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Client
Unipos株式会社
Expertise
Digital Product & Service Design, Brand Experience Design
Date

Overview

Unipos株式会社が開発・運営するUniposは、従業員同士が少額のインセンティブ「ピアボーナス」と「感謝の言葉」をWeb上で送り合えるサービスです。Uniposは「『はたらく』と『人』を大切にできる世界に」というビジョンを掲げ、従業員の貢献・活躍にスポットライトを当てることにより組織課題を解決します。

GoodpatchはUniposのデザインパートナーとして、2017年にコンセプト設計、体験定義、β版 UIデザイン、2019年にドイツ進出時のサービスサイト作成から、その後2020年にバリュー浸透などのコーポレートブランディングをお手伝いしました。

どんなにサービス拡大しても変わらない「コア体験」の可視化

Uniposの立ち上げ期からβ版のプロトタイプ作成まで支援させていただいたGoodpatchは、サービスの思想となるコンセプトの設計、「コア体験」の可視化、UXの定義や戦略をまとめるなどの取り組みを行いました。
Uniposは、「発見大賞」という他の社員の善行を投稿し賞賛し合うという社内制度が前身となっています。
この制度を元にサービス化するという当初の構想から、何をUniposのコアとして価値提供していくのか、企業文化によらず使われるサービスにするためのコアの体験は何かなど、Unipos株式会社 代表取締役社長 斉藤さんとCXO 矢口さんと繰り返し議論を進めていました。

そんな議論の中で研ぎ澄まされて明確化したのは、Uniposはピアボーナス(インセンティブ)を送り合うという金銭報酬ではなく、「オープンに感謝される喜びや、それによって共に働く仲間や、働く環境に愛着が湧く体験」を提供する感情報酬を軸にしたサービスだというコアコンセプトでした。
そのコアコンセプトを実現するために可視化しながら作ったのが善行がトリガーとなって周り出すコア体験のサイクルです。このサイクルは「善行を見つける/受ける」という他のメンバーの善行がトリガーとなっています。その善行が循環し、貢献の見える化/蓄積がされていくことによって、1対1ではなくN対Nで善行が回り続けるというUniposのコア体験を表しています。Uniposがどんなに拡大しても変わらないコアとなる部分を発見し可視化することにより、チームの中で共通認識を築きました。

このコア体験の可視化について、CXO 矢口さんは次のように語ってくださっています。

「Goodpatchさんとの議論を繰り返し、1対1の送り合いではなく『メッセージを他の人にも読んでもらえる』というN対Nの体験に行き着き、それがUniposの特徴になっています。今も導入企業さんにお話を伺うと、その特徴を『ほっこりする』『皆が何をしているか分かるのが良い』と言ってもらえるポイントになっています。新しい市場を作るプロダクトだと思えたのも、そのコア体験に辿り着けた事が大きいです。」

引用:UXを起点とする組織の形とは?「Unipos」の3年間から紐解くデザインの影響

Unipos CXO 矢口さん

意思決定の度に立ち戻る場所、UX Briefの原型

Goodpatchがお手伝いした後にCXO 矢口さんが組織全体で運用していたUX Briefは、Uniposの体験やコアの価値をまとめた資料です。Uniposに携わる全ての人が意思決定に迷った時に立ち戻ることができ、新しく入社したメンバーも、このUX Briefに目を通すことでUniposの起点となるコア価値を見つめ直すことができます。

このUX Briefの原型となったのが、Unipos立ち上げ期に作っていた「Creative Brief」という一連の意思決定やプロセスがまとめてある資料です。Goodpatchが組織から抜けた後も意思決定の記録を残すことで、メンバーが増えたとしても、どのような思想で何を大切にして作られたのか簡単に立ち戻れる環境をつくりました。

このUX Briefについて、代表取締役社長 斉藤さんは次のように語ってくれています。

「あとは國光さんがUniposにおけるコンセプトやコア体験の俯瞰図をまとめてくれたことも印象的でした。現在、社内にはUX定義や戦略をまとめた『UX Brief』というドキュメントが存在します。これは國光さんが当時作ってくださったコンセプトやUX定義をまとめた資料を参考にしながら、矢口がチームに適した形でUX定義や戦略をまとめたものです。」
引用:UXを起点とする組織の形とは?「Unipos」の3年間から紐解くデザインの影響

Unipos 代表取締役社長 斉藤さん

このとき生まれたUX Briefは、その後2020年にUniposのインナーブランディングとアウターブランディングの支援を行うBX(ブランドエクスペリエンス)デザインのプロジェクトにも繋がっています。

「未来に向けて何かを「残す」ためには、文字だけでも映像だけでもだめで、誰がみても齟齬がない形で正しく参照され続けることってとても難しいですよね。そこを今回、Goodpatchの皆さんが言語化、構造化した上で、Keynoteという形にまとめてくださったことは、このチームならではの大きな価値だと感じました。」

引用:未来へ企業の思想をつなぐ。UniposとGoodpatchが紡ぐブランドエクスペリエンスデザイン

ヨーロッパ進出を現地で支援

すでに日本のマーケットで多くのユーザーに活用されていたUniposでしたが、2019年2月にはUnipos社の子会社をドイツ・ベルリンに設立し、ヨーロッパマーケットに進出しました。その際、ドイツにオフィスを構えるGoodpatch Berlinがサービスサイトのデザインを支援しました。ここでは「ヨーロッパの顧客を魅了するために、どのようにUniposの価値提案を届けるのか?」という課題にアプローチしていきました。

新しい市場への参入を成功させるための第一歩は、その地域の文化や価値観を理解することです。日本とは文化やコミュニティが大きく異なる環境であるため、フィードバックシステムなどは、各地域・産業・企業文化に沿ったものにローカライズする必要があります。

そこでGoodpatch Berlinでは、3週間かけて市場調査とユーザー調査を徹底的に行い、ヨーロッパの顧客に関する幅広いインサイト(洞察)を収集しました。その後、組織のレベル(人事、管理職、従業員)ごとにペルソナを作成し、ユーザージャーニーにマッピングすることで、各役割のニーズとペルソナ間の相互作用を理解していきました。

これらのインサイトを活用して、Uniposのポイント設計や製品と市場の適合性、価値の再定義をして、Uniposヨーロッパ事業のためのサービスサイトのデザインを支援しました。

参考:Goodpatch Berlin 実績紹介ページ

文化を醸成する土台づくりからスタートしたコーポレートブランディング

立ち上げ期を支援した2016年から約4年間で、Uniposは急速に成長しました。この組織拡大フェーズにおいて、コーポレートブランディングをお手伝いしています。成長し続けている状況だからこそ、顧客や未来の仲間のためにも現在のメンバーがUniposらしさを継承し続けていけるような強い組織の土台づくりが必要でした。そこで、新たに制定されたUniposのビジョンと行動指針となるバリューが組織に浸透するための仕組みづくりを支援させていただきました。

バリュー浸透を促進する初期フェーズで大切なことの一つが、経営層・リーダー陣がバリューの理解を深め、バリューを体現する行動を取ることです。そこで、バリューを再解釈し日常の行動に落とし込む発見機会をつくることを目的として、経営層・リーダー陣を対象にしたバリューワークショップを開催しました。

その結果見えてきたのは、バリューを無意識的に体現している人は多いが理解・意識しての行動はまだできていないということでした。そのため、組織としてしっかりとバリューを理解した上での行動を増やし、組織に「良い行動」が増えるような仕組みへとつなげていく必要がありました。

バリューを体現する組織に向かう仕組みづくり

目に見えないバリューをどう捉え浸透させていくのか、どんな状態が浸透したといえるのかわからない状態では、強い組織の土台を作ることはできません。そのため、バリュー浸透の意義や効果を循環させるサイクルを定義し、それを促進する施策と浸透状態を図る指標を定義しました。

バリューを体現する人が増えると、組織に良い行動循環が生まれ、その結果事業や企業の成長へとつながります。更に、良い行動を積み重なることで強固な文化が形づくられ、企業文化が外部に染み出していくことで未来の仲間を引き寄せます。
こういった効果をしっかりと意識しながら、インナーブランディングとしてのバリューの浸透に取り組んでいきました。

バリュー浸透を促進していく上で、浸透状態がわかることは非常に大切です。そのため、バリューに対するメンバーの状態を「認知・理解・行動」と定義し、バリュー浸透を図る指標としました。そして、社内の全員に対して定期的にバリュー浸透アンケートを回答してもらい、浸透度を定量的に測る仕組みを構築しました。

また、バリュー浸透のサイクルを反映したインナーブランディングの施策として「バリュー大賞」という取り組みも生まれました。バリュー大賞とは、冒頭でもご紹介した「発見大賞」というUniposの原型にもなった他薦MVP制度から生まれており、バリューを体現した行動をする→良い結果として可視化する→賞賛される→ロールモデルが増える、という良いサイクルを循環させることが目的にあります。自社内で利用しているUnipos上にある、バリューのタグがついた投稿のうち、特にバリューを体現した人が表彰される制度です。

組織への貢献が見える化され、良い行動が自然と循環していく、Uniposというサービスを体現するような素晴らしい制度が誕生したのです。

次に、「認知・理解・行動」というそれぞれの状態を深めたり、次の状態に移行させるための施策を洗い出しました。以下の図の付箋一つひとつがバリュー浸透施策のアイディアです。アンケートからフォーカスする状態を定め、浸透状態によって色分けされた付箋で実行コストと効果を可視化できるようマッピングし、実行する施策を選定していきました。

Goodpatchのインナーブランディングは、バリュー浸透などの一時的なゴールを目指すのではなく、クライアント企業の皆さんが自分たちの手でカルチャーをつくるための仕組みや文化を残すような支援を行っています。

Goodpatch自身も、離職率40%という組織崩壊の状態からバリュー浸透施策を通じて数%まで数字を向上させ、組織を土台から再構築した経験があります。この経験をしっかり分析し仕組み化することにより、組織崩壊を経験したGoodpatchだからこそできる再現性のある形でのインナーブランディング支援を行っています。

拠り所となるブランド整備

ワークショップや施策実施といったインナーブランディングを通じて、組織のバリューに沿った行動の統一を図ったあとに、アウターブランディングの土台づくりにも取り組みました。企業としての発信をこれから増やしていくにあたって、まずは、企業のカルチャーや取り組みを発信する際にメンバーが拠り所にして立ち戻れる場所をつくりました。

ブランド整備を一緒に行ったUniposのデザイナー 土屋さんは当時の課題感をこのように振り返っています。

「プロダクトがベンチャーならではのスピード感で成長して、開発を進めていく中で、対外的なクリエイティブの監修、基盤の整備が追いついていないことを課題に感じていました。また、Uniposのブランドパーソナリティーには、これまでの歴史や根幹となる理念を繋いで反映することで、よりプロダクトやコーポレートでの外に出していくクリエイティブが統一できると思ったんです。」

そうして生まれたのが、Uniposの価値観をまとめたVision Map、Unipos journey、Brand Summary、Design Guidlineです。

Vision Map
組織で明文化、共通化されていなかったビジョン/ミッション/バリューをまとめたもの。バリュー浸透のための土台を作る一貫として作成。ビジョン/ミッション/バリューの意思決定プロセスやその言葉にどんなストーリーが乗っているのかを含めてUniposの思想が詰まったドキュメントになっています。現在、Vision Mapは新入社員研修でUniposのストーリーを語り継ぐためにも活用されています。

Unipos journey
創業ストーリーから遡ってUniposの歴史を振り返るもの。今のUniposを形作る過去の出来事を、創業メンバー、広報を含むメンバーから幅広く募って作成。Vision Mapと Unipos journeyを見るとUniposが何を大切にしてきたのかを追体験できます。

Brand Summary
Uniposのブランドパーソナリティ。ブランドカラーがなぜその色なのか、ロゴに秘められたストーリーなどを整理したもの。組織とデザイナーの共通言語をつくります。

Design Guidline
Uniposらしい一貫したデザインを実現するためのガイドラインです。トーン&マナー、クオリティライン、レギュレーション等、デザイン作成のための具体的なルールとガイドが掲載されています。

このロゴの成り立ちやブランドカラーは、Goodpatchが立ち上げ期にβ版のUIデザインやロゴデザインから一貫して携わっていたからこそ意味を現在に繋げていくことができました。新しくつくり変えるのではなく、Uniposのこれまで辿ってきた歴史を深く理解し、Unipos内部からでは近すぎて言語化できていなかった部分を再発見することで、Uniposに元から存在するストーリーをつなぎ合わせました。

また、デザイナーがトーン&マナーを考える時に使える、Visual Mood Mapも作成。
Uniposは、サービス広報に注力していたところから企業広報に展開していくため、サービス以外のアウトプットも多様になっていくことが想定されるタイミングでした。そこでVisual Mood Mapでは目的やシーンに合わせてトーン&マナーの幅を調整できるよう、カジュアル、フォーマル、ヒューマニティという3軸の上に参考となるクリエイティブを配置。「今回のアウトプットはこのあたりを目指そう」と共通認識を獲得できる場づくりを行いました。

プロジェクトを通じてUX文化を残す

Uniposは社内で「カスタマージャーニーマップ」や「サービスブループリント」などの手法や言葉が当たり前のように飛び交い、顧客視点で日々議論が行われています。当たり前のようにUXの手法や顧客体験の観点が職種を問わず浸透している様子は、理想的なユーザードリブンな組織。

文化の礎には、初期からUnipos社内でCXO矢口さんが普及し活用していたというUX briefがあり、それを共通言語としてしっかりと浸透させてきたUniposの皆さんの顧客を中心に考える「Be of Service」な文化が感じ取れました。

と、2016年のβ版立ち上げ支援と2020年のブランド構築に携わったGoodpatchのUXデザイナー國光は語ります。

色々な観点を持った人が対話できるように、共通言語となるものを可視化し、同じものを見て話すことはデザイン組織に必要な観点です。UX Briefを通じて、デザインという一つの文化を残すことができました。CEO斉藤さんはこのように語ってくださっています。

「UXデザインという新しい職能が社内にできたことで、負のスパイラルが断ち切られ、UXを起点とした適切な役割分担ができるようになりました。Uniposチームがデザインドリブンのチームになるきっかけを、Goodpatchさんに作ってもらったなと感じています。」

Goodpatchは「デザインの力を証明する」というミッションを掲げています。これからも事業立ち上げ、プロダクトのグロース、組織構築など多様な企業フェーズでデザイン支援を強化し、デザインの力でビジネスを前進させていきます。

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