グッドパッチでは毎年4〜6月にかけて、UIデザイナーやUXデザイナー、エンジニアといった各職種のメンバーが主催する形で基礎的な講義や実践的な演習といった集中的な新卒研修を行っています。

研修の内容は毎年少しずつ変化していますが、2024年度は、これまでの運営を通して出てきた課題を解消し、より新卒メンバーの成長に繋がる研修にするための大幅なアップデートを行いました。

今回は、特にUI研修にフォーカスを当てアップデートした内容と研修によって得られた成果をご紹介します!

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研修をアップデートした理由

アップデートの背景にあるのは、今回UI研修の運営に携わったメンバーが感じていた2つの課題です。

まずは、研修だけではグッドパッチのクライアントワークにおいて必要なスキルが網羅できていなかったこと。

グッドパッチのクライアントワークでは、UIデザイナーに対し、幅広いスキルが求められます。デザイン制作はもちろん、タスクマネジメントやクライアントとのやり取り、プロジェクト設計といった領域も含まれます。

もちろん、実際のプロジェクトに入ってから学ぶことも多いですが、これまでは、デザイン制作以外のスキルをサポートする内容は研修に含まれておらず、研修でカバーする範囲を見直す必要があると考えました。

もう1つは、クライアントワークにアサインされる前段階で、構造設計から表層設計までを行う一連のデザインプロセスを経験する機会を作れていなかったことです。

これまでの研修は、デザイン制作に関する方法論を伝える講義と演習に注力しており、その内容自体は、実際の業務に生きるものの、新卒メンバーにとっては、実際にプロセスを通して失敗や成功を経験した後でないと、学んだ知識やスキルをどこで生かすべきかを判断することは難しいという悩みがありました。

2024年度のUI研修においては、これらの課題を解消したいと考え、まずは改めて研修の目的・役割の整理から行いました。

グッドパッチの新卒メンバーは、4〜6月が研修期間、7月から翌年3月までをプロジェクトを通じたOJT期間とし、1年間で「クライアントワークを一人で任せられる状態にする」ことを育成の目標にしています。

この育成目標から逆算し、研修後に続くOJT期間において、新卒メンバーの苦手な分野の改善と得意な分野を自覚するためのきっかけとして研修を位置付けました。

新たな目的を達成するため、UI研修では講義・演習の見直しや新規作成、研修全体で取り組む実践ワークのテーマ調整など、大幅なアップデートを行うことになりました。ここからは、実際にアップデートした研修内容と、その設計プロセスについて詳しく掘り下げていきます!

「1人で案件を任せられる」UIデザイナーに必要なスキルとは?

まずは、先ほどの育成計画を基に、研修でどんな内容が必要かを検討しました。グッドパッチのUIデザインチームでは、以下の図のように一人で案件を任せられるデザイナーの状態を定義しており、その方針に沿って3つの項目を講義という形で学んでもらいました。

1.プロジェクト設計力:クライアントと合意を取るまでの道筋を描くことができ、行動に移せる

自分自身で、クライアントと合意が取れるまでのマイルストーンを設定したり、クライアントに対してフィードバックを頂く時間を調整するなど、デザインの力でビジネスを前進させるために、デザイナーとして何をアクションすべきかの段取りを学んでもらいます。

一見デザインとは関係がなさそうな領域ですが、これらができないと、最悪、クライアントの信頼を損ねてしまいかねません。したがって、新卒1年目から「自分自身でタスクを管理し、遂行し切る」ためのマインドや知識、方法論を学んでもらう必要があります。

これらを踏まえ、タスクマネジメントやスケジュール管理などについてを教える「プロジェクト設計」の講義と演習を設計していきました。

2.UIの構造設計力:要件を満たすUIデザインを制作し、意図を説明することができる

構造設計力、というとピンとこない方もいるかもしれませんが、UIデザインの「構造」とは、Jesse James Garretの5段階モデルでいう「構造」にあたります。

Goodpatch流再解釈「デザインの5段階モデル」

狙いとして、日頃から競合やトレンドなどのリサーチ・インプットを行い、自らUI表現の引き出しを広げたり、要件を満たすUIデザイン、すなわち守破離の守を素早く制作できる土台作りを目指します。

グッドパッチのプロジェクトでは、UIを作る前に、企業の目指す姿やユーザーの課題・ニーズからサービスコンセプトを導き出します。その後、サービスの「体験」にフォーカスし、独自の魅力を表すコミュニケーションコンセプトを自分で言語化してもらいます。これにより、情報設計の設計思想からUIに書き起こされるまでの全体プロセスを学んでもらいます。

更に、UIデザイナーとして自身のアウトプットの意図を言語化し、クライアントにしっかりと説明出来るようになることも重要です。そのため、既存のUIデザインメソッドや、プラットフォームの思想などをインプットする「アプリデザイン」の講義・ワークを設計しました。

3.ビジュアル表現力:見た人を惹きつけるビジュアルコミュニケーション且つレギュレーションに従ったアウトプットが制作できる

「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンにもあるように、グッドパッチが求めるUIデザイナーとして、単に要件に沿ったUIデザインができるだけではなく、周囲の期待を超えるビジュアルコミュニケーションもできるようになってもらいたいと考えています。

そのため、日頃から競合やトレンドなどのリサーチ・インプットを行い、自らの表現の幅を広げたり、デザイン4原則やレイアウトパターン、カーニング、タイポグラフィなど、基本の「き」〜ちょっとした応用まで、バナーを作る上で必要不可欠な知識を実践の中で学べる「SNS広告」の講義を設計しました。

仮想クライアントを立てた実践ワークも導入

これまで説明した講義とは別に、2週間の研修期間を通して実践ワークを提示しました。これは研修担当者をクライアントの意思決定者に見立て、実際のクライアントワークに近い形で講義で習った内容を実践できる、いわば「模擬クライアントワーク」です。

内容は、過去にグッドパッチが担当した案件を題材に、一部の機能追加のUIを提案〜担当者と合意するまでを通しで実践してもらいました。また、フィードバックの観点をあらかじめ設定し、意図したフィードバックをもらえるようなアジェンダ設計を新卒の時点で意識してもらうことや、ネクストステップを明確にする癖を新卒に身につけてもらいます。

設計の際に意識したポイントとしては、まずはUIデザイナーとしての土台固めを念頭に、体験設計・アイディエーション部分に時間をかけさせないよう、上記画像のような前提条件の設定をしました。

24卒社員が受けたUI研修の様子

ここからは、実際に2024年の4月から6月にかけて実施したUI研修の様子をご紹介します。

プロジェクト設計

まずはプロジェクト設計の講義です。スケジュールの組み方、工数の見積もり方、与件の整理など、プロジェクトを推進する上で必要な情報をワークも織り交ぜながら講義しました。

また、期待値を超えるための考え方など、グッドパッチのUIデザイナーとして常に持っていてほしいマインドセットもここでインプットし、「プロジェクトを自ら作り、押し進める」デザイナーとしての第一歩として十分な内容になりました。

アプリデザイン

アプリデザインの講義では、UIデザインを作るプロセスや、良いUIとは何か、そのらしさの定義の仕方や定義する意義を説明しました。

GUIにおける「ペイン」の考え方や「段階的開示」などの既存のUIデザインの考え方はもちろん、ユーザーがプロダクトを利用する理由や魅力・競合との差別化にも繋がるコミュニケーションコンセプトの設計の仕方など、ただ要件を満たすUIデザインを作るだけではない部分まで講義をしました。

新卒メンバーたちには、インプットするだけでなく、小ワークとしてWebアプリケーションのワイヤーフレームを作成してもらいました。ただ、いきなりワイヤーフレームを書いてもらうのではなく、まずターゲットユーザーや要件に基づいて、サービス価値とどのような体験を提供するのかを言語化した「コミュニケーションコンセプト」を設定してもらいます。

その後、体験をどのようなUIに反映すべきかの軸を定めるために、シナリオからユースケースを抽出し、ユーザーの行動と操作対象を可視化します。

こうして見えてきたWebアプリケーションの「構造設計」に基づき、実際に開発に渡せるよう遷移図や仕様を簡単にまとめたワイヤーフレームを作成してもらい、最後には「らしさ」をビジュアルでアプリケーションとLPに落とし込んでもらいました。

SNS広告

SNS広告の講義では、UIに限らず美しいデザインを作る上で心がけることや、バナー作成時のフロー・注意点を講義しました。

「視線が必要以上に動かないか」「グッドパッチらしいバナーらしさの要素は何か」などを、実際のグッドパッチのバナーやアイキャッチを例にしながら講義しました。最後には、実際の企業を題材にしたセミナーの告知画像の制作ワークを行い、講義の内容がしっかりとインプットできているかを確かめました。

最終発表

新卒たちは、提示されたユーザーシナリオを基にどんなソリューションにするか、またそれはどのようなUIデザイン・仕様で実現できるかを検討します。そしてクライアント(ここでは研修担当者)に提案し、承認を得た上で実装にスムーズに繋げられるようプレゼンとUIデザインを制作しました。

最終発表では、実際にクライアント(UIデザインチームのリード陣)が新卒たちのプレゼンを受けます。発表内容がきちんと伝わるか、UIの細かい仕様や動線は考えられているか、魅力的だと思えるビジュアルデザインが作れているかなどのUIへのFBをします。

新卒のメンバーには、一人一人考え尽くした、魅力的な提案をしてもらいました。作ったものを実際にクライアントに説明し、伝える中で「クライアントが首を立てに振ったから良いのではなく、クライアントのビジネスを前進させ、ユーザーの体験を向上させられるデザインを考えることが重要だ」と実感してもらえたと思います。

24卒社員からの感想

2週間の講義とその実践を経て、それぞれが自身の強みや弱みを自覚し、これからの1年で、何をすべきかに気付くことができたように思います。新卒のメンバーからは、

とにかく必要な要素を洗いざらい出す!という行為がめちゃくちゃ苦手なんだな、私は。と気づきました。遠くに石を投げることはできるけれど、その石に至るまでのルート設計をすることも苦手。個人プレーになったことでそのような自分の特性の凸凹に気づくことができたのが大きな学びです。

実践形式だったのが個人的にとても良かったです。 やってみないとわからないことはたくさんあるため、「まずは作って、クライアントに話を通して〜」とやっていく中で、ここは上手くいかなかったから先輩に質問しようだったり、次はこうしようとブラッシュアップする機会になったためです。

実戦に近い内容、かつ個人で取り組む内容で、自分の足りないポイントが明確になりました

と実際の案件で表に立つ前に、実践形式で「成功だけでなく、失敗もする」ことができたのは、彼らにとって大きな財産となったと感想をいただきました。スケジュール通りにならなかったり、自分の考えたデザインや提案がうまく伝わらないことを実感し、これからの糧になっていれば幸いです。

グッドパッチでは、未来の仲間たちを募集しています。クライアントに思想や文化を残すところまでコミットし、デザインに責任を持った仕事をしたい方、何よりUIを愛している方からのご連絡をお待ちしています!選考・面談・イベントへ参加ご希望の方は、以下のバナーからお願いします!

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