新しいものが大好きなGoodpatchで8月話題になったアプリ、サービス、デザインまとめ(2019)
暑さのピークは終わったように感じますが、まだまだ厳しい暑さが続いています。過ごしやすい気候になるのが待ち遠しいですね!
それでは早速、今月Goodpatchで話題になったアプリやサービスをご紹介します!
過去の月間まとめ記事はこちらからどうぞ!
目次
サービス
Apple Card
https://www.apple.com/apple-card/
Apple Cardは、Appleが発行するクレジットカードです。今年の6月に行われたWWDC2019で発表され、8月20日に米国内で正式に提供が始まりました(日本では未提供)。基本的な使い方は通常のクレジットカードと同様ですが、発行手続きや口座管理は全てiPhoneで行います。
Appleが発行したカードなだけに、iPhoneのApple PayやWalletアプリとの連携はとても簡単で、シームレスな体験になっています。手元にApple Cardが届いたとき、利用者はそのカードをiPhoneに近づけるだけでアクティベートできます。先月日本でも発売開始となったHomePodやAirPodsのように、ハードウェアとソフトウェアの境界を感じさせない非常に優れた体験となっています。
近年では多くの国でキャッシュレス化の動きがあり、数多くの電子決済サービスが誕生しています。リアルカードの発行・連携や送金機能、ポイントバック、クーポンなど様々な特徴を持つサービスがある中で、Apple CardはiPhoneというハードウェアそのものを作っているプラットフォーマーとしての利点を存分に活かしたサービスと言えます。
現在は米国のみの対応で、他国で提供されるかは不明ですが、もし手に入れる機会があればぜひ一度使ってみたいサービスです。
「Android」ロゴがリデザイン
https://www.blog.google/products/android/evolving-android-brand/
GoogleはAndroidのロゴデザインを刷新しました。今回のリデザインは、Androidが登場してから10年が経過したことをきっかけに行われたものです。ロゴデザインを変更した一番の目的は、アクセシビリティを向上させることだそうです。これまでブランドカラーとして用いていた緑は色覚障害者には判別が難しい色であることから、ロゴタイプの配色は黒へ、Androidロボット(通称、ドロイド君)の配色は従来よりも青みが増したものへ変更されました。
Androidといえばアルファベット順のお菓子の名前をコードネームにしていたことで有名ですが、このルールも廃止され、次期バージョンでは「Android 10」という名称に変わります。この名称の変更は、ユーザーの認知負荷を解消するために行われました。これまでは一部の言語ではLとRを区別しないことから、Android LollipopがAndroid KitKatの後継バージョンであると直感的に理解することが難しいという問題などがありました。これからはシンプルで直感的なバージョン番号を名称に使用することから、今回のリデザインがAndroidの認知を世界へ広げるきっかけになると考えられています。今後はユーザー数を増やすための施策として、アクセシビリティの向上や認知負荷の解消をベースに、ブランドのリデザインが行われる例も増えるのではないでしょうか。
アプリケーション
「Drama」のベータ版が公開
スロバキアのPixelCut社は、macOS用のデザインツール「Drama」のベータ版を公開しました。「Drama」ではUIデザインやモーフィングアニメーションの作成及び、デザインしたシーンを繋ぎ合わせることでプロトタイプの生成ができます。実際にベータ版を使用しましたが、オブジェクトの操作・グループ化・シミュレーションといった基本機能が機敏かつ円滑に動作する点や、バージョン管理・ブランチ管理等の強力なヒストリー機能が標準搭載されている点に好印象を持ちました。また、ベータ版でありながらも、iOS用のミラーリングアプリがすでにリリースされています。このミラーリングアプリを用いることによって、制作したプロトタイプを実機で手軽に確認できます。
これまでのプロトタイプ制作は、UIデザインツール・プロトタイプツール・アニメーションツール・バージョン管理ツール等の様々なツールを切り替えて用いる必要がありました。その一方で「Drama」は、それぞれの機能が高いレベルで完成し、統合されているため、プロトタイプ制作を1つのアプリケーションだけで完結させてしまう可能性を秘めていると考えられます。「Drama」は公式サイトからダウンロードして利用できます。ぜひ次世代のデザインツールを使用してみてはいかがでしょうか。
Artyline
「Artyline」は、手書きのワイヤーフレームを、ARを用いてインタラクティブなプロトタイプに変換できるアプリです。Artylineで作成したプロトタイプは、色や画像が自動で挿入されます。その上で、カラースキームの変更や、複数画面を読み込んで遷移をつけるができるので、簡単に実用的なプロトタイプまで落とし込むことができます。
手書きのワイヤーフレームとArtylineがインストールされたiPhoneを用意するだけで、上記のような本格的なプロトタイプを作成できるため、かなりクイックにアイデアを検証できることがArtylineの魅力です。たくさんのアイデアを検証した中で良いものがあれば、sketchなどのデザインツールへの書き出しやアイトラッキングによるテストもできてしまいます。実際に描いたワイヤーフレームがARで変換される体験も面白く、次世代のデザインツールの可能性を感じられるようなプロダクトです。
Adobe Fresco
https://www.adobe.com/jp/creativecloud/drawing-painting.html
デザインツールベンダーのAdobeはiPad用イラストレーションアプリ「Adobe Fresco」をプレリリースしました。「Adobe Fresco」はベクター描画とラスター描画を併用したスケッチが可能な新感覚のアプリです。本アプリの特筆すべき特徴は水彩や油彩表現の綿密さです。絵具の厚みを持つ表現や色が重なり合う表現を忠実にシミュレートし、デバイス上で表現できます。これらの機能によって、実務にも耐えうるコンテンツの描画を実現しています。
従来のデザインプロセスでは、Adobe製品を机の上で利用しながら行うものがほとんどでした。今後は「Adobe Fresco」や昨年の10月に発表された「Photoshop CC for iPad」が本リリースされることによって、タブレット上からデザインが行われる例も増加するのではないでしょうか。Adobeの今後の戦略と展開に期待です。
プロダクト
Oh My Glasses TOKYO「TYPE」に新書体が登場
Oh My Glass TOKYOの、メガネのフォルムにタイポグラフィーの美しい要素を散りばめたアイウェアブランドである「TYPE(タイプ)」は、同じ文章でも書体によって印象が異なるように、人もかけるメガネによって印象が変わることをコンセプトとしています。そんなTYPEにこの度、新たに「Johnston Underground」と「Plantin」の2つのモデルが登場しました。
Johnston Underground(ジョンストン アンダーグラウンド)は、100年以上にわたりイギリスで愛され続けている書体です。TYPEでは20世紀初頭の英国スタイルを感じさせるフォルムを取り入れています。また、Plantin(プランタン)は、16世紀にベルギーの出版社で使われていた書体が起源です。TYPEではPlantinのもつ芯の強さとエレガントさ、そして本文書体としての使いやすさを、素材やフォルムで表現していて美しいです。皆さんも、自分の好きな書体と一緒に暮らすことのできるこのアイウェアを身に着けてみてはいかがでしょうか。何気ない日常も少し違って見えるかもしれません。
「Audi e-Tron Scooter」のコンセプト発表
https://www.audi-mediacenter.com/en/press-releases/audi-combines-e-scooter-with-skateboard-11957
ドイツの自動車メーカーAudiは、電動スクーターとスケートボードから着想を得てデザインした「e-tron Scooter」のコンセプトを発表しました。「e-tron Scooter」は本体重量が12kgと軽量かつ2つ折りにして畳めるため、引っ張るように運んだり、車・バス・電車等に載せて移動ができます。本スクーターはBluetoothでのスマートフォン連携によるユーザー識別機能や、GPSによる位置追跡機能を搭載しています。これらの機能によってスクーター盗難への対策や紛失時の捜索しやすさを実現しています。
自動車メーカーの製造による、安心・安全な本スクーターが市場に投入されることによって、より便利なモビリティの普及がさらに加速するのではないでしょうか。また、今後日本でどのように法整備が行われ、新たなモビリティが浸透するのかについても注目したいと思います。
Spectacles3
Snapchatで知られるSnap Inc. が、カメラ付きサングラスSpectaclesの第3世代「Spectacles 3」を発表しました。「Spectacles3」は最長60秒の音声付き動画撮影、2つのカメラを使った3Dカメラ撮影ができ、撮影したコンテンツには独自のARエフェクトをかけることができます。撮影したコンテンツはモバイルアプリで編集・共有でき、SnapchatだけでなくYouTube、Instagramにも投稿できます。
AR動画、視差のある写真などリッチなコンテンツを生み出すこのサングラスは、ガジェット好きにはたまらない代物です。また、ギークな機能とは裏腹に、そのスタイリングはダブルブリッジの丸レンズという「Snapchat」のターゲット層へ向けたものになっていて、Snapの世界観が現れていると感じました。
イベント
虫展 −デザインのお手本−
http://www.2121designsight.jp/program/insects/
「虫展 −デザインのお手本−」は虫の多様性や人間との関係性からデザインの新たな一面を学ぶ展覧会です。東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTで、7月19日から11月4日まで開催されます。ディレクションにグラフィックデザイナーの佐藤卓を、企画監修に解剖学者の養老孟司を迎えた本展。虫の標本だけではなく、隈研吾らによる虫をお手本としたモチーフ作品や、音楽や立体作品が展示されており、様々な角度から虫をお手本とした作品に触れて楽しむことができます。
デザインのヒントは日常のあらゆるシーンから得ることができるように、普段はなかなか意識しない虫の世界からもヒントを得られることを気付かされます。虫が苦手という人も本展覧会で虫の奥深い世界に触れ、自然界の様々な問題を解決して生き延びてきた虫達から、デザインのお手本を見つけてみてはいかがでしょうか。
以上、8月に話題になったアプリやサービスをお届けしました。
毎月新しい情報をお届けしておりますので、来月もお楽しみに!