場所と、そのためのDesignをめぐって~」が、3月16日に幕を閉じました。
本展は、2023年に開催された「公民館のしあさってはデザインのしあさって!?」に続く第二弾。社会教育とデザインの関係を問い直す試みとして、多くの来場者の関心を集めていました。
特徴的だったのは、「みんなで社会をくみあげる」という構想のもと、展示台や機材までもが事前に募集された参加者によって手作りされていた点です。完成された作品を鑑賞するのではなく、関わること自体が展示の一部になるという体験です。
会場に並んでいたのは、いわゆる“作品”ではなく、社会学習にまつわるさまざまな「問い」。「これはどういう意味だったんだろう」と考え続けたくなる余白が残ります。
公民館の役割や、社会の中で学び続けることの意味。展示を離れたあとも、そんなテーマがじんわりと頭に残る。こうした問いに触れる機会が、これからの社会や学びを考えるきっかけになるのかもしれません。
※社会教育とは…「公民館や図書館などで行われる組織的な教育活動(目的・指導者あり)」であり、社会学習(生涯学習の一部)は「個人の意思で生涯を通じて行うあらゆる学習活動(形式を問わない)」のこと。
キム・ヨンジュン×吉田ユニのコラボレーション写真展『Face to face』が麻布台ヒルズギャラリーで開催

キム・ヨンジュン×吉田ユニのコラボレーション写真展『Face to face』が麻布台ヒルズギャラリーで開催
韓国を代表するフォトグラファー キム・ヨンジュン氏と日本を代表するアートディレクター 吉田ユニ氏による、初のコラボレーション写真展『Face to face』の開催が決定。
2026年4月29日(水・祝)から5月28日(木)の1カ月間、麻布台ヒルズギャラリーで開催されます。
本展のテーマは「人間の最も本質的な美しさ」。日韓のトップ俳優62名をモデルに、「花」をモチーフとした作品が展示されます。数々の著名アーティストのビジュアルを手掛けてきた両者の視点が融合することでどんな作品が生まれるのか。
吉田ユニ氏の過去作品でも「花×人物」で構成されたものは多くありますが、キム・ヨンジュン氏と60名を超える著名人とのコラボレーションを通して、どんな新しい驚きを与えてくれるのか、とても楽しみな展示です。
デジタルでは味わえない、その瞬間にしか存在しない美しさを切り取ったポートレートをぜひ会場で体感してみてはいかがでしょうか。
メンバー募集のお知らせ
今月の「まとめ」はいかがでしたでしょうか?今月も新しい出来事やリリースが盛りだくさんでした。こちらの記事はグッドパッチのデザイントレーニングチーム「hatch」のメンバーで共同執筆しています。「hatchってどんなチームなの?」と気になった方は、ぜひこちらの詳細記事も合わせてご覧ください!
🪺 デザインへの熱意を軸にキャリアチェンジ──デザイナートレーニングチーム「hatch」が始動
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