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AIの先は、たぶん愛。——誰もがつくれる時代に、それでも選ばれる仕事とは【Designship 2026 登壇レポート】

こんにちは。グッドパッチでクリエイティブディレクターをしている、栃尾です。

以前、AIを活用して制作したWebサイトに、こんなコメントをいただいたことがあります。

「これはAIではできない仕事だ」

実際には、制作のさまざまな場面でAIを使っていました。それなのに、サイトを見てくださった方には「AIではできない」と感じてもらえた。この出来事が、今もずっと心に残っています。

先日、Designship 2026で「AIの先は、たぶん愛」というテーマで登壇させてもらいました。ちょっと照れくさいタイトルですが、今の私がものづくりについて考えていることを、割と素直に表した言葉だと思っています。

Designship 2026グッドパッチ栃尾登壇の様子

AIによって、ものづくりの可能性はどんどん広がっていますよね。これまで専門的なスキルや多くの時間が必要だったことも、AIを使えばできるようになってきました。私自身も日々の仕事でAIを活用していますし、その変化にはとてもワクワクしています。

一方で、誰もがある程度のものをつくれるようになったとき、私たちは何によって選ばれるのだろう、と考えることも増えました。

そんな今だからこそ、私たちは何を大切にして、どんなものづくりをしていきたいのか。登壇では、その問いに対する今の私なりの考えをお話ししました。

そして最近、この問いを個人としてだけでなく、チームとして考えるようになりました。

2026年9月から、デザイナーやエンジニア、クリエイティブディレクターを含む約30人のチームを率いることになりました。長年の夢だった自分のチームを持つことができ、うれしい反面、これからどんな価値を生み出し、どんなチームに育てていくのかを考える日々です。

今回は、登壇でお話ししたことに加えて、これから私がグッドパッチでどんなものづくりをしていきたいのか、そしてどんなチームをつくっていきたいのかを書いてみたいと思います。

UI/UXデザイナーの可能性を、もっと広げたい

登壇のきっかけ

これまで私は約4年間にわたり、UI/UXデザイナーという職種の責任者として、職能チームを率いてきました。

メンバー1人ひとりの専門性をどう育てていくか。そのスキルをクライアントの事業成果にどうつなげていくか。そんなことを考えながら、自分自身もUI/UXデザイナーとして、さまざまなプロジェクトに関わってきました。

UI/UXデザインは、今でも大好きな仕事です。使う人のことを考え、複雑な課題を整理し、体験として形にしていく。そのプロセスには、デザインの面白さがたくさん詰まっていると思っています。

ただ、仕事を続けていく中で、少しずつもどかしさを感じるようになりました。

グッドパッチのUI/UXデザイナーは、本当にできることの幅が広いんです。ユーザーを理解し、事業の課題を整理し、サービスのコンセプトを考え、体験全体を設計する。言葉やビジュアルの表現まで踏み込める人もたくさんいます。

最終的なアウトプットとしてUIに責任を持つことが多いだけで、考えていることも、できることも、決して画面の中に閉じているわけではありません。でも、「UI/UXデザイナー」という肩書きから、どうしても画面をつくる人として認識されてしまうことがあります。

それは社外だけでなく、社内でも同じでした。

本当はもっといろいろなことができるのに、その力を十分に知ってもらえていない。結果として、挑戦できる仕事や、任せてもらえる領域まで限定されてしまう。それが、ずっともどかしかったんです。

私自身が「クリエイティブディレクター」という肩書きを持つようになったのも、そんな思いがあったからでした。

UI/UXデザインで培ってきた、ユーザーを理解し、課題を捉え、体験を設計する力は、アプリの画面だけでなく、ブランドづくりやコミュニケーション、サービス全体の体験設計にも生かせるはずです。

そんな思いから、私自身もアプリのUIにとどまらず、ロゴやWebサイト、ブランドづくり、オフラインのタッチポイントまで、領域を限定せずに仕事をするようになりました。

そして、こうしたサービスの価値をさまざまな接点で一貫して届ける取り組みを、グッドパッチでは「サービスブランディング」と呼んでいます。私自身がその取り組みを立ち上げ、中心となって、さまざまなプロジェクトを通じて実践してきました。

支援実績「コープデリ連合会」

https://goodpatch.com/ja/work/coopdeli-app

支援実績「ペテモの公式アプリ」

https://goodpatch.com/ja/work/aeonpet

UI/UXデザインを起点に、サービスの価値をまるごとつくっていく。それは、私自身がやりたかった仕事であると同時に、グッドパッチのデザイナーたちが持つ可能性を、もっと広く届けるための挑戦でもありました。

そして今回、デザイナーだけでなく、エンジニアやクリエイティブディレクターも含むチームを率いることになりました。これまで職能責任者として考えてきた「1人ひとりの専門性をどう育てるか」という問いに加えて、「その専門性を掛け合わせて、チームとしてどんな価値を生み出せるか」を考えられるようになりました。

UI/UXデザイナーの専門性を大切にしながら、その可能性を肩書きや職種の枠に閉じ込めない。一人ひとりが持っている力を、もっといろいろな仕事で発揮できるようにしたい。

そんなチームを、これからつくっていきたいと思っています。

誰もがつくれる時代に、何によって選ばれるのか

登壇スライド扉絵「速い。それっぽい。すぐ形になる」

そんな新しいチームを率いる立場になって、避けて通れないのがAIの存在です。

私自身、今ではAIがない仕事の仕方を想像できないくらい、日常的に使っています。情報の整理からアイデア出し、コピーやコードの作成まで、これまで時間がかかっていたことが驚くほど早く形になるようになりました。一定以上のものをつくるハードルが下がっていることは、ものづくりに関わる人にとって、とても希望のある変化だと思っています。

ただ、チームを率いる立場になると、手放しで喜んでばかりもいられません。

メンバーからも「これから私たちは何を身につければいいんでしょうか」「つくれることは、これからも私たちの強みになるんでしょうか」と聞かれることが増えてきました。

私自身も、このチームがどうすればお客さまから指名されるようになるのか、誰もがある程度のものをつくれる時代に、何によって私たちを選んでもらえるのかを考えるようになりました。

その答えは、まだつくっている途中です。

ですが、ヒントはこれまで取り組んできたものづくりの中にあるような気がしています。

AIで生まれた余白を、まだ見たことのないものづくりに使いたい

「佐久間宣行事務所」ウェブサイト製作企画のアイキャッチ画像

そのヒントの一つになったのが、以前PR施策の一環で制作したテレビプロデューサー・ 佐久間宣行さんの事務所の公式サイトです。

このプロジェクトでは、佐久間さんの頭の中に迷い込んだような体験を目指して、企画から実装までをほぼデザイナーだけで手がけました。

これまでならエンジニアの力を借りたり、技術的な制約から諦めたりしていたような表現も、AIの力を借りることで、自分たちでつくって試せるようになりました。できることが増えた分、「これもできるんじゃない?」「だったら、もっとこうしたい」とアイデアがどんどん広がっていったんです。

結果的に、AIを使ったからといって制作時間が大幅に短くなったわけではありません。むしろ、あれもこれもと試したくなってしまって(笑)。でも、それが本当に楽しかったんです。

制作の裏側については、これまでブログや登壇でもお話ししているので、気になる方はぜひそちらをご覧ください。

https://goodpatch.com/ja/work/sakuma-nobuyuki

このプロジェクトは、ありがたいことに本当にたくさんの反響をいただきました。その中にあったのが、冒頭で紹介した「これはAIではできない仕事だ」というコメントです。

AIを使っていたことと、AIではできないと感じてもらえたこと。その違いは何だったんだろうと、プロジェクトが終わってからもずっと考えていました。

登壇スライド扉絵「15周年プロジェクト」

そんなことを考えていたとき、グッドパッチの15周年プロジェクトでも似たようなことが起きていました。

このプロジェクトはFuntechさんにご協力いただいたもので、私もオブザーバーとして関わらせてもらっていました。特に印象的だったのは、最初の提案の段階から、とにかく熱量が違ったことです。

「この人たちと一緒に仕事がしたいね」。

そんなパートナーに出会えたことを、代表の土屋と喜んだのを覚えています。

もともとはコーポレートサイトの刷新から始まったプロジェクトでしたが、そこから15周年サイトや映像へと広がり、キャラクターが生まれ、気づけばゲームまでできていました。

冷静に考えると、かなりやりすぎています(笑)。もちろん、キャラクターやゲームがなくても、企業の15周年を伝えることはできます。そこまでつくる必要があったのかと聞かれれば、合理的に説明しきれない部分もあるかもしれません。

でも、最初の提案から完成までを見ていると、あの熱量があったからこそ、ここまで広がっていったんだろうなと思います。

URL:https://goodpatch.com/15th

グッドパッチ15周年アイキャッチ画像

グッドパッチ15周年ミニゲームのアイキャッチ画像

このプロジェクトについて、代表の土屋がnoteで、合理性だけでは説明できないこだわりにこそ価値がある、という趣旨のことを書いていました。

それを読んだとき、佐久間さんのサイトで私たちがやっていたことも、きっとこれだったんだと思いました。

グッドパッチCEO土屋のnoteとコメント

どちらも、そこまでやらなくても成立はしたはずです。でも、つくり手が面白がって、もっと良くできるんじゃないかと考えて、そこまでやってしまった。

AIというと、どうしても効率化の話になりがちです。これまで時間がかかっていたものを、もっと早くつくれるようにする。もちろん、それも大きな価値です。

ただ、私はAIによって生まれた時間や選択肢を、ものづくりを早く終わらせるためだけに使いたいわけではありません。

同じ場所に早くたどり着くのではなく、今まで行けなかった場所に行ってみたいんです。寄り道したり、壊してみたり、遊んでみたり。ときには「そこまでやる?」と思うようなことも試してみる。

AIが広げてくれた可能性を、人の心を動かすところまでものづくりをやりきるために使いたい。

そんな姿勢が、これから私たちが選ばれる理由の一つになっていくんじゃないかと思っています。

ものづくりで成果をつくり、メンバーの未来もつくる

登壇スライド扉絵「ものづくりで成果をつくり、未来をつくる。」

新しいチームのキックオフで、私は「ものづくりで成果をつくり、未来をつくるチームでありたい」という話をしました。

今回の組織変更で、私の仕事も大きく変わりました。これまではUI/UXデザイナーの育成や専門性の向上が主な役割でしたが、今度は約30人のチームを率い、事業としての成果にも責任を持つ立場になりました。いわば、小さなカンパニーを任せてもらったようなものです。

どんな案件を生み出していくのか。自分たちの強みをどう価値に変え、「このチームにお願いしたい」と思ってもらえるのか。売上や利益率にも責任を持ちながら、チームとして成長し続けるための勝ち筋を考えることも、今の私の仕事になりました。

正直、これまでとは考えることがずいぶん増えました(笑)。でも、自分たちがどんな仕事を生み出すのか、その未来を自分たちで考えられることに、ワクワクもしています。

私たちが目指したいのは、ただ面白いものや、きれいなデザインをつくることではありません。

サービスの魅力が伝わるようになる。使ってもらえるようになる。好きになってもらえる。クライアントの事業が前に進む。

そうした成果を積み重ねることで、「また一緒に仕事がしたい」「次もこのチームにお願いしたい」と思ってもらえる。そして、新しい仕事や挑戦の機会が生まれていく。

その機会が、メンバー自身の未来にもつながってほしいと思っています。

これまで経験のなかった領域に挑戦したり、自分でも気付いていなかった強みを見つけたり。クライアントの成果をつくることが、チームの成長につながり、次の挑戦を生み出していく。そんな循環をつくりたいです。

もちろん、挑戦を続けるためには、事業として成立させることも欠かせません。限られた時間や予算の中で、どこに力をかけるべきかを見極めること。誰か一人の頑張りだけに頼らず、いい仕事を再現できるチームにすること。

メンバーがものづくりに夢中になりながら、安心して新しいことに挑戦できる。その環境を、事業としても持続できる形でつくっていくことが、今の私の役割だと思っています。

どこまでつくれるかより、どこまでやりきれるか

AIによって、ものをつくること自体はこれからもっと簡単になっていくと思います。

だからこそ、私たちは、できるようになったことを使って何を実現するのか、どこまで良くできるのかを考え続けたい。

相手が何を実現したいのかを理解し、どこに価値があるのかを考え、そのために必要なことに力を注ぐ。ときには、普通ならそこまでやらないような一歩を踏み込んでみる。

そういうものづくりがしたいと思っています。

登壇スライド扉絵「偏愛を持って、成果が出るところまでやり切る。」

ここまで書いてきて、やっぱり私が大切にしたいのは、ものづくりに対する愛なんだと思います。

クライアントの事業や、その先にいるユーザーへの愛。ものづくりそのものへの愛。そして、一緒につくる仲間への愛。

誰かのことをもっと知りたい、もっといいものを届けたい。そんな気持ちがあるからこそ、もう一歩先まで考えたり、試したりできるのだと思います。

もちろん、愛があるからといって、際限なく時間をかければいいわけではありません。限られた条件の中で、何を大切にし、どこまでこだわれるか。その判断も含めて、ものづくりだと思っています。

どこまでつくれるかより、どこまでやりきれるか。

AIによってできることが増えた今だからこそ、その先へ進もうとする気持ちを大切にしたいです。

登壇スライド扉絵「どこまでつくれるかより、どこまでやりきれるか。」

私たちのチームは、2026年9月に始まったばかりです。まだまだこれから考えたいことも、挑戦したいこともたくさんあります。

UI/UXデザインはもちろん、ブランドづくりも、映像も、店舗デザインも。これまでやってきた領域にとらわれず、もっといろいろなものづくりに挑戦していきたいと思っています。

誰かが考えたものを形にするだけではなく、何をつくるべきかを考えるところから、実際に形にして届けるところまで。職種の枠を越えて、一緒に考え、一緒につくれるチームにしていきたいです。

だからこそ、一緒に働く人たちのバックグラウンドだって、もっと多様であっていい。デザイナーも、エンジニアも、映像をつくってきた人も、空間をつくってきた人も。それぞれの専門性を持ち寄ることで、今まで思いつかなかったアイデアや、つくれなかったものを実現していきたいんです。

そして何より私は、そんなふうに、ものづくりに夢中になっている人たちと仕事がしたいです。

「これ、もっと良くできるんじゃない?」「こんなこともできるかもしれない」と、自分で考えて、試して、また考える。そして、そのこだわりを自分の満足だけで終わらせず、誰かにとっての価値につなげようとする。

そんな人たちと一緒に、まだ見たことのないものをつくっていきたいと思っています。

もしこの記事を読んで、グッドパッチや栃尾のチームが少しでも気になった方がいたら、ぜひ一緒に仕事をしましょう!

新しい仲間はもちろん、一緒にものづくりに挑戦してくださる社外のパートナーも探しています。デザイン会社や制作会社、個人で活動されている方など、関わり方は問いません。

まずはお互いのことを知るところからでも大歓迎です。これまでどんな仕事に夢中になってきたのか、これからどんなものをつくってみたいのか。ぜひお話しできたらうれしいです。

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