グッドパッチのUIデザイナーに聞く「スタートアップで働いて良かったことは?」
グッドパッチにいるデザイナーのキャリアは多様性に富んでおり、さまざまな業界の経験者が集まっています。中でも、弊社所属のUIデザイナーのうち約4分の1はスタートアップ経験者ということはあまり知られていません。
スタートアップでは、デザイナーが周りに少なく、業務の範囲が広いゆえに自身のキャリアに悩むことも珍しくないそうです。
そこで今回、グッドパッチは社内外のスタートアップ経験のあるデザイナーを集めたイベントを開催。主にスタートアップのデザイナーならではの強みやキャリア設計について語りました。
イベントに登壇した3人は、いずれもスタートアップを経験したUIデザイナー。この記事では「スタートアップでの経験とキャリア観」を軸にした質問を司会の石黒が3人に聞いていくコーナーを中心に、大盛況だった当日の様子をダイジェストでお届けします。
登壇者:
UIデザイナー 金渕(@fazerock)
UIデザイナー 峰村(@BitsVader)
UIデザイナー 甲斐田(@aik__daccaii)
目次
デザイン以外の範囲にも責任を持ち、越境した経験
最初の質問は「スタートアップでの経験で苦労や失敗したことは?」。多くの業務が求められるのがスタートアップ。3人がそんな状況の中で学んだことは何だったのでしょうか。
峰村:
自分は新卒でグッドパッチに入り、そこからスタートアップに転職して、もう一度グッドパッチに出戻りした人間です。グッドパッチでは、クライアントワークのプロジェクトを進めていく中で自身の得意領域や責任範囲を超えながら新しいスキルを獲得したり、クライアントの信頼を勝ちとったりすることができました。
しかし、私が経験したスタートアップでは、自分の責任範囲を越境しすぎていると、本来自身がやるべきことが疎かになってしまう本末転倒な現実がありました。事業を優先し、その部分で動き回っていても、採用を含めた組織施策に手が回らなくなってしまいます。前職では、デザイナー1人あたりの稼働量がかさみ、より大きな成果を生み出すためには採用にも力を入れる必要があったため、自分の責任範囲や成果の最大化をしっかりと考え、取捨選択しながら仕事をする必要があったんです。なので、組織施策や会社の外にデザインチームをどう知ってもらうか?といった採用・広報施策は自分の判断で勝手にやったりしました(笑)。
組織施策は重要でもあるものの、事業の優先度が高く見えがちなのでなかなか進まないことも多いはず。だからこそ、自分が勝手に押し進める部分だと考え動きました。結果的に重要さをいろんな人に知ってもらえたので、そういう部分での判断力は大事だったなと思います。
金渕:
上司から採用については何にも言われていなかったけれど、業務量がやばいと思ったから勝手にデザイナーを増やそうとしたってこと?
峰村:
普段から相談はしていたんですけど、やっぱり現場の優先度は事業に向きがちだったので、自分が駆け回って仲間を集めました。
金渕:
甲斐田さんが挙げている「優先度」もこのエピソードと似ていそうですね。
甲斐田:
そうですね、優先度に関しては学びも失敗も多くありました。スタートアップは悠長にやってられないので、優先度の見極めが大事です。スタートアップにいたときはPdMの右腕として、企画と開発のコネクターのようなこともやっていました。
ビジネス要求とユーザー要求といった抽象的なものを具体化していくのが私たちデザイナーの仕事ではありますが、限られた日数とリソースの中で実現可能な要件に落とし込む必要があります。そこを見誤った際に、機能としても体験としても不十分な状態でリリースをしてしまい、たくさんの人に迷惑をかけた苦い経験があります。最初から優先度を正しくつけていたら炎上もしなかったと思うので、スピード感を持って判断するというのは大切だと学びましたね。
石黒:
勝手にやる、領域を広げるといったことにリスクはつきものだと思うのですが、怖さはありませんでしたか?
甲斐田:
怖いですけど、やらないと進まないし、躊躇する時間もなかったです。怒られると分かっていても、現状をよりよい方向に持っていくために突撃していました。
金渕:
僕はファーストキャリアでスタートアップに入りました。その会社では、商談でクライアントに欲しいと言われた機能を全部そのまま作っていくことが多かったので、最終的に事業がうまくいかずに解散しました。
要因はそれ以外にも色々あると思います。優先順位をつけずに全部作っていたこともあるし、今振り返れば自分自身もっと良いUIが作れたと思います。
石黒:
楽しいことばかりではないのが、みなさんのお話から伝わってきました。
峰村:
今回はみんな「(共感で)ぐわぁ〜」っとなる会になるんじゃないですか?(笑)
「人に任せる」「予算の都合を考える」 デザイナーがスタートアップで培われた能力とは?
続いての質問は「現在のキャリアでスタートアップの経験が生きていると思うときはありますか?」というもの。「事業への強いコミット」とした人から、なんと「スネかじり」と書いた人も。その真意(?)に迫っていきます。
金渕:
僕は先ほど話したスタートアップの解散の話から「もっとやれることがあったな」と感じていて、その経験から、今はクライアントワークでも「この事業が失敗したらここで死ぬ」くらいの気持ちでコミットしています。
友達が自己投資で作っているアプリのUIデザインをしているのですが、失敗したら友達が路頭に迷うかもしれないし、彼の子供が育てられないかもしれない。僕がいいUIを描かなきゃ、お子さんがちゃんと大人になれないかもしれない、と思いながらやっています。
石黒:
すごい気迫ですね。そういう当事者意識はどこで得られましたか?
金渕:
やっぱりスタートアップが解散してしまった経験は大きいです。
石黒:
甲斐田さんは自己紹介のスライドに「スネかじり」と書いていましたね。気になりすぎるのですが、これはどういう意味ですか?(笑)
甲斐田:
1人デザイナーだとやることがいっぱいある上に、意思決定もやるとなると怖いじゃないですか。スキルも経験もない中で越境していくために、いろんな人に聞いたり、脳みそを借りにいったりしないと良いものが作れなかったので、スネをかじるという能力が鍛えられました。今は堂々といろんな人のスネをかじらせてもらっていますが、スタートアップでの経験があったからこそだと思います。
金渕:
デザイナーは人に任せられない人が多い気がしますね。
甲斐田:
1人でできることって少ないんですよ。もっと大きいことがしたいと思ったら、美味しそうなスネを見つけてかじりに行けるかっていうことが大事だと思っています。
金渕:
僕もやっと最近少しずつ人に任せられるようになってきました。それまでは「もう自分でやればいい」という感じでしたね。甲斐田さんは、どうやって人に任せられるようになりましたか?
甲斐田:
デザイナーの得意分野は人それぞれなので、自分より特定のタスクが得意でうまくできる人を探して任せるようにします。
石黒:
金渕さんと甲斐田さんは同じ経験をしているのに、任せることに対して対極的なのが面白いと思いました。峰村さんはどっちのタイプですか?
峰村:
どっちでもなくて。スタートアップにいたときの方がやることが多かったので、やりまくってたらいつの間にか体力が増えて、全部自分で作れるようになったという感じです。
石黒:
そんなことが(笑)。峰村さんが事前に答えてくれていた「人の気持ちを考えられるようになった」も聞きたいですね。
峰村:
新卒でグッドパッチに入社したため、社員もクライアントもデザインの重要性を信じている人が多い環境からスタートしました。
一方で、スタートアップでは「デリバリーを優先したい」とか「売上を優先したい」とか、いろいろな思惑を感じることもあり、デザインの優先度が必ずしも一番高いわけではないということに強く気付かされました。それでもたくさんの人と共創をしていくために、その人たちにどう自分のデザインを納得してもらう必要があるのか?、この人はどんなことを大事にしているのだろう?と考えながら仕事をするようになりました。
石黒:
そういうことだったんですね。
峰村:
あとはタスクが一気に来て、デザイナーのキャパが逼迫することが想定される時、何かの優先度を落とす判断をしなければいけないという局面はどこの会社でもあると思います。
私はマネージャーとしての役割も持っていたので、メンバーの稼働量を守りながら最大限の成果を出すために、優先度の調整を上司と話し合うことはそこそこありました。その時にただ「忙しいからできない」というのではなく「この方法なら成果を求めながら稼働量も調整できるがどうか?」というような会話のアプローチを大事にしました。時には、デザイナーの作ってるものや単価感を出したり、どこに時間を割くとより効果が出るかなどの早見表を作って、上司や同僚と話し合ったりもしました。チームのデザインやメンバーを守れる、かつ効果が出続ける方法を常に模索していた気がします。
意図した道でも、偶然でも スタートアップを経験したデザイナーが今グッドパッチで働く理由
ここからテーマは「キャリア」の話に。三者三様のキャリアですが、意図したものだったのか、偶然によるものかは3人とも異なるようです。どのような観点を重視してキャリアを選んできたのでしょうか。
石黒:
皆さんは、どのようなキャリア設計をされていますか?
峰村:
ちゃんとしたキャリア設計をしたことはあんまりないです。新卒でグッドパッチに入ったときは就活しましたが、割と今までノリでやってきましたし、今回の転職でグッドパッチに戻ってきましたが、前職を辞める時点で戻るつもりはありませんでした。
スタートアップから次のキャリアに向けて、転職活動をするときに見境なくいろんな業界の会社を受けて、カジュアル面談でグッドパッチの人に「俺どうしたらいいですかね」って聞いてたら、結果ここにいるという感じです。
僕のキャリアは基本的に「気づいたらこうなってた」が結構成功している気がします。なので困ったら、信頼できる人に聞いて、言うこと聞けばいいかなと思います。(笑)スタートアップで1人とかだと、周りにロールモデルになるデザイナーがいないし、どうしたらいいか分からないけど自分で決めなきゃということがよくある気がします。でもそういうときは信頼できるいろいろな人の話を聞いて決めるのも、意外とアリだと思いますね。
金渕:
確かに自分の頭で正解を出せないから悩んでるってことだから、転職も信頼できる人の話を聞いて決めればいいかもね。
甲斐田:
スタートアップならではの話で言うと、一人ぼっちだとデザインを深めることが難しいと思っていて。職位をあげることで視野を広げるみたいな話もありますが、そもそも一人デザイナーだと上とか下の階級がないじゃないですか。そうだったら領域を広げたり、自分と違う職種の人たちと交流して新しいことをやってみたり、というのもいいと思います。例えばPdMにキャリアチェンジするとか。
石黒:
なるほど。甲斐田さんはどのようにキャリアを進めてこられましたか?
甲斐田:
私はキャリアのロードマップを引くのが好きなタイプです。下積み3年働いたら次はバリバリ働くためにスタートアップに行きたいと考え、次の30代前半は最後のチャレンジ!だと思って、クライアントワークに挑戦したくて転職しました。
金渕:
それで言うと、僕もゆくゆくは自分でサービスを立ち上げたいという気持ちがあって、修行のためにグッドパッチに入ったという経緯があります。
石黒:
「修行」ってどういうことでしょう?詳しく教えてください。
金渕:
実は僕は大学生時代からアーティスト活動や音楽作家として楽曲提供をしていて、大学3年生のときに音楽事務所にスカウトされて就活をせずにいたんです。そのままフリーランスとして音楽事務所に所属していましたが、不安定な状態が続き、知り合いづてで紹介してもらったスタートアップで業務委託として働き始めました。
そのスタートアップが解散した後に、当時の社長が経営していたWeb制作会社に入って、初めて先輩のデザイナーができたことで自分の実力不足に気がつきました。
その時にちゃんとデザインの勉強をしたらどんどん楽しくなっていって。バナー制作や運用など小規模なデザイン改修から次第にページ1枚を任せてもらえるようになり、更にワイヤーフレームも自分で描くようになったり、お客さんとも直接話すようになっていきました。そこで、今の自分の実力が世の中的に見たらどれくらいなのか、腕試しのつもりでグッドパッチを受けてみたら受かったという感じです。キャリア設計と言えるのか分かりませんが、常に「今ここで吸収できることは何か」を考えながらやってきました。
峰村:
前に金渕さんにキャリアの話を聞いて面白かったのは、ミュージシャンを諦めてデザイナーになったわけじゃない、ということですね。ミュージシャン人格は今もありつつ、デザイン熱が高かったので、デザインをやっているだけというか。
自分も大学までグラフィックデザインをやってきたのですが、UIデザインが今強火なだけで、いつか自分の中でバズったらまたグラフィックデザインをやるかもしれないし。いくつかの選択肢があったときに、どれかを諦めるわけじゃなくて全部やるというキャリア設計の方法もあるよなと思います。やりたいことをやりたいなら転職という選択肢だけじゃなくて、副業とか自主制作とかアプローチも考えられますよね。自分も実は格闘技やってるけど、いつ格闘家になるかも分からないですよ。諦めていません(笑)。
グッドパッチのデザイナーに聞いた「またスタートアップで働きたい?」
トークの後は懇親会も開催され、イベントは盛況のうちに閉幕。アンケートを通じて、来場者の皆さんからは「良かった話だけでなく、泥臭い経験が聞けてよかった」「悩みや経験に共感でき、一人じゃないと知れて自信につながった」といった感想をいただきました。
トークのパートでは最後に「またスタートアップで働きたい?」と聞きましたが、3人とも「クライアントワークで能力を培って、もう一度挑戦したい」という回答に。スタートアップ経験のあるデザイナーが強みを生かして活躍しつつ、パワーアップできる環境がクライアントワークで働くメリットのようです。
現在、グッドパッチではUIデザイナーを募集しています。スタートアップ経験者のデザイナーが活躍・成長できる環境にご興味がある方は、ぜひカジュアル面談や選考に臨んでいただければ幸いです。まずはカジュアル面談から、という方もお待ちしております。ぜひお話ししましょう!