NECソリューションイノベータ株式会社は、NECグループの社会価値創造をICTで担う中核会社です。システムインテグレータとしての実装力に強みを持ち、クラウド、ビッグデータ、AI、セキュリティなどの技術力や業種・業務の幅広い知見を有しています。社員約13,000名の8~9割のエンジニアを擁する日本最大級のソフトウェア会社です。

そんな同社では「経営メッセージが社員に届いていない」という課題感を持っており、インナーコミュニケーションを担う部署では、確実に経営メッセージを社員に届けるための仕組みやコンテンツを検討していました。一般的な手法(How)だけでなく、根本的な課題を捉えWhyやWhatも掘り下げることを期待し、Goodpatchにお声掛けいただきました。

課題仮説・要件定義からリサーチ、分析、打ち手の提案まで行った約4ヶ月間について、プロジェクトメンバーにお話を聞きました。

話し手:
人財企画部 インナーコミュニケーショングループ 丸岡さん
経営企画部 カルチャー変革室 渡邊さん
経営企画部 カルチャー変革室 本間さん
経営企画部 コーポレートコミュニケーショングループ 山口さん
経営企画部 コーポレートコミュニケーショングループ 永見さん

社内ポータルのUUが社員数10%以下のもどかしさ

ーー 今回の依頼内容であったインナーコミュニケーションに課題感を持ったきっかけを教えてください。

丸岡さん:
インナーコミュニケーションやインナーブランディングを担当しているわたし目線でのきっかけをお話ししますね。
当社では全社的に1on1施策を行っており、質の高い対話を実現するために話のタネになるようなシートを作成し全社展開しました。その結果、シートを見ている人は1on1の場で良い対話になっているということがわかったんです。ただ、それを見ている社員が数百人しかいなかった。約13,000人いる会社ですよ。これではどれだけ良い施策を行っても伝わらなかったら意味がない、と実感したことがきっかけです。

人財企画部 インナーコミュニケーショングループ 丸岡さん

渡邊さん:
実はその話を丸岡さんから聞いた前日に、僕も同じ課題を感じていました。僕はカルチャー変革室で当社のビジョンや中期経営計画の実現を目指し、各種サーベイをつかった組織開発や文化醸成を担っているのですが、会社のポータルサイトにお知らせを掲載してもUUが1,000~2,000程度しかないことにもどかしさを感じていました。
その後、同じテーマで常務とも話す機会があり、やはりどうにかしたい課題だと思いその日のうちに動き始めました。

経営企画部 カルチャー変革室 渡邊さん

山口さん:
ブランドや広報、社内外Webサイトなどを担当するわたしたちコーポレートコミュニケーショングループにもすぐに声がかかりました。タスクフォース化してスタッフ横断で検討したらどうか、と投げかけがあり急遽立ち上がりましたね。図らずも、役員も、各部門も、労働組合までも、同じような課題感を持っていたからこそのスピード感だったと思います。

一般的に外部の知見を借りる際はコンサル会社のイメージがあったところ、デザインの力で表層だけでなく深層の根本的WhyやWhatも掘り下げられることを期待しGoodpatchへ依頼。まずは経営層11名、社員33名へのインタビューをもとに、本質的な課題の仮説検証を実施しました。

社内ポータルサイトにおける「情報伝達の仕組みやUI」に関する依頼だったところ、Goodpatchからの最初の報告は「社員の無関心という症状は、メッセージの中身と伝え方が原因」という内容でした。

ーー 最初の報告は期待とはおそらく違った内容だったと思いますが、率直なご感想は?

本間さん:
僕は去年の4月に転職してきたのですが、もともと組織変革やインナーコミュニケーションのコンサルティングを行っていました。他のみなさんはどうかな。最初の報告内容について個人的に申し上げると、正直UIなど表面上の話ではないと薄々勘付いていたんです。ただ、入社直後の僕が「そこは本質じゃないですよね」と社内で言いにくい部分はありました。なのでGoodpatchの報告内容は個人的には狙い通りというか、至極真っ当だと思っていましたね。 

経営企画部 カルチャー変革室 本間さん

山口さん:
わたしも報告内容自体に違和感はありませんでした。実際に、役員への報告会でもGoodpatchが構造化した課題は「その通り。うまく言語化してもらった」という反応でした。ただ、役員のオーダーは「UIなどの情報伝達の仕組み」を優先するということ。インターフェイスだけの問題だけではないと感じつつ、そこは進め方の問題だったので方向転換しました。

丸岡さん:
「よくぞ言ってくれた」という気持ちでした。ただ、最初の報告であった本質的な課題は、中長期的にじっくりやるのか、あるいはできるところから成果を出すのか、という若干認識の乖離があった。そこをすり合わせていきました。

情報伝達経路を可視化する情報のデザイン

ーー 方向転換後もさまざまなアウトプットを通じて共通認識をつくりました。課題仮説・要件定義からリサーチ、分析、打ち手の提案までの工程の中で、特に印象的だったプロセスやアウトプットはありますか?

本間さん:
僕は社内インタビューの内容をもとに課題の関連性を図式化してもらった因果分析図が非常に印象的でした。当初の課題であった「伝わっていない」「情報を出しても見てくれない」部分の原因が表れていたからです。こういう背景、環境、力学が働いているからアクションしないんだ、ということを可視化してもらいました。

渡邊さん:
僕も同じくこの図が印象的でした。人事など他部署も含めこの課題はどんな課題だったっけ、とみんなで眺める「地図」として使えると思っています。この後の情報伝達ジャーニーなどの資料も我々にとって貴重な財産となりましたが、スタ-ト地点として一番印象に残っています。特に、戦略や組織といった「ハード」と人材やスキルといった「ソフト」の両面の課題を示していただいたのは大変価値が高かったと思います。

山口さん:
実は、わたしもこの図なんです。インタビューの結果をどうまとめるのか想像がつかなかったところ、情報伝達面だけでなく人事制度などにも関連付けて示していただいた。
Goodpatchには事前に会社の方針や定量分析資料、労使協議内容など膨大な資料をお渡ししていました。これらをすべてテーブルの上に置き、社員インタビューとの関連性をきちっと構造化していただいた。これはなかなかできることではないです。

さらに、当社社員の特性として「真面目」「職人気質」などを挙げてもらった。自分たちで見えているところもあるが、第三者から客観的に言ってもらえたので非常に印象に残っています。また、「階層ごとの課題認識に大きな差異はない」と言い切ってもらい、そうなんだ!という驚きもありましたね。先入観もあり、経営層と社員で考えていることが違うのではないかと考えていたので、発見が多かったです。
やり方も内容もこれらの整理は自分たちでは絶対にできなかったなと思いました。

経営企画部 コーポレートコミュニケーショングループ 山口さん

丸岡さん:
普段スライド資料を使いどうしてもシンプルな感じでまとめてしまうので、ここまで複雑な図はなかなか作らないですよね。でも実際の因果関係はこうなっているしそれを可視化し、社員や会社の特性をあぶり出してもらえたのはとても大きい。薄々感じていた社風や文化、風土や当社の特性が明確に見えてきたので、それが施策に活きてきたと思います。

また、情報伝達の流れを整理し、どこにどんな課題があるかを可視化した情報伝達ジャーニーはあって良かったです。まさに、目に見えない組織課題をデザインしてもらったように思います。

永見さん:
わたしは、Goodpatchが提供するオンラインホワイトボードStrap上でアイデアシートを用いて意見を出し合うプロセスが面白かったです。オンラインの場なのにリアルタイムで意見を出しフィードバックをしながらまとめていく過程は、Goodpatchがいたからこそのスピード感でした。相手の言っていることを素早く理解できる場をオンラインでも経験でき、今までにないやりやすさを感じて非常に良かったです。

山口さん:
そういう意味では、全体の進め方もデザインの力が活かされていましたよね。経験したことのないデザインの力を発揮していただき全体が進んだなという印象です。

永見さん:
確かにそうですね。情報のデザイン力というのでしょうか。体験をデザインされた感じでした。

UI改善課題を言語化したユーザビリティエキスパートレビュー

ーー 情報伝達改善の打ち手の一つとしてご提案した、社内ポータルにおけるユーザビリティエキスパートレビューはいかがでしたか?

本間さん:
初めて見た時「おお!」と思いました。ユーザビリティーエキスパートレビューは「情報設計」「ビジュアル」「標準UIパターン」「パフォーマンス」という4つの観点からデザイナーが知識や経験則に基づいた評価を行い、課題を明らかにしてくれていました。やはりプロじゃないと目がつけられないところだなと。表層じゃなくて深層が大切だと言いながら、表層がよくないとやっぱりだめじゃん、ということも感じました。両方とも大事ですね。根本の理由を言っているだけじゃ進まないと気づかされた感じです。

永見さん:
こういったサイト構造はあまり見たことがないし、使っていて違和感があるな、と思っていたことの原因を明確にしてもらった感覚です。なんとなくの個人の感覚ではなく、外部の目で俯瞰的に構造化されたUI改善課題を見つけていただいて非常に良かったです。 

経営企画部 コーポレートコミュニケーショングループ 永見さん

山口さん:
わたしはポータルサイト改善における取り組みのとっかかりができて、本当に良かったなと思っています。
一部、機能上難しい部分があり後送りになっている箇所もありますが、改善に向け動き始めており、毎月の進捗をプロジェクトメンバーや上長に報告しています。一つひとつは小さい改善かもしれませんが意外に重要な側面じゃないかと感じていて、改善効果を期待しながら日々取り組んでいます。

本質的な課題への取り掛かり

ーー 最後に、Goodpatchとの取り組み全体の感想や、今現在着手しているその後の取り組みについて教えてください。

渡邊さん:
大きな企業だからこそ、誰に届けるのかというペルソナを決めて、そこにこだわっていかなければいけないと、Goodpatchとプロジェクトを行う中で感じました。社員と一緒につくっていったほうがいいというのが大きな気づきです。
少し派生しますが、最近20~30代の社員と意見交換を始めたんです。自分たちの成長やキャリア形成を考えた時に、会社が支援できることなどの会話を始めています。Goodpatchに示してもらった打ち手以外にも、本質的な課題を解決するために動き始めています。
僕自身、Goodpatchから提案いただいた11の打ち手の提案はインサイトが多く、そこから派生した動きができているので、本当にありがとうございます。

山口さん:
すごくわかります。同じプロセスを経験したメンバーで課題意識を共有している。例えばわたしたちが打ち手に取り組む際、担当部門に縛られず同じ温度感で検討したり思考に協力してもらったりすることが、すごくしやすくなりました。その点は大きく変化したかなと思います。

丸岡さん:
ただ、まだまだ、取り組みは小さく始めた段階です。Goodpatchには11の打ち手に対してその成果として「最終的な社員の自立」といったアウトカム(成果)を意識した図も作成してもらっていましたが、いますぐ最終成果が出るかというとまだまだこれからで見えづらい。

約13,000人の会社を動かすことはそう簡単ではありません。
ですが、ちょうどこの春、当社社長に就任した石井は「自助(社員の自立)」「共助(ミドルのサポート)」「公助(経営によるしくみや環境の整備)」による三位一体経営ということを言っていて、図らずもわたしたちが本質的な課題として認識している伝え方の部分に訴求するようなナラティブな語りをしてくれています。本質的な課題の解決に向けて動き出している、まさに今その時という状態ですね。

山口さん:
さまざまな施策が動き始めているのもGoodpatchとのプロジェクトがきっかけです。施策自体は思いつくものもありますが、いざこうして資料に「11の打ち手」と明言してもらうと、なんとか手配し実行してみようと踏み出せました。

丸岡さん:
プロジェクトが終了した4月以降は、この中のメンバーでいうと渡邊さんが音頭を取ってくれています。Goodpatchに提案してもらった11個の打ち手のなかで1~2個は実現が難しいものがありましたが、残りはそれぞれ進み始めている状況です。
そういえば、打ち手の一つでもあった全社員参加のキックオフは早速4月から実現しました。下期にもスタートアップミーティングがオンライン開催され全社員に案内されて。開催後の社内ポータルに公開した動画のアクセスも増えてきています。これまでは全社員を対象とした開催そのものがなかったところから視聴率4割までいったので、大きな一歩だと思います。

Goodpatchと一緒にプロジェクトを進める中で、チームワークをデザインする力を知らず知らずのうちに学んだ濃い4か月でした。あとは以前に比べて、この4人との仕事がやりやすくなった。なによりやりとりが楽しくなったことがわたしの中で大きな収穫だったかなと思います。

Goodpatch プロジェクトメンバー

最後に

Goodpatchはデザインを軸に、新規事業の立ち上げ、Webサービス・アプリのフルリニューアル、ブランド構築支援などデザインにまつわる様々なビジネス課題にパートナーとして寄り添い、解決するお手伝いをしています。

課題やご依頼内容が固まっていない状態でも構いませんのでぜひこちらのお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください

本プロジェクトで実施したエキスパートレビューについての資料は下記よりダウンロードできます。