この記事は、「ReDesigner for Student 後輩に贈るデザイナー就活応援 Advent Calendar 2022」の23日目の記事です。

 

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こんにちは!Goodpatch UIデザイナーのmineです。

私の働いているGoodpatchは、デザイナーのキャリアをデザインするサービスReDesigner / ReDesigner for Studentを運営していたり、長年新卒デザイナーを採用していくことにポリシーをおいている会社でもあります。私自身も2019年に新卒で入社後、今年で4年目を迎え、今まで様々な経験をさせていただいている今日です。

そんなGoodpatchはデザイナーのキャリアに寄り添う活動の一環として、各大学でのセミナーを行っております。今回は、私の母校である東北芸術工科大学で、これからデザイナー就活をする学生さんに向けてお話をさせていただきました。

デザイナーという仕事をすることで感じたキャリアの作り方や、ファーストキャリアの選び方。様々な経歴をもったデザイナーがたくさん在籍しているGoodpatchだからこそ話せること、きっと学生さんを含めたたくさんの人が悩みながらも進んでいけるようなセミナー内容を今回記事にしましたので、ぜひご覧いただけると嬉しいです!

良いUI(ユーザーインターフェイス)は“ユーザーにとって”自由

そもそも良いUIとは?

いきなりですが、みなさんは良いUIとはどんなものだと思いますか?

・美しいもの?

・使いやすいもの?

・無料なもの?

・早くてスムーズなもの?

きっとみなさんそれぞれが普段使っているお気に入りのアプリケーションは上記に加えてたくさんの要素を持っていると思います。

では逆に、みなさんが思う良くないソフトウェア、良くないUIとはどんなものですか?

・お金がかかるもの?

・広告ばかりなもの?

・機能が多すぎるもの?

・文字が多すぎるもの?

東北芸術工科大学の学生さんにもこの質問と同じものを投げかけました。

答えてくださった学生さんからは「やりたいことにたどりつけない。やりたい機能を探せない」だったり「同じことをもう一度やりたい時にやり方を忘れてしまうほど複雑」という回答をいただきました。

みなさんが思い思いの「良くないUI」を話してくれるたびに会場から「うんうん」という頷きで溢れました。

UIはどうあるべきなのか

ここで良くないUIの代表例と個人的に自分が考えているものを、皆さんが一度は見たことがある飲食店などの注文パネルのUIを例に紹介しました。
もちろん目的や環境によってこれらは一概に「良くない」と言い切れるものではありませんが例として

・注文の目的(飲食する)ことよりも前にそれを行う環境(お持ち帰りか店内か)のボタンのみが表示されていて、商品を最初に見たり選んだりすることができない

商品を選んだあとに食べる場所を変更することができない

・変更する場合には最初の画面に戻らなければいけない

という部分を上げてみました。確かに店で食べようと商品を選んだけれど、家の用事を思い出し持ち帰りに変更するというようなユースケースはないとは言い切れません。
このような時に変更する手間が多ければ多いほど私たちは「使いにくい」と感じてしまうのかもしれません。私はこのような課題のあるUIを例にしながら、良くないUIは自由が利かないものなのではないかと考えました。

 

人間はもっと曖昧で複雑で、決まった何かを失敗なくこなすことを得意としません。ですから人間とソフトウェアの接点となるUIはそのような曖昧さに寄り添える状態が良いのではないかと考えています。言い換えると良いUIというのはユーザーにとって自由なものだと考えることができます。

・人は優柔不断ですぐには選べないのだから、途中で変更できるようにしよう

・人は失敗をしながら生きていく生き物だから不完全さを受け入れて、やり直せるようにしよう

・人は繰り返し使うことで慣れていくからこそ、いつも同じ振る舞いがなされるものでいよう

このようなことを常にテーマとして、私たちUIデザイナーは日頃プロダクトと向き合っています。

“作り方”を考える

自由は自由な作り方で作られる

では、人の不完全さに寄り添うような自由(良いUI)はどうやって作られるのでしょうか。

私の考えでは、「自由は自由な作り方で作られる」と考えています。

代表的な開発プロセスの中でウォーターフォールと言われるプロセスはプロダクト全体の仕様を決め切りながらバトン形式で受け継がれていくため、複雑なソフトウェアを作る際には後工程のプロセスが徐々に身動きが取れなくなっていく現場が多くあります。
これに対して、アジャイルと言われる開発プロセスでは機能単位にリリースまでのプロセスを踏むため、小さな単位で思考と手戻りをすることができるので比較的進路変更の身動きが取りやすいプロセスになっています。


重要な体験(Minimum Viable Product)を定めミニマムなプロダクトから徐々にパワーアップしていくようなプロダクトの作り方は最重要目的から思考できるのもメリットの一つかもしれません。

基本的に線形のウォーターフォールプロセスは前述の通り、後工程のプロセスになればなるほど身動きが取れない場合が多く現場で見られます。そして後戻りの意思決定も難しく、手戻りする場合は一番最初に戻るという選択肢が出てきたりします。デザイナーとしてあらゆるプロセスでのプロダクト開発を経験してきましたが、経験上アジャイルのような柔軟性のあるプロセスで進める方がソフトウェアを作るという文脈には合っていると感じています。

このように良いものづくりのプロセスは

・小さく作って検証を回して進めていける

・検証する小さい単位で手戻りが許される

・小さく戻れるので振り出しに戻ることを極力抑えられる

・ブラッシュアップの回数が多くなるのでクオリティも上がる

がポイントとして考えることができます。

一方で良くないと思われるものづくりプロセスは

・途中で変えられない

・一番最初からやり直さなければいけない

・一発で作らないといけないのクオリティが上がらない

というポイントが対照的に挙げられると思います。

これらのポイントは前節で記載した「良いUI、良くないUI」の条件にぴったりとハマっていたりするのです。良くないプロセスというのは良くないソフトウェアの状態と一緒であり、良いプロセスは良いソフトウェアの状態と一緒だと考えることができます。

作り方がアウトプットの姿を形づくる

1967年にアメリカのコンピュータープログラマーのメルヴィン・コンウェイが提唱した「コンウェイの法則」では組織がソフトウェア開発をする際にその組織のコミュニケーション構造と同じ構造の設計が行われてしまうという法則を説明しています。

コンウェイの法則から読み取れることは良いモノづくりのためにはそのモノづくりプロセスもデザインされていく必要があるということだと思います。
そのため、私たちデザイナーはプロダクトだけではなく組織にも向き合いデザインプロジェクトを推進していく必要があるのです。ソフトウェア開発で良く言われる「上流」というのは意思決定プロセスの上位レイヤー(経営層レイヤー)を指すことが多いですが、「プロダクトが表象する形に最も影響するレイヤー」と考えてみることで単に5段階モデルの下部という認識から解像度を上げることができます。

このようにどのような姿勢でモノづくりを推進していくかとその思考はそのアウトプットに多くの影響を与えます。良いアウトプットや成果を目指すためには、作り方もデザインされる必要があるのです

自由なキャリアを作ること

キャリアとしてのウォータフォール型プロセス

良いUIとは?という純粋な疑問から良いモノづくりというテーマでこれまで進めてきましたが、ここからが本題になります。

「良いモノを作るなら、作り方もデザインされていく必要がある」ということは単にソフトウェア開発だけに限られたモノではなく、人生においても同じことなのではないかと私は考えています。

これから就活を考えていくときに

・就活で今後のキャリアを1つに決めなければいけない

・せっかく今まで大学で積み上げたことがあるから違う分野にいくなら、全て振り出しに戻る必要がある

と思ってしまい、なかなか就活に対してのモチベーションが上がらないことが多いです。ですがそれらは前節で記載した通り、自由のない、身動きが取りづらい人生の作り方と似ている気がします。

私たちは、自由な人生を構築していくためのキャリア選択の思考をもっと自由に考えて取り組めると良いのだと考えています。何かを決定づけるのではなくもっと欲張りに物事を選択していくことが重要です。

アジャイルで考えるキャリア形成

私たちは今までたくさんの経験の中で多くのことを学んで、多くのことへの興味を獲得してきています。東北芸術工科大学の学生さんたちも作品制作やその先の効果に対して興味はとても強く、素敵なWILLを持っている方がたくさんおられました。
一方で、それが好きでそれを一生懸命にやってきたという行動から、それだけしか進路になり得ないという固定観念に苦しんでいる方達もいたように思います。
これからのキャリア選択において自分の固定観念を外した状態でより自由に行動できると良いと感じています。
その上でアジャイルという考えを人生設計の作り方にも当てはめながら考えてみると、よりクリアに設計できると考えています。

アジャイルで人生を考えるということは、人生を小さな単位に区切って行動してみるということです。例えば入学したい大学を決めたい時は、これまでの行動を踏まえた上で次に挑戦したいトピックを決める作業ですし、大学を卒業して次のキャリアを決める時もこれまでの行動から次に集中したいトピックを決めることです。なので就活はこれまでの人生の集大成として会社に受かる!ということではなく、今まで学んできたことから次に集中したい。人生で使える時間でより多くの時間を割きたいトピックを決める作業であると考えられるのではないでしょうか。

経験の掛け算でオリジナルになっていく

また、人生において経験をより多く獲得することが重要です。1分野を極めるためにも1分野だけのみでの経験ではなくそれ以外の分野から輸入できるスキルも多くあります。より幅広い経験から掛け算してクリエイターとしてもオリジナルになっていきます。

そして「経験をたくさんする」という観点で考えると人生を小さく区切り、アジャイル的に行動してみることの相性が良いことがわかります。小さく次の集中したいトピックを選び行動していくことで幅広い経験をすることができます。

さいごに

もっと欲張った生き方だっていい

力をかければかけるほど、好きであれば好きなほど、それ以外の選択肢は内容に考えてしまいがちですが、好きなモノはいくつあってもいいですし、複数のことに力をかけながら人生を作っていくことにも十分メリットはあります。

そして自由な思考から生まれた行動の結果、自由な人生が構築できるかもしれません。私たちはものを作るときに意外にも「考え方」という部分が大きく影響しているのです。

人生をアジャイル的に考えることでより自由で身動きが取りやすい人生設計の方法も思考の手札として持っておいてもいいかもしれません。
そして、このような思考は普段からアジャイル開発をしている組織では、すんなり受け入れられたりします。ですから、今回の記事の内容に共感をしていただける方はソフトウェアデザイン・開発をする会社をファーストキャリアに選ぶことを検討してみてくださいね。

あなたの力を発揮できる場所がこの分野には必ずあります。

デザイナーの数だけキャリアがある

今回の登壇で話す内容を考えていた際に、学生のキャリアをちゃんと人生として向き合い、何が伝えられるか?ということをずっと考えていました。私自身も新卒4年目でまだまだ若手とはいえ、就活時代の自分を着々と忘れてしまっている部分があります。なので今回はより多くの体験をもとに内容を作ろうと社内のデザイナー数人にキャリアの作り方や、デザイナーになった経緯などをインタビューをしながら話の骨子を作っていきました。

ずっと紙モノのデザインを大学で学び、PFにはUIの作品はほぼ一つも載っていなかった自分が、こうして今もソフトウェアデザインの世界にいる。それは、この分野のデザインが面白くて仕方ないと近くで言っていた友人のおかげでもあり、ポンコツな一年目を諦めずに指導してくれた先輩社員のみなさんのおかげでした。そしてなにより、この道に進もうと思い切った自分の一歩に、今は盛大な拍手をしたいです。

この記事の内容は、今までの私の軌跡とインタビューした複数人のデザイナーの軌跡から出来上がりました。協力していただいたGoodpatchのデザイナーの方々、東北芸術工科大学の酒井先生、当日参加していただいた学生の方々、本当にありがとうございました。

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Goodpatchでは、毎年新卒デザイナーの採用を行っております!新卒採用以外にも学生の長期インターンやデザインプロセスを体験できるインターンなども継続的に実施しております。現在の開催場所は必ずしも東京であることは無く、リモートでの採用からインターン参加までをすることができるので、こちらの記事で共感してくださった学生の皆さんはぜひ下記の新卒採用情報リンクをご覧ください!

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