メンバーインタビュー

「AIでデザイナーの仕事はなくなるの?」グッドパッチの事業責任者はどう答えているのか

「AIが普及して、デザイナーの仕事はなくなりますか」

グッドパッチのデザインパートナー事業で事業責任者(ゼネラルマネージャー)を務める川北は、この質問を毎日のように受けている人物かもしれません。

彼は「AIに代替されるデザイナーの仕事も確かにある」と話す一方で、「AIが出力できるものは、人がすでに頭の中で描けている範囲のものでしかない」と続けます。

映像制作会社からキャリアを始め、グッドパッチのUXデザイナー、プロデューサーを経て、現在はデザインパートナー事業の責任者として採用にも多くの時間を使う川北。

AI時代にも求められる、デザイナーの力とは何なのでしょうか。
また、創業15周年を迎えたグッドパッチで挑戦する新しい組織運営の形や、デザインパートナーとして企業に伴走することの難しさ、そして一緒に働く人に求めるスタンスについてもお話を聞きました。

代替されないものは、事業・サービスにコミットする「スタンス」

──「AIでデザイナーの仕事はなくなるのか」。面談や面接でよく聞かれる質問だと思いますが、川北さんはどう答えているんですか?

面談でまずお話ししているのは、「AIの登場で、誰もが一瞬で80点を出すことはできるようになりましたよね」という話です。

この「80点」は、人の頭の中ですでに描けている範囲のものだと考えています。「こんなプロダクトだったらどうかな」と想像したアイデアをAIに入れているわけなので、そこそこいいものが返ってくるのは当然なんですよね。

──誰でも80点を出せる今、AIに代替されないものは何だと思いますか?

人としてのスタンスだと思います。

グッドパッチが支援しているクライアントは、自分たちでビジネスに必死に取り組んで、毎日その事業のことを考えているような方々です。

それでも納得するところに到達できないから、外部のパートナーを探しに来てくれています。だからこそ僕たちは、クライアントの想像を超えた地点まで連れていかないといけない。

そのためには、誰よりもインタビューやリサーチをして、誰よりも事業やサービスに向き合い、深くコミットしていくしかないんです。

リサーチやインタビューなど、手法だけなら無数に挙げられます。
でも、「自分が誰よりコミットする」というスタンスがないと、実際に行動に移して、成果を上げることは難しい。

深くコミットするスタンスが備わっているデザイナーは、「自分たちのことを、自分たち以上に知ってくれている」とクライアントから信頼されますし、成果につながる行動を取ることができるのだと思います。

──グッドパッチの選考では、スタンスを特に重視している、ということでしょうか?

スタンスは、スキルや専門性の土台として、一番最初に見るようにしていますね。

グッドパッチで活躍している人は、「関わる事業やサービスに誰よりもコミットする」という行動を自然とできる人たちだからです。

デザイン、エンジニアリング、プロダクトマネジメントなど、専門性は人によって違っても、根幹にあるスタンスは「クライアント以上に事業・サービスのことを考え、行動する」という点で共通しています。

会議室で椅子に腰かけ、リラックスした様子で話しているグッドパッチ川北氏の写真

写真撮影:宍戸 知勢(グッドパッチ)

課題を見つけて最適な形に落とし込む工程を放棄しない限り、デザイナーの仕事はなくならない

──スタンスは代替できなくても、実際の作業においては、AIに任せられる範囲が広がってきていると思います。その点についてはいかがですか?

確かに、「形にするだけ、レイアウトを整えるだけ」の作業は、すでにAIに代替され始めています。ただ、私はそれはデザインの一部分でしかないと思うんです。

僕が思うデザインとは、事業やサービスを形にするために必要なコンテキストを、対話やインタビューから集めてきて、課題を見つけ、解決するための具体的な形に落とし込むこと。この一連の行為が、デザイナーの仕事だと考えています。

──事業・サービスづくりそのものをデザイナーの仕事と捉えているんですね。

正直に言うと、決まったスコープを綺麗に納めることに一番の喜びがある人には、今のグッドパッチはたぶんしんどいと思います。言われたことに「じゃあやります」で終わる案件がほとんどなくて、向こうのスコープに、それを上回るスコープを乗せて返すのが日常なので。

面談や面接でよく話すのは、「デザインをするという行為を放棄しない限り、デザイナーの仕事はなくならない」ということです。同じことを、執行役員の石井もよく話しています。

愛を持って関係性をつくろうとする人が選ばれる

──選考でまず見るのが土台となるスタンスとのことでしたが、土台の上には何が乗るのでしょうか?

スタンスの次に、得意領域や専門性が乗っかり、さらに上段に「人として好かれるかどうか」という要素があると思います。

「人として好かれる」というと、先天的な愛嬌のようなものをイメージするかもしれませんが、意識的に努力して伸ばせる部分でもあると思っています。

まずは自分から相手に興味を持ったり愛を示したり、ギブすることが重要です。

──クライアントワークにおける愛を持った関わり方とは、どんなものですか。

クライアントワークでは、すべてを作業と捉えてビジネスライクに振る舞うのか、相手に愛を持って関係性をつくりにいく姿勢で向き合うのかどうかで、自分の行動がだいぶ変わってくるんです。

クライアント以上にその事業やサービスを愛して向き合うことで、提案が自然と出てきたり、時にはクライアントとぶつかって議論することもあります(笑)。

もっと淡々とクライアントワークをすることも、可能なのかもしれません。
ですが、今は誰もが当たり前にAIと仕事をする時代だからこそ、グッドパッチのデザイナーには「人間と仕事をしている温度」を届けられる人であってほしいです。僕もそんな人と一緒に働きたいなと思います。

「この企業にはどんな物語があって、一緒に働く担当者はどんな人で、その先にいるユーザーは何を考えているんだろう?」と、相手に興味を持てたり、その先で誰よりも大きな愛を持ってコミットしてくれる人の存在こそAIには替えがたいもので、この先も求められ続けるのではないでしょうか。

僕が普段「いい作品だな」と思う漫画や映画も、何がよかったのかを突き詰めると、作者のこだわりが詰め込まれているところなんですよね。こだわりが詰まった作品に触れると、自然と作者の意図を読み取れるし、どんどん好きになるじゃないですか。

事業やサービスづくりでも同じで、誰より愛を持ってコミットし続けている人だからこそ、ユーザーが使い続けたくなるようなUXを設計することができるし、よい体験がよいビジネスを作っていくのではないかなと思います。

事業成長を約束する「デザインパートナー」の難しさ

──グッドパッチで働くデザイナーのスタンスを聞いていると、期待値やハードルが高そうですが、入社後に壁にぶつかるとしたら、どんなところですか?

クライアントがグッドパッチに期待しているのは、事業やサービスの成長なんです。きれいに整った制作物を納品すること自体は、クライアントが目指す最終的なゴールではありません。

また、新規事業を成功させること自体が、とても難しいことです。グッドパッチのメンバーは、その不確実性の高い環境に深く潜り込んでビジネス成果をあげることが求められるので、当然すぐに成果が出るプロジェクトばかりではないですし、もどかしい気持ちになる瞬間もあります。他社で長く経験を積んできたデザイナーであっても、壁にぶつかる場面はあると思いますよ。

戦略を描いて資料で提案するだけ、もしくは決められた通りに納品するだけの仕事であれば、ここまで難しくはないと思います。

──あくまで「デザインパートナー」として支援する立場というところも、もどかしさの要因になったりするのでしょうか。

確かに、グッドパッチで企業のあらゆるフェーズの課題を支援して、数年後、事業会社で自分自身が事業を立ち上げる立場に転職するメンバーもいます。

一緒に働いてきたメンバーの退職・転職を知ると、「もっと活躍できる場所を用意してあげられなかったか」など、マネジメントを担う立場として、反省したり、思うことは色々あります。

でも、グッドパッチ出身のデザイナーが、ある事業・サービスの主要なポジションを担っていて、「元グッドパッチのデザイナーを雇うと、ビジネスがうまくいくよね」と思ってもらえることは、会社としていい実績でもあると思うんです。

とはいえ今後は、メンバーが長く活躍できる環境を用意する必要があるとも考えています。

──川北さんはグッドパッチで働いていて、正直「つらいな」と感じる瞬間はないんですか?

僕自身はないですね。元々、映像制作会社からキャリアを始めていて、その時に「お前の代わりなんていくらでもいる」と言われていたからかもしれません。

常に自分は「いつ代替されてもおかしくない。だったら、替えが効かない何者かになろう」と思いながら仕事してきたので、状況が厳しくても、そんなに悲観的にはならないんですよ。

グッドパッチに入ってから、いろんなメンバーのマネジメントを任せてもらうようになって、彼らがいい仕事ができてクライアントから感謝してもらえたり、自分一人ではできない仕事がチームでできたりと、やっていること自体が楽しいので、やめたいなとか、しんどいなとは思ったことがないです。

持ち味、とんがりを持つ人であふれる組織にしたい

──グッドパッチのデザインパートナー事業では最近、組織体制の変更がありましたね。その背景を教えてください。

2026年9月から、デザインパートナー事業の直下に「スタジオ」という組織を複数つくり、各スタジオでプロジェクトを獲得し、売上をつくっていく「スタジオ型」の組織運営を始めました。

これまでは職能別の組織運営を続けてきましたが、現在は、各スタジオにUI/UXデザイナー、サービスデザイナー、BXデザイナー、エンジニア、PdM、デザインストラテジストなど、あらゆる職種のメンバーが在籍している形です。

──このタイミングで職能別の組織体制から変更したのはなぜですか?

AIによって職能を越境しやすくなったことで、職能別の組織のあり方がフィットしなくなってきた、という背景もあります。

また、「デザインの力を証明する」というミッションを持つ上場企業として、以前の組織運営のやり方では、事業にレバレッジが効かなくなってきたという理由も大きいです。
以前は、自分が頑張って数千万円分の売上を作ればなんとかカバーできたことが、僕だけでは補えない規模になってきました。デザインパートナー事業の規模が成長したからとも言えます。

そんな中で、職能別の組織をマネジメントしていくよりも、各スタジオをリードするディレクターを立て、スタジオごとに事業目標を持ってもらい、各々でマネジメントしてもらうほうが、レバレッジが効くと思ったのです。

スタジオのトップを任せられる素晴らしいリーダーの方々が揃った、というのも決め手になりました。

現在は、様々な企業からいただく相談を、各スタジオのディレクターがどのように提案するかから決め、スピーディに動いています。

──スタジオ制に切り替わってからも、川北さん自身もスタジオを持っていますよね。

これは僕のわがままに近いのですが、デザイナーと働くことを手放したくなかったんです。現場感を失いたくなくて、自分もスタジオを持たせてほしいと他のディレクターにも相談しました。

僕のスタジオでは、デザインストラテジストやUI/UXデザイナー、サービスデザイナーの皆さんと一緒に働いています。

──スタジオごとの違いや特徴はありますか?

現時点で、ある程度は特徴が出てきています。このスタジオはサービス・プロダクトのUI/UXデザインに強いとか、あのスタジオはブランド構築の実績が多い、などです。でもそれは、以前の職能別の組織運営の延長線上に過ぎないと思っています。

今後は「あの人がいるスタジオ」「こういう人たちがいるスタジオ」という想起がされるくらい、各スタジオから、独自の持ち味やとんがった人が出てきてほしいと思っています。

──独自の持ち味やとんがりがある人が、グッドパッチで働く面白さとは何だと思いますか?

グッドパッチがやっていることを、デザインという言葉を使わずに伝えるなら、「事業やプロダクト、サービスを作るという行為そのもの」です。クライアントやユーザーに真剣に向き合っているメンバーがたくさんいる中で、切磋琢磨し合えることは、なかなかない環境だと思います。

他社で長く経験を積んだ方の場合は、「グッドパッチに何かを求めに来る」というよりは、「グッドパッチを変える」気持ちで、挑戦しに来ていただけるとうれしいです。

常に変化の最前線に立ち、AIをフル活用しながら、グッドパッチというひとつのチームで働くおもしろさを体験してもらえると思います。


グッドパッチでは、AI時代のカオスを楽しみながら、デザインの力を共に証明する仲間を探しています。

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