コロナ禍で在宅勤務が一般的になった今、メンバー間のコミュニケーション量が減り、チームの運営が難しくなってしまった──そんな悩みを抱えているマネージャーは増えていると思います。皆さんの会社では、以下のようなことが起きていませんか?

「チームの会議でマネージャーだけが声を張っている」

「オンライン会議でチームメンバーからの意見が出ない」

「チーム内の連携がうまくいっていないように感じる」

チーム運営に苦しむ方にお勧めしたいのが、「チームビルディング」のワークショップです。グッドパッチでは、小野薬品工業株式会社とイノベーション人財の育成を目的としたワークショップに続き、チームビルディングのワークも行いました。

変化への対応力が求められる今、「チームビルディング」の重要性は高まっている

コミュニケーションが不足しているチームでは、「メンバーの互いのことが把握できておらず、遠慮してしまう」といった課題を抱えることがよくありますが、こういった状況を放置していると、やがて「(メンバーとして)チームの将来性や組織内の価値が感じられにくい」といった問題に発展してしまう危険性があります。

チーム運営がうまくいかない原因としては、さまざまなものがありますが、以下のような「組織的な問題」によるケースも少なくありません。

  • 社内での機能重複(カニバリゼーション)による「チームの独自性欠如」
  • 上層部によってつくられた「チームビジョンの形骸化」
  • 成果に向かって対話・共創できる「場づくり・関係性の不全」

もちろん、客観的な視点に立ち、チームの課題を定義して改善を図っていくことができれば良いのですが、当事者であるメンバーやマネージャーだけで事態を改善していくのは難しいものです。

「チームビルディング」のワークショップでは、社外のファシリテーターによって設計された非日常の場を使うことで、一歩踏み込んで自分たちの関係性を再構築できます。そして、各メンバーが目指すビジョンを自分ごと化していくことによって、チームが変わっていくきっかけを生み出せるのです。チーム作りは継続的な活動であり、チームの大切さ、難しさと楽しさを知り、協力し合える関係を作るチームビルディングは、長期的な目線において大切な活動です。

今回、グッドパッチと一緒にチームビルディングを行ったのは、小野薬品工業様の「BX推進部 OIP課(当時)」。社員の挑戦を後押しする企業風土づくりや、イノベーション創出の源泉となる「人財」を育むプログラム「Ono Innovation Platform(OIP)」をスタートさせるなど、精力的に動いていますが、チームの人数が増え、ビジョンのすり合わせが必要だと感じたと言います。チームビルディングのワークショップには、どのような効果があるのか。担当社員のインタビューでプロジェクトを振り返ります。

メンバーが倍になったチーム、ビジョンのベクトル合わせが必要だった

チームが発足し2年目となる「BX推進部」(イノベーション創出の土壌づくり、人財育成の担当)の皆さんが、なぜこのタイミングでチームビルディングを行うべきだと考えたのでしょうか?依頼時の課題感、目的などを教えていただけますか?

2021年5月にOIPはスタートしましたが、チームとしての大枠のメッセージはあるものの、自分達がどう行動してOIPを発展させるのか?という指針が言語化されておらず、メンバーみんなで同じ方向をみられるビジョンを共有したいと考えていました。
これは、2年目になり最初3人から始まったOIPのチームが6人に増え、想いの方向性が多様になってきたことで、ビジョンのベクトル合わせが必要だと感じたことも要因です
OIPを個々人がどのように捉えているのかを知り、それぞれのメンバーがどんなアンテナを張っているのか、どこにつながりと違いがあるのかを互いに「知る」ことが大切だと思っていたし、普段ではできないことだと思ったので時間を使いたいと考えていました。

既に「Inovation Cafe」でのお取り組みを弊社と進めている中でのご相談でしたが、Goodpatchへどのようなご期待でご相談いただいたのでしょうか?

やはりGoodpatchさん自体が、自社のValueの見直しを通じて組織の立て直しをされた経験をお持ちであるということが大きかったです。しかも、トップダウンではなく、メンバー全員で行動指針を創る活動をしていたことが非常に興味深く、デザインの力を信じるGoodpatchさんらしいなと感じ、ぜひ自分たちもやってみたいと思いご相談しました。

取り組みのことを聞いて非常にワクワクしました。確かに自分自身も、OIPと言うチームについてちゃんと理解していないし、理解するための時間を取ることができていませんでした。結果、このワークを通じてOIPとしての行動指針が言語化されたこと、そして互いを知ることができてとてもよかったなと思っています。

レゴ®も使って大盛り上がり──チームビルディングプログラムの全容をご紹介!

ここで、OIP事務局の皆さんと一緒に活動した2日間のプログラムについてご紹介いたします。2日間のプログラムの目的と、両日の主な活動は以下の通りです。

先ほどの課題感にもあった通り、

  • 新しいメンバーと立ち上げメンバーとの関係性
  • チームとしてのVMV(主にバリュー)の腹落ち度

この2つを、2日間のワークを通じてより良い状態にするために、ワークを設計していきました。

最終的なアウトプットはチームメンバーで「バリュー」を再構成する活動としていますが、それまでにメンバー個々人やチーム自体への理解を深め、距離を縮め、仲間やチームに想いを持てる状態を作っていきました。何より大切なキーワードとして「楽しさ」を感じてもらいながら、のめり込んでもらえることを意図して設計しました。

① ウォームアップ

まずは参加者の気持ちと体をほぐして、この後のチームでの対話にリラックスして集中できるように3つのアクティビティを行いました。

◆ ネームトス

メンバー全員で円を作り、複数のボールを使ってランダムにキャッチボールしながら呼んで欲しい名前を呼び合うアクティビティ。何度も名前を呼び合うことで名前を覚え、声をかけやすくする効果が期待できますが、単純に朝イチの活動で頭と体を使って体温を上げエンジンをかけていきます。

◆ コンフォートレベルチェック

互いの心地よさの違い、チャレンジレベルの差を知って活動を進めるためのアクティビティ。「たくさん人がいる前で歌えるか?」といった質問をおき、各自の心地よさの違いを知っていく。

◆ フラフープリレー

全員で手を繋ぎ、繋いだ手に通したフラフープを一周させるアクティビティ。一周のタイムトライアルを複数回チャレンジしていく中で、チームで協力して成果を生み出す雰囲気の醸成をしていきます。

② 個人を知る

◆ トリセツ

自分のこと・自分の情報を、リラックスして楽しく説明する。相手の知らなかった情報を知る。

◆ ヒストリーマップ

「これまでの人生」について、気持ちの上下と共に語り合うことで、さらに互いの興味関心を引く。自分の歴史を紐解きながら、自分がそこで得たこと気づきを言語化することで、自分にとっての大事なことを内省するきっかけにもなる。

◆ あなたはどんな人

LEGO® SERIOUS PLAY® (レゴ®シリアスプレイ®)メソッドと教材を活用したワークショップ。個人の「仕事へのモチベーション」をレゴ®ブロックで作品を作り、それを仲間に説明する(モノを通じて語る=モノ語る)ことで、自身のモチベーションの源泉を知る。

◆ わたしの国(ランズワーク®)
出典:CRR Global Japan ORSC®プログラム

LEGO® SERIOUS PLAY® (レゴ®シリアスプレイ®)メソッドと教材を活用したワークショップ。自分の内面を「国」として、レゴ®ブロックで表現し語ることで、自身の価値観や信念をメタ認知する。

◆ 内的役割を知る
出典:CRR Global Japan ORSC®プログラム

チームの関係性の中で、自分の外的・内的な「役割」を自身と他者の視点から知る。普段自分が、他者からどんな期待をされているのか、対して自分はどういう存在だと考えているのか?

③ チームを知る

◆ チームの歴史を語る(神話の起源)
出典:CRR Global Japan ORSC®プログラム

マネージャーである藤山さんへのインタビューを行う。最後に、インタビュー内容を踏まえメンバー全員で一連のストーリーとして語り直し「自分たちゴト」にする

◆ 悪夢のようなチーム

LEGO® SERIOUS PLAY® (レゴ®シリアスプレイ®)メソッドと教材を活用したワークショップ。こんなチームは嫌だというイメージをレゴ®ブロックで作り、イメージを共有していく。

◆ ベストパフォーマンスを出している自分

LEGO® SERIOUS PLAY® (レゴ®シリアスプレイ®)メソッドと教材を活用したワークショップ。反対に、自分が一番輝いているシーンを形にする。

◆ チームの最高のストーリーを作る

LEGO® SERIOUS PLAY® (レゴ®シリアスプレイ®)メソッドと教材を活用したワークショップ。それぞれが作った一番輝いているシーンから一番大切な要素を取り出して全員で融合し、チームの理想状態を共有する。

④ バリューを創る

◆ チームのバリュー(行動指針)を創る

これまでに共有した個々人やチームの理想的な在り方を意識して、自分達自身の力で行動規範を言語化していくチャレンジ。

⑤ 個人のあり方、アクションを描く

◆ チームにおける個人のVMVを創る

チームとしてのあり方を踏まえ、チームメンバーの一員としてどうありたいかを言語化する

◆ 明日からのアクションを宣言する

新しくやること、止めること、続けることの視点で、個人の明日からのアクションをメンバーに向けて宣言する。

⑥ チームの力を感じあう

◆ ラストチャレンジ(チームでの困難なミッションへの挑戦)

チームの関係が深まってきたことを感じるために、できるかちょっと不安だけどワクワクするアクティビティに挑戦してもらう(へリウムリングチャレンジ)

2日間のワークを体験して感じたこと、考えたこと

当日のワークに参加された、OIPのメンバーの皆さんに伺います。印象的な活動やシーン、メンバーの発言などありますか?

 

レゴ®ブロックを使ったワークは、自分が気づいていなかったことが、自分の言葉として引き出されたことに非常に驚きを感じました!レゴ®ブロックを使って手を動かしてものを作り、名前をつけ、ストーリーを語っていく中で自分に定着していく感覚がありとても印象的でしたし、自分たちでも今後やってみたいなと思いました!

「4つのモチーフから、好きなものをレゴ®ブロックで作ってください」と言われた時に、全員が同じ「トカゲ」を選んだのが印象的でした(笑)。一番難しそうで怪しいモチーフを選んだことが面白かったですが、あえて難しいものやちょっと変わったものを選ぶ、そんな尖ったマインドを全員が持ってるんだなと感じられましたし、何よりその中に自分もいることが嬉しかったです。
ワークの冒頭にあった、メンバー全員からシェアされた人生曲線も記憶に残っていますし、リーダーである藤山の考えをレゴ®ブロックを通じて視覚的に感じられたのもよかったです。どのチームでもやって欲しいなと感じました。

各自がレゴ®ブロックで作った「チームのありたい像」の一片を集め、全員で1つの物語を作る「スーパーストーリー」は印象的でした。できるかな…という不安からスタートしたものの、メンバーで試行錯誤していく中で「チームのケミストリーが顧客の希望につながっている」という言葉にたどり着いたのは、チームとしてのありたい姿が的確に示されていて、非常によかったなと。

また、参加する前と参加後で、心境の変化はありましたか?
どのような変化がありましたか?

メンバーとの日々の会話や1on1などで、Value(行動規範)として作ったキーワード5つを使って対話ができるようになったのがとてもよかったです。「自分の意見が違うことを恐れちゃいけないよ」とか「考え抜いてる?」「違いを恐れちゃいけないよ」といった形で、全員で作った言葉だからこそ大切にしたいことを意識しあって話し合いができるようになりました。

チームで作ったValueだからこそ、共通言語として背景を共有した上で対話ができるので、何か指摘された時も受けいれやすく、次の行動に活かしやすくなったと感じました。ワーク全体を通じて、皆さんの背景やOIPの背景を知ることもできたので、相手の考え方・価値観を知った上で、対話ができるようにもなったなと。

チームの変化もありつつ、個人の変化が2点あります。1点目は、このValueがあることで自身で意思決定が必要なときに立ち返って判断出来るようになったこと。そして2点目として、自身が人にあわせて協調していくタイプなのですが、ワークを通じてそれぞれの違いが価値を生むこと、多様であっていいと感じ無駄に合わせにいくことがなくなり、仕事のスピードも上がりました。

行動の基準となるValueができたことで、自分の行動をすぐに振り返り、次に活かす内省のスピードが早くなったと感じています。チームメンバーの価値観を知ることができ、仕事がやりやすくなったと感じています。

ワークショップをやるまでは、「なぜこの発言なのか?」と思うようなこともありました。ただ、お互いの背景や価値観・思考の理由を知ることで、互いの違いを踏まえた上でそれぞれの考えをちゃんと伝えられるようになったと思います。変な勘違いがなくなり、気持ちよく仕事が出来るようになりました。

最後に、今回の一連のワークプログラムの価値を人に伝えるとしたら、どんな言葉になりますか?

「レゾンデートル(存在意義、存在理由)」でしょうか(笑)「個人として大事にしていることがあるから今の自分がある」と言うことを理解し言葉にできるので、それぞれの存在している意味を大切にしたコミュニケーションが取れるようになり、チームでの仕事の質が上がったことが価値だなと感じています!

「チームメンバーの中心が見つけられる一歩」になったと思います。それぞれのやりたいこと、できること、求められていることを知り、その重なりとそれぞれの個性を意識しながらチームを導く解像度が上がってきたなと。

加えて、言葉を作るなどの活動だけでなく、フラフープやレゴ®ブロックなどを使った「共に体験する活動」を通じて、チームの一体感が作れることも大切な価値だったなと感じています。

ありがとうございました!

 

<今回のワークを設計・実施したファシリテーター>

Goodpatchでは、専門的な知識や経験を積んだファシリテーターが上記のようなワークプログラムを設計・進行いたします。単なる知識や定型のプログラムを提供するのではなく、参加者が常に「イマココ」に集中し、楽しみながら自らを解放して互いの理解を深め、新しい一歩を支援し合える(=チャレンジしあえる)関係性を育てられる場を提供いたします。

なかなかうまくいかないと感じている組織・チーム運営について、どんなことでも構いません。お気軽にご相談ください。ワークプログラムの提供に限らず、目的や課題に応じて弊社の豊富な知見、経験に基づいた解決策をご提案させていただきますこちらからお気軽にご相談ください!