本日ご紹介するのはエンジニアの乗田 拳斗です。2019新卒としてGoodpatchに入社後、自社サービスReDesigner for Studentの開発などを経てワンキャリアクラウドのプロジェクトを担当。ビジネスの成長や変化に耐えうる持続可能性があるプロダクトづくりに強みを持ち活躍しています。また、密かに愛され続けているgoodpatch.comのCookie利用許諾メッセージを考案した人物でもあります。

彼がプロダクトの持続可能性への想いを持つまでの背景や、初めての実戦経験を通して学んだデザイナーとエンジニアが共創する魅力、Goodpatchのクライアントワークの醍醐味などをエンジニア視点で語ってもらいました。

持続可能性があり、変化に耐えうるプロダクトへの想い

僕は公立はこだて未来大学のシステム情報科学部出身です。中学生の頃からプログラミングの勉強はしていたのですが、自分でデザインをするとどうしてもいいものができなくて。

「自分でデザインするとなんでダサいんだろう?」というところから、デザインにも興味を持つようになりました。それからは大学でもテクノロジーとデザインをかけ合わせた作品を作ったり、ジャンルの垣根を超えて勉強をしていましたね。

また、学生時代はプログラミングのスキルを活かしていくつかの会社でアルバイトをしていました。そこでの経験は今の自分の思想の土台になっています。

例えばWeb制作の受託を行う会社でアルバイトをしていた時は、クライアントからの要望や急なデザイン変更によってコードがすぐに壊れることがありました。そんな経験が「持続可能性があるものを作りたい」という思想につながっています。

スタートアップでアルバイトをしていたときには、資金がショートしないよう早急に売上を立て、持続可能なビジネスを展開させていくことの必要性を体験しました。よってプロダクトがビジネスの意思決定に影響を受けやすく、特に構想段階においてはプロダクトの方向性がピボットする可能性が高いのです。その変化に耐えきれずプロダクトがボロボロになっていく過程を体験し、「変化に耐えうる設計をしたい」と考えるようになりました。

Goodpatchなら、絵空事ではない良いデザインを実装できる

僕が初めてGoodpatchを知ったきっかけは、サイバーエージェントのUXエンジニアの谷 拓樹さんです。当時から谷さんの書籍が好きでよく読んでいたのですが、巻末の著者プロフィールにかつてGoodpatchで働いていたことが書かれていたんです。それを見て「どんな会社なんだろう?」と興味を持ちました。

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当時のコーポレートサイトでGunosyやマネーフォワードといったスタートアップを支援していることを知り、Podpatchを聴いたり、オウンドメディアのMemopatch(Goodpatch Blogの前身)を読んでいくうちに、表現レイヤーだけでなく構造レイヤーのデザインについても考えている会社という印象を持ちました。

僕自身、特定の分野だけを極めるというよりは複数の分野をかけ合わせて良いものを作りたいという想いがあったので、UIだけでなくUXにも特化しているGoodpatchは自分にも合っていると感じましたし、絵空事じゃなく良いプロダクトを実装できるかもしれないと思いました。なので就活が始まってからも、絶対にGoodpatchに入社してメンバーの一人としてプロダクト開発に貢献したいという思いで面接に臨みました。

選考で一番印象に残っているのは、当時の新卒採用担当の方の存在です。選考中からいろんな社員を紹介してもらいました。もちろん僕の志望度を高めていくためだったと思いますが、それ以上に自分自身のキャリアについて親身に考えてもらったことが嬉しかったですね。

思い出深いエピソードといえば、代表との面接には全身ブルーで行きました。髪も、パーカーも、靴もブルー。今考えると何やってんだって話ですけど(笑)。Goodpatchのことを知ってからというものの、Memopatchや土屋のブログ Like a Silicon Valleyをずっと読んでいたので、面接で土屋とGoodpatchのエピソードを話していると「そんなことまで知ってるの!?」と驚かれた記憶があります。面接では自分の想いを伝えることができたのですが、実は提出していたポートフォリオに書いた会社名が「GoodPatch」になっていて、Goodpatchのpは小文字なんだよと言われた時に「あ、落ちたかも」と思いました。全身ブルーで気合を入れて行ったのに、pが小文字になっていなかったんです。同じ間違いをしないよう、皆さんは気をつけてください(笑)。

自社サイトのCookie利用許諾メッセージに込めた工夫

2019年に新卒として入社してからは、Goodpatchのコーポレートサイトリニューアルに関わったり、自社プロダクトのReDesigner for Studentの開発を担当しました。通常は新卒研修を経てクライアントワークのプロジェクトに配属されるので、僕は珍しいパターンです。

入社直後に担当した自社コーポレートサイトのリニューアルで、GDPR対策のためにCookie利用の同意を得るためのメッセージを考える機会がありました。定型文ならすぐに考えることができましたが、もっとラバブルで暖かみのあるものにしたくて。許諾のメッセージを少し工夫したんです。これがサイトリリース当時、思った以上に反響をいただけたのは嬉しかったです。現在のコーポレートサイトには、クッキーの絵文字もつけた状態で受け継がれています。

プロフェッショナルとして期待されるプレッシャーと失敗体験

初めてクライアントワークとして担当したプロダクトが、ワンキャリアクラウドでした。
入社してから1年ほど社内プロジェクトを担当してきたので、最初はクライアントさんとのコミュニケーションになかなか慣れることができませんでした。プロフェッショナルとしてのアウトプットを期待されてお金もいただいているからこそ、間違ったことは言えない。そう思うとなかなか発言もできなくて、チームメンバーにも迷惑をかけていたと思います。

戦略人事をターゲットとしたSaaSプロダクト「ワンキャリアクラウド」。Goodpatchはデザインのアーキテクチャ設計と、同シリーズ「ワンキャリアクラウド採用計画」の開発を支援した。

プロジェクト進行中にクライアントさんに総合満足度を回答してもらった時、僕自身の評価が5段階で2だったことがありました。それを受けて、チームメンバーが「これからどう改善していくか」という点を一緒に考えて動いてくれたのです。
例えば、クライアントさんとの定例に「今週のGoodpatch」というコーナーを作り、エンジニアの中間成果物をこまめに見せるようコミュニケーションを変えてくれたりと、チームメンバーにはとても助けられました。弱みや不得意をお互いにリカバリーし合える層が厚いことは、Goodpatchの強みだと思います。

クライアントの期待に応えられていないという事実に直面してから、自分でも行動を変えていきました。通常、Goodpatchのクライアントワークのスタイルは対面で話すことを重視し、クライアントのオフィスに常駐して一緒にプロダクトを作っていきますが、ワンキャリアクラウドのプロジェクトを担当していた時期はコロナの影響もありリモート中心だったので、意識的にSlackやミーティングでのコミュニケーションを増やしたり、ドキュメントを残すことで開発品質の向上に取り組みました。

振り返ると、当時は失敗を恐れて行動を起こすことに臆病になっていたのですが、それはチームを信頼しきれずに、自分一人で課題を解決しようとしていたからだと気付いてハッとしました。この誤った思考に向き合うことができたのは、僕の課題に対して真摯に向き合ってくれるチームメンバーの姿を目の当たりにしたからです。この出来事をきっかけに、メンバーを信頼して失敗を恐れずに行動を重ねられるよう、自分自身の意識が変化し始めました。

満足度が低い状態からのスタートでしたが、こうした改善を続けたことで、プロジェクト終了時には5段階で5のクライアント評価をいただくことができました。ワンキャリアクラウドはプレッシャーも大きいプロジェクトでしたが、自分自身にとっても良いターニングポイントとなりました。

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デザイナーとエンジニアの共創が開発効率を上げる

ワンキャリアクラウドのチームでは「ライブデザイン」という手法を使って、デザイナーと一緒にチームのパフォーマンスを最大化させる取り組みを実践しました。ライブデザインとは、エンジニアとデザイナーがひとつの画面を見ながらデザインから実装までを行うことで、開発における手戻りやラグをなくす仕組みです。

当時のプロジェクト風景。エンジニアとUIデザイナーが同じ画面を見ながらデザイン・実装を行った。

当初は開発速度がなかなか上げられず、リリースが2ヶ月遅れそうな状況だったのですが、デザイナーがアイデアをエンジニアにすぐ共有したり、エンジニアが実装したものをデザイナーが確認するといった取り組みによって、開発効率が上がっていきました。

デザイナーがデザインファイルをエンジニアに渡したあとの手戻りは、認識のずれから起こるものです。そこで私たちは、同じ画面を見ながらその場で一緒にデザインする「ライブデザイン」という仕組みを作りました。1つの画面をデザイナーとエンジニアで共有することでデザイナーがアイデアを考えたらエンジニアにすぐに共有できたり、エンジニアが実装したらデザイナーにすぐに確認してもらうといったことができるようになりました。これにより、メンバー間で高い相互認識と即座な意思決定が同時にできるようになりました。

ワンキャリアクラウドのデザインプロセスはこちら

クライアントを支援することで自走できる文化を残す仕事

僕は良いプロダクトとは、改善や保守を何度も繰り返しながらも5〜10年先の未来でも破綻しないような、持続可能性を持っていると解釈しています。このようなプロダクトを実現するためにも、様々な職能のメンバーと共創を行いながら日々エンジニアリングへ向き合っています。

究極的には、僕みたいなエンジニアやUIデザイナー、UXデザイナーがいなくてもビジネスが成り立つことが理想です。デザインへの理解や実装スキルを持っていなくても、例えば企画担当者が仮説を立て、用意されたコンポーネントやAPIを組み合わせてプロダクトに反映して検証していくサイクルを回すことができるといいですよね。Goodpatchの仕事は、クライアントさんに文化を残し、自走できる状態にすることが最終ゴールだと考えています。

そのためには理想を一方的に押し付けて置いて帰るわけにはいきませんし、相手の文化を理解することも大切です。クライアントワークでは教科書に載っているような開発プロセスを忠実になぞるのではなく、クライアントの環境に即した手法を提案しながら実践することを重視しています。

クライアントワークだからこそのやりがいは他にもあって、いろいろな事業ドメインの0→1フェーズを何度も経験できます。これは事業会社ではなかなかできないことです。また、他職種との境界がいい意味で曖昧だからこそ、エンジニアリング以外にも様々な知識を求められるので、将来事業を立ち上げたいと思っている人にとっても良い環境だと思います。

デザイナーと一緒にプロダクトを作る魅力

極端なことを言ってしまうと、エンジニアだけでプロダクトを世に出すこともできるんです。でも、それが手にとってもらえるかは別の話です。どれだけのユーザーにリーチできるか、どれだけ継続的に使ってもらえるかということを考えるとデザイナーの力が必要です。

一般的な会社だとデザイナーよりもエンジニアの人数の方が多く、エンジニアリングが共通言語として扱われますが、Goodpatchは真逆なんです。デザイナーの方が多いからこそ、エンジニアリングではなくデザインが共通言語として扱われる組織です。

デザインをバックグラウンドに置いてエンジニアリングを推進する中では、複雑な実装をしてでも高い確度のユーザビリティを担保することが求められるケースも発生しますが、僕はこのようにユーザーへの価値を徹底的に追求できることへ非常にやりがいを感じています。
また、デザイナーとエンジニアがコミュニケーションを取るためには言語の壁を乗り越える必要がありますが、両者の言語を理解しているからこそお互いの言葉を翻訳して議論を促進する役割を担えることにも魅力を感じています。

Goodpatchは全体の約75%がデザイナーとエンジニアで構成されています。

価値を最大化させることにこだわり続けたい

もちろんデザイナーや他職種と一緒に働く中で、意見がぶつかることもあります。そういう時は価値を最大化させるという観点で意思決定をします。
価値にも様々な種類があり、それはユーザー体験・開発速度・保守性などに相当します。
開発工数が肥大で速度が落ちてしまう場合でも、ユーザーに価値がある施策であればその実装に積極的に取り組むケースもあります。反対にデザイナー視点で理想的なUIでも、エンジニアが見て開発工数がかかりすぎるとわかった時は、価値をユーザーに最速で届けられないので売上が立てられず、機会損失をしてしまうのではないか。今、開発に時間をかけるのは最適な意思決定ではない、と考えます。

エンジニアリングを実践する中では、最速で価値を届けることに集中した結果として保守性が低下してまい、メンテナンスやリファクタリングの機会が頻発してしまうというケースも往々にして存在します。このようなシステム改修は本質的な価値とは乖離してしまうため、様々な機会を損失している状態と言えます。業務の中ではこのような問題が起きないように、その場その場でどの価値を重視して取り組むかについて意思決定をすることを大切にしています。

UIデザインに対してエンジニア観点でフィードバックを行い、破綻しずらく、高い保守性を担保するUIを実現することも価値を最大化させるための取り組みの一つです。この価値を最大化させるためにも、エンジニアとデザイナーがコラボレーションすることは非常に重要だと思います。Goodpatchのエンジニアは、ユーザーにとっての価値だけではなく、ビジネス価値や開発者体験などを総合的に判断している人が多いです。

今後もデザイナーと密にコラボレーションして、持続可能なプロダクトを作っていきたいです。開発フェーズだけでは支援できないアクセシビリティなどの観点もあるので、もっと早い段階からプロダクトを良くすることに寄与したいと考えています。そのために将来的には構造や表層のデザインなども手を動かしながら実践することで、よりプロダクトの価値を磨いていくことに挑戦したいと思っています。


今回ご紹介した乗田のストーリーのように、Goodpatchにはデザイナーとエンジニアが共創しながらプロダクトをデザインから実装まで磨き込んでいくことができる環境があります。

ご興味を持ってくれた方はぜひ一度お話ししましょう!

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