未来へ企業の思想をつなぐ。UniposとGoodpatchが紡ぐブランドエクスペリエンスデザイン
企業で働く従業員同士が「ピアボーナス」と「感謝の言葉」をWeb上で送り合えるサービスUnipos。企業のビジョンを「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」と再定義し、Uniposを起点に企業を活性化するための取り組みを続けています。
Goodpatchでは、2017年にコンセプト設計、体験定義、β版UIデザインをお手伝いしたことを皮切りに、2019年 Uniposのドイツ進出時のサービスサイト作成など、節目でデザインパートナーを務めてきました。
そして2020年、ビジョンを再定義し、バリューを策定したUniposのブランドエクスペリエンス(BX)向上のためのプロジェクトをお手伝いしました。2017年より共にUniposを作ってきたメンバーたちに加えてGoodpatchのBXチームを迎え、企業とブランドの関係性、ブランドがどのように作られていくのかについてお話を聞きました。
「スポットライト」を世界中に広げる
ーー Uniposが今回、コーポレートブランディングへの投資が必要だと考えられた経緯を教えてください。
Unipos 斉藤さん
2017年6月にUniposをリリースして、2年半が経ちました。HR周辺の環境は大きく変わり、企業にHR TechのプロダクトをSaaSで導入していくのが当たり前になりつつあります。私たちが追求してきた「すべてのはたらく人にスポットライトを」というビジョンをより広い範囲で実現するためには、従業員の貢献の見える化や賞賛を、もう一段超えて支援していく必要があると考えました。Uniposを起点に、企業をより活性化していきたい。その手段として、2020年2月からは「SDGsプラン」という新しいプランを提供開始しています。
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このような背景もあり、企業ビジョンを「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」と再定義しました。また、ビジョンに対してバリューも策定したのが2019年末のことです。
再定義したビジョンに沿って、我々がどんなところを目指していくべきか、進化の可能性は閉じずに連携を強める必要があると感じ、その中で、コーポレートブランディングの必要性を感じるようになりました。
Unipos 矢口さん
これまでの規模なら、企業の思想は言葉にせずともなんとなく社員に伝わっていましたが、それをしっかり言語化して浸透させ、行動を統一すること。また、Uniposという企業をどう社外に対して伝えていくのか、という部分のデザインを必要としていました。
ですが、そうしたブランディングのノウハウはチームにありませんでした。デザイン組織作りの一環で、外部の専門家との共創を推奨していることもあり、この領域の専門家を探しました。
そこで、Uniposの立ち上げフェーズや、ベルリン進出時のサポートまで並走いただいていた、Goodpatchさんの名前が挙がりました。
https://goodpatch.com/work/unipos
Unipos 斉藤さん
我々の思想を理解していただいているからこそ、変化した部分も含め、捉えてもらえるのではないかと期待がありました。
Unipos立ち上げ時に、Goodpatchの國光さんがUniposにおけるコンセプトやコア体験の俯瞰図を資料にまとめてくださり、我々はそれを「UX Brief」という資料としてアップデートしながらずっと使っていたのです。今のUniposに必要なのは、さらにアップデートした「企業版UX Brief」だと感じました。
https://goodpatch.com/work/unipos
未来までつながる、文化の土壌づくり
ーー 思想の浸透、行動の統一のために、どんなことから着手したのですか?
Goodpatch 國光
Uniposは成長し続けているからこそ、強い組織になるための土壌が必要なフェーズでした。行動の統一を目的に、まずはバリュー浸透の推進力となる経営陣とリーダー層へのアプローチからはじめました。
バリューはこれまでのUnipos内の良い行動から生まれています。そのバリューに紐づいた良い行動を改めて認識し直すことで、日常の業務を行う中で、何を「良い行動」として捉えれば良いのかの認識を合わせ、さらに良い行動の循環を発見できるような土壌作りを意識しました。
バリューを体現する行動が社内に積み重なることで文化が生まれ、その文化がアウターに染み出していくことで価値観が近い同じビジョンに向き合う未来の仲間を引き寄せます。こういった企業活動の中で生まれる内外をつなぐ循環を目指すことを、皆さんにも最初にお伝えしていました。
そして、ビジョンやバリュー浸透のために重要なのは、経営層やリーダーたちが自らバリューを理解し、リーダーとして自らが体現していくことです。そこで、バリューを日常の行動を振り返りながら再解釈し、これからの行動に落とし込む発見機会をつくることを目的として、経営層・リーダー陣を対象にしたバリューワークショップを開催しました。
ワークショップの様子
Goodpatch 米永
2019年12月に行動指針となるバリューができて、2020年1月にUniposのリーダー層の皆さんにヒアリングを行い、バリュー浸透度を認知層・理解層・行動層の3つに分けてみることにしました。これはGoodpatchがバリュー再構築から浸透までを行ったときのフレームを参考にしています。
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ワークショップで皆さんのお話を聞いてみると、バリューがシンプルな言葉ゆえに、「これってバリューらしい行動なのかな」と迷ってしまうなど、理解度と行動の認識にばらつきがあることが分かりました。「無自覚にバリューに沿った行動をしている層」がすごく多かったのです。
Unipos 斉藤さん
印象的だったのは、Bizと開発など異なる仕事をしているメンバーでは、バリューの認識にも違いがあったことです。今ではバリューが共通認識になっていますが、ワークショップの時に「なんとなくこんな行動をしている気がする」という明確にバリューと紐づいていなかった行動を互いに再認識しあえたことは良かったです。その無自覚にしている行動こそ、今のUnipos全体が大切にしていることでバリューそのものなのかもしれない。これから新しい社員が増えても、Uniposらしさを残して大事にしていく種になると感じました。
Goodpatch國光
Uniposさんのバリュー「Dialogue」「Be of Service」はいろんな方向に解釈できるので、社員の皆さんにとっても、これがバリューを体現する行動だと定義するようなアプローチではなく、大事な部分を共通認識にしながらもこれからさらに増えるであろう良い行動を受け入れられる解釈の余白を残しながらバリューを捉え直すようなワークショップの設計を意識しました。
ーー リーダーとの取り組みのほか、Uniposさん社内で行なっている施策にはどんなものがありますか。
Unipos 土屋さん
社内ではUniposを使った「バリュー大賞」という施策を始めました。バリューのハッシュタグをつけて送られたUniposの投稿を、リーダーがノミネートして大賞を選出する仕組みです。
全社員が集まる定例MTG中に発表をしているのですが、リモート下でもTeamsやSlackのコメントで盛り上がっています。
また、毎月バリューの浸透度を計るためのアンケートも実施しています。アンケートのフォーマットなどは、Goodpatchさんの社内で実践されていたナレッジを活用させてもらっています。社内からは「毎月アンケートがあることで、バリューを日常的に意識するきっかけになる」という声もあがっています。また、アンケート結果から、バリューの浸透度や浸透における課題を定量的に見ることができるところも助かっています。
そして、この春に新しく入社した社員向けにバリューの理解を深めるワークショップを設計し、実施しました。
インナーからアウターへ紡ぐブランドの整備
ーー バリューに沿った行動の統一を図ったあと、“Visionmap” “Unipos Journey” “Brand Summary” “Design Guidline”という形でブランドの整備もお手伝いさせていただきました。このアプトプットが生まれる前には、どんな課題感があったのですか。
Unipos 斉藤さん
「どんな行動が良い行動なのか」定義をして、それを浸透していくさまを可視化し、インプットの例をワークショップで提示いただき、今後我々だけでも自走できるようによりどころとなるのが“Visionmap” “Unipos Journey” “Brand Summary” “Design Guidline”でした。Visionmapはすでに新入社員の研修資料にも盛り込まれています。
未来に向けて何かを「残す」ためには、文字だけでも映像だけでもだめで、誰がみても齟齬がない形で正しく参照され続けることってとても難しいですよね。そこを今回、Goodpatchの皆さんが言語化、構造化した上で、Keynoteという形にまとめてくださったことは、このチームならではの大きな価値だと感じました。
Goodpatch 國光
“Unipos Journey”は「こういうのもあった方がいいね」と後から生まれたものなのですが、“Visionmap”は当初からUniposの皆さんが、Uniposという企業が掲げている思想とその背景に立ち戻れる拠り所を作りたいと話していたものでした。そのなかで、斉藤さんが実施されていた入社オンボーディングの資料を見せていただき、それを肉付けしてより強固にしていく形をとったのですが、実際に今、新入社員の研修資料に使われていると聞けて、当初の目的が果たせたと思いました。
Unipos 土屋さん
“Brand Summary” “Design Guidline”については、プロダクトがベンチャーならではのスピード感で成長していて、どんどん開発を進めていく中で、対外的なクリエイティブの監修、基盤の整備が追いついていないことを課題に感じていました。また、Uniposのブランドパーソナリティーには、これまでの歴史や根幹となる理念を繋いで反映することで、よりプロダクトやコーポレートでの外に出していくクリエイティブが統一できると思ったんです。
Goodpatch 米永
Uniposの皆さんが、私たちの手を離れてもそのまま自走するスタンスを取ってくれていたので、初めから「未来に残すものを整える」ことにフォーカスできたことがとてもありがたかったです。
各アウトプットの概要
企業の根幹から染み出すブランド
ーー Uniposさんとのプロジェクトは土屋さんと初めてご一緒させていただきましたが、Goodpatchと仕事をしてみて、いかがでしたか?
Unipos 土屋さん
ひとくちに「ブランドデザイン」というと、最初は採用サイトやコーポレートサイトなど外部発信のアウトプットが多くなるのかなと思っていました。かつそうしたプロジェクトは単体ごとに走っていくものという印象を持っていたのですが、今回のプロジェクトを通して、ブランドデザインとは、企業のビジョン、ミッション、バリューから落ちてきて、アウターに紡がれていくものなんだなと。つなぎこんでいくことでブランドが作られていくことを体験できました。
Uniposにはこれまでブランドデザインの知見がなかったので、私が今回学んだことを社内に発信していくことで、今後は自分たちだけでブランドを作っていけるような企業になれたらいいなと思っています。
また、今回のプロジェクトは途中からリモートになったのですが、Goodpatchの皆さんのSlack上でのテキストコミュニケーションや、いつでもZoomを繋いでいただいたりとか、リモートだけどずっと並走してもらっている感覚でした。このような局面だからこそ、より組織のインナーブランディングは重要になっていくと思います。
Unipos 矢口さん
土屋はすでにデザイナーの視座ではなく、会社全体を見る視座に変わりましたね。前述のバリュー大賞も彼女が推進してくれている取り組みですが、全社を巻き込むコミュニケーションができるようになっていて、とても盛り上がるものになっています。
ーー ブランドデザインの支援は、皆さんにとってどんな意味を持つプロジェクトでしたか。
Unipos 土屋さん
会社の文化ができることで、それをアウターに発信していく良いサイクルができていくと思います。今はインナーブランディングを中心に土台を作っているところですが、今後は対外的なアウターブランディングにも、Uniposの歴史や思想を落とし込んで発信していきたいです。
Unipos 斉藤さん
今までバリューとの接触頻度がそもそも少なかったんですが、バリュー大賞やアンケートを通して、自分で考える機会が増えています。今後は「こんな行動をすることがUniposにとって大事な行動なんだ」とより高い意識を揃えていくことで、さらに良い効果につながっていくので、責任を持ってやりきりたいです。
再定義した「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」というビジョンは、僕自身も壮大なビジョンだと思っています。今やっていることだけではまだまだ足りない。
今後新しい事業が増えても、新しいメンバーが増えても、同じ目的に向かって進み続けるために必要なものがビジョンやバリューだと認識しています。それをメンバー自ら能動的に捉え、考えて、残し続けるきっかけを作ることができたのが、今回のプロジェクトの意味だったのだと思います。
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◆ 株式会社グッドパッチ BXデザイナー
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