定性と定量を融合したリサーチでユーザーインサイトを探る方法
皆さん、こんにちは。グッドパッチに19卒で入社しました、PM/UXデザイナーの児玉です。年も明け2020年になりましたね。もうすぐ優秀な後輩たちが入ってきて、私も2年目社員になります(ドキドキ)。
無事に入社し研修を終えてから今日まで、様々な案件を通してチームメンバーから沢山のことを学びました。私は特にUXデザイナーとしてインタビューやユーザーテスト、分析、アイディア創出をしてきました。もちろんプロジェクトを円滑に進め、良いプロダクトを作るためにUXデザイン以外のこともやります。
約半年の中で様々な案件に参加させていただいたのですが、その中でも私がUXデザイナーとして従来のデザインプロセスにとらわれず、ユーザー理解をより深めるためにトライしたリサーチ方法についてご紹介したいと思います。
ユーザー属性における感情傾向を探る
通常グッドパッチではインタビューやユーザーテストなど定性的なリサーチや、アナリティクスなど定量的なリサーチを中心にプロジェクトを進めています。そういったリサーチを通してユーザーの課題やニーズ、価値を深堀りしてアイディアやデザインに落とし込んで行きます。
しかし、今回のリサーチの目的は「サービスが提供するコンテンツに対してユーザーが好むものは何か?どんな印象を抱くのか?」の仮説を得ることでした。また、仮説や価値の検証、ユーザビリティの検証を目的とする段階ではなく、探索的に幅広く知りたい状態であり扱うコンテンツの種類も幅が広かったため、1人のユーザーに寄り添うような調査方法ではなく、定量的にある程度の人数の情報を得られる形で進めることにしました。
実施内容
① 調査計画と実施
この段階ではペルソナはまだ立てておらず、ふんわりとしたターゲット層のみ決まっていました。そこで、年齢など条件を最小限にしたユーザー層をチームで策定し、条件に当てはまる20人程を社内外含めリクルートしました。短期間で行う調査で20人を対象とすることは、弊社ではあまりなくスケジュールもタイトであったため、時には2人1組で調査に参加してもらう形で調査を設計しました。
1つ1つの調査に問題はありませんでしたが、できる限り時間と心に余裕を持てるようにスケジュールを組むことをおすすめします。また、検証に使うコンテンツのサンプルの準備などUIデザイナーと作成しましたが、それなりの量を作りガイドラインの策定やクオリティチェックするとなると、ここにかかる工数の見積もりを甘くしてしまうと後がきつくなります(反省の気持ちを込めて自戒)。同時にどんな印象を受けるかを知るために、感じたことを表す形容を複数選定し因子チェックシートを作成しました。
調査は1回約1時間半で行い、ユーザーにコンテンツのサンプルをスマートフォンに写して提示し、どんなことを感じたか当てはまる言葉を因子チェックシートに複数可でチェックしてもらいました。コンテンツ十数個を1セットとし計3セット同様のテストを行いました。この時、結果に提示した順が影響を及ぼさないように忘れずにカウンターバランスを取りましょう。テストの合間になぜそのように感じたのかヒアリングし選択した背景を探りました。また、テスト前後に普段の行動や課題、価値観を深堀りするためのヒアリングをおこないました。普通、定量調査ではテストを受けてもらう以外に深くヒアリングをすることはあまりありません。しかし、定量的にデータを取るとともに定性的にも探っていくことが後々役立ってきます。
② 分析と考察
得られたデータを分析ツールであるRを用いて因子分析し、その結果からユーザーがコンテンツに対して感じる因子の傾向を分類しました。この時、ユーザーの行動や価値観からユーザーをグループ化し分析することで、ユーザー属性の違いによるコンテンツに対しての傾向の違いを明らかにしました。ユーザーの属性を分類できたのは、インタビューも行い行動や価値観を明らかにしていたからです。
また、分析した結果の考察をするときに結果から見えてくることだけではなく、選択した理由を用いて更に深い考察をすることが出来ました。ただ、数値的傾向を追うだけではなく、その背後にあるユーザーの経験や状況にまで理解が及ぶことで、その数値が表すものが何に起因しているのかも推察することが出来ます。このように推察できることで、確度の高い仮説を立てたりユーザーの体験設計に活かすことが出来ます。
得られた結果について
20人という少ない人数による定量調査ですので、結果は出てもこれが世の中の全てだとはもちろん断言できません。しかし、インタビューも同時に行うことで、なぜその結果につながるのか?その要因やユーザーそのものに起因する要素を洗い出すことができ、より精度の高い考察が出来ました。考察から「こういったユーザーにはこのタイプのコンテンツが良いのではないか?」という仮説を得られたり、今後明らかにしていくべきことも明らかになりました。
プロジェクトにおける調査を実施する際のポイント
プロジェクトという意識を忘れない
今回は実施した調査についてお話しましたが、もちろんプロジェクトの1フェーズであり、限られたスケジュール・コストの中で次のアクションに繋がるアウトプットを出すことが求められます。
次に活かせる気づきを得るには、調査の設計をしっかりと行うことが大事です。目的を明確にすること、知りたい事を深掘れるインタビュー内容やテスト内容にすることを意識して設計していきます。また、調査に影響のない範囲で修正や微調整をすることも全体のクオリティ維持のために大切です。
調査とはチームメンバー一丸となって行うもの
また、チームメンバーと一緒に進めていくことが最も大切です。1人で調査を行うのは限界がありますし、自分ひとりの視点だけではユーザーを多角的に理解することは難しいからです。チームで行うことによって、UXデザインの観点からだけではなくUIデザインや実装の面からもユーザーを理解することができ、チームメンバー同士でサービスやプロジェクトに対しての理解を揃えることも出来ます。また、1人で行うことによる負担の軽減やリソースの最大化も意識して取り組むと良いかと思います。調査にメインで取り組むときは、チームメンバーの協力に感謝の気持を忘れずに連携を取っていきましょう。
まとめ
今回行った調査はマーケティングではなく、「人が何をどのように感じるか?」を明らかにする感性デザインの調査に近いものです。また、定性調査だけでは、1回の実施で探れる対象者の数は限られますが、定量調査ではより多くのユーザーの考えに触れる事ができます。しかし、定量だけでは出てきた結果の先にある、「なぜこれを選んだのか?なぜそうするのか?」という動機や理由を知ることが出来ません。
より深く考察しユーザーのインサイトを見つけることと、対象となるユーザーたちの傾向の仮説を得るためには、定性・定量調査のどちらも実施する必要があります。また、このような調査方法はデザイン業界でも注目され始め、これから新しい手法が生まれ面白い事例が生まれるでしょう。今後グッドパッチでも、この方法が適している案件では積極的に取り組んでいきたいです。
グッドパッチではこのように新卒でも新しい手法を自ら考え実行できる環境があります。このブログでは、実際の案件で実施したことを紹介しましたので、詳しくは触れることが出来ませんでした。しかし、少しでもグッドパッチにおけるUXリサーチの新たな取組について興味を持った方とお話してみたいと思いますので、ぜひ遊びに来てみてください。