UXリサーチの手法としてインタビューやアンケート調査を行われることは多いと思います。Goodpatchのサービス設計においてもそれらの手法はもちろん欠かせませんが、他にも様々な手法が存在します。今回はそんなリサーチ手法の一つとして フィールドワーク を取り上げたいと思います。

※外出自粛でリモートワークの企業が増えている現在は、今回ご紹介するような手法を取り入れることは難しいと思われます。Goodpatch Blogではリモートで実践するユーザーインタビュー、ユーザービリティテストの方法もご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

フィールドワークとは

フィールドワークは社会学や人類文化学などの学問分野において用いられてきた手法です。

研究対象となる現地に赴き、その土地やそこに住む人々を直接観察することや対話することで調査する手法のこと

この記事では現地で実施するリサーチ全般と定義し、私が参画した「実店舗とオンラインサービス両方の体験改善を行うプロジェクト」で実践した際の気づきをご紹介したいと思います。

フィールドワークの特徴

フィールドワークの特長として、以下のような点が挙げられます。

  • 現場のリアルな空気感や状況、細かな行動を知ることができる
  • サービスを利用する側だけでなく提供する側の行動についても知ることができる

ユーザーインタビューではどうしても引き出すことが難しい、体験している時のリアルな状況や無意識の行動などを知ることができるため、サービス利用時のユーザーの体験に対する理解がより深まると思います。
また、ユーザーが言語化しないような部分も観察できるため一連の体験をより詳細に可視化することができます。

その一方で、フィールドワークでは明らかにすることが難しい領域もあります。

  • より深いところにある思考や価値観
  • 行動や思考のもとになった過去の経験の深堀り

自分の目で見る、体験することが主になる調査なので、行動の裏にある思考や過去の経験など深い部分を知ることはどうしても難しくなってしまいます。この領域はフィールドワークよりもユーザーインタビューでの調査が適しているので、うまく使い分けられると良いと思います。

フィールドワークの手法例

フィールドワークにもいくつか手法がありますが、ここではその一部をご紹介します。

行動観察調査

実際に現地に赴いて、ユーザーの行動や周囲の環境を観察する方法。積極的に対象者にインタビューする参与観察や、交流せずに観察するフライ・オン・ザ・ウォール、シャドーイングなどの手法がある。また、ビデオに録画した上で観察する手法もある。

ミステリーショッピング

実際に現地に赴いて、自身がユーザーとなってサービスを体験する調査方法。

コンテクスチュアル・インクワイアリー

師匠であるユーザーに弟子入りして、ユーザーの行動について教えを乞い、インタビューを行いながら作業の仕組みを理解する調査方法。

今回は、私が実際のプロジェクトで実施した 行動観察調査ミステリーショッピング の2つを実施時のポイントとともにもう少し詳しくご紹介したいと思います。

1.行動観察調査

概要

言葉の通り、サービスが利用される現地でユーザーが実際にどんな体験をしているかを観察する調査手法です。
インタビューでは知ることのできない、ユーザーの外部環境や空気感を知ることができます。

実施時の注意点・ルール

仮説や見込みを立て過ぎない

バイアスをかけずにフラットな視点で観察することを心がけましょう。

観察中は考察を行わない

自身の考察は入れずにありのままの事実だけをそのまま記録するようにしましょう。

全てを観察・記録しようとしない

知りたいこと、見るべきポイントを設定してから臨みましょう。焦点を絞らずにすべて見て記録しようとすると、結果的に意味のない観察になってしまいます。

また、観察していることがバレてしまうとユーザーの行動を変容させてしまうので、なるべくユーザーに混じって観察しましょう。観察時の記録はスマートフォンのメモアプリを活用すると、周りから見ても違和感があまりありません。

観察ポイント

サービス内容によりますが例えば以下のような観察ポイントが考えられます。

ユーザーの行動・発言

“店舗のスタッフ” と “お客” のように立場の異なるユーザーが居る場合は両方を見られると状況をより俯瞰できるのではないかと思います。

周りの環境・状況

騒がしいのか静かなのか、混雑しているか閑散としているかでも体験は変わってくるのでこちらも観察・メモしておくことをお勧めします。

所要時間

何に時間がかかっているのか、人によって時間がかかる箇所が違っているかで課題が見つかることもあります。

2.ミステリーショッピング

概要

サービスを実際に使ってみることでユーザー視点で体験を知る調査手法です。オフラインの体験を含むサービスでは特に、サービスの一部分だけでなく全体を体験することをお勧めします。
例えば航空券の予約サービスであれば、予約をする部分だけでなく実際に飛行機に搭乗して目的地に着くまでの体験をすることで、今までサービスとユーザーの接点がなかった搭乗前や到着後といったサービス利用前後でのサービスの価値に気づきが得られる可能性があります。

行動観察調査の後に実施すると、観察していて気になったことや分からなかったことを補足することができるのでおすすめです。

実施時の注意点・ルール

ユーザーになりきる

自社サービスですでに知り尽くしているなどユーザー視点になるのが難しい場合は、友人やパートナーなどサービスに関わりのない人と一緒に体験し、すぐそばで観察・ヒアリングをすることも検討してみてください。

「サービスを利用する目的」をきちんと設定する

観察に目的意識を持った状態だとユーザー視点での気づきが得られなくなってしまうため、しっくりくるサービスの利用目的を設定して実施しましょう。

フィールドワークのメリット

フィールドワークでは、インタビューでは知ることができない、その場の雰囲気や空気感を身を持って知ることができる点が大きな利点です。
また、フィールドワークを実施してからインタビューをすると、現場をある程度理解した上でインタビューに臨むことができるので、より精度の高い問いを立てることができます。
カスタマージャーニーマップやサービスブループリントを作成する際にも、より詳細に体験や感情を可視化できると思います。

フィールドワークだけ でも インタビューだけ でもなく、合わせて実施することでより深くユーザーを理解できるのではないかと思います。

さいごに

オフラインの体験と密接に関わってくるサービスにおいては特に、フィールドワークで得られる発見は多く、その後のサービス設計に非常に有益であると思います。
サービスの特性上、実施が難しいサービスも多いとは思いますが、ユーザーのリアルな行動や表情、声を見聞きすることでしか得られないものは確かにあると思います。

また、Goodpatchでは2月よりリモートワークでサービスデザインに取り組んでいます。外出自粛の現在、フィールドワークをすぐに行うことは難しいため、今後リモートでもできる様々なデザインナレッジなども発信していく予定です。ぜひお楽しみに。

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