企業の想いを引き出しビジュアルで効果的に伝える。ネットプロテクションズHDのIPOを象徴するクリエイティブ制作の舞台裏
2000年創業、国内 BNPL 決済サービスのリーディングカンパニーとして数々の事業を展開する株式会社ネットプロテクションズ。マネージャー職の廃止や360度評価など、自律・分散・協調を実現するティール型組織を志向していることでも知られています。
同社の親会社である株式会社ネットプロテクションズHDは2021年12月に東証一部(現:プライム)へのIPOを達成。
有志社員の方がプロジェクトを振り返ったnoteもぜひあわせてご覧ください:
ネットプロテクションズHDの上場記念グッズができるまで
Goodpatchは、有志社員によるネットプロテクションズHDのIPOプロジェクトのクリエイティブ制作を支援しました。制作の舞台裏を、アートディレクターを務めた中田、デザイナーの寺岡(堅木)の2名が振り返ります。
目次
映像プロダクション出身のデザイナー×アートディレクターの共創
中田 当初のご依頼は、ネットプロテクションズさんが上場する際の社内セレモニーで社員に贈る記念ビジュアルとグッズの制作を支援してほしい、というものでした。ただビジュアルを作るのではなく、コンセプトから一緒に共創するパートナーとしての関わり方を期待されていたことが印象的でしたね。「共創」はネットプロテクションズとGoodpatchに共通する価値観だなと感じました。
中田 Goodpatchについては、IPOや創業10周年のクリエイティブを見て関心を持ってくださったそうです。私は10周年社員総会のアートディレクションを担当していたので「あの経験を活かせる時が来た!」と密かに思っていました。
寺岡(堅木) 私は映像プロダクションでのキャリアが長く、今回がGoodpatchへ転職してきて初めてのプロジェクトでした。前職まではクライアントとの間に代理店がいて「デザイン、コピー、映像はこう」と決められた枠の中でビジュアルを作り込む仕事が中心だったので、今回のようにクライアントのパートナーとしてコンセプトメイクから一緒に共創させていただいたのは初めてでした。
中田 役割分担としては、アートディレクターである私がコンセプトを検討し、それをどう可視化するかといった絵の方向性を定める部分を中心に進めました。今までのGoodpatchでの経験を活かして、プロジェクト設計や進行管理も担当しています。
寺岡(堅木) 私はコンセプトや方向性を定めるまでの過程をサポートしつつ、実際にビジュアルを作っていく段階で手を動かし、絵を作っていきました。
「ネットプロテクションズHDのIPO」が示すものを探る
中田 プロジェクトの前半はリサーチとワークショップを元にしたコンセプトの言語化を行いました。ネットプロテクションズについて調べる中で印象的だったのは「フラットな社会、ビジネス、組織を目指す」という言葉です。
寺岡(堅木) 代表の柴田さんからも「今回のプロジェクトで意思決定する際に経営陣の合意を得る必要はないです」と伺っていました。トップダウンで進めるのではなく、IPOを盛り上げるために集まった有志の社員がやりたいこと、本当に納得しているものを尊重していきたいと。
中田 GoodpatchのIPOブランディングは、創業者である土屋の想いからコンセプトを展開していたので、今回は違うアプローチが必要だなと考えました。そこで有志の社員のみなさんにワークショップに参加していただき、メンバーの想いを引き出していきました。
中田 ワークショップでは、Goodpatchのビジュアルデザインチームで考案した“ビジュアルカード”を使い「ネットプロテクションズを人に例えるなら?」といった問いについて、視覚情報ベースで企業のパーソナリティを明らかにしていきました。次に「IPOによる事業・社会への影響は何か?」という問いについて付箋で考えを発散していただきました。最後は「IPOをどう社内に伝えていきたいか?」をテーマに、座談会形式でメンバー同士で想いを語っていただきました。
寺岡(堅木) 制作会社にいた頃は、ムードボードを通してクライアントと認識をすり合わせていましたが、Goodpatchのように企業の「らしさ」を引き出す場合は、じっくりと対話を重ねることが大事だなと実感しました。
中田 ワークショップで集まったみなさんの声は、表面上の言葉は異なるけれど同じ方角を見ているものでした。「IPO後もネットプロテクションズの思想・文化は変わらない。さらなる挑戦によって、つぎのアタリマエをつくっていこう」というメッセージを伝えていきたい、ということが分かりました。
この “つぎのアタリマエをつくる” という言葉を4つの工程に分解し、どのプロセスを強くメッセージングしていくかを議論しました。今回のIPOというタイミングでは “つぎのアタリマエ” をつくった先にある結果を見せたい、という結論から、それにふさわしいビジュアルを探っていきました。
自社のデザインプロセスを活用
中田 “つぎのアタリマエをつくった”モチーフをいくつか検討していく中で 、コペルニクスの地動説を見つけました。人類史を大きく変えたこの出来事は、事業と組織の両面でつぎのアタリマエを作ったネットプロテクションズHDのIPOを伝えるためにフィットするモチーフだ!と満場一致で決まりましたね。
伝えたいことを歴史上の出来事に紐付けてビジュアルとストーリーで伝える手法は、Goodpatchを参考にしています。創業10周年で掲げた「この先の未来を問い直そう」というムーブメントを具体化するモチーフとして、炎を起こすために用いられたレンズを使っていたことを思い出したんです。たまたまですが、今回は自社のデザインプロセスや考え方を利用して、クリエイティブに深みを持たせられました。
意志を込めたアートディレクションとクラフトの追求
中田 コペルニクスの地動説というモチーフでIPOのメッセージを伝えながら、ネットプロテクションズさんらしさやお祝いの日の華やかさを表現するため、ムードボードでトーン&マナーを設定し、寺岡(堅木)さんにビジュアル制作をお願いしました。
同時に私はビジュアルと一緒に展開するコピーを検討しました。ワークショップで集まった社員のみなさんの声や、伝えたいことをストーリーにしています。ビジュアルを補完する要素としても使えるように、キャッチとリード文をそれぞれ書き、最終的にネットプロテクションズさんのメンバーの手で仕上げていただきました。
寺岡(堅木) バリエーション違いでビジュアル案を複数提案させていただきました。「色味がかわいい」というボジティブな意見だけでなく、「毒々しすぎる」「コピーが英語だと背伸びしていてネットプロテクションズらしくない」などフィードバックをいただき、ブラッシュアップしていきました。
中田 ネットプロテクションズさんの従業員の平均年齢は29歳。ジェンダーレスな価値観が一般化してる世代の方がたくさん活躍されています。そこで「男性だからピンクは違う」というバイアスを捨てたものにしたいという想いもありました。
日常で使うグッズにビジュアルを展開して社員への浸透を促進
寺岡(堅木) 最終的に決定したビジュアルは、社員が就業中に身につけたり目にすることで、IPOの日のメッセージを思い出していただけるようさまざまなグッズに展開しました。またIPOセレモニー当日には間に合わなかったのですが、コンセプト動画も作成しています。静止画では表現できないビジュアルの世界観を、時間軸を持たせ伝えられたのではないかなと思います。個人的には前職での経験を生かせたことが嬉しかったです。
中田 お披露目した際の社員のみなさんの反応も「ストーリーにテンションが上がった」「コンセプトを聞いた上で素敵だと思った」など、共感の声を多数いただけてホッとしました。
寺岡(堅木) このプロジェクトを通して、Goodpatchのデザイナーが担当する領域の広さを自分も身につけていきたいと感じました。クライアントとの密接なコミュニケーションやデザイナーが制作といった領域にこだわらず行動する様子に当初は驚きもありましたが、これができればどこに行っても通用できるデザイナーになれると考えています。
Goodpatchのビジュアルデザインチームは、企業のらしさや企業の想いを引き出し、心を揺さぶる表現で可視化しながら伝えることで、従業員のエンゲージメントを高めるサポートを行っています。ご依頼内容が固まっていない状態でも構いません、お気軽にご相談ください。
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