パートナーの新規事業を共に創る、Goodpatch グローバルベンチャーデザイン始動
グッドパッチは、デザインの力をさらに拡張するための新事業として、グッドパッチ独自のエンタープライズ企業向けコーポレートベンチャービルディング(CVB)サービスとなる「Goodpatch グローバルベンチャーデザイン」を提供開始しました。
Goodpatch グローバルベンチャーデザインとは、パートナー(クライアント)のビジネスゴールや企業理念にSDGsを意識した考え方を組み合わせ、パートナー企業の新規事業アイデアの策定から立ち上げまでを支援し12ヶ月以内の市場参入を可能にするサービスです。
詳しくはプレスリリースをご覧ください。
https://goodpatch.com/news/global-venture-design
本サービス事業の責任者を務めるのは、グッドパッチの取締役執行役員である實方(じつかた)ボリス。ヨーロッパでの事業を含め、グッドパッチのグローバル戦略および事業を統括しています。ボリスを筆頭にグッドパッチは、東京およびヨーロッパを拠点とするベンチャー・ビルダー・チームと共に、パートナー企業の新規デジタル事業の立ち上げやグローバル展開、日本進出を支援します。
ベルリンを拠点にグッドパッチのヨーロッパにおけるビジネスを成功に導いてきたボリスが7年の月日を経て東京に戻ってきた決意の裏側とは?グッドパッチが描く未来とともに、聞きました。
<實方ボリス / Boris Jitsukata>
スイスのザンクトガレン大学とスタンフォード大学の共同デザインイノベーションプログラムの運営に携わり、その後、慶応義塾大学でメディアデザインの修士号を、スイスのサンクトガレン大学で国際経営学のCEMS修士号を取得。グッドパッチに入社後は、2015年にベルリンオフィスを立ち上げ、2022年2月1日にGoodpatch Tokyoの取締役執行役員に就任。(Twitter: @BorisJitsukata)
目次
ベルリンを離れ、日本で新規事業に取り組む決意
——ボリスさんはGoodpatch Tokyoで働いた後、ベルリンへ渡り7年間、グローバルでのビジネス支援に携わってきました。今回、東京に戻ってこようと思った理由を教えてください。
グッドパッチは、世界で成功するために私がお手伝いした最初の日本企業です。現在、Goodpatch Globalは、メルセデス・ベンツや世界的位置情報サービスのHEREなど、世界的企業のパートナーとしてさまざまな取り組みを行っています。
これまで私と私のチームは、パートナー企業のグローバル進出とデジタル化をお手伝いしてきました。そこで培った経験と知見を、日本企業へ還元したいと思ったことが、東京に戻ってきた大きな理由です。
私が新たに指揮を執ることになった「Goodpatch グローバルベンチャーデザイン」では、デザインの力とデザイン思考の方法論を用い、企業のベンチャー構築を支援していきます。私を含む、チーム全員の専門知識とグッドパッチで得た経験を掛け算し、グローバル進出やデジタル化へ挑戦する企業へCVBというサービスの形で提供することが目的です。
また土屋さん(グッドパッチCEO)も私も、多様性のあるチーム作りに強いこだわりがあります。土屋さんは「多国籍軍」と呼んでいますが、ベルリンはまさにそのようなチームが構築できている好例です。私が東京に戻ってくることで、Goodpatch Tokyoをさらに多様性のあるものにすることも、目的のひとつでした。
コーポレートベンチャービルディングとは何か
——コーポレートベンチャービルディング(CVB)とはそもそもどのようなものなのでしょうか?
CVBとは、企業や企業グループがスタートアップ設立の要領で新たに独立会社を立ち上げることです。販売経路や知名度、知的財産など企業の既存資産を活用しつつ、本業とは異なるビジネスモデルや事業を展開することが可能になります。
事業会社がファンドを組成し、ベンチャー企業に出資や支援を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)との最大の違いは、実施企業が直接的に会社を設立すること。グッドパッチのような外部パートナーによる実務的な支援を受けながら事業を立ち上げることが特徴と言えるでしょう。
CVBモデルは、米国とヨーロッパで広がりを見せている、新しい企業イノベーション手法です。新たに設立されるベンチャー企業は親会社の資産を有効活用できる一方、親会社は支援する企業の革新的なアイデアや実行速度によって、デジタル変革やグローバルな挑戦に打って出やすくなるメリットがあります。まさに、事業速度と領域を拡張するのに理想的なモデルなのです。
——ヨーロッパにおける成功モデルを教えてください。
好例を挙げるとすれば、Rocket Internet(ベルリンに本社を置くインターネット企業)でしょう。同社はいかに素早く、効率的に、ベンチャー企業グループを構築できるかを世の中に示した良い例です。
Rocket Internetの方法は、規定されたプロセスに沿ってリスクを最小限に抑えながらベンチャー企業を設立していくものでした。リスクを嫌う風潮のあるヨーロッパ企業にとって、その様なアプローチは当時シリコンバレーで多く見られたスタートアップ設立の手法よりも受け入れやすく、多くのヨーロッパ企業がCVBモデルを導入しました。
日本企業が世界で戦うために、CVBモデルは必要不可欠
——日本におけるCVBの動きはどうなのでしょうか?
日本では「コーポレートベンチャービルディング」という言葉こそ、あまり定着していませんが、「スタートアップ・スタジオ」や「新規事業開発」と呼ばれている事業がほぼ同じ意味だと思います。そういう意味で、言葉自体は浸透はしていませんが、考え方は浸透していると言えるでしょう。
日本企業が昨今の欧州企業と大きく異なる点は、設立当初からグローバル展開を視野に入れたベンチャーを作ることに消極的であることです。当時同じく国内を向いていた多くのドイツ企業が、Rocket Internetに触発されることで、グローバル展開を見据えたCVBの手法を取り入れていった状況と似ていると感じます。
日本企業は「まずは国内の市場に集中しよう」という考え方が一般的ではないでしょうか。国内市場で一定の成功を収めても、海外展開は未達になっているケースが多いことは残念に思います。
——なぜ今、日本企業にとってCVBが重要なのでしょう。
現在、日本企業の国際競争力が失われていることは、メディアでもよく言われている通りです。事実、1995年には「Fortune Global 500」のリストに載っている世界の大企業500社のうち148社が日本企業でしたが、2020年リストでは53社にまで減っています。
出典元:https://www.jmncsolutions.com/post/are_japans_largest_companies_shrinking
縮小する日本市場において、各社が実現できることには限界があります。一方で、新しい市場への参入やデジタル化への対応など、株主からの期待は今後ますます高まるでしょう。このギャップを埋めるのが私たちの役割だと思っています。
私は、日本のパートナー企業とのコラボレーションに大きなポテンシャルを感じています。上記の通り、日本企業が直面している問題は緊急性の高いものです。しかしコロナ禍においてグローバル展開の優先順位がさらに後退してしまった様にも思えます。
私が知る限りでも、日本企業のもつ質の高い仕事、仕事への献身的な姿勢、顧客中心主義の徹底などは他国企業の追随を許さないレベルです。だからこそ、日本企業がグローバル市場で成功する姿をぜひ見たいと思うのです。優れた力を持つ日本企業が、インターネットが切り開いた世界市場の恩恵を受けていないのは、実にもったいないことです。
Goodpatch グローバルベンチャーデザインの全容
——Goodpatch グローバルベンチャーデザインのモデルプロセスはどのようなものですか?
Goodpatch グローバルベンチャーデザインは大きく、「発掘(プロブレムソリューションフィット/PSF)」「構築(プロダクトマーケットフィット/PMF)」「スケール(ビジネスモデルフィット)」の3つのフェーズに分かれています。それぞれのフェーズについてご説明していきましょう。
フェーズ1:発掘(プロブレムソリューションフィット)
「発掘」のフェーズは、グローバルベンチャーデザインのプロセスの中で、最初にして最も重要なフェーズです。ここでは、ユーザーの心理、世界の市場、競合環境などを深く掘り下げ、その結果を最初のプロトタイプに落とし込みます。サービスデザインの言葉に置き換えると、このフェーズのゴールは、有望な“プロブレムソリューションフィット”にたどり着くことです。
顧客の課題を特定し、それを解決できるプロダクトを現地の視点で提案します。そして勝つための戦略を検証し、プロトタイプに落とし込んでいきます。何が市場で通用するのか/これから通用していくのかを見極め、検証するのが、最初のフェーズの目的です。
フェーズ2:構築(プロダクトマーケットフィット)
フェーズ1で作ったプロトタイプや戦略を提示し、親会社からGOサインが出ると、第2段階の「構築」のフェーズに移ります。ここでは、Minimum Lovable Product(MLP)を市場に投入するための戦略を策定することが大きな課題です。
フェーズ1で作成されたビジョンプロトタイプから、より効果的なMLPを作るための仕様を定義していきます。UXレベルの高いPoCを開発するため、既存のソリューションを活用することで、4〜9ヶ月という短い期間での開発を目指します。
フェーズ3:スケール(ビジネスモデルフィット)
そして最後が「スケール」フェーズです。このフェーズでは、市場の変化に適応しながら、ビジネスを商業化します。持続可能なビジネスにするために、収益性を高めることがこのフェーズでの目標です。より永続的な組織を構築するために、将来そのベンチャー企業をリードする人材を採用することにも焦点を当てていきます。
Goodpatch グローバルベンチャーデザインの特徴は、それぞれのフェーズにおけるスペシャリストがチームにアサインされることです。例えば、フェーズ1 では、デザインストラテジスト、UXリサーチャー、UXデザイナーなどが主要なチームメンバーとなり、フェーズが進むにしたがって、エンジニア、UIデザイナー、ビジネスデベロッパー、グロース担当などがチームに加わっていきます。
私たちは、こうした3つのフェーズを巡り、投資の理にかなうアイディアの選定やチーム招集を含め、事業立ち上げを強力にバックアップし、12ヶ月以内の市場参入を可能にします。
——すでにGoodpatch グローバルベンチャーデザインプログラムの事例があれば教えてください。
2021年に東京とベルリンを拠点に、グローバルクライアントとの試験的な運用に成功しました。
例えば、日本の大手自動車部品メーカーとは、ドイツ市場向けのあるデジタルベンチャーを手がけ、MLPを開発しました。このアプローチは同社内での枠組みとなり、彼らの東京のチームとともに再び実施することになりました。
私たちは、質的データと量的データをミックスしたような、まったく新しいテスト方法を模索しました。例えば、アルファ版ではベルリンのある特定の地域で、4日間にわたる70名の被験者を用いたフィールドテストを行い、その週の終わりには特にアクティブなユーザーに対してアンケートやディープインタビューを実施しました。
また、日本のCtoCアプリ運営会社が新しい市場へのグローバルな拡大戦略を進めるにあたっては、フェーズ1を支援しました。綿密なユーザーインタビューから具体的で検証可能なプロトタイプをすべてを集約しました。インサイト、データ、プロトタイプは、戦略のプロセスをサポートしています。
これらふたつの事例から分かるように、グッドパッチは現地の言語でユーザー調査を行うことができ、フェーズに応じた現地チームを作ることができる強みがあります。
コロナ禍で海外出張が困難となった現在、この調査の強みはより深まっていると思います。
——Goodpatch グローバルベンチャーデザインを利用するのは、どのような企業が想定されているのでしょうか。
CVBはベンチャーに関するリスクを軽減するための重要なツールです。ベンチャーは失敗するリスクが高いですが、デザイン主導の設計によって、失敗するリスクを最小限にまで下げることができます。目標は、企業が新しいデジタルビジネスを構築し、市場参入するための力を共につけていくことです。
自社のビジネスモデルから外れたベンチャー企業をキックオフしたものの、まだ結果を出せていない企業や、海外でのデジタルベンチャー設立を模索している日本企業。そして、日本国内で新たなデジタルベンチャーを立ち上げたいと考えているが、日本市場や日本のユーザーに対するノウハウが不足している企業などに向けてプログラムを提供していきたいと考えています。
一般的なCVBのサービスとは異なり、Goodpatch グローバルベンチャーデザインの強みは、デザインを活用し、それを実行する能力にあります。コンセプト設計やコンサルティングだけでなく、ユーザーリサーチやデジタルプロダクトのデザイン、開発、グロースサービスなどにおいても併走できるのが、Goodpatch グローバルベンチャーデザインなのです。
——Goodpatch グローバルベンチャーデザインを通じて、世の中にどのような価値を提供したいと考えていますか。
グッドパッチのミッションは、「デザインの力を証明する」ことです。私は、CVBモデルほど、デザインの力を証明できる場はないと考えています。それは単にGoodpatchのサービスポートフォリオを拡張するだけにとどまりません。
これまでグッドパッチの成長を支え、パートナーを成功に導いてきた「デザインの力」のすべてが、Goodpatch グローバルベンチャーデザインに集約されています。ユーザー調査から、ストーリーボード、ワイヤーフレーム、UX/UIデザインまで、グッドパッチの強みは、新しいベンチャーを実現するための重要な要素となっています。
創業以来Goodpatchは、人、組織、そして地球のために持続可能な価値を創造・提供してきました。そのため、「Goodpatch グローバルベンチャーデザイン」では、ビジネスの展望、企業の価値観に加え、サスティナビリティの視点を非常に重視しています。例えば、製品に関連する環境負荷の80%以上は、製品の設計段階で決定されると言われています(出典:欧州委員会)。
このような現状を変えていくため、私たちはGoodpatch グローバルベンチャーデザインを通して、既存のビジネスモデルや企業の制約から切り離された、ベンチャー構築のためのプラットフォームとチームを提供します。最先端のデザインプロセスによって、イノベーションを阻害するものを打破し、意思決定を促進させ、ベンチャー構築のプロセスを加速させるお手伝いをしていきたいと思っています。
オンライン説明会開催
Goodpatch グローバルベンチャーデザイン事業責任者の實方ボリスによるオンライン説明会を実施します。
ベンチャービルディングのコンセプト、グッドパッチの取り組み、そして日本企業の海外展開における新たなアプローチの重要性についてご紹介する予定です。
ご興味のある方は下記よりご登録をお願いします。
『What is Venture Building?〜Goodpatch グローバルベンチャーデザインが切り開く日本企業の未来〜』
開催日時:2022年3月24日(木)17:00開始、18:00終了予定
参加費: 無料
https://goodpatch.connpass.com/event/241916/
関連リンク
Goodpatch グローバルベンチャーデザイン サービスページ
アプローチやケーススタディを掲載しています。日本語サイトも準備中です。
https://global.goodpatch.com/offerings/venture-design
採用情報
また、上記を実現・拡大させていくために、一緒に働いてもらえる仲間も募集しています。国内外の企業のグローバル化やデジタル化の支援に興味がある方、下記の求人ページよりご応募お待ちしております。
◆Project Manger
◆Business Developer
◆Digital Product Designer
また上記に該当する職種がない場合は、オープンポジションよりお気軽にご連絡ください。