昨今、企業において顧客視点でのサービス開発の重要性が高まっており、金融業界も例外ではありません。

トヨタグループの金融事業を営むトヨタファイナンス株式会社はまさにその1社。2023年に社内初となるデザイン組織「CXデザイングループ」を設立し、メーカーや販売店(ディーラー)への向き合いを中心としたBtoBの事業視点から、顧客視点や顧客体験を重要視したBtoC視点の浸透を目的に、デザインを活用した企業文化の変革に取り組んでいます。

しかし、多くの企業が苦戦するように、デザイン組織の立ち上げには、デザイン人材の不足やデザイン活動という新たな取り組みに対する社内理解の獲得への壁など多くの課題が伴ったと聞きます。

今回グッドパッチは2年間という長期にわたってOJT型の伴走支援とデザイン組織成長支援の両軸から社内へのデザインの浸透を推進。現在も続いている取り組みについて、デザイン組織の組成と統括を担当されてきた2人に話を伺いました。

話し手:
トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 部長 (※取材当時。現:BR LTV戦略室 室長) 蓮見さん
トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 CXデザイングループ 主幹 酒向さん
Goodpatch プロデューサー 瀬川

ビジネスモデルの変革に向け トヨタファイナンスの「デザイン組織」が目指すもの

──CXデザイングループは、トヨタファイナンスにおける初のデザイン組織だと伺っています。設立の経緯について教えてください。

トヨタファイナンス(以下、TFC) 蓮見さん:
当社は、皆さまが自動車を購入する際に利用する金融商品を中心とした金融事業を手掛けています。

これまで車のメーカーや販売店の要望に応じた金融商品を提供するBtoBビジネスを中心に展開してきたのですが、トヨタグループ全体で「モビリティカンパニー」を目指すにあたり、トヨタファイナンスもビジネスのあり方を見直すタイミングに来ています。

販売店だけでなく、その先にいるエンドユーザーの視点、つまり顧客体験(CX)をベースに事業を考え、いかにBtoCビジネスに転換していくかという経営課題の下、2023年1月に設立されたのがCXデザイングループです。

トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 部長 蓮見さん

トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 部長 (※取材当時。現:BR LTV戦略室 室長) 蓮見さん

──CXデザイングループは、トヨタファイナンスの中で具体的にどのような役割を担う組織を目指されているのでしょうか。

TFC 蓮見さん:
大きくは2つあります。1つは「デザインプロセス」をすべての事業部に織り込んでいくこと。もう1つは企業風土や人材育成に顧客視点を根付かせることです。

エンドユーザーに受け入れられる商品やサービスを生み出すためには、この両方が必要不可欠です。そのためにも、まずはデザインの存在意義や価値を、社内の皆さんに知ってもらわなくてはいけません。社内でのデザインのプレゼンスを高めるためにも、組織として活動することが必要だったのです。

──CXデザイングループの立ち上げ以前に、デザイナーは在籍していなかったのでしょうか?

TFC 蓮見さん:
2019年前後から数名のインハウスデザイナーがIT部門やWeb制作部門に在籍していました。ただ、当時は事業部門が企画したものをデザイナーが制作するという役割にとどまっており、ビジネスの企画段階からデザイナーが参画していくという流れがありませんでした。それではデザイン思考を事業に生かすことはできない、という課題も組織化のきっかけでした。設立当時は、プロパー社員と中途採用のデザイナー数名で構成される混成チームからのスタートでしたね。

TFC 酒向さん:
組織化にあたっては、内製のデザイナーの育成も重要課題の一つでした。例えば、UXデザイナーとしてCXデザイングループに配属された社員は、デザイナーとしての職歴が全くないメンバーがほとんどで、デザイナーとして必要なスキルセットの獲得と実践機会の提供が大きな課題としてありました。現在に至るまでグッドパッチさんに支援いただいている状況ですが、将来的には100%内製のデザイナーでこなせるようになることを目標にしています。

敷居が高いと感じていたけれど……「デザインの力を証明する」という考え方に共感

──デザイン組織が設立されたのち、どういった経緯でグッドパッチにご相談いただいたのでしょうか。

TFC 蓮見さん:
当時は、現在ご支援いただいているようなデザイン組織全体への支援というよりも、「さまざまな開発案件がある中で、デザイナーが全く足りていない」という状況に対し、外部に支援を求め、委託先を検討していました。

いくつかデザイン会社にお声がけしてプレゼンしていただいたのですが、こちらが期待するスキルセットを持っているところがなかなか見つからず……デザイン組織を立ち上げたばかりの私たちにとって、グッドパッチさんは敷居が高く感じていたのですが、思い切ってコンタクトを取ったのがきっかけです。

トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 CXデザイングループ 主幹 酒向さん

トヨタファイナンス株式会社 CX本部 CX企画部 CXデザイングループ 主幹 酒向さん

TFC 蓮見さん:
実は今回の取り組み以前にも別件でグッドパッチさんにはご相談をしたことがありまして。その商談に僕も同席していたんです。コンペの際に「アウトプットだけを求められるような請負型の仕事ではなく、本質的な課題を抽出し仮説・検証・改善をご一緒することで価値を生み出すような仕事でなければ」とグッドパッチの方がおっしゃったことが印象に残っています。

Goodpatch 瀬川:
それはずいぶんと敷居を高くしていますね(笑)。確かに弊社の場合、準委任型で、クライアントに伴走しながら課題に向き合っていくようなプロジェクトがほとんどです。

TFC 蓮見さん:
「敷居が高いな」と感じたと同時にとても良い姿勢だと思いましたね。私はグッドパッチさんがミッションに掲げられている「デザインの力を証明する」という考え方にも共感しています。

当社は「デザインって必要なの?」という認識からの出発だからこそ、顧客の幸せのためにデザインのプレゼンスを高めることや、デザインへの投資が必要だということを切実に受け止めています。この状況をどう変えるか、というのは、今回のプロジェクトでグッドパッチさんに期待する点でした。

──ご相談いただいた課題は「デザイナー不足」だったとのことですが、グッドパッチ側はどういった提案をしたのですか?

Goodpatch 瀬川:
いただいた提案依頼書は「なるべく多くのスキルセットを有したシニアのUIデザイナーとUXデザイナーのリソースをお借りできないか?」といった趣旨でした。しかし、よくよくお話を伺っていくと、デザイン組織を立ち上げたばかりで、組織としてどのような状態を目指すのかといった導き先や、どのような案件にデザイナーが入り、どのような価値を発揮すべきかなど、デザイン組織の成長に向けての道筋が整理しきれていない状況だということが分かってきました。

もちろん、リソースが足りていないところには伴走支援をしていくのですが、デザイン組織をいかにグロースさせ、デザイナーのスキルアップにつなげるかということを考えたとき、ご依頼通りにシニアのデザイナーを1名ずつ投入するということは本質的な打ち手になり得ないと感じました。

なので、単にリソース支援として参画するのではなく、先方デザイナーのスキルアップや取り組んだテーマに対するデザインナレッジの還元など、成長テーマを踏まえた上でのOJT型の伴走支援と、デザイン組織成長の道筋を策定する組織支援の両軸での参画を提案いたしました。

──その提案を受け、どんな印象を持たれましたか?

TFC 蓮見さん:
はっ、と気付かされたというのが正直なところですかね。当時の私は、デザインの社内プレゼンスを上げるために早く成果を出したいという気持ちで焦っていましたから。短期的な成果はもちろん大事ですが、持続的にデザインの力を発揮していくためには、自らの組織を強くしていくことに力点を置いた取り組みが必要であるという点に納得し、グッドパッチさんのご支援を受けることを決めた形です。

立ち上がったばかりのデザイン組織、機能させるために最初にやるべきことは?

──現在も進行中の約2年間のプロジェクトについて具体的に伺っていきます。プロジェクト当初、何から始められたのでしょうか?

Goodpatch 瀬川:
初年度はCXデザイングループが目指す方向性と現在地の確認をしながら、組織成長のロードマップの策定を行うところからスタートしました。デザイン組織としてレベルアップをする先に描く組織像がどのようなものなのか?果たすべき役割やその状態などを言語化し、それらと現在地にどういったギャップがあるのかという認識をそろえていきました。

──まずはプロジェクトの全体的な方向性を定義したということですね。

Goodpatch 瀬川:
そうですね。併せて全社に顧客視点を浸透させることを目的としたユーザーインタビューのワークショップの提供や、デザイン組織の成熟度を測るロードマップの作成など、デザインナレッジの整理やドキュメント化に関しても行いました。

また、CXデザイングループが進めていた施策への参画もしています。すでに動き始めていた施策もある中で、当時のマネージャーやGMの方と支援に入るものを選定していきました。

プレイブック

CXデザイングループが目指す方向性や目標などをまとめた「変革プレイブック」

──プロジェクト当初、グッドパッチの動きに対してどういった印象を持たれていましたか?

TFC 蓮見さん:
正直にお話しすると、「本当にうまくいくのかな」という不安は当初ありました。スキルマップなど概念的で抽象度が高いものもあり、自分含め、メンバーがちゃんと理解してものにできるのだろうか?と。

Goodpatch 瀬川:
スキルマップは物差しとしての役割でしかないため、スキル獲得や体系化を見据えた場合、一定、アクションを取らないと実践知として感じ取れない部分はあるかなと考えています。例えば、ユーザーインタビューは代表的な例ですが、経験する前は「聞くだけなのだから、1回やればできるだろう」と思われがちです。

しかし、いざワークショップなどで実践すると全く思った通り話が進まず、インタビュイーから答えを引き出せないという経験を自身ですることで、事前のインタビュー設計や手法の選択、ひいてはそもそものリサーチ目的の明確化などがいかに大事か理解できます。インタビュー内容の分析に関しても、事前のヒアリングやそこでの深掘りが足りない場合、思っていた以上に情報が薄くなったり、示唆の導き出しに至れないということに気が付きます。

デザイングループのメンバーだけでなく、プロジェクトの中で関わる他部署の方々も顧客視点から得られたインサイトが、課題解決の糸口になることが自身の経験として腹落ちすると、デザイン組織が行う業務にも興味を持ってもらえるのだ、と間近で見ていて思いますね。

──選定された施策の伴走支援では、具体的にどういったことをされたのでしょうか?

Goodpatch 瀬川:
最初に手がけたのは「LEXUS LUXURY HOTEL COLLECTION」というレクサス関連の旅行ECサービスの開発プロセスに、ターゲットペルソナの設定や顧客インサイトの抽出を目的としたユーザーインタビューの実施など、サービス開発フローの中でデザインプロセスを取り入れるという試みでした。

先ほどのワークショップの話と同様に、リサーチの設計やそもそもなぜリサーチをするのかというところをドキュメント化し、しっかりナレッジとして残すことによって、直接プロジェクトと関わりのなかった他のCXデザイングループのメンバーが見ても、さまざまなことが学べるデザインナレッジとして資産化していくのが副次的なテーマでした。

リサーチ関連のナレッジ

リサーチの意義や手法といったノウハウについても、トヨタファイナンスの資産として残している

正論ではなく「最善の着地点」を提案──単なるデザイナー派遣ではなく、組織のグロース支援へ

──伴走支援が始まり、グッドパッチ側が苦労したポイントはどういったところだったのでしょうか?

Goodpatch 瀬川:
デザインプロセスというのはデザイナーだけで実現できるものではなく、ビジネスサイドの方や開発側の部署の方々との協力が不可欠です。一緒に動く中で、デザイン活動をビジネスに取り込んでいく必要性や意義を理解してもらうことを目指していますが、当然ながら、他部署やそこに所属するメンバーには、彼彼女ら自身の職責やさまざまな事情があります。背景を含めて、他部署の状況を咀嚼するのに少し苦労しましたね。

TFC 酒向さん:
当社の社員は、明確なプロセスの下に物事を進めていくのは得意とするところなのですが、概念的なものを捉えつつ柔軟性を持って動くということは苦手な傾向があります。CXデザイングループ内でさえ、中途採用のデザイナーと当社のこれまでのやり方に慣れていた社員との間の認識のギャップが長期間埋まらなかったですね。なので、まだまだグループ外の方々との認識にはギャップがあると考えています。

TFC 蓮見さん:
CX本部という同じ本部内で事業領域を担当している部署とのプロジェクトがあったのですが、同じ本部内だから認識がそろっていると思いきや、大きな行き違いがあったこともよく覚えています。

われわれとしては事業側を巻き込みながらカスタマージャーニーをしっかり描いて、顧客視点で良い体験を作ろう──と意気込んでいたんです。コミュニケーションもとって、ワークショップに参加してもらったりもしていた。それなのに、最後の最後でアウトプットが白紙になってしまって。

──しっかり共有していたはずが……。すれ違いの原因はどこにあったのでしょうか?

TFC 蓮見さん:
事業側はビジネスのことを、デザイン側は顧客体験のことをといった役割分担意識が強く出てしまい、本当の意味でワンチームになれていなかったのだと思います。事業側には顧客視点の重要性を理解していただき、デザイン側も事業に対する理解をもっと深めていく必要があります。相互理解、相互尊重が大事だと改めて思い知らされた経験です。

Goodpatch 瀬川:
部門間における認識合わせはデザイン活動における大きな課題と捉えています。だからこそ、最初に蓮見さんが仰っていた、デザインを通じたアプローチや取り組みのプレゼンスを上げていくという事が重要なのだと強く感じています。

プロジェクトの途中からではなく、企画段階で事業部やIT部門から声をかけてもらえるポジションにCXデザイングループが至ることで、事業側が求めているものをどうやったら形として実現し、体験価値を最大化できるか、その議論にデザイナーの持つ引き出しを持ってして参画するような、事業成長を支える重要な存在になるべきだと考えます。

開発のIT側との連携に関しても同様です。ただ、一足飛びにそういった状態に至るのは難しいため、まずは各プロジェクトの中で「デザイナーを巻き込んでおけると良いな」と思われるシーンを多く生み出すようなスモールサクセスを積み上げていくことが必要なのだと思います。

Goodpatch プロデューサー 瀬川

Goodpatch プロデューサー 瀬川

──TFCのお二人から見て、プロジェクトを進める中で、以前と比べて他部署とのやりとりで変化を感じているところはありますか?

TFC 酒向さん:
CXデザイングループのデザイナーとプロジェクトを一緒にやった経験があるメンバーは、企画の早い段階で声を掛けてくれるようになっていますね。一方、デザイナーに相談がないまま要件定義や開発スケジュールが決まってしまうというケースも残念ながら少なくはないのですが、徐々にではありますが進歩をしていると感じています。

TFC 蓮見さん:
会社のトップが顧客視点の重要さをしっかりメッセージとして発信してくれていることも大きいですね。経営会議でデザイン関連の議題が出る事も増えました。ただ、事業側やIT側、あるいは他部署に顧客視点がないわけでは決してありません。エンドユーザーだけを見ることが非常に難しい立場にあることを尊重して、われわれCXデザイングループは、顧客視点の浸透を進めていかなければいけないと思っています。

TFC 酒向さん:
今手掛けているビジネスもありますから、一気にドラスティックに変えるというのは難しいですね。グッドパッチの皆さんからしても、「なぜここまでしかできないんだ」という葛藤があったんじゃないかと思っています。

Goodpatch 瀬川:
私たちも、背景にある文脈や業務的な事情を汲み取りつつ、外部の人間だからこそ推し進められることとの塩梅を考えながら動いていきたいとチーム内で話しています。一足飛びに状況を変えることは難しいですが、私も2年前と比べると、デザイナー陣が事業部門やIT部門の方々と近しい視座を持って会話が出来る場面が増えてきているなと感じています。

プロジェクトを協働で進める中では、デザイナーが持つ引き出しを持ってしていかに価値発揮をしていくかとその回数の積み上げでしか、デザインのプレゼンスを上げていく方法はありません。その意味で、私たちはCXデザイングループのデザイナーの方々と共に、粘り強く多くの壁と向き合わなければいけないのかなと考えています。

デザイナーのスキルアップと意識の高まり 2年間でデザイン組織に起きた変化とは

──CXデザイングループの方向性の議論からロードマップの定義、デザインプロセスにまつわるワークショップの実施、具体の施策への伴走、現場デザイナーに対するOJT支援など、2年間でさまざまな取り組みをされたと伺っています。TFCのお二人から見て、CXデザイングループのメンバーにどういった変化がありましたか?

TFC 酒向さん:
メンバーによって経験している内容が異なりますが、経験が確実に実になっていて、アウトプットできるレベルまでは達しているんですよね。スキルは途上にあると思いますが、当初と比べると大きな前進です。

意識の変化も顕著です。以前はなかったことですが、現在ではCXデザイングループに配属されるとすぐにUXに纏わる書籍を3冊ほど渡されるという(笑)。トップダウンではなく、現場のリーダーが先導する状況が生まれています。

──それは大きな変化ですね。

TFC 蓮見さん:
メンバーに自信がつきましたよね。他部署とのミーティングでの発言力も高まっていますし、他部署からメンバーに対する感謝の言葉を裏で聞くことも増えました。うれしい限りですね。グループ内では中途社員とプロパー社員が良い補完関係をつくり、相互に成長できる環境や仕組みをメンバー自ら考え実行しているのも本当に頼もしいです。

また、グッドパッチさんに提供いただいたワークショップをきっかけに、他部署のメンバーにも伝播していて、社内にデザイン思考や顧客視点を浸透させていくための活動に、自らも参画したいと言ってくれる社員もいるんです。

Goodpatch 瀬川:
本当にすごいことだと思います。ワークショップなどでCX本部以外の部署の方々とも会話して思ったのが、若手メンバーの方々の社内課題に対する解像度の高さです。課題意識を強く持ち、課題解決の意思も持ち合わせている優秀な方々。われわれがきっかけを提供できたならとてもうれしいです。ワークショップでの学びが、現在に至るまで活動として生きているのが何より素敵ですよね。

TFC 酒向さん:
グッドパッチさんが作ってくださったアウトプットもちゃんとアセットになっています。メンバーが新たなプロジェクトを手掛ける際に「あのとき、グッドパッチさんとこれやったな」と引っ張り出してきて、それを手本にしながら新たに作るなど、教えられなくてもそういった動きができていますね。

Goodpatch 瀬川:
Figmaで弊社メンバーが作った昔のドキュメントを、TFCメンバーの方々が彷徨っているのをたまに見かけます(笑)。興味の対象や取り組む意義を認知されると、勢いよくインプットしたり、推進されたりするのは御社の強みですね。

──2年間、さまざまなテーマでグッドパッチのメンバーと関わってきたかと思います。プロジェクトを通じて、今グッドパッチに対してどういった印象を持たれていますか?

TFC 蓮見さん:
質問をいただいてから「一番良い表現は何だろう?」と結構考えたのですが、やはり「信頼のおける仲間」だと思っています。委託先という感じではなく、同じ会社の仲間のような当事者意識で伴走してくれる。誠実さを感じています。

グッドパッチの皆さんって忖度しないんですよ。かと言って評論家のような立ち位置から「あるべき」を押し付けてくることもない。当社の置かれた事情や実情を汲み取った上で、内側の議論にちゃんと入り、一緒に最適解を探してくれます。

TFC 酒向さん:
前回のインタビューから変わらないのですが、やはり誠実さに対する印象が強いです。あとはグッドパッチの皆さんから来る「変化球」に新たな視点をもらっています。相談した内容に対して単なる回答がくるんじゃなく、提案で返してくれるんですよね。そこに意外性や新たな発見がある。いつも刺激をもらっています。

プロジェクトはまだまだ続く いずれはユーザーの「インサイトドリブン」で商品やサービスを生み出せるように

──グッドパッチによる支援開始から2年間経過していますが、まだまだやりたいこと、やらなくてはいけないことがたくさんあるのではないかと思います。今注力したいと考えられている課題は何でしょうか?

TFC 酒向さん:
先ほどお話ししましたが、これまでデザインの観点がなかった業務開発にデザインプロセスを導入するというサイクルを回してみたのですが、やはり顧客視点の浸透、そしてその先にある顧客理解には、まだまだ時間が掛かるというのが正直な実感です。

業務開発において「こういうことをやりたいです」と議題に挙げるためのシートに、「それをやることで、お客さまにとってどういった利益があるのか」を本来書くべき欄に、当社の利益の話が書いてあったり……。今一度、全社的に顧客理解度を深める必要性を感じています。

Goodpatch 瀬川:
会話し続ける、取り組み続けることが大事だと思います。今のお話もワンサイクル回したからこそ得られた示唆ですよね。「それを踏まえて、次はどうしたらいいか」というステップに進んでいるということだと思います。

「業務プロセスのすべてにデザイン思考を織り込んで、抜根的に変革する」というのは理論として提唱はされるのですが、実態としては現実的ではありません。各企業の事業背景や文化風土に対し、「いかに最適化していくか」ということが大切で、今まさに取り組んでいる課題だと考えています。

──プロジェクトはまだ続いていますが、最後に今後のCXデザイングループの展望を聞かせていただけますか?

TFC 酒向さん:
これまでは個々のプロジェクト重視でやってきましたが、目下の課題はデザイン、顧客視点を企業の文化風土として根付かせることです。全社としても中期経営方針に設定されています。グッドパッチさんには引き続き伴走いただき、われわれのミッションとして重点的に取り組んでいきたいと思っています。

TFC 蓮見さん:
事業部門の企画に対して、CXデザイングループがUI/UX観点で体験を最適化するというポジションまでは来たかと思います。次のステージでは、企画のさらに上流からデザイナーが参画し、ユーザーのインサイトドリブンで新たな商品やサービスを生み出していくところに、デザインの力を発揮できるような組織に成長できればと考えています。

──続編では、OJT型の支援で伴走させていただいた、現場のデザイナーの方々にインタビューしていきます。蓮見さん、酒向さん、ありがとうございました。

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