Goodpatchでは、ユーザー視点とビジネス視点を行き来したアウトプットをするための支援として、デザイントレーニングという取り組みを企業様に提供しています。デザインカンパニーとして培ってきたナレッジを広め、デザインの力を持つ仲間を増やすことで、デザインの力を証明するミッションを達成できると信じています。

今回は、日本電気株式会社(以下、NEC) のデジタルエクスペリエンスデザイングループの皆さんがトレーニングを受講した背景、学びや発見、その後の変化についてお話を聞きました。

デザインの力を身につける!Goodpatchの企業向けデザイントレーニングとは?

お話を伺った方
NEC デジタルビジネスオファリング本部
DXD(Digital Experience Design)グループ
安 浩子 シニアマネージャー
長村 健史 チーフデザイナー

サービスデザインを始める前の「基本のキ」

—— 本日はよろしくお願いします。まずは、Goodpatchのデザイントレーニングというプログラムを導入するに至った背景を教えてください。

NEC 安さん
私たちDXD(デジタルエクスペリエンスデザイン)グループは、ビジネスデザイン、テクノロジーデザイン、サービスデザイン、さらにブランディング、コンシューマインサイトリサーチなど、大きく分けて5つの機能を持つ組織です。

メンバーはサービスデザインスキルだけではなく、ビジネスデザインスキルなどを組み合わせたNECのデザイン思考というフレームワークを使って、お客様のコンサルティングを行っています。

DXDグループはサービスデザイナーは半数。また、サービスデザイナーの中には、異なるキャリアから転身希望をしてきた人たちもいます。あえて、多くの視点を力にするために、様々なキャリアをもつ人たちに人材募集をし参画してもらっています。今回、デザイントレーニングプログラムを受講したのもそんなメンバーたちでした。

—— 研修を社外に依頼したのはなぜですか?

NEC 安さん
まず、私たちのお客様は地方公共団体・官庁、医療・ヘルスケア、製造、建設・不動産など幅広い 業界にいらっしゃって、解決したい課題も複雑化してきています。DXDグループでは、ビジネスデザイン、サービスデザイン、テクノロジーデザインの3つの異なる専門性を持ったメンバーが共同します。このコラボレーションがとても大事です。

サービスデザインの基本のキ」について、プロジェクトに入る前に、楽しみながら体験し協働するための基礎知識を身に付けられるようなプログラムをずっと探していました。DXDグループは、常に新しい方法や情報を収集し試しています。Goodpatchさんのプログラムは、サービスデザインのプロセスをコンパクトに体験できる工夫がされている点がお願いした大きな理由の一つです。

もともと、Goodpatchさんとは、サービスデザインにおける共通言語を習得するため、ラピッドプロトタイピングを実践するワークショップの実施にご協力していただいたりしていました。

関連記事:ラピッドプロトタイピングの実践!NEC×Goodpatchでデザインプロセスワークショップを開催しました

このワークショップは専門家認定を持っているメンバーから初心者のメンバー、ビジネスサイドのメンバーまでが参加して、チーミングの目的も含めて実施していただきました。今回は、異なるキャリアを持つメンバーがサービスデザインを教育としてしっかり身に付けるために、1日だけではなく継続的なメンター制度のようなしくみをGoodpatchさんにお願いできるかをご相談しました

Goodpatchさんは、基本のプロセスを拡大解釈したり、独自にカスタムしすぎることもなく、基礎を押さえたナレッジを持っていると思っています。それでいて、マインド面に特徴があるイメージを持っています。サービスデザインの「基本のキ」を社内に一緒に広めていただくパートナーとして、Goodpatchさんは私たちにとって最適だと思いました。

気兼ねなく相談ができる、メンター的存在のプログラム

—— 長村さんは一期生としてデザイントレーニングを受講いただきましたが、なぜ異なる領域のデザインを学びたいと考えたのですか?

NEC 長村さん
僕は中途入社で、パッケージであったりグラフィックであったり、ブランディングを専門にしてきたので、サービスデザインについてはほとんど分からなかったのが正直なところです。ですが、今は表現だけを「デザイン」とは呼ばなくなってきていますよね。それがビジネスとしていかに成立するか、トータルの体験に一貫性があり心地よいかなどを考えていかないと、デザインとしては不十分なのかなと。僕はもともと社会課題を解決できる会社としてNECを選んだので、社会課題に貢献するデザイナーとして、幅を広げられるのではないかと考えました。

NEC デジタルビジネスオファリング本部 DXDグループ チーフデザイナーの長村さん

先ほど、安から「プロジェクトを回しながら、プロジェクトメンバーが教育も同時にすることは難しい」と話がありましたが、僕も同じことを感じていました。聞きたいことがあっても、忙しそうなメンバーを見るとなかなか声をかけられなくて。学ぶ過程で出てくる疑問について、気兼ねなく聞ける機会を増やすため、メンターのような存在が欲しいと相談はしていたんです。

—— 実際にデザイントレーニングに参加されてみて、いかがでしたか?

NEC 長村さん
正直な話、全てが気づきでした。教えてもらったことをすぐに発揮できるので、それがよかったです。

デザイントレーニングはチームビルディングから始まり、受講メンバー同士がお互いを知るためのワークを取り入れていただきました。僕はメンバーのみんなから褒めすぎなのではないかというくらい評価してもらっていることを知れて、「よしこれから頑張ろう」とモチベーションが上がりましたね。

そこから、チームでビジョンを構築しました。今後NECのDXDグループでどういうメンバーになっていきたいのか、どういう成長の航路を描きたいのか。そんなビジョンを島や宝箱といったメタファーを使って探るワークで、とても考えやすかったです。

関連記事:チームで前進する方向を探れ!Goodpatchのビジョン探索ワークショップ

2020年1月に開催したワークショップの様子

プロの視点からのフィードバックで得られる気づき

NEC 長村さん
これまで関わったことがなかったアプリ開発のプロセスは、デザイントレーニングを通じて初めて知りました。今まで僕がデザインをするときは、オリジナリティや、見たことがないことを意識していましたが、アプリのUIとなると考え方は違うなと。

ユーザーが誤認しないような設計であったり、「押すことができると分かるようなボタンらしさ」とか、いかに分かりやすく伝えるかが重要になることを知りました。オリジナリティを持たせるところが違いますよね。UIデザイン、サービスデザインにいつも関わっている方からすると当然のことばかりだと思うのですが、そのような視点の部分から驚きの連続でした。

—— メンターの毛利とは別に、アドバイザーとしてGoodpatchのデザイナーが直接フィードバックもさせていただきましたが、いかがでしたか。

デザイントレーニングの体制図

すごく細かいところまで丁寧に見ていただきました。ネーミングや色使いなどの一つひとつに「なぜ」を問われたのが印象的です。こうした細かいことの集結によって、UI/UXというものは成立しているのだなと感じました。いつもすごく高いレベルでフィードバックをもらえるので、次こそはクリアしようと思えましたし、スコアも上がっていきました。

Goodpatch 毛利
アドバイザーの2人には、「常にプロ目線でアドバイスをしてください」と頼んでいました。アウトプットを評価する時も、自分と一緒に働くならどうかという視点でアドバイスをしてもらっていたので、いきなりすごく厳しいツッコミがくるんですよね(笑)。「初めてなのに、そこまでツッコミする?」というプロの目線、レベル感を実感してもらえたからこそ、この基準を目指して学ぶんだと思えていたのではないでしょうか。

Goodpatch 毛利

ナレッジを倍増させるためにチームで学ぶ

NEC 長村さん
デザイントレーニングには「共に学び合う」というテーマが掲げられていました。Goodpatchのメンター、アドバイザーの方を通して学ぶだけではなく、受講メンバー同士での情報共有するためにもたくさんサポートをしていただきました。共有し合って学ぶというマインドは自分の中になかったので、とても新しい発見でした。

メンターの毛利さんは、僕たち受講メンバーのスキルに合わせてやるべきタスクを考えてくれて、進め方からフィードバックの方法なども教えていただいて、学びしかない期間でした。個人的には、もう一度受講したいです(笑)。 

—— 受講生同士で学び合うことは、意識して設計していましたか?

Goodpatch 毛利
必ず「チームで学ぶ」ということを大切にしていました。1人でやると、1つの答えとフィードバックを受けることができますが、3人いると3人が違うアウトプットを持ってくるので、それぞれのフィードバックを聞いて、3倍学びがあるという効果があります。なので、あえて個人で課題に取り組むように設計しました。

 

Goodpatch 長岡
やはり人によって視点が違うので、視点の分だけ学びがあるというイメージです。

Goodpatch 長岡

—— 安さんから見て、受講後はどんな面で変化を感じますか。

NEC 安さん
全てです(笑)。やっぱり私たちだけでは目が届ききらない細かなところまでメンター的存在ができたことで、基礎を一連学んでもらえたのだと思います。「カスタマージャーニーとは」「ペルソナとは」といった説明を受講前、受講後それぞれで長村さんにしてもらって単なる知識ではなく実感をともなった説明となっている点が違っておりそうだと感じました。

何かを学ぶ時、一番最初のキャッチアップは、やはり業務をしながらでは追いつかないんですよね。それをGoodpatchさんに教えてもらって手を動かして学んだことで、その後配属されたプロジェクトではすぐにアウトプットを出せていました。

もちろん、精度はプロジェクトレベルと教育レベルでは違っていて、プロジェクトレベルでの情報の解き方が今後の課題であることは見えてきています。でも、以前とは悩みごとのステージが変わってきているので、良い傾向だと思います。

Goodpatch 長岡
デザイントレーニングで一通り体系的に学んでいただいて、それを一緒に実践してみるところまでできると尚良いですよね。そこまでご一緒できると、組織の活性化にも繋げられるのかなと思います。

課題のスコアリングで成長を可視化

—— 各課題はスコアリングの推移を見ることもできたんですよね。

スコアリングの詳細

Goodpatch 毛利
長村さんは始まったばかりの頃はスコアが低く、泣きそうになりながらもひたむきに努力して課題に向き合ってくださっていました。

NEC 長村さん
最初は自分なりに頑張っていても、スコアとして結果が出ず、ショックで心が折れそうでした。でも、いつも毛利さんは自分の努力を見てくださっていたので、声をかけてもらえるだけありがたかったですし、次こそは頑張ろうという気持ちになりました。

Goodpatch 毛利
長村さんは「次はこれをやります」と宣言をしたら、毎回ひたむきに努力されていて、着実に学んでもらえているのがひしひしと伝わってきていました。最後のプレゼンの時は僕も泣きそうでしたよ。

—— 長村さんがモチベーション高くデザイントレーニングを続けられた要因は?

NEC 長村さん
自分1人だったら絶対に続けられなかったです。受講チームの3人で一緒にやっていたので、自分にどういうところが足りていないのか目に見えて分かるので、メンバーのいいところはきちんと吸収していかなければならないといつも感じていました。共に学び合うために、毛利さんにバックアップしていただけたのが大きかったなと思います。

—— 最後に、DXDグループが目指す今後の姿について教えてください。

安さん
DXDグループには、多様な専門性を持ったメンバーが共通言語をもち、グローバルでどんどん新しいものを生み出していけるようになっていこう、という目標があります。新しい視点を持つためには多様性が重要で、例えば長村さんはブランディングなどの軸を持っているからこそ、プロジェクトに新しい視点をもたらすことができると思います。

世の中に埋もれているものや、これまで使い古されている技術に、新しい視点で価値を発掘して、社会のいろんな課題を楽しく解決していきたいんです。ですが、多様なメンバーが協働するには仕組みが必要です。サービスデザインはハブとなる重要な機能だと思っているので、お客様やいろんなパートナーさんだったり、あらゆるところをつないでいく役割を担っていきたいです。 

私も日本においてデザインの価値はまだ低く見られていると感じているので、デザインの力を証明するGoodpatchさんと、日本で文化を興していく過程もご一緒できればと思います。

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