ビジネスパーソンとして、自分自身の成長を求めている人は、「仕事で成果を出して成功したい」という思いがあるはずです。しかし、何を持って成功したと言えるのか、わからなくなってしまう時もありますよね。
そうした考えに取りつかれると、仕事の効率やモチベーションが下がってしまったり、自分自身の成長の妨げにもなりかねません。
そこで今回は、優れた体験を提供し、ユーザーに長く愛され、成長し続けているサービスやアプリ、プロダクトを生み出した企業の代表や、デザイナーの思想に触れられるおすすめ本をご紹介します。
ビジネス本ではなく、エッセイやコラム風で読みやすい本中心なので、休日にリラックスして読むこともできますよ。
目次
ベストセラーをまとめ読み
1.エッセンシャル思考
この本はロングセラーなので、本屋で見かけたり、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
著者のグレッグ・マキューン氏は、シリコンバレーでコンサルティング会社を経営するCEOです。Apple、Facebook、Twitter、LinkedInなどの有名企業にアドバイザーとして関わっています。
「エッセンシャル思考」とは、自分にとって大切なことだけにフォーカスして選択する思考術です。仕事面だけではなく、自分の人生をどう生きたいか考えさせられる内容となっています。
著者がエッセンシャル思考にたどり着いたきっかけのエピソードが、本書の冒頭で登場します。妻の出産に立ち会い、娘が生まれたばかりの彼に、同僚から電話がかかってきたのです。「これからクライアントとミーティングだが、来られるか?」という内容でした。彼は悩みますが、ミーティングに参加することを選びます。急いで現場に行くと、同僚は彼に感謝の声をかけますが、クライアントに「人生の大事な瞬間に、君は何をやっているんだ?」と呆れられます。周りの人間の機嫌を取りたいあまりに、自分の大切なものを犠牲にしたことに気づいたというエピソードです。
本書では他にも、著者の様々な体験談が登場し、どのエピソードからも「人生で本当に大切なものは何か」という本質に迫るメッセージングが感じ取れます。
現状を打破して成長したいビジネスパーソンに、強くおすすめしたい一冊です。
2.ビジョナリーカンパニー
本書は、いずれ自分で会社を立ち上げたいと考えているビジネスパーソンや、経営者におすすめです。シリーズ第1作となる本書では、「時代を超える生存の原則」として、長い間トップに君臨し続ける企業の理由を紐解きます。アメリカの大企業のCEOからアンケートを取り選ばれた、18社の企業カルチャーやルール、歴史を丁寧にレポートしています。ひとつひとつの企業のストーリーが、膨大なデータを元に展開される本です。
第三者の視点で説明されるので、まるで大企業に潜り込んだような気分で読み進められます。企業の事例から、組織や集団のあり方を考えることができるので、社会人になったばかりの人が読んでも得るものが多いのではないでしょうか。
アンケート対象がアメリカであることから、メインで取り上げられるのはアメリカや外資系企業が多いです。しかし、18社の中にはソニーも入っているため、参考にできる点も多くあると思います。
本書では、先見性がある企業、つまり「ビジョナリーカンパニー」の定義をいくつか示しています。特に興味深いのは、最高経営責任者(CEO)が交代しているという共通点です。本当に優れた企業には、一人のカリスマ的存在よりも仕組みが大切だということです。CEOが注力するべきは、企業が持続可能な組織としてあり続けられることだという主張は、データに基づいているためとても納得感が持てました。
1995年に発売されているため、古く感じる点もあるかもしれませんが、ベストセラーだからこそ、取り入れられる知識を探してみてくださいね。
商品開発、企画を学ぶ
3.あのヒット商品のナマ企画書が見たい!
企画書とは、社外秘であることがほとんどですよね。しかし、売れ筋の商品やアプリ、事業に対して「どんな企画書を作ったんだろう」と気になった経験はありませんか?
本書では、そうした疑問に答える形で、20のケースと企業がまとめられています。2005年に刊行された本なので、取り上げられている商品は2017年現在の最先端というわけではありません。しかし、企画書の実物を見られる機会は意外と少ないので、チェックしてみると、ビジネスシーンで役立てられそうです。2013年には「新・あのヒット商品のナマ企画書が見たい!」という第二弾も出ているので、休日にまとめて読んでみたいですね。
本書から学んだことを活かして、友人や家族に企画書を見せ、休日のプランを提案してみてはいかがでしょう。いつもより、クリエイティブな休日の過ごし方ができそうです!
紹介されている商品のひとつに、auのINFOBARがあります。INFOBARシリーズを手がけた深澤直人氏は、プロダクトデザイナーとして幅広いプロダクトのデザインを手がける人物です。ファンが多く、いつの時代にも売れ筋の商品を生み出すデザイナーである深澤氏のデザインもまた、観察と調査に基づいたものが多いです。当ブログでは、以前にも彼のプロダクトについてご紹介しています。ぜひご覧ください。
4.コンセプトのつくりかた
著者の玉樹真一郎氏は、任天堂の「Wii」の企画、開発を担当した人物です。プログラマーとして任天堂入社後、プランナーに転身した彼は、Wiiのコンセプトワークに初期段階から携わり、さらにハードウェア、ソフトウェア、ネットワークサービスを横断的に担当し、「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれているそうです。その結果、Wiiは世界中でヒットし、世界で9500万台を売り上げています。
コンセプトを作るとは、どういうことなのでしょうか。玉樹氏は現在は任天堂を退社し、個人事務所を立ち上げ、コンサルティングや講演を数多く行なっていますが、本書からも彼のコンセプトづくりの信念を知ることができると思います。企業にいると「良い企画を出して」という言葉を時々耳にしますよね。しかし、企業にとっての「良い」は、ユーザーの「良い」とイコールであるとは限りません。新しいから良いはずだ、など目先のことに囚われたコンセプト設計をすることで、短期的に売上を上げることはできるかもしれません。しかし、コンセプトとは、世界を良くすることが前提にあるのだと本書は伝えています。長期的に愛され続ける商品こそ、企業に本質的な利益をもたらすのでしょう。そして、そうした商品を支えているのが一貫したブレないコンセプトなのです。
休日に、時間を気にせずゲームをするのも幸せですが、本書の開発ストーリーを読んでから体験することで、仕事に繋がる気づきが得られるかもしれませんね。
デザインを学ぶ
5.ジョナサン・アイブ
ジョナサン・アイブ氏は、iPod、MacBook、iPhone、iPadなど、Apple製品のデザインを手がけてきたデザイナーです。彼はスティーブジョブズによって、最高デザイン責任者という役職を与えられていることはご存知でしょうか。
Apple製品には、多くのファンがいますよね。先日iPhone Xが日本で発売され、Apple Storeでの行列を目にしたことも記憶に新しいです。なぜ、そこまで人々はApple製品を求めるのでしょうか。「使い心地がいいから」「持っているとかっこいいから」など、答えは様々だと思いますが、本質的な理由はアイブ氏のシンプルなデザインに裏打ちされていることは間違いありません。
本書では、アイブ氏の生い立ちから学生時代、そしてApple入社後の数多くの製品デザインのプロセスを紹介しながら、彼の思考やデザイン哲学を紐解きます。約40点のデザイン画や、iPhoneのプロトタイプの写真なども収録。
世界中から絶大な支持を得る製品を作り出した企業には、デザインの力がどのように作用していたのか。なぜ、デザインが必要とされるのか。その答えを知りたい人はぜひ本書を手にとってみてください。
6.センスは知識からはじまる
著者の水野 学氏は、クリエイティブディレクターとして様々な売れ筋商品を手がけています。熊本県の「くまモン」や、NTTドコモの「iD」のロゴなど、どこかで一度は水野氏の作品を目にしたことがあるでしょう。
水野氏は企業のブランディングから、企画や展示のアートディレクション、グラフィックデザインなどを手がける傍ら、慶應義塾大学の環境情報学部で特別招聘准教授として教鞭を執っています。そこで講義の後に学生と話していると、「センスがないと斬新なアイデアは生まれない」「自分には水野さんみたいなセンスがない」という声があり、多くの人にはびこる「センス問題」に気がついたそうです。
この本では「センスとは、限られた人に備わった特別なものではない」と繰り返し主張されます。そして、日常のあらゆる場面、例えば本屋での過ごし方を変えるだけでもセンスは磨かれると教えてくれます。
私たちは仕事で企画を考える際に、ついインパクトの強い斬新なアイデアを求めてしまいますが、ビジネスを成功させるために必要なのは、狙ったターゲットに届けるためのアイデアです。つまり、売れる商品や企画には、ターゲットが求めていることを想像する力や知識が必要で、それこそが「センス」だというのが水野氏のメッセージです。
本書は、水野氏の視点で書かれているので、読みやすい文体です。さらに、1テーマごとに区切られているので、休日に読む本にぴったりです。更なる成長を目指すなら、ビジネスパーソンとして、センスを備えておきたいですね。
7.デザインの骨格
著者の山中俊治氏は、プロダクトデザイナーとして幅広いモノをデザインしています。みなさんが毎日利用している、Suicaの改札機の原型を設計したデザイナーも彼なのです。「デザインの骨格」は、同じ名称の彼のブログを、本として再編集したものです。
山中氏がデザインした改札機は、Suicaをかざす面が少し傾いて斜めになっています。
最初から傾いたデザインが提案されていたのではなく、開発段階で行われた実験からデザインが導き出されています。
いくつかのデザインのパターンを用意して実験を行なったところ、改札機で「Suicaをかざす」という行為を理解してスムーズに行えるユーザーはほとんどいなかったと言います。しかし、「手前に傾いていて、光っている」ことで、多くのユーザーがSuicaをかざすことを理解したのだそうです。実験で行動を観察して生まれたデザインだったんですね。
このように、山中氏のデザインでメインとなるのはユーザーの調査や観察で、具体的な絵を描いたり、装飾をするのはプロセスの後半の段階なのです。
「デザイナー」という肩書きからは、アーティストのような姿を想像してしまいますが、こんなデザイナーがいるんだな、という気持ちで本書を読んでみると、新しい知識を得ることができると思います。これからのビジネスにおいて事業を黒字化するためには、ターゲットとなるユーザーの行動を観察したり、調査や実験を徹底的に行い、本質的に「欲しい」と思ってもらうことが求められると思います。そんなデザイナーの視点を学ぶために、本書を読んでみてはいかがでしょうか。
ブログの再編集版なので、1章ごとに完結しています。読みやすい文体も、読者というユーザーのことを考えて書かれた本なのかもしれませんね。
成長したいビジネスパーソンのためのおすすめ本をセレクトしました。いかがでしたか?
休日に読んでも、リラックスしたままで楽しめる本が中心なので、ちょっとした時間を見つけて読んでみてもいいかもしれません。
休日は、自分と向き合うことができる貴重な時間です。読書を通じて、仕事へのモチベーションや、取り組むべきところが見えてくると思います。
今回ご紹介した本たちは、いずれも一流の企業や商品について書かれています。7冊の本の中から、人生の糧になるような言葉を見つけてみてくださいね。