「MAKE A MARK」。

これはグッドパッチが先日行った総会で掲げたコンセプトです。私たちは世界に何を残せるのか──そんな問いを背景に「爪痕を残し、世界を前進させよう」というメッセージが込められています。

グッドパッチで働くデザイナーたちは、なぜグッドパッチに集い、これから何を残していきたいのか。各々がそんな胸に秘めた思いに迫るインタビュー企画がスタートします。第1回はUIデザイナーの金渕良太が登場。

サウンドプロデューサーとして、数々のテレビCMやアーティストへ楽曲提供を行う作曲家からデザイナーに転身した金渕。「クライアントが満足する」ことの先を求めてグッドパッチに入社しました。そんな彼が一番大切にすることとは。

音楽からデザインの道へ。劣等感との戦いの日々

大学は美術大学でデザインを専攻していましたが、在学中から音楽活動を行っていたこともあり、卒業後は作曲家として音楽事務所に所属し、活動をしていました。ですが次第に「この先ずっと音楽を仕事にするのか」と不安が募って……。作曲活動のかたわら、副業でのデザインの仕事を通じて出会った先輩デザイナーの方々を見ているうちに、デザインを通じたキャリアに可能性を感じました。

昔からモノを作ることが好きで、作ったものが世の中に大なり小なり影響を与えることにやりがいを感じていて。それは、音楽にもデザインにも共通することだと思ったんです。それで本格的にデザイナーとしてキャリアを歩むことを決めました。

デザインを本業にし始めたころは、本当にゼロからのスタートだったので、同年代のデザイナーと自分を比べては、すごく劣等感を感じていました。経験も稼ぎも何もかもに差があり、追いつくためにはどうすれば良いのか、とにかく考える毎日でしたね。

音楽をやっていたころは、メジャーなアーティストに楽曲を提供したり、大きな舞台に立ったり、ツアーで全国各地を回ったり。一応、それなりのキャリアを歩んでいる感覚はありました。デザイナーになるということは、それをすべて捨てることになるので、覚悟を決めていた反面、焦りも大きかったですね。できることを増やすために、WebディレクターやPMなど、デザイナー以外の職種にも挑戦しました。

音楽活動時代の金渕

経験を積むにつれて、メンバーからの信頼も得られるようになり、クライアントからも満足してもらえるものを作れるようになっていきましたが、同時に居心地が良すぎて、それに甘えてしまっているのではないかという焦りも感じるようになって。「仕事をうまくこなす自分」が嫌だなと思ったんです。それで、デザインにもっと深くコミットしたいと思い、グッドパッチに転職することを決めました。

本当にユーザーが求めるものを作るためなら、ぶつかることも厭わない

転職の際は他の企業からもお声はかかっていたのですが、グッドパッチに決めた一番の理由が「デザインの力を証明する」というミッションへの共感でした。それまでは、とにかく仕事をちゃんと回すことを最優先にしていて、クライアントから与えられる要件ベースで物事を考える仕事の進め方をしていました。

ですが、今だとプロジェクトの最初に、「誰のどんな課題に対してアプローチするか」という点を議論することから始まります。

言ってしまえば、使う人が存在しないサービスやプロダクトに価値はありません。ユーザーが求めるものでなければ意味がない。だからこそ「実際にサービスを使うユーザーこそが、サービスのあるべき姿を体現している」という考えで、まずはユーザーのことをしっかり知ることを一番大切にしているんです。グッドパッチに入って、クライアントの先にいるユーザーのことを、よりしっかりと見るようになりました。

加えて、クライアントとの関係をとても大切にしています。それは、単にクライアントの言う通りにするということではありません。プロダクトやサービスが成功して、ユーザーに価値を提供できることが本当の目的なので、そこから逸脱するような言動に対しては「それは間違っています」とはっきり伝えるようにしています。「言いにくいこと」も言えるような関係作りは本当に意識して行っていますね。

反対に、僕に対しても何か思うことがあれば言ってほしい。そうじゃないと不健全だと思うんです。お互いに思ったことを言い合える状態でなければ良いものは絶対に作れないので。

クライアントが求めるものと、自分たちが作るべきだと思うものが食い違うことがあれば、とことん話し合います。ぶつかることもありますが、最後には「ちゃんと思ったことを言ってくれて嬉しい」と言っていただけるので、とてもありがたいです。

音楽制作をやっていたときは一人でものづくりをしていましたが、グッドパッチに入ってからはチームメンバーそれぞれが自立しながらも協力しあって良いものを作っていく、そんな働き方に変わりました。だからこそ、「誰と一緒に働くか」が自分の中で重要なものになっている気がします。グッドパッチは、経歴や経験が多様なメンバーと仕事ができるので、とても刺激的な環境です。

これまでは、“自分”が主語になることが多かったのですが、グッドパッチで仕事を始めてから“他人”が主語になるケースも増えてきました。僕は、若手メンバーのメンターを担当する機会が多いので、「一緒に頑張っていこう」と並走したメンバーが何かを達成したり、成長するのを目の当たりにしたりすると、自分のことのように嬉しくなるんです。そういう意味でも、「チームで働く楽しさ」が染み付いてきている実感があります。

リリースの「先」まで責任を持つ 長く使い続けられるものを残したい

デザイナーとして、これから何を成したいのかを考えてみると、10年前に作った曲を今も「すごく好き」と聴いてくれる人がいるように、プロダクトでも長く使い続けてもらえるようなものを世の中に残したいという思いがあります。かっこよく言えば「自分が生きた爪痕を残したい」んです。人生一度きりなので、悔いのない仕事、人生を歩みたいじゃないですか(笑)。

UIデザインの仕事は本当に楽しくて、どんな領域のプロダクトでもやりがいを持って取り組めるので、自分の家族が使ってくれるくらい、多くの人に届くものを信頼できる仲間と一緒に作っていきたいなと思っています。

「デザインの力を証明する」というミッションに共感して入社し、3年経ちましたが、正直、まだ「デザインの力」が何かは、はっきり分かっていません。ただ、妥協せずに作ったプロダクトやサービスが一つでも多くユーザーに届くことが「デザインの力を証明する」ということなのかなと、思っているので、これからも全力で作り続けるしかないですね。どれだけ慣れた領域であっても、「自分は何も知らない」という前提に立つことを意識し、最善を尽くしたいと思っています。

グッドパッチは、クライアントに言われたことをそのまま聞いて、モノを作ることはしていません。僕らが作ったもので売上が上がったり、クライアントの先にいるエンドユーザーが喜んでくれたり。作ったものがもたらす「結果」に対して責任を持つ意思があるかが大切なんです。

ソフトウェアプロダクトの良いところはアップデートができるところ。答えを持っているのはユーザーであり、ユーザーが増える分だけ答えの数が増えます。また、時代とともに、ユーザーが求めるものも変化する。なので、「リリースして終わり」ではなく、その先まで見据えたもの作りをしたいと考えています。

胸を張って「自分が作りました」と言えるものは、実はまだそう多くはありません。どれだけ経験を積んでも、どんな規模のプロジェクトであっても、120%の力で取り組んで、毎回新たなチャレンジをし続けたいと思っています。