全国各地で桜の開花宣言が発表され、春本番まであと僅かという季節になりましたね。先日は春雷が鳴り響く音を耳にし、その轟きが新たな生活が始まる合図のように感じて暖かな気持ちになりました。
それでは早速、今月もGoodpatchで話題になったアプリやサービスをご紹介します!

サービス

東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト


https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
東京都は3月3日(火)に「東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト」を公開しました。本サイトは東京都内のコロナウイルスに関する感染動向や相談件数などの最新情報を、様々なグラフを用いてユーザーに提供しています。サイト内で用いているデータやウェブサイトのソースコードはオープンな状態で公開されているため、誰でも自由に再利用できるという特徴があります。3月31日(火)時点で、既に全国各地で30以上の派生サイトが公開されています。台湾デジタル担当大臣の唐鳳氏が修正を加えたことでも話題になりましたね。

本プロジェクトはオープンなデータ・ソースコードを中心に、沢山のクリエイターや自治体が協力し合いながらサイトを構築し、改善を続けている素晴らしい事例であると考えられます。また、プロダクト開発のためのオープンなコミュニティーにおける、デザイナーの役割について改めて考える機会となったのではないでしょうか。

たのしいキッチン不動産


https://cookpad-kitchen.com/
クックパッドから、キッチンから探せる不動産情報サイト「たのしいキッチン不動産」がリリースされました。一般的な不動産情報サイトと異なる点として、コンロ数・調理スペースの広さ・食洗機の有無といった細かいキッチン設備で物件を絞り込むことができます。また、各物件ごとに「KiT(キット)」というキッチンの充実度がひと目でわかる独自のスコアが付けられているため、一目で良いキッチン環境を備えた物件を探すことができます。

「たのしいキッチン不動産」は、レシピ投稿サービス「クックパッド」のユーザーを調査したところから生まれたそうです。その調査から「物理的なキッチンの充実が毎日の料理を楽しくする」というインサイトを抽出して立ち上げられた、クックパッドならではの新サービスです。また、自社のミッションである「毎日の料理を楽しくする」の実現にも近づくサービスです。ユーザーの課題をさらに解決するサービスとして事業を横展開し、自社のミッションの実現するために前進していく良い事例ではないでしょうか。

リブランディング

BMWがロゴを刷新


https://www.bmw.com/en/automotive-life/bmw-logo-meaning-history1.html
BMWは3月4日(水)、グローバルで新しいBMWブランドのロゴの使用を開始すると発表しました。公開された新しいロゴはフラットで透明なデザインとなっています。既に日本の公式サイトなどでも使用されており、さまざまなコミュニケーションの場面に用いられる予定です。このロゴは既存のロゴに加えて新しいメディアブランドとして使用され、車両やディーラーの内装・外装には使われないとされています。しかし、同時期に発表された「コンセプトi4」では使用されており、新世代電気自動車としてのシンプルでクリーンな印象にマッチしています。

新しいロゴは「開放性と明確性」を表しており、新たなテクノロジーとのつながりを意味づけています。また、将来的に普及するであろう自動運転車やEV車を操作するための、車載デバイスのインターフェイス内で用いることを視野に入れてリデザインされたのではないかと考えられます。今後、社会における自動車の在り方の変化に伴い、他の自動車メーカーでもロゴを刷新する動きが広がるかもしれませんね。

プロダクト

Appleが新型「iPad Pro」を発売


https://www.apple.com/jp/ipad-pro/
Appleは3月18日(水)に新型の「iPad Pro」を発表しました。今回発表されたiPad Proは背面に10MPの超ワイドカメラと、レーザー光を用いたAR向けセンサー「LiDAR」を新搭載しているという特徴があります。また、iPad Pro用のトラックパッド付き外付けキーボード「Magic Keyboard」も同時に発表されました。

AppleはこれまでiPadをタブレットとして扱っていましたが、今回のタイミングでそのポジションをコンピューターと位置づけ、トラックパッド(ハード)とカーソル(ソフト)を再開発したと考えられます。この再開発によって、iPad上でのインタラクションは直接操作と間接操作をシームレスに往来できるものへと変化するのではないでしょうか。引き続き、iPadでのユーザー体験がどのように磨かれるのか、iOS・iPadOS・macOSとの関係性がどのように変化していくのか注目したいと思います。

誰もが使える新しいドラム式洗濯機の提案「SLIP WASH」


https://www.behance.net/gallery/91332287/SLIP-WASH
韓国のプロダクトデザイナーJiheon Songがプロトタイピングした、車いす利用者も使いやすいドラム式洗濯機「SLIP WASH」が注目を集めています。従来のドラム式洗濯機は扉を横に開閉するため、車いす利用者には非常に使いづらい設計となっていました。一方で、SLIP WASHはその課題を考慮し、扉が上下にスライドするように設計しています。この設計により、車いすを使う人・使わない人に関わらず、スムーズに操作できることを実現しています。

ユーザーが身体的な特徴や個性を持っていたとしても、SLIP WASHのように不便なくより豊かに過ごせる状態を目指し、プロダクトを設計することはとても重要です。あらゆる障がいは、障がいがあっても不便なく過せるように社会がデザインされることで、それは障がいでなくなります。SLIP WASHの提案は、私たちがユーザー・障がい・社会の関係についてより深く考える機会となるのではないでしょうか。

老舗和紙工房が自然由来の紙文具ブランド「Food Paper」を発表


https://foodpaper.jp/
越前和紙の老舗工房「五十嵐製紙」から、廃棄される野菜や果物からつくられた自然由来の紙文具ブランド「Food Paper」が発表されました。洋紙や和紙では表現できない、独特な風合いが特徴の紙です。現在はぶどう、オクラ、たまねぎなど10種類以上の野菜や果物を用いて、ノートやメッセージカード・サコッシュなどを提供しています。

五十嵐さんのお子さんが行なっていた自由研究から生まれたFood Paperは、捨てられる野菜や果物を活用して紙製品を制作しています。そのため、リサイクルのような再利用ではなく、廃棄物をアップデートして製品に転換するアップサイクルプロダクトと言えます。手漉き和紙の原材料である楮(こうぞ)の生産量が激減する中で、別の素材から紙を作ることは持続可能な社会に貢献している活動です。

また、五十嵐製紙では廃棄される食品の回収を行い、回収した食品から紙を作る活動も行っており、フードロス問題の解決にも貢献しています。このFood Paperのように伝統を守りつつ、社会問題も解決するアップサイクル製品が増えるのが楽しみですね。

網膜に直接投影するARグラス「RETISSA Display II」発売


https://www.qdlaser.com/applications/eyewear/
株式会社QDレーザから映像を網膜投影するARグラス「RETISSA Display II」が発売されました。この製品は従来の製品自体に映像が映るARグラスと違い、映像を網膜に直接投影する「ビジリウム® テクノロジー」を利用しています。
この技術によって、視力や眼のピント調節に依存せず映像を見ることができます。​

「ビジリウム® テクノロジー」によりARデバイスの体験設計を検討する際に網膜投影という選択肢が増え、形状のデザインにも影響すると考えられます。現在、目の近くに存在するアイテムとしてメガネが一般的なためデバイスの形状もメガネ型であると考えられますが、レーザーで網膜に投影することが実現できればメガネ型の他にも形状の選択肢は増えます。今後この技術を通して開発されるデバイスに期待が膨らみます。

アプリケーション

消化器系問題に寄り添うアプリ「CARA CARE」がリリース


https://cara.care/
消化器系の問題を抱える人々の生活の向上を目的としたアプリ「CARA CARE」が、新しく12週間のIBS(過敏性腸症候群)プログラムをリリースしました。こちらのプログラムは5000時間に及ぶ栄養カウンセリングを元に設計されています。内容は消化器系問題に関する記事・栄養士との無制限のチャット・お腹に優しいレシピなど、さまざまな課題解決の方法が含まれています。生活習慣をトラッキングすることで様々な観点から症状の要因を見つけ出し、解決策を提案することのできる生活に寄り添ったサービスとなっています。

CARA CAREは、「生活において消化器系の問題は、肉体的・精神的・経済的に影響を与えてしまう」という課題に対して開発されました。デバイスが身体の状態を把握し、管理するという機能は、テクノロジーを通じて自分の身体についてより深く考えるきっかけにもなります。ここでは栄養士という仕事がデジタル化してユーザーの課題に向き合いますが、今後はこうして様々な仕事がデジタル化し、スマートフォンの中に入っていくことでしょう。近い未来では、あなたの仕事もデジタル化しているかもしれません。


以上、3月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!

過去の月間まとめ記事はこちらからどうぞ!