UXを起点とする組織の形とは?「Unipos」の3年間から紐解くデザインの影響

Unipos株式会社が提供するピアボーナスサービス「Unipos」は、従業員同士が少額の給与“ピアボーナス”と感謝・賞賛のメッセージを、オープンな場で送り合うことを実現したWebサービスです。
2019年2月にはドイツ・ベルリンのLisk、Goodpatch Berlinで試験導入も開始し、「すべてのはたらく人にスポットライトを」というミッション実現に向けて海外展開を始めています。

Goodpatchは2016年9月から2017年2月にかけて「Unipos」のプロトタイプフェーズを支援し、コンセプトや体験定義などをお手伝いしました。今回はプロジェクトメンバーのUnipos株式会社代表取締役社長 斉藤さん、CXO 矢口さん、Goodpatch UX/Serviceデザイナー 國光と、組織にデザインが定着するまでの過程やプロジェクトを振り返りながら、デザインが組織、ビジネスに与える影響についてお話を聞きました。

Uniposについて

https://unipos.me/ja/

Unipos」とは、少額の給与“ピアボーナス”と感謝・賞賛のメッセージを、オープンな場で送り合うことを実現したWebサービスです。「すべてのはたらく人にスポットライトを」をミッションに、組織を強くする給与体験を提供しています。

感謝・賞賛のメッセージと共に少額の給与“ピアボーナス”を送り合うのはもちろん、オープンなタイムライン上の共感した投稿へ「拍手」することでも、ピアボーナスを送ることが可能です。手軽にピアボーナスを送り合うことで、組織風土の変革、仕事に対するモチベーションアップ、従業員エンゲージメントの向上などに寄与するプロダクトです。

経営陣やビジネスサイドの起点がUXにある

ーー まもなくリリースから2周年を迎える「Unipos」を支える現在のチームについて教えてください。

斉藤さん:
チームは約1年で2倍の規模になりました。現在は開発サイド、ビジネスサイド合わせて約50名おり、開発サイドはエンジニア20名、デザイナー10名の体制です。
チームではデザインスプリントカスタマージャーニーマップサービスブループリントなど、デザインのフレームワークをビジネスサイドも含め全員が使っています。チーム全体で使う言葉もデザインプロセスで使われる言葉に寄せていますね。現在のチームでは、常にUXを起点にセールスやカスタマーサポート、オンボーディングなどを考えているので、オンライン・オフライン問わず、プロダクトの中だけに閉じない体験設計を意識しています。

Unipos株式会社 代表取締役社長斉藤さん

矢口さん:
セールスやカスタマーサクセスといった部門でのチームを縦軸とし、部門横断のユーザーセグメントごとの横軸チームがあります。UXを起点とする複数のチームが存在する為、OKRを導入し、Unipos社のOKRと各チームのOKRが結びつくように設計しています。また、最終的な決定権限を経営層である各最高責任者で分権しており、ビジネスに関しては斉藤が、プロダクトやデザインに関しては私に最終的な決定権限があり、UIデザインや体験設計をデザイナーが決定しやすい土壌があります。

ーー UXを起点とする考え、デザインの必要性を持ちはじめたのはいつ頃でしたか。

矢口さん:
実は「Unipos」の前身となっているのは、私たちの社内で始まった「発見大賞」という社内制度なんです。「数値では成果が見えにくい大切な貢献にスポットライトが当たっていないのではないか」という仮説から立ち上がった制度で、実際に社員の離職率などが大きく改善しました。しかし会社の規模が大きくなっていき、人力での運用が難しくなったタイミングで、新規事業として開発することが決まったんです。

Unipos株式会社 CXO 矢口さん

プロダクト化するにあたって、ピアボーナスを送り合うという機能ではなく、オープンに感謝される喜びや、それによって共に働く仲間や、働く環境に愛着が湧く体験が重要だと思いました。体験設計が尖っていないと面白みがないプロダクトになってしまうと考え、構想段階からUX/UIデザインは重視していましたね。ただ、当時の社内にUXデザインのノウハウがなく、できる人が誰もいないという状態でした。

斉藤さん:
「Unipos」は構想段階から世界で使われるプロダクトを目指していたので「UXの知見がある×グローバルで戦う知見も持っている」パートナーを探していて、Goodpatchさんに相談させてもらいました。元々ブログも読んでいましたし、いつか一緒に仕事が出来たらと思っていたんです。僕たちはノウハウを盗ませてもらおうと、弟子入りのような感覚でした。

一緒に悩み、一歩ずつチームに近づく

國光:
それから斉藤さん、矢口さん、僕たちGoodpatchのチームでプロジェクトが始まりましたね。2016年9月のことです。

Goodpatch UX/Serviceデザイナー 國光

特にプロジェクト初期は一日中議論していましたよね。当時ピアボーナスのプロダクト自体が少なかったので、日本国内で賞賛文化が本当に根付くのか。「Unipos」のコアである送り合う、褒め合う体験のサイクルをどう回すのか。周りから見て気持ちがいいものにするために何が必要なのか。そんなことを一緒に悩みながら、どうにか前進しようと議論していた毎日が強烈に記憶に残っています。

当時の資料を持ってきたのですが、このゴールが定義できるまでにかなり悩み、その過程でひとつのチームになることができたなと思います。

矢口さん:
プロジェクトを通して、私たちが國光さんと本当に1つのチームとなり、深い議論を重ねられたことが有り難かったです。

ーー プロジェクトを通して、どんなプロセスが記憶に残っていますか。

斉藤さん:
國光さんもおっしゃっていますが、うちの会議室にこもっていた初期は正直楽しかったです(笑)。チームの全員が、頭から湯気が上がるくらいプロダクトについて考え続けていた時期でしたよね。

あとは國光さんが「Unipos」におけるコンセプトやコア体験の俯瞰図をまとめてくれたことも印象的でした。現在、社内にはUX定義や戦略をまとめた「UX Brief」というドキュメントが存在します。これは國光さんが当時作ってくださったコンセプトやUX定義をまとめた資料を参考にしながら、矢口がチームに適した形でUX定義や戦略をまとめたものです。

UX戦略などは、できる限り図に起こし、チーム全員でイメージしやすくしました。 このように、50ページほどの細かい前提知識を全てUX Briefで共有しています。また、これをメンバー全員に理解して欲しかったので「このUX Briefを読んでおいてください」と伝えるのではなく、「このUX Briefのレビューをしてください」と定義作りに参加してもらいました。
引用:UXデザイナーが実践するチームデザイン!UX Design Meetup イベントレポート

矢口さん:
Goodpatchさんとの議論を繰り返し、1対1の送り合いではなく「メッセージを他の人にも読んでもらえる」というN対Nの体験に行き着き、それが「Unipos」の特徴になっています。今も導入企業さんにお話を伺うと、その特徴を「ほっこりする」「皆が何をしているか分かるのが良い」と言ってもらえるポイントになっています。新しい市場を作るプロダクトだと思えたのも、そのコア体験に辿り着けた事が大きいです。

その議論と検証の繰り返しの中で、α版ではいろいろ試しましたよね。キャラクターを作って、Botとしてユーザーに話しかけるとか。「憎まれないキャラクター性を出したいけど、色が出すぎると好き嫌いが分かれるよね」と話したり。このGoodpatchさんに作っていただいたキャラクター(下図)、大好きなんですよね。海、山、森、太陽からなる「大自然」という名前なんですけど、今でもUniposのどこかで使いたいと思ってます(笑)。

※プロトタイプ段階で構想に上がった、感謝の循環を表す世界観をまとめた図

デザインを活用する組織として目指す未来

ーー UXデザインを実践することで、お二人や組織におけるデザインの認識は変化しましたか。

矢口さん:
デザイン畑出身のプロダクトマネージャーの自分にとっても、UXデザインって、未経験者が本を読んだ知識だけでは正しく実践できないところがたくさんあると思うんです。私たちはGoodpatchさんと一緒に進められたことで、UXデザインがどんなものなのか、実践ベースで初めて腹落ちした実感を持つことができました。

あとは、デザイナーへの認識も社内でかなり変わりました。元々、デザイナーの仕事と言えば絵作りのような「狭義のデザイン」を担う人という認識でしたが、Uniposのデザインプロセスを通して、体験設計などの「広義のデザイン」も担う人=デザイナーという認識に変わりました。

斉藤さん:
以前は、UXリサーチもUXデザインもなく要件定義を事業長に近いメンバーが行い、その要件を実現するためにエンジニアとデザイナーがいるという構図でした。
この構図になってしまうとデザイナーはオペレーターのようになってしまい辛く、また、作られた要件定義も不確実性の高いものになってしまうという負のスパイラルに陥っていたんです。

UXデザインという新しい職能が社内にできたことで、負のスパイラルが断ち切られ、UXを起点とした適切な役割分担ができるようになりました。Uniposチームがデザインドリブンのチームになるきっかけを、Goodpatchさんに作ってもらったなと感じています。

國光:
矢口さんにGoodpatchとの共催イベントでご登壇いただいたとき、僕たちも見習わないといけない部分が本当にたくさんあるなと思いました。UX Briefというドキュメントで一元管理する他にも、自走するデザイン組織を統率するCXOとしてどんなことを意識されているんですか?

矢口さん:
職能の範囲、業務の範囲を限定しない事は意識しています。Uniposのデザインチームでは「あなたはこの範囲だけをやってください」と分けすぎないようにしているんです。現在デザインチームにはデザイナーが10人いますが、ディレクション専任のメンバーもおらずUIデザインだけUXデザインだけというメンバーもいません。職能の範囲を決めずに、越境し続ける事を推奨しているところは、特徴的かもしれません。

あとは、ビジネス側のメンバーやエンジニアを巻き込んでデザインをしている事ですね。内部オペレーションがうまくいっていない時には、サービスブループリントをビジネス側のメンバーと作るワークショップを開いたりとか、ビジネス側のメンバーやエンジニアと一緒にデザインスプリントで要件作成したり。職能の範囲、業務の範囲を限定しないことで、様々なコラボレーションが生まれ、集合知を作りやすい環境ができていると思います。

ーー 最後に、経営陣としてデザインをどのように活用していきたいか、それぞれ教えていただけますか。

斉藤さん:
「Unipos」はピアボーナスを送り、送られるという体験に価値があるので、リリース当初から一貫して無料版の提供をしていません。これはSaaSプロダクトとしては珍しいことなのですが、現在導入企業様の数は240社を超え、毎月新しいご契約もいただいています。月次解約率は0.5%です。その背景には、現代の働き方の変化が挙げられます。

しかし、どんな国や組織においても「幸せに働きたい・生き生きと働きたい」という軸はブレることはないと思うんです。Uniposがそんな想いを実現できるプロダクトになっていくためにも、賞賛文化が根付いた海外でも「Unipos」の価値を磨き、日本国内ではたらく方々に還元していきたいと考えています。マーケットを拡げるだけではなく、世界中の様々なお客様と触れ合って新しいエッセンスを取り入れたいです。ベルリン支社設立とヨーロッパ進出にはそんな想いで臨んでいます。

UX戦略とは「こういうマーケットを狙いたい」「こんなところに展開したい」というマーケティング戦略と対等に紐づくべきだと考えています。Unipos社にはその認識が全社であるので、とてもいい状態です。プロダクトを展開していくとき、どんな体験を追従させたいのか。ビジネスを進める上で対になる大切なものとして、UXというものを取り扱っていきたいです。

また、現在は組織として掲げるビジョンも構築しています。現在は「すべてのはたらく人にスポットライトを」というミッションがチームの起点になっていますが、ミッション策定時から人数が2倍以上に増えたので、全員が細かいレベルで立ち返るためにビジョンや行動指針が必要だと考えたんです。

ミッションはチームが約20人だった2018年5月、チームビルディングを兼ねたワークショップ形式の「ミッション会」で生まれました。

関連記事:Uniposのミッションをみんなで決めたら凄くエモかったという話

矢口さん:
私はGoodpatchさんと共創する中で教えてもらった「偉大なプロダクトは偉大なチームから生まれる」という言葉が好きなんですよね。良いチームがあって初めて良いプロダクトが生まれると私も思うので、プロダクト作りだけでなく、チーム作り、組織作り、場づくりにもデザインを今後も活用していきたいと考えています。

ABOUTこの記事をかいた人

Kaori Sugimoto

エディターをしています。デザインをもっと身近に感じてもらえるように、色々なコンテンツをお届けします!
  • Goodpatch Blog